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『第120話:【番外編】精霊王みちゃーれは知っている。ピンクの本の正体と、対価の意味』

いつも応援ありがとうございます!

前回の第119話に引き続き、今回も【番外編】をお届けします。


2話連続の番外編となりますが、お留守番(?)中の読者の皆様への最高のご褒美回になれば幸いです!


今回の主役は、みんなお馴染みの「精霊王みちゃーれ」視点です。


元々は猫の精霊であるみちゃーれ。


心の中では精霊王としてピンクの本の秘密をもの凄く深く見抜いているのですが……悲しい事に、人間への言葉はすべて「にゃあ」に変換されてしまいます。


そんなみちゃーれの一鳴きに振り回される大人たちと

うさぎ姿の萌ちゃんを猫の本能でちょっかい出したくなるみちゃーれの可愛い実況中継をどうぞお楽しみください!

「萌お嬢様、ご自身の『ある行動』だけでございます」




白髪の髭(ひげ)を蓄(たくわ)えた

国一番の魔術師長が、大真面目

(おおまじめ)な顔でそんな格好良い

セリフを決めているのを、俺は公爵家のふかふかのカーテンの上から、のんびりと見下ろしていたにゃあ。




俺の名前はみちゃーれ。この世界に君臨(くんりん)する偉大(いだい)なる

精霊王――なんだけど、元々は気ままな猫の精霊なんだにゃあ。



今は大好きな萌ちゃんの側にいたいから、さらにちっちゃくて可愛い姿に

なって居候(いそうろう)しているんだにゃあ。




もちろん、お父様もお母様も、ケモ耳を生やしてベッドで灰になっているお兄ちゃんたちも、俺の本性が猫の精霊王

だってことは元々みんな知っているにゃあ。




(エルハルト、萌自身の行動って、一体どういうことなんだにゃ?)





俺はカーテンからふわふわと宙を舞いながらベッドの真ん中へ降り立ち、魔術師長に向かって首を傾(かし)げながら

「にゃあ」と短く鳴いてみせたにゃあ。




俺の言葉は、悲しい事に人間にはただの猫の鳴き声にしか聞こえないんだにゃあ。




だけど、相手は国一番の魔術師。





猫の鳴き声一言からでも、俺から溢

(あふ)れ出る精霊王としての計り知れない威厳(いげん)を感じ取ったのか

「ひえっ、精霊王様が何かを問うて

おられる……!?」と大慌(おおあわ)てで頭を下げていたにゃあ。




さっきまで「貴族は大袈裟だにゃ」なんてだるそうに歩いていたくせに、俺の

一鳴きで冷や汗を流しているお医者様

たち。




見ていて本当に面白かったにゃあ。




「み、ミチャーレ様……。あ、あのピンクの本は、人間の魔力をただ吸い込んでいるだけなのです。


つまり、外側からどれだけ強い力を与えても絶対に開かない。


本を開くための鍵は、萌お嬢様ご自身の内なる魔力、そして『心』と繋がっているのです」




魔術師長のエルハルトが、冷や汗を拭

(ぬぐ)いながら俺の「にゃあ」を必死に深読みして説明してくれたにゃあ。





ふむふむ、なるほどにゃあ。人間にしてはなかなか鋭い観察眼(がん)だ

にゃあ、と俺は心の中で上から目線で

褒(ほ)めてあげたにゃあ。





でも、元々は猫の精霊王である俺の目から見れば、あの怪しいピンクのレシピ本の正体は、もっとはっきりと見えているんだにゃあ。




あの本はにゃあ、ただの紙の束(たば)じゃない。萌ちゃんの『前世の記憶』と『今世の強すぎる魔力』がごちゃまぜになって作り出された、魂(たましい)の鏡みたいなものなんだにゃあ。


萌ちゃんは前世で、とっても寂(さび)しくて、心がボロボロになるような

悲しい経験をしてきたにゃあ。


その時の「私なんて、どうせ一人ぼっちなんだ」っていう暗い影のトラウマが、今世の強すぎる魔力と結びついて暴走しちゃったんだにゃあ。





だから、本が鉄板みたいに硬くなって

ページがめくれないのは、萌ちゃんの心が「これ以上、私の痛いところを見ないでにゃあ!」って、ぎゅっと固く閉ざされているのと同じなんだにゃあ。




(そんなに怯(おび)えなくても、もう大丈夫なのににゃあ)俺はベッドの上でペタンと寝そべっている、もふもふの

白い子ウサギ姿の萌ちゃんをじっと

見つめたにゃあ。





にじ色だった綺麗な瞳が、今は色のないガラスみたいに透き通っているにゃあ。




純白でもふもふで、お耳をぱたぱたさせている萌ちゃん。



……うう、元々は猫の俺としては、このちっちゃくて丸い小動物な萌ちゃんを

前足で『ちょいちょい』って突(つつ)き回したくて仕方がくなるにゃあ!

