第122話:開いたページに書かれていたものは……?
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新しく仲間入りしてくださった読者様、本当にありがとうございます。50人の大台まであと一歩という数字を
見るたびに、嬉しさと感謝で胸がいっぱいです。
皆様の期待に応えられるよう、一歩ずつ大切にお話を紡いでいきます。
さて、第122話の今回は、前回の「ひらけごま!」の直後からスタートです。お父様とお母様、ライダ兄様
アレク兄様、宮廷魔術師長エルハルト様、そして最初から輪に加わってくれていたジント様。
全員の温かい手が繋がったとき、ピンクの本に大変化が起こります。ジント様が優しく読み上げる、萌ちゃんを治すための「驚きのヒント」をどうぞお楽しみください!
パカッ、という軽快な音とともに
淡いピンク色の光を放ちながらゆっくりと開かれた、例のピンクの本。
お父様とお母様、ライダ兄様とアレク
兄様、宮廷魔術師長のエルハルト。
そして最初から、うさぎの姿になった萌の小さな前足を、その大きくて涼やかな手で優しく包み込むようにして輪に
加わってくれていたジント様。
全員が繋いでいた手をそっと離し
息を呑んでその様子を見守る中、本の上にはキラキラとした光の粒子がふわりと舞い上がり、まるで祝福の粉のように
部屋の中を優しく満たしていった。
誰もが「これで全てが解決するのでは」と期待の目を輝かせた、その直後のことである。
確かに本は開いた。
しかし、開いたのは最初の数ページ―
―ほんの一部だけだったのである。
本の大半を占める後半部分のページは、まるで目に見えない強力な魔術の
鎖で頑丈に留められているかのように
ピタリと重なったままでびくとも動かない。
「ついに開いた……! と思ったが
まだ完全とは言いきれないな……」
お父様がその威厳ある鋭い目を細め
机の上の本をじっとのぞき込む。
そのすぐ横で、ちんまりとした白い
うさぎの姿をした萌は、長いお耳をピコピコと動かしながら「ぷう?」と首を
傾げていた。
萌にとっては、本が開いたことよりも
みんなの温かい手が離れてしまったことのほうが、ちょっぴり寂しかったりするのだ。
「ですが公爵様、開いた最初のページを見てくだされ! 何やら光り輝く文字のようなものが、くっきりと浮かび上がってきておりますぞ!」
エルハルトが興奮のあまり鼻息を荒くしながら、顔からズレそうになった
高価な眼鏡のブリッジを大慌てで押し直す。
確かに、光の粒子が落ち着いた真っ白なページの上には、これまでこの世界の
歴史のどこにも存在しなかったで
あろう、ハートの形をあしらった不思議な紋章と、美しい金色の細い術式文字が、さらさらと流れるようにして文書を形作っていった。
「むぅ……これは通常の古代魔術の術式文字ではないな……。宮廷魔術師長で
ある私をもってしても、解読には数日、いや、数週間はかかりそうだ」
エルハルトが難解な本を前に、唸り声を上げながら冷や汗をにじませる。
「――難しく考えなくていい。これは
通常の魔術言語じゃないからね。
僕が読んでみよう」
そう言って、エルハルトの隣から静かに一歩前へ出たのは、最初から萌のすぐ
隣でみんなと手を繋いでくれていた
ジント様だった。
相変わらずお人形のように整った完璧な容姿に、どこか世界の理を超越した
ような神秘的な雰囲気を纏っている。
ジント様は、机の上で戸惑ったようにお耳をパタパタさせているうさぎ姿の
萌の頭を、細長く綺麗な指先でそっと
優しく撫でた。
「この本に書かれているのは、読む者の魔力の強さではなく、萌の『純粋な魂の記憶』に反応して紡がれる特別な
メッセージなんだ。
みんなで手を繋いで、萌の心を最高に
ポカポカさせて安心させたからこそ
僕の目にはその意味がはっきりと
普通の言葉のように見えているよ」
ジント様が美しく輝くピンクの本の
ページに、そっと白皙の指先を
滑らせる。
すると、それに呼応するように本の
ピンク色の光がさらに優しさを増し
部屋の隅々まで暖かな光で行き渡った。
ジント様は静かに、しかしその場に
いる全員の心にまっすぐ染み渡るような、深く美しい声で浮かび上がった文書を読み上げ始めた。
『――大いなる世界の巡り合わせに
より、小さき姿となりし迷い子の魂へ』
ジント様が紡ぐ麗しい言葉は、まるでおとぎ話の朗読のように、静まり返った部屋の中を心地よく満たしていく。
『汝を縛る幼き姿、そして汝を苛む数々の奇妙なおかしな呪い
(――あぁ、これは例の、ハゲ頭と
床まで届く髭のヨボヨボの呪いのこと
だね、とジント様が小さく淡々と補足する――)。
それらの仕組みを解き明かし、本来の
あるべき健康な姿へと治すためのヒントは、この最初のページにこそ記されている。
……“迷い子の魂が、心から「美味しい」と微笑み、周囲の者たちと真なる笑顔を共有した時、第一の封印は完全に
解かれ、大いなる治癒の光がその身体を優しく包まん”』
「萌を治すヒント……! うさぎの姿だけじゃなく、あの恐ろしいハゲ頭の呪いからも救われる方法が書いてあるのですね……っ!」
お母様が両手をそっと口元に当てて
歓喜と安堵のあまり、瞳にうっすらと
涙を浮かべて声を震わせた。
大切な我が子が、あの衝撃的なヨボヨボの姿にならずに済むのだと分かり、母親としてこれ以上ない救いを感じた瞬間
だった。
「おい、ジント様! それは本当か!? 本当に、萌を完全に元の姿に治す方法が、そこに書かれているんだな!?」
ライダ兄様が、嬉しさのあまり我慢できずに身を乗り出して尋ねる。
その隣でアレク兄様も、普段の冷静さをどこかへ忘れてしまったかのように
祈るような目でジント様を見つめていた。
ジント様はそんな兄弟の様子に静かに
頷き、さらに金色の文字が流れる文書の
続きを読み進めた。
『ただし、その治癒は一度には成し
得ない。
この本は汝の心の成長と、周囲との
心の絆の深さに応じて、少しずつ次の
ページをめくる仕様となっている。
今回はその長き道のりの最初の第一歩。
汝の魂が最も安らぎを覚え、幸せを感じる“大好きな甘きもの”を、大切な家族や仲間と共に食すべし。
さすれば、幼児化とうさぎ化の呪縛は
一時的に和らぎ、本来の姿へと戻るための光の道が開かれるであろう……』
ジント様が最後の言葉を読み終えると
ピンクの本は役割を終えたかのように
ふっと眩しい光を収め、開いた最初の
数ページの状態で机の上に静かに落ち着いた。
「なるほど……。要するに、萌が心から美味しいと思える大好きな甘いお菓子を、ここにいる僕たち家族やみんなで
一緒に、笑顔で楽しく食べること。
それが、萌を元の姿に治すための、最初の試練でありヒントということだね」
ジント様はそう言うと、机の上のうさぎ萌ちゃんを愛おしそうに両手でふわりと包み込み、自分の衣服の胸ポケットへ
とすっぽり収めた。
ジント様の暖かい胸ポケットからちょこんと小さな顔を出した萌は、
「ぷう……、くぅ」と、ジント様の胸元に甘えるように小さな鼻を鳴らして擦り寄せている。
「萌を治すための方法が、みんなで甘いお菓子を食べることだなんて……。
なんて優しくて、そして何より食いしん坊な萌らしい内容なんだろうね」
アレク兄様が肩の荷が下りたように
いつも以上に柔らかな笑顔を浮かべて
笑うと、お父様も深く深く、満足そうに頷いた。
「うむ! 萌がうさぎの姿や、あの
恐ろしいハゲ頭の呪いにこれ以上怯える必要がないと分かっただけでも、我が
公爵家にとっては大いなる前進だ。
早速、城の専属料理長を総動員し、国中の最高級の食材を集めて最高の甘味を用意させようではないか!」
「まあ、お父様ったら、すぐにそうやって大げさに用意しようとするのですから。
萌が一番心から喜んで、笑顔になれる
お菓子がどのようなものか、お分かりになっていませんわね。
私たちが心を込めて作ったお菓子か
萌がずっと自分で作りたがっていた
あの異世界のお菓子に決まっていますわ」
お母様がクスリと上品に微笑みながら楽しそうに提案すると、ジント様の胸
ポケットの中から、萌は
「ぷうぷうっ、ぷう!」とお耳を前後に激しくパタパタと動かして、これ以上ないほどの大賛成の意を示したのだった。
家族みんな、そして最初から手を繋いでくれていたジント様の強い絆があったからこそ開いた、ピンクの本の最初の
1ページ。
そこに示された温かいヒントを胸に
みんなで美味しいお菓子をたくさん
作って、みんなで笑顔で食べるための
萌たちの新しくて甘い大作戦が今
優しく、そして賑やかに幕を開けようとしていた。
(つづく)
第121話、そして今回の第122話もお読みいただき
本当にありがとうございました!
家族みんなの萌ちゃんへの溢れんばかりの愛や
ジント様が最初から手を繋いでいたからこそ本が開いたという温かい空気感を、より深く丁寧に描写しております。
ジント様が「ハゲ頭&床まで届く髭の呪い」を淡々と
真面目な声で読み上げるシュールな可愛さや、お父様が嬉しさのあまりお城の料理人を総動員しようとして
お母様に優しくたしなめられる一幕など、公爵家なら
ではの賑やかでほっこりするシーンを楽しんでいただけていたら幸いです。
胸ポケットにすっぽり収まったうさぎの萌ちゃん
次回からはいよいよ
「みんなで笑顔になるお菓子大作戦」の準備に入ります!「ボリュームアップして家族の絆がより伝わってきた!」
「ジント様の胸ポケットに入った萌ちゃんが可愛すぎる!」と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】
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次回の第123話も、どうぞお楽しみに!




