パンツない
左目にコンタクトを入れたら、両目がよく見えるようになったが、一瞬世界がぐらついた。左右の視力が違うのは今に始まった事ではないが、慣れない見え方というのだろうか。どうも両目の焦点を合わせづらい。慣れだと思うが。
早速パソコンを持ってデイルームに行き、新聞を読んだ。やはりコンタクトを入れた左目の方が、右目よりも遠くも近くも良く見える。やっぱりそうか。手術の前に先生から、コンタクトのようには見えないと言われていたのだ。ただ、私が自分で調べたところによると、白内障の手術の後1ヶ月くらいして視力が定着するという事なので、まだこれで決定ではないのかもしれない。
部屋に戻ってスマホなどを見て過ごしていると、看護師さんが来た。そして、シャワーと洗髪はどうしますかと聞く。
え?手術翌日はダメって言われたけど。最初の説明の時に。でも、今日は大丈夫だと、書類を確認して言う看護師さん。まあ、その方がいいよ、うん。首から下のシャワーと、上を向いて洗ってもらう洗髪は今日からOKだそうだ。私が入院して最初にもらった書類には、両方書いてあったのだ。あれはよく分からないぞ。
シャワーを夜、予約した。洗髪は予約制ではないという事だった。空いている時にとか何とか。呼びに来るのを部屋で待っていればいいのだな。しかし……パンツがない。もうシャワーはできないと思ったから、持って来た二つ目を夕べ履いてしまったのだ。帰る時の服と靴下はあるが、パジャマはもうない。一昨日少し着ていた暑い感じの前開きパジャマならあるが。困ったな。洗濯をするか?いや、洗剤を持って来ていないぞ。
一応洗濯機を見に行った。洗剤が売っている様子はなかった。もちろん自動投入でもない。売店に行けば売っているかもしれないが、面倒だな。やっぱりいいか。シャワーできなかったと思えば。そうしたらそのままの服だったのだ。
午後、いきなりおじさんがカーテンから顔を出した。
「シャンプー行きましょう。」
えー、おじさんか。おばさんだとばかり思っていたのに。でも仕方ない。シャンプー台まで付いて行った。強面のおじさんだったが、意外と優しかった。自分のシャンプーとトリートメントを持って行って渡し、洗ってもらった。タオルでガッツリ顔を覆うのかと思ったら、美容院と同じように薄い紙を額に貼るだけだった。シャンプーが右目のすぐ横に飛んだりして、危ないと思ったが。持って行ったシャンプーの泡立ちが良くなくて、そこは美容院のようにはいかなかったけれど、洗ってもらった後はすっきりして気持ちが良かった。
3時過ぎに視力検査に呼ばれた。1階へ行って外来の検査室で検査をした。右目だけの検査だったが、おー、良く見える。今まで右は全て三重に見えていたから、もう別世界。ただ、レンズを足した方がより小さい字が見えた。どのくらいの視力だかは言ってもらえなかったけれど、少なくとも1.5とか1.2とかは見えていない。せいぜい1.0か。まだ視力が変わるから、言わないのかもしれない。いや、聞かれなければ言わないというスタンスかもしれない。ちょっと横柄な感じの人だったから。
部屋に戻った。もう、夕飯までやる事はない。暇だ。本を読んだりもしたが、やっぱり右目がちょっと痛い気がするので少しだけにした。それでは、やっぱり小説のネタを考えるしかない。夕べは考えようとしてあまり進まない内に眠ってしまったが、ここではじっくり考えて、思いついたのでメモをした。そして、なんと一作品のプロットが完成した!あ、いや。完璧なプロットを作る人から見たら笑っちゃうほどの物だと思うが、一応あらすじを作ったのだ。これでもう、いつでも小説を書き始める事が出来る。
しかし、小説でもエッセイでも、最初に書き始める時というのはエネルギーが要るものだ。なので、まだちょっとだるくて本調子ではない体調と、この落ち着かない環境では、なかなか新たに小説やエッセイを書こうという気になれない。何度か書こうと思ったのだ。暇があるなんて、滅多にない。いつも書く時間がもう少し取れれば、と思っているのだ。でも、そう思い通りにはいかないのであった。




