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白内障と緑内障の手術  作者: 夏目 碧央


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靴はどこへ

 お昼頃部屋に戻ると、ベッドと棚がさっきと逆になっていた。ちゃんと電気やナースコールのボタンは、ベッドの真上になっていた。

 お昼ご飯を食べ、本を読んだりしていた。それにしても枕が小さい為、ベッドに寄りかかって本を読む時に背中が痛い。もっと大きな枕だったら問題ないのだが。この、ベッドのリクライニングした状態での手元の明かり問題は何とかならないものだろうか。横になった状態で頭上に電気が点いてもなんの意味もない。寝た状態で本を読もうとするとうつ伏せか?あれは苦手だ。すぐに腕や肩、首が痛くなる。腰も痛くなる。

 3時に目薬を点すので、それまでは部屋にいようと思った。目薬の後はまたパソコンをやりに行ったが、どうも見えにくくて小説を書く気にはなれず、ちょっとこのエッセイを書いたけれど、こりゃダメだ。両目の視力が揃ったら書き直そうと思った。

 部屋に戻り、音楽を聴きながら新聞に載っていた数独を解いたりしていた。同じ部屋にはもう1人の患者さんがいたが、男の人がお見舞いに来ていて、一緒に何かを食べている様子だった。そして、

「この部屋2人しかいないし。」

というような事を言っていた。あれ、私の隣の窓際にもいるよね。私が入って3人ではないのか。というか、病室にお見舞いの人は入ってはいけないと言われたのに。

 その後夕飯を食べ、スマホでNHKのニュースを観ていた。その時、私はイヤホンをしているのだが、部屋の中から「はあはあ」という苦しそうな息遣いが聞こえた。怖い。え、さっき元気そうに話していた人だよな。点滴をしていたみたいだから、気分が悪くなったのだろうか。まさか筋トレしているわけじゃないよな。ちょうど、筋トレをしているような息遣いだったのだ。看護師さんを呼ぶべきか?でも本人がナースコールすればいいのだし。でももし、ナースコールも出来ないくらい苦しい状態だったら?けどなあ、助けを呼ぶほどではないから呼ばないだけかもしれないし。助けて、とか言われたら呼ぶけど……。

 と、悩んでいる内に息遣いは消えた。大きなため息をついたりしていて、それほど具合は悪くなさそうだった。その後看護師さんが回ってきて、

「ご飯食べられましたか?」

と聞かれたのだが、その同室者はあまり食べられなかったと言っていた。その理由を、

「色々食べちゃってたから。ごめんなさい。」

と言っていた。ああ、さっき男の人と何か食べていたものね。

 それから8時に予約してもらったシャワーに行き、パソコンで日記を書き、9時頃に部屋に戻ってきた。この後は、消灯までスマホで大河ドラマを観て寝ようと思った。

 45分の大河ドラマを快適に観る為に、体勢を整えた。まずベッドをリクライニングにして座る。それから、いつもベッドの横に置いてあったテーブルをベッドの上に90度回転させた。病院のテーブルは片側だけが固定されていて、くるりと回せばベッドに寝た状態(リクライニングした状態)で使える。テーブルの上にスマホを置けば見やすい。いい感じだ。因みに、私は今スマホにリングを着けていて、スタンドがなくても好きな角度で立たせることが出来るのだ。

 大河ドラマを観終わり、テーブルを元に戻したところで、靴がない事に気づいた。ベッド脇に揃えて置いてあった靴が。ベッドの下をちょっと覗いてもない。だが、誰も入ってきていないのに盗まれるわけがない。ちょっと怖い。いやいや、よく考えよう。どうしてなくなったのか。テーブルを移動させたからだよな。テーブルを90度回すとどうなる?

 あ……そういう事か。テーブルの支柱にはテーブルと平行に棒が床に沿って伸びている。横から見るとコの字型というか。テーブルを90度回すと、その床に付いている棒も同じように回る。そこに置いてあった靴をくるりと押して、ベッドの下に送るのだ。ベッドの下の奥を覗いた。あった。ベッドの真ん中に!

 靴がないのに床に足を着かなければならないのは残念。だが、そんな事を言っている場合ではないくらい、遠い。手が届かない。ベッドの足元の方に回って手を伸ばしても無理。どうしよう。何か棒があればいいのだが、ない。這いつくばるようにして、必死に腕を伸ばして引き寄せた。顔が床に着きそうだった。髪の毛が床に着かないように必死に片手で押さえて。バカだ。というか、マジ笑える。

 それにしても、隣のベッドには人がいるはずなのに、全く物音がしない。どんだけじっとしているのだろう。それもまた不気味だが、静かなのはありがたい。私も静かにしないと。でもついガサゴソとやってしまう。早く寝よう。


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