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『第116話:引きこもり失敗! 3日目の変身に巻き込まれる私』

いつも応援ありがとうございます!

前話のラスト、自分の体の異変(にじ色の瞳と背中の

蝶々模様)に怯え、ベッドの下へと引きこもってしまった萌ちゃん。

ついに運命の「日替わり変身ループ・3日目の朝」を

迎えます!

待機してくれていたジント様やお兄ちゃんたちの様子もなんだか大変なことになっているようで……!?

前半のドタバタと、後半の「とある急展開」にぜひご注目ください!

薄暗いベッドの下で、私は小さく丸まっていた。床から伝わるひんやりとした空気。




前世の、あの息が詰まるような記憶から逃げ出すようにして潜り込んだこの空間は、今の私にとって唯一のシェルター

だった。



鏡の中で見た、虹色に揺らめく自分の瞳。




そして、背中に浮かび上がった不気味な蝶の紋様。




それらが何を意味しているのかを考えるだけで、胸の奥がキリキリと痛む。




(……このまま、ずっとここに隠れていられたらいいのに)




そんな現実逃避の願いを抱えたまま

私はいつの間にか、ベッドの下の固い床の上でうずくまるようにして眠りに落ちていた。



どれくらいの時間が経ったのだろう。




まだ微睡み(まどろみ)の中にいた私の耳に、部屋のすぐ近くから焦りきった

お兄ちゃんたちの声が飛び込んできた。



「萌ちゃん!? いないぞ、どこにいったんだ!?」




「ベッドの上にもいない! 部屋のどこにも姿がないぞ!」



「嘘だろ、昨日までそこにいたのに

まさか神隠しに……っ!?」




お兄ちゃんたちとジント様のパニック

寸前の声だ。



どうやら朝になって私がベッドにいないのを見て、部屋中を探し回っているらしい。



みんな、私がベッドの下の隙間に隠れていることには全く気づいていないようだ。



いつもならすぐに「きゅー」と鳴いて

居場所を教えるところだけれど、今の

私にはそんな余裕はなかった。




これ以上、朝からのカオスに巻き込まれたくない。



(お願いだから、私を見つけないでそのまま部屋を出ていって……!)




私は必死に長い耳を伏せ、ベッドの下のさらに奥、壁際へと体を縮めた。



お兄ちゃんたちがベッドのすぐ傍まで

やってきて、あちこちの棚やクローゼットをひっくり返す音が響く。



その時だった。



――ぼふんっ!!!ベッドの真上、部屋の中心で、激しい爆発音のような派手な煙の音が響き渡った。



「うわああああっ!?」



「な、なんだこれ!? 服が、服が裂ける――っ!」



「ちょ、ちょっと二人とも押さないで! 狭い、狭いって!」




さっきまでの子供の可愛い声ではない

野太い男たちの悲鳴が降ってくる。



その凄まじい大騒ぎに、私はベッドの

下でガバッと跳ね起きるようにして

隙間から部屋の様子を覗き込んだ。



激しく立ち込める白い煙。




そして、その煙の向こうから現れた人影を見て、私は思わず目を見張った。



なんと、そこにいたのは――元の、大人の姿に戻ったお兄ちゃんたちとジント様だった。



あのちんちくりんで可愛かった2日目のショタ姿はどこへやら、見慣れた凛々しく美しい大人のイケメンに変貌して

いる。



さっきの「ぼふん」は、彼らの身体が

急激に大人のサイズに膨らみ、サイズが合わなくなった子供服を破いた音だったのだ。



(あ、あれ? お兄ちゃんたちは元に戻ったの……?)




ベッドの下からそっと窺いながら、一瞬だけそう思った。




――だが、それは大きな間違いだった。




「な、なんだこの身体は……元に戻ったのか?」と、煙を払いながら自分の手を見つめるジント様。



その瞬間、彼の美しいプラチナブロンドの髪の間から、『ピコッ』と、もふもふした動物の耳が元気よく飛び出した。




(え……?)



呆然とする私をよそに、隣のアレクにい様が自分の身体を見下ろしながら声を上げる。



「ジント、服が破けてるぞ。……って

いうか、お前、その頭……」




困惑するアレクにい様の頭上には、これまた『ぴょこん』と、細長くて白いウサギの耳が生えていた。



大人の鋭い眼差しと、頭上のファンシーなウサギ耳のギャップが凄まじすぎて

ベッドの下の私の脳内処理が追いつかない。



さらに、その横のライダにい様の頭には、『ふにゃっ』とした、垂れ下がった犬の耳が乗っかっていた。



(戻ってない! 全然元に戻ってないじゃん!!)



体は大人、頭上はケモ耳。




3日目の変身ガチャは謎のハイブリッド仕様だった。




絵面がシュールすぎて、私は自分が

ベッドの下に引きこもって隠れている

ことも忘れ、お兄ちゃんたちの頭の上に全力で心の中でツッコミを入れた。




彼らはまだ自分の頭の異変に気づいて

おらず、お互いの頭を指さし合って固まっている。




「……ジント、お前、犬か狼の耳が生えてるぞ」


「アレク、君こそ頭の上に立派なウサギの耳があるが……」




「えっ!? 二人とも何言ってるの……って、ライダもお耳が垂れてるぅぅ!」




つられて3人は自分の頭を触り、その

「異物」の感触に動きを止めた。



「……ん? なんだこの柔らかい質感は……」



「痛っ!? 引っ張ったら痛いんだけど!?」



「ま、まさか……鏡を持ってきてくれ!」



大騒ぎしながら、3人は姿見の前へと

駆け込んでいった。



そして、そこに映る自分たちの姿を見た瞬間、凍りついた。



「な、なんだこれはぁぁぁーーっ!?」



ライダにい様の悲鳴が響き渡る。



「体は戻ったのに、なぜ耳だけが動物に……っ!?」



アレクにい様が、信じられないものを

見る目でウサギ耳をペシペシと叩いている。



叩くたびに耳が揺れていて、やっぱり

可愛い。



「ふむ。この姿で騎士団に赴くのは

少々、精神的な尊厳が失われるな……」



ジント様が、もふもふの耳をピクピク

させながら、大真面目な顔で考察している。



その真剣な顔と耳のギャップが本当に

ずるい。




ベッドの下からその様子をじーっと見つめていた私は、あまりのシュールさに

耐えきれず、ついつい吹き出しそうに

なってしまった。



「――大変よ! あなた、子供たちがまた変な声を出して――って、あら!?」



部屋の扉が再び開き、お母様とお父様が飛び込んできた。お父様が

「なんだその頭は!?」とお兄ちゃん

たちに驚愕する中、お母様は部屋のどこにも私がいないことに気づいて声を上げた。



「それより、萌ちゃんはどこ!? どこにも姿がないのよ!」



「えっ!? 母上、萌ちゃんは……」



お兄ちゃんたちも我に返り、再び部屋中をキョロキョロと見回し始める。




大人のイケメン3人が、頭の上のケモ耳をピコピコ、ぴょこぴょこと動かしながら、必死になって部屋の隅々を探している光景。



……ダメだ、面白すぎる。



(ぷっ……くくく……っ)



