第108話:おじいちゃんから一転、若返りすぎて美少年になっちゃいました!?
いつも『社畜OLの葛木萌、猫を助けて異世界へ!』を応援いただきありがとうございます!前話では、魔力不安定のせいでイケメンたちが全員ヨボヨボのおじいちゃんになってしまうという、まさかの大惨事が発生しました。
今回は、なんとか無事に(?)安全な宿屋の部屋へと辿り着いたところからスタートします。早く元のカッコいい姿に戻るべく、白うさぎ姿の萌が特製のお菓子魔法に挑むのですが……。
お菓子魔法の「バグ」は、おじいちゃん化だけでは
終わらなかった!?おじいちゃん達の可愛い道中コントと合わせて、驚きの結末をどうぞお楽しみください!
「これ……ライダよ、わしの髭を踏むんじゃあないわい。踏むたびにわしの髭に足跡が着くじゃろう」
サンタクロースさながらの真っ白で立派な長い髭を蓄えたジント様が、カサカサの枯れた声でぷんぷんと怒っていた。
私の不安定な魔力によって、イケメンなお兄様とジント様はおじいちゃんに
なってしまったのだ。
ジント様の床まで伸びた白いお髭は
歩くたびにどうしても足元に広がってしまうため、後ろを歩くライダにい様に
何度も踏まれてしまっている。
「すまんのぉう……ジントやぁ、失礼だと思うが足腰が上手く動かんのじゃ」
真っ白なハゲ頭をペチペチと叩きながら、ライダにい様が申し訳なさそうに
腰を曲げる。
普段の逞しい騎士の面影はどこへやら
今のライダにい様は生まれたての小鹿のように膝をプルプルと激しく震わせていた。
「たしかにわかるぞよライダ、初めて歳をとったから動きや視界が悪くなるじゃ」
アレクにい様も深く深く頷きながら
ショボショボになった目をこする。
そう、三人はこれまでずっと最強の
イケメンとして生きてきた。だから
こそ、初めて歳をとったことで、体が
思うように動かないことや、視界が急激に狭くなったことに心底困惑していたのだ。
ちょっとした段差でもすぐ転びそうに
なるし、あちこちの筋肉が早くも悲鳴を上げていて、宿へと向かうだけでも力を合わせて大苦労をしていた。
(あわわわっ!? 私のわたあめは成功したのに、不安定に起こされた魔法のせいで、みんなをこんなにヨボヨボにさせちゃって本当にごめんなさいぃぃ!)
ジント様のコートの胸ポケットにすっぽり収まった私(白うさぎ姿)は、申し訳なさで長い耳をペタンと垂らす。
私の口からは
「きゅう、きゅ、きゅぅ……」という
儚いうさぎの鳴き声しか出ないけれど
足元からみちゃーれが
「みゃ〜お(萌、気にしちゃ駄目みゃ)」と優しく頭をすり寄せて一緒に
歩いてくれた。
そうして、お互いの老体を支え合い
たっぷり三十分かけて、私たちはほう
ほうの体で安全な宿屋の部屋へと滑り込んだのだった。
バタン、とアレクにい様が重々しく扉を閉めた瞬間、全員が
「どっこいしょーーーっ!」と床や椅子になだれ込む。
しかし、当の老人三人衆はというと――宿に着いた瞬間、なんだか様子がおかしくなった。
「おぉ……この宿屋の安物のお茶が
妙に五臓六腑に染み渡るのぅ、ジント」
「うむ、アレク。若い頃はこんな渋いお茶など飲まなかったが、老人になると
お茶の旨味がよく分かるわい。ズズズ……」
さっきまで髭を踏まれて怒っていた
ジント様も、今やすっかり縁側のおじいちゃんのようにアレクにい様と仲良く
お茶をすすっている。
「おいアレク、ジント、お茶菓子はないんかのぅ。萌ちゃん、おじいちゃんに何か甘いものを一口おくれんか? 孫の作ったお菓子なら、何でも美味しくいただくわい。ハハハ、げふん、げふんっ」
ライダにい様はすっかり「孫を溺愛するおじいちゃん」のテンションで私にデレデレと微笑みかけてきた。
(みんな、おじいちゃんライフに馴染むのが早すぎるよ! 一刻も早く元のカッコいいイケメンに戻さなきゃ!)
私は焦って、ジント様の胸ポケットの隣に置いてあった『生クリームみたいな
可愛い魔導書』に短い前足を乗せ、必死にページをめくった。
うさぎの姿のままでも、私の強い意思に反応して魔導書がピカリと輝く。脳内に直接、新しい解放レシピが流れ込んできた。
『おじいちゃん返上! ぷるぷる若返りの水信玄餅魔法!』
(これだ……っ! 水信玄餅なら、透明でプルプルで、水分補給にもちょうどいい!)
私はおじいちゃんたちの健康を願いながら、お部屋にあったガラスの器を借りて、最後の魔力を振り絞ってお菓子魔法を発動させた。
私の短い前足から放たれた淡いピンク色の光がガラスの器の中に降り注ぎ
モコモコとした霧が晴れると、そこにはまるで水晶のように美しく透き通った
『水信玄餅』が三人分、ぷるんぷるんと揺れながら完成していた。
「おぉ……なんじゃこの美しく輝くプルプルしたものは。一口いただくとしよう」
おじいちゃんたちはスプーンですくい
その透明な塊を口へと運んだ。ツルン
と喉を通った、その瞬間――。
「……っ!? なんじゃあ、この強烈な弾力と瑞々しさはっ!?」
「体の中から、生命力がブワァァァッと溢れ出してくるぞ……!?」
三人のおじいちゃんの身体から眩いばかりの光が溢れ出し、凄まじい奇跡が巻き起こる。
メキメキメキバキバキッ!!!
「う、うわああああっ!? 腰が、腰がまっすぐに伸びていくぅぅぅ!」
ライダにい様の曲がっていた腰が伸び……伸び……伸びすぎて、なぜか今度は身体全体がシュルシュルと縮み始めた。
さらに、真っ白だったライダにい様のツルツルのハゲ頭から、黒くて艶やかな美しい髪の毛が【フッサフッサ】ともの
すごい勢いで生えてくる!
いや、生えてくるのはいいけれど、なんだか髪の毛がめちゃくちゃ柔らかそうだ。
「あれ……? 声が高く……なって……え? 手の手の甲のシワが消えるどころか
手がすごく小さくなってないかい……?」
アレクにい様の手から深いシワが消え去り、女性も羨むような色白の、むちむちとした【小さな子供の手】へと変貌していく。
「ふふ、床まで伸びていた私の髭が、元通りに吸い込まれていくよ。……って、服が、服がぶかぶかだ……!」
ジント様も長い白髭が綺麗に消滅したものの、着ていた立派なコートがダボダボになり、床に引きずられてしまっている。
光が収まった部屋の中。そこに立っていたのは、元の20代のイケメン……
ではなく。クリクリとした大きな目に
フッサフッサでツヤツヤの美しい髪
そしてほっぺたがプルプルの、どう見ても【8歳くらいの超絶美少年
(ショタ)】へと若返りすぎてしまった三人だった。
(……って、若返りすぎて全員子供
(8歳)になってましたーーーっっっ!?!?)
うさぎの姿のまま、私は目の前の可愛
すぎる美少年トリオに開いた口が塞がらない。
8歳のアレクにい様、8歳のライダにい様、そして8歳のジント様。
全員、着ている大人の服がぶかぶかで、萌え袖どころか完全に服に溺れている
状態だ。
元の姿に戻り損ねた三人(8歳)は
お互いの小さくなった手やプルプルの
ほっぺを触り合いながら唖然としていたが、すぐに私の方へと視線を向けた。
中身は大人(しかも重度のシスコン)のままなので、その目はキラキラと爛々と輝いている。
「萌ちゃん、元に戻してくれてありがとう! ……でも、若返った僕たちの溢れるエネルギーを舐めないでね?」
8歳のアレクにい様が、ぶかぶかの服をはためかせながら、可愛いショタボイスで不敵に微笑む。
「おうよ! 体が軽くなって、さっきより動きやすいぞ! 覚悟しろよ萌ちゃん!
歳の離れたお兄ちゃんじゃなくなった分、遠慮なくモフモフしてやるー!」
8歳のライダにい様が、フッサフッサの髪を揺らしながら、短い手足をいっぱいに伸ばしてベッドの上の私に飛び込んできた。
「ふふ、私も混ぜてもらおう。体が小さくなったから、思う存分にぎゅうができるね?萌ちゃん」
8歳のジント様も、天使のような笑顔で私を両手で包み込もうと迫ってくる。
(ひゃ、ひゃあぁぁぁ! おじいちゃんから解放されたと思ったら、今度は元気
いっぱいの過保護な野生の美少年
(8歳)たちに囲まれちゃったよぉぉぉ!)
「みゃ〜(本当に大変みゃお……)」
と呆れるみちゃーれの視線を浴びながら、私はフッサフッサの髪の毛をした
可愛い美少年たちにぎゅーぎゅーに抱きしめられ、一晩中全力でモフモフされるのだった。
(第108話 完)
第108話、最後までお読みいただきありがとうございました!……はい、元に戻るどころか、若返りすぎて全員8歳の美少年になっちゃいましたーーーっっっ!!!
ツルツルハゲ頭からの、髪の毛【フッサフッサ】の
ツヤツヤ美少年への大変化、お楽しみいただけましたでしょうか(笑)。
ジント様の「わしの髭を踏むんじゃあないわい」というぷんぷんおじいちゃんモードからの、ぶかぶかの大人服に溺れる8歳児への落差。
そして中身は超過保護なシスコンのままなので、元気いっぱいになった三人に全力でモフモフされる白うさぎ萌の運命やいかに……!
次回、第109話「ぶかぶかお洋服の美少年たちと、うさぎ萌の次なる作戦(仮)」をお楽しみに!
「8歳ショタ化はご褒美すぎる!」「髪の毛フッサフッサになってよかった(笑)」と思ってくださった方は
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