『第99話 幻のスイーツ完成!初めてのマカロン実食!』
いつも応援ありがとうございます!前回、オーブンの中で綺麗に膨らんだマカロンの生地。異世界初の至高のスイーツがついに焼き上がります!第99話は、皆様お待ちかねの『実食回』です!あのお菓子部屋の大騒動で女性店員に深い傷を負わされ、萌の治療後もずっと眠り続けていた愛猫(?)のみちゃーれが、マカロンの甘い香りに誘われてついに大復活!まだ言葉はしゃべれないけれど、体いっぱいで「ばぶばぶ!」と大喜びする赤ちゃん萌ちゃん。丁寧に渦巻き状のクリームを挟んで完成したマカロンを前に、まだジント様へメラメラしていたお兄ちゃんたちも、萌ちゃんの必殺「あーん」で大変なことに――!?幸せと美味しさがぎゅっと詰まった第99話、どうぞお楽しみください!
チン、と魔導オーブンから軽やかな音が響いた。
「よし、焼き上がったね。萌ちゃん
扉を開けるよ」
ジント様がミトンをはめた手で重い鉄の扉を開けると、大台所の中に、それまで以上に濃厚で、香ばしく、暴力的なまでに甘い香りが爆発的に広がった。
その場にいた全員が、思わず
「はぅっ……」と息を呑んで胸をスーハースーハさせる。
ジント様が慎重に取り出した天板の上には、ピンク色の、ぷっくりと丸い
表面がツヤツヤに輝く生地が綺麗に並んでいた。
底の部分には、独特のギザギザとした
ふち――『ピエ』が見事に出来上がっている。
「ば、ばぶぅ……! あぅーっ、ばぶばぶーっ!」
私は短い両手を力いっぱいバタバタさせて、興奮のあまりよだれを溢しながら
大はしゃぎした。
(できた……! 大成功だよ……!!)
言葉はまだ喋れなくて「ばぶばぶ」しか言えないけれど、嬉しさは全身から溢れ出している。
前世で何度も失敗したマカロンが
この異世界で、最高級の材料とみんなの協力によって完璧な姿で焼き上がったのだ。
そんな、部屋中に漂う素晴らしい焼き
上がりの香りに誘われるようにして――。
キッチンの入り口から、ふよふよと頼りなく浮き上がって近づいてくる、小さな白い影があった。
「にゃあ、にゃああ……(いい香りがするにゃあ、萌、お菓子作ってるの〜?
僕も食べたいにゃ……)」
「あ……ぅっ、みゃー……!」
眠たそうに前足でゴシゴシと目を擦りながらやってきたのは、私の大切な相棒、みちゃーれだった。
あの大騒動が起きたお菓子部屋で、暴走した女性店員によって大きな怪我を負わされてしまったみちゃーれ。
私の力によって傷自体はすぐに治療されたものの、小さな体に受けたダメージは深く、回復にはどうしても時間が必要で、あれからずっとリビングのベッドで眠り続けていたのだ。
「ばぶぅ!」と私が短い手を伸ばすと
みちゃーれはふよふよと私の頭の上まで登ってきて、いつもの定位置にちょこんと乗っかった。
そして、目の前に並ぶ焼き立てのマカロンの生地をじーーっと見つめながら
じゅるりとヨダレを垂らして待っている。
(もう、相変わらず食いしん坊なんだから! でも……本当によかったぁ……!)
頭の上に乗る温かい重みと、懐かしい
ヨダレの気配(笑)に、私の胸はホッと安堵でいっぱいになった。
ライダにい様もアレクにい様もジント様も、愛されマスコットの復活に
「おお、目が覚めたか!」
「マカロンの香りが呼び覚ましたんだね」と嬉しそうに目を細めている。
「よし、みちゃーれの復活祝いも兼ねて、最後の仕上げをしよう!」
話を戻して、私はジント様に手伝ってもらいながら、マカロンを組み立てていく。
あらかじめ作っておいた特製の
『ホワイトチョコレートと木苺のクリーム』の絞り袋をジント様に持ってもらい、冷ました生地の裏側へ、中心から
外側に向かって、綺麗な『うずまき状』にペーストを絞り出していく。
くるくるくる、ぽん。薄いピンク色の
クリームが綺麗なグラデーションの渦を描く。
全ての生地にクリームを絞り終わったら、上からもう一枚のマカロンの生地を、優しく、ふわりと乗せてサンドして――ついに完成だ。
大理石のトレイの上に並べられたのは
手のひらにすっぽり収まるサイズの
コロンとしていて、宝石のように愛らしいピンク色のマカロンたち。
「あうー! ばぶばぶーっ!
