表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤独が好きな結界使いは独りじゃない  作者: Mです。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/3

第二話

 「ペットとして、紛れ込めば平気であろう……?」


 「学校にペットを連れて行けるかッ」

 白い髪の同じ学生姿の魔女……ミリス。

 彼女の本当の正体はわからないが……

 訳あっての一人暮らしの俺の部屋にまでついてくると……

 実際、見たことはなかったが、あの学校のクラスメイトではなかったