第121話:ピンクの本を開くための、とっておきの魔法(?)
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一歩ずつステップアップしていく数字を見るたびに
嬉しさで胸がいっぱいです。
さて、2話連続の番外編を経て、今回からいよいよ本編が再開します!前回の番外編で、精霊王みちゃーれから
「最高の猫の手」をもらった萌ちゃん。
うさぎの姿のまま、お父様やお母様、お兄様たちを巻き込んで「とっておきの魔法」に挑戦します。
萌ちゃんの「ぷうぷう」という可愛い鳴き声と、家族みんなの温かい絆をどうぞお楽しみください!
「にゃあ、にゃあ……にゃあう」
心の中ではこの世界の理や、ピンクの本にかけられた高度な魔術の術式について、非常に知的かつ深刻に考察している精霊王みちゃーれ。
しかし、その偉大なる精霊王の口から
溢れ出るのは、どこからどう聞いても
生後数ヶ月の愛くるしい子猫の鳴き声でしかなかった。
「う、うむ……。精霊王様は、この本を開くためには我々の『覚悟』と、さらなる魔力の『調和』が必要だと仰っているのだろうか……?」
宮廷魔術師長であるエルハルトが
額に高価な冷や汗をにじませながら
みちゃーれの鳴き声を必死に深読みしている。
その様子を、お父様とお母様、そして
ライダ兄様とアレク兄様が、心配そうに、かつ真剣な表情で見守っていた。
「なるほど。魔術師長がそう言うのなら、俺たちの魔力を完全に同調させる
必要があるな」
「萌に負担がかからないよう、僕たちが慎重に魔力を流し込むべきかい?
……それにしても、今日のみちゃーれは一段とふわふわで可愛いね」
大人たちがそんな見当違いな大真面目トークを繰り広げている中で、小さな
うさぎの姿に変身している萌は
コクンと首を傾げた。
じつは、萌には分かっていた。
みちゃーれが必死に「にゃあにゃあ」と鳴きながら、ちっちゃなおててで
ピンクの本をぽんぽんと叩き、その後で萌のほうをじっと見つめてくれたからだ。
(みちゃーれちゃん、お口では
『にゃあ』って言ってるけど……。
なんだか、頭の中にポカポカする声が届いた気がするの)
それは、言葉というよりも、温かい感情 of 波のようなものだった。
『萌ちゃん、怖がらなくていいんだ
にゃ。
この本はね、萌ちゃんが
「ここはとっても安全で、みんなが
大好き!」って、心から安心したときに開くおもちゃ箱みたいなものなんだにゃ。
だから、みんなを信じて、ポカポカな
気持ちになるのが一番の近道なんだ
にゃん』
猫の本能に抗えず、うずうずした目で萌のうさぎ耳をちょいちょいと突っつきたそうにしながらも、みちゃーれは確かな『アシスト』を萌に送ってくれていた。
(そっかぁ……。この本、私が怖がってちゃ開かないんだ。
みんながお仕事で困っちゃうのは嫌だ
もん。私、みんなのことが大好きだし
ここは世界で一番安心な場所だもん!)
萌の小さな胸の奥に、じわりと温かい勇気が湧いてくる。
とはいえ、どうすれば「心から安心していること」をこのピンクの本に証明できるのだろう。
萌はうさぎの姿のまま、短いお手てを
あごに当てて、うーんと考え込んだ。
(ええっと、私が一番安心できて、ポカポカして、元気になれる魔法……。
そうだ!)
萌は、ぽんっと手を叩くような仕草を
して、お父様とお母様、お兄様たち
ジント様そしてエルハルトのほうを順番に見上げた。
「ぷう……、くぅ」
うさぎの姿になった萌が、鼻を小さく鳴らして可愛らしい声を上げると
それまで難しい顔をしていた一同の表情が一瞬でデレデレに緩んだ。
「萌? どうしたんだい、急に僕の服を引っ張って」
アレク兄様が目尻を下げてしゃがみ込む。
萌はうさぎの姿のまま、短い前足を一生懸命に伸ばして、アレク兄様の手のひらにぽすんと乗せた。
「ぷうっ(おにいたん、てて、繋いで!)」
「ひっ……! か、可愛い……っ!
ライダ、萌が僕の手を握ってくれたよ!」
「ずるいぞアレク! 萌、ほら、俺の手も空いているぞ!」
ライダ兄様が慌てて大きな手を差し出すと、萌はもう片方の前足をライダ兄様の手のひらに乗せた。
だけど、これだけじゃ足りない。
萌は、優しく見守ってくれているお父様とお母様のほうを振り返り、短いお耳をパタパタと動かした。
「ぷうぷう!(おとうしゃま、おかあしゃまも、てて繋いで!)」
「まあ……! 萌、お母様の手も握りたいのね。可愛いおねだりだわ」
「うむ……、私の手も繋ごう。さあ
みんなで手を合わせるんだ」
お母様が微笑みながらアレク兄様の手を握り、お父様がライダ兄様の隣にそっと大きな手を添える。
そして、少し離れたところで
「いいなぁ……」と言いたげに指をくわえて羨ましそうに見ていた魔術師長エルハルトも、お父様に促されて感激のあまり涙ぐみながら手を繋いだ。
これで、お父様、お母様、アレク兄様、萌、ライダ兄様、ジント様
エルハルトの全員が、ぐるりと
大きな一つの輪のようになった。
(わあ……みんなの手、すっごくあったかいな。お父様も、お母様も、お兄ちゃんたちも、魔術師長のおじちゃんもジント様もみんな私を守ってくれる大好きな家族と優しい人たち。
みちゃーれちゃんも近くにいてくれる。私、世界で一番幸せ者かも!)
萌のハートは、今や完全に「安心」と
「大好き」のエネルギーで満杯になっていた。
胸の奥がポカポカして、まるで甘い
ホットココアを飲んだときのように
じんわりと身体が軽くなっていく。
繋いだ手から、萌の純真で温かい感情が、みんなの元へと流れ込んでいく。
大人たちはそのあまりの尊さと心地よさに、声を失ってただただ萌を見つめていた。
準備は、すべて整った。
萌はそっと目を閉じると、心の中で
それから小さな口から、とっておきの
魔法の言葉を紡ぎ出した。
「ぷぅ、ぷうっ……ひらけ、ごま……っ!」
幼い萌が一生懸命にうさぎのお口を動かし、祈りを込めて叫んだ、とっておきの魔法。その瞬間、みんなが繋いでいた輪の中心に置かれていたピンクの本が
カチリ、と小さな音を立てた。
次の瞬間、部屋全体が淡い、優しいピンク色の光に包み込まれた。
「お、おお……っ!? 本が、光を放ち始めましたぞ!」
「魔力の暴走じゃない……! これは
もの凄く温かくて優しい光だ……!」
エルハルトたちが驚きの声を上げる中
ピンクの本の表紙に描かれていたハートの紋章が、生きているかのようにくるくると回転し始める。
そして――パカッ、という軽快な音と
ともに、頑なに閉ざされていたピンクの本の表紙が、ついにゆっくりと左右に開かれたのだった。
光の中から現れたのは、一体何なのか。
一同が息を呑んで見守る中、開かれた
ページの上から、キラキラとした光の
粒子がふわりと舞い上がる。
だが、開いたのは最初の数ページ――
ほんの一部だけだった。
本の大半を占める後半のページは
まるで目に見えない強力な鎖で留められているかのように、ピタリと重なった
ままで動かない。
「ついに開いた……! と思ったが
まだ完全とは言いきれないな……」
お父様が鋭い目を細めて本をのぞき込む。ほんの一部だけ開かれたページ。
そこには、一体何が書かれているのだろう。萌の小さな祈りは、本に隠された
大いなる秘密の、最初の扉を叩いた
ばかりだった。(つづく)
第121話をお読みいただきありがとうございました!
ついにピンクの本が開きました……!
みちゃーれのアシストを健気に感じ取った萌ちゃんが
お父様、お母様、お兄様たち、みんなと手を繋いで
「ひらけごま!」と祈る姿、家族の強い絆が感じられて胸が熱くなりますね
(執筆しながらやっぱり悶絶してしまいました笑)。
うさぎ姿の萌ちゃんにおねだりされてデレデレのお兄様たちや、優しく手を繋ぐお父様とお母様、そしてちゃっかり仲間入りを果たした魔術師長エルハルト様。
みんなの心が最高の安心感で一つになったからこそ
本も優しい光を放ってくれたのですね。
ですが、お父様が言う通り、開いたのはまだ一部の
ページだけ。
完全とは言いきれない状態です。残りのページには一体何が隠されているのか、そして今回開いたページには
何が書かれているのか……?
「うさぎ萌ちゃんの『ひらけごま』が可愛すぎる!」
「家族みんなの絆にほっこりした!」と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】で応援していただけると、次の話を執筆する大きな
エネルギーになります!
次回の第122話では、その一部だけ開いたページに書かれている「ある驚きの内容」に迫ります。どうぞお楽しみに!