(みんな、マカロンの完成だよーーっ!)」
私が短い両手をあげてバンザイすると
ライダにい様とアレクにい様が、待ってましたとばかりにゴクリと喉を鳴らした。
だが、二人の目の奥には、まだジント様への対抗心の炎が静かにメラメラと燃え盛っている。
「ふん、見た目は確かに可愛らしいが……大事なのは味だ。ジントに良いところを持っていかれたままで終わるわけにはいかんからな!」
「そうだね。いくら外見が美しくとも
僕たちの舌を満足させられなければ
この勝負は僕たちの勝ち……っ」
まだ口をとんがらせてブツブツ言っているお兄ちゃんたち。本当に往生際が悪いんだから!私はふふっと笑うと、トレイから一番大きなマカロンを二つ、短い
両手にそれぞれ乗せて、お兄ちゃんたちの手のひらにちょこり置き小さな手でお兄様の口元に持って行った。
「らいらにい様、あれくにい様
あーーーん!」
「「ぶふっっっ!?!?!?」」
お兄ちゃんたちの顔が一瞬にして真っ赤に染まった。
まさか萌ちゃんから、直接「あーん」
してもらえるなんて夢にも思っていな
かったらしい。
さっきまでのメラメラとした険しい顔はどこへやら、二人は完全に魂が抜けたような顔になり、されるがままに大きな口を「あ、あう……」と開けた。
私はその口めがけて、ピンク色のマカロンをぽいっと放り込んだ。
ついでに、頭の上で待機していたみちゃーれの口にも、小さくちぎったマカロンをポンと放り込む。
次の瞬間、全員の動きがピタッと止まった。
じわじわと咀嚼を始める。
サクッ、ジュワッ、とろ〜ん……。
お兄ちゃんたちの脳内に、これまでに
経験したことのない衝撃が走り抜けた。
「な、なんだこれは……ッ!? 歯を触れさせた瞬間はサクッと儚く崩れたというのに、次の瞬間には、信じられないほどしっとりとした生地が舌の上で暴れだしたぞ……!?」
「アーモンドの香ばしいコクと星屑の
白砂糖の濃厚な甘み……! それだけじゃない、中に渦巻く木苺のキュンとする
ような酸味が、全体の甘さを引き締めて、無限に食べられる悪魔の味に変えているんだ……!」
ライダにい様は美味さのあまり頭を抱えてのけぞり、アレクにい様は衝撃のあまり眼鏡をずり落としてガタガタと震えている。
頭の上のみちゃーれも
「みゃあぁぁん……!(美味すぎて天国が見えるにゃあ……)」と幸せそうに
身悶えしていた。
二人の目の奥で燃えていたジント様への嫉妬の炎は、マカロンの圧倒的な美味さと、萌ちゃんの「あーん」の破壊力に
よって、一瞬にして完全に鎮火されてしまったのだった。
「萌ちゃん、私にも一口、貰えるかな?」
ジント様が少しだけ羨ましそうな顔を
して、私の前に屈み込んだ。
「あうー!(ジント様も、あーーん!)」
私がもう一つのマカロンをジント様の
口に運ぶと、ジント様は嬉しそうにそれをパクリと食べた。
いつも冷静沈着な公爵閣下が、マカロンを噛み締めた瞬間、ふにゃりと蕩
(とろ)けるような、見たこともない
幸せそうな笑顔を浮かべた。
「……素晴らしいよ、萌ちゃん。これはお菓子という名の奇跡だ。王宮の最高料理長が作るどんな高級デザートも、このマカロンの足元にも及ばない」
「ばぶーっ!(えへへ、みんな喜んでくれてよかったーっ!)」大成功だ。
みちゃーれの復活を祝いながら、みんなで顔を見合わせて、美味しいマカロンを夢中で頬張る。
しかし、その幸せな空間を破るように
キッチンの重い扉の向こうから、何やらガサゴソ、ザワザワとした不穏な音が聞こえてきた。
「おい……中からとんでもねえ匂いがしてくるぞ……」
「なんだこの甘くて香ばしい香りは!? 嗅いだだけでよだれが止らん!」
「頼む、一口だけでいいから中を覗かせてくれーー!」
マカロンが焼き上がるあまりにも甘く
魅惑的な香りが、キッチンの隙間から
ホテルの廊下へと完全に漏れ出していたらしい。
匂いに釣られたホテルの料理長や
従業員、さらには他のお客さんたちまでが、大台所のドアの前に大集結してしまっていたのだ。
(あちゃー! 飯テロ、いや、お菓子テロが外まで広がっちゃったみたい……!?)
ドアが今にも群衆の勢いでぶち破られそうになるのを、私はマカロンをモグモグさせながら、ちょっぴり焦った顔で見つめるのだった。
(第99話 完)
第99話をお読みいただき、ありがとうございました!赤ちゃんらしく「ばぶばぶ!」と体いっぱいで喜びを表現する萌ちゃん、最高に可愛かったですね!そして、みちゃーれがマカロンの良い香りに誘われてついに大復活! 萌ちゃんの頭の上でヨダレを垂らすいつもの微笑ましい姿が戻ってきて本当によかったです。萌ちゃん直伝の綺麗なうずまきクリームを挟んだマカロンは、ジント様への対抗心を燃やすお兄ちゃんたちを一瞬で骨抜きにし、最強の公爵閣下までふにゃふにゃの笑顔にしてしまうほどの悪魔的美味しさ!しかし、そのあまりにも美味しそうな香りが調理場を飛び出し、ホテルの外は大騒ぎに……!?
いよいよ次回は……記念すべき【第100話】!!!
いつも作品をここまで読み進め、温かく応援してくださった読者の皆様のおかげで、ついに次話で大台の『第100話』を迎えることができます! 本当にありがとうございます!第100話という特別な節目を最高のお祭りにするために、ぜひページ下部から、・ブックマーク登録・評価(☆☆☆☆☆を★★★★★に!)をよろしくお願いいたします!