猫の本能がうずうずするにゃあ!




「きゅ、きゅきゅーっ?」





萌ちゃんが無色の瞳で、俺のことを不思議そうに見つめ返してきたにゃあ。

短い前足で俺の尻尾(しっぽ)を

触(さわ)ろうとしてくる萌ちゃん。





うわああ、突っつきたいなんて思って

ごめんにゃあ! 俺は愛を込めて

「にゃあにゃあ(大丈夫だにゃあ)」

と鳴きかけてあげたにゃあ。




色のない瞳になっても、相変わらず胸が苦しくなるほど圧倒的に可愛い

にゃあ……!




俺も萌ちゃんに袖をカリカリされたお医者様がめちゃくちゃ羨(うらや)ましかったにゃあ!



今度俺のこともカリカリしてほしい

にゃあ!お兄ちゃんたちやお父様たちは、「萌の心が閉ざされている……?」と、お医者様の話を聞いてますます

悲しそうな顔をしているにゃあ。





ジント様なんて、狼の耳を完全に後ろに伏せて、消え入りそうな声で萌ちゃんの名前を呟(つぶや)いているにゃあ。





「特別な対価」って書かれていたから

みんな自分の命とか魔力を差し出さ

なきゃいけないのかと焦(あせ)って

いるみたいだけど、あの本が求めている対価は、そんな物ブッソウなものじゃないんだにゃあ。




あの本が開くための本当の条件。




それは、萌ちゃんが

「あ、私、もう一人じゃないんだにゃ。こんなに私を愛してくれる家族が側に

いるんだにゃ」って、心から安心する

ことなんだにゃあ。





萌ちゃんがみんなの愛を受け入れて

自分から一歩、心の扉を開くような

「ある行動」を起こせば、あの頑固

(がんこ)なレシピ本なんて、面白い

くらいにペラッと簡単にめくれるはずなんだにゃあ。





(よし、それじゃあ偉大なる猫の精霊王の俺が、萌ちゃんが本を開くための最初のお手伝い(アシスト)をしてあげるにゃあ!)



俺はふんわりと舞い上がると、ピンクの本の真上で小さく手を叩(たた)いて

「にゃーーん!」と一際(ひときわ)

大きく鳴いたにゃあ。




俺の精霊王としての清らかな魔力が

ほんの少しだけ本の表面にピトッと触れる。




すると、さっきまでお兄ちゃんたちの

魔法をズブズブ吸い込んでいたピンクの本が、俺の魔力にだけは拒絶

(きょぜつ)反応を起こさず、まるで

「鍵穴(かぎあな)に鍵が差し込まれた」みたいに、優しく『ふわぁん』と

光りだしたにゃあ。




「あ、あれを見ろ! 本が……ピンクの

本が、精霊王様の御声(おんせい)と

魔力に反応しているぞ!」



アレクにい様がウサギ耳をピンと立たせて叫んだにゃあ。



「にゃあ!(萌ちゃん! 今ならいけるかもしれないにゃあ! 自分の力を信じて、もう一回だけ本に触ってみるんだにゃあ!)」




もちろん俺のセリフは全部「にゃあ!」にしか聞こえてないはずだけど、俺の

意図を察してくれたのか、萌ちゃんが

もう一度、ちっちゃな前足をレシピ本へと伸ばし始めたにゃあ。




精霊王みちゃーれの特等席からの実況中継(ちゅうけい)。




お医者様たちの診断(しんだん)と

俺の猫の手も借りてほしいちょこっと

した手助けによって、頑固な本の攻略

(こうりゃく)がいよいよ本格的

(ほんかくてき)に動き出そうとしていたにゃあ!

第120話をお読みいただきありがとうございました!

みちゃーれの心の中の知的な考察と、外に漏れる

「にゃあ」のギャップが個人的にもの凄くお気に入りです(笑)。


魔術師長エルハルト様が、必死にみちゃーれの

「にゃあ」を深読みして冷や汗を流している姿、最高にシュールでしたね!


そして元々は猫だからこそ、ちっちゃくて丸いうさぎ萌ちゃんを「ちょいちょい」って突っつきたくなって

しまう猫の本能……


うずうずしているみちゃーれも、尻尾を触ろうとする萌ちゃんも両方可愛すぎます。


でも、さすがは精霊王。ピンクの本を開くための本当の対価が「萌ちゃんが心から安心すること」だと見抜き

最高の猫の手(アシスト)を貸してくれました!

「みちゃーれの『にゃあ』の威力が高すぎる!」

「魔術師長たちとの噛み合わなさが最高に笑った!」

と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や

【評価(★★★★★)】で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!次回の第121話からは、いよいよ本編に戻ります。みちゃーれのアシストを受けた

萌ちゃんが、ついにピンクの本を開くための

「ある行動」を起こします。どうぞお楽しみに!

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