私は笑いをこらえるのに必死だった。




けれど、もふもふの小さな身体でプルプルと震えていたせいで、ベッドのシーツがわずかに揺れてしまった。



「――あ、いた!!」



鋭いウサギ耳を持つアレクにい様が

そのわずかな気配を逃さなかった。



バサリ、とベッドのシーツが乱暴にめくられ、床の隙間に光が差し込む。



「こんなところに隠れていたのか、萌!」



アレクにい様の手が伸びてきて

私はベッドの下からずるずると引っ張り出されてしまった。



私の引きこもり計画は、お兄ちゃんたちのケモ耳ドタバタに気を取られている

間に、完全に失敗に終わったのである。



「萌ちゃん! よかった、無事だったんだね!」



ジント様が私をそっと両手で抱き上げ

安心させたように微笑んだ。



大人の大きな手のひらに、すっぽりと

収まってしまうほど、今の私はちっちゃなうさぎだ。



お母様とお父様も一斉に駆け寄って

きて「萌ちゃん、無事でよかったわ!」と胸をなでおろす。



しかし、私を抱き上げたジント様の身体が、突然ピキリと凍りついた。



「ジント……? どうしたんだい?」



不思議そうに覗き込むお母様の声も

今のジント様には届いていないよう

だった。



ジント様は、息をすることすら忘れたかのような凄まじい緊迫感を漂わせ、私の顔を――私の「目」を、穴が開くほどに凝視している。



彼の頭の上の狼の耳が、恐怖を察知したかのようにペタリと後ろに伏せられた。



「……嘘だろ……。萌ちゃん、君の、その目……」



ジント様の引きつった声に、アレクにい様もライダにい様もハッとして私の顔を覗き込んだ。



そして、全員が言葉を失った。



昨日の夜まで、世界中の宝石を溶かし込んだように美しく、きらきらと七色に輝いていた私の瞳。



それが――まるでガラス玉のように

全く光を通さない『色のない瞳』へと

変わってしまっていた。



吸い込まれそうなほどに白く、無色透明に濁った、生気を感じられないその瞳。



私の視界はちゃんと見えているのに

外から見る私の目は、完全に色を失ってしまっていたのだ。




「萌……!? お前の目、何があったんだ!?」



アレクにい様が血相を変えて叫ぶ。



「嫌だ、萌ちゃん! 目が、色がないよ……っ! どうしちゃったの!?」




ライダにい様が垂れ耳を震わせながら

パニックを起こして泣きそうな声を上げる。



ご両親も、私のその「色のない瞳」を

見た瞬間、いつもの親バカ大騒ぎをする余裕すらなく、顔からサァッと血の気を引かせた。




「お医者様を……! すぐに国一番の医者と、高位の魔術師を呼びなさい!!」




お父様の悲痛な叫びが、部屋中に響き渡る。




(みんな、ごめんなさい……。でも

私、みんなの顔はちゃんと見えているよ……?)



「きゅーう、きゅきゅっ

(みんな、泣かないで、私は大丈夫だから)」




必死に前足を伸ばしてジント様の頬に触れ、いつもの可愛いウサギの鳴き声で

伝えようとするけれど、私の声はただただ虚しく響くだけだった。



この『色のない瞳』・『背中の蝶の模様』。



溢れ出した私の強大な魔力は、一体私の身体をどう変えようとしているの

だろう。



頭の上にケモ耳を生やしたお兄ちゃん

たちと、青ざめる両親。


ベットにおいてあるスイーツのレシピにの本もチカチカと点滅をしていた。


コメディだったはずの朝の空気は一変し、私の身体をめぐる、本当の

「異常事態」の幕が開けるのだった。


(第116話終わり)

第116話をお読みいただきありがとうございました!

引きこもり計画は一瞬で失敗してしまいましたが……

お兄ちゃんたちの3日目の姿、体はイケメンに戻ったのに頭の上だけケモ耳ってずるすぎますよね!

(アレクにい様のウサ耳をペシペシ叩く姿が個人的にお気に入りです笑)

しかし、ラストで萌ちゃんの瞳からにじ色が消え

まさかの無色透明に……!?

さらにはあのピンクのレシピ本がチカチカと光りだし、一気にシリアスな空気になってしまいました。

一体萌ちゃんの身に何が起きているのか、そしてレシピ本が意味するものとは――?面白いと思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や【評価(★★★★★)】

感想などいただけますと執筆の励みになります!

次回第117話もお楽しみに!

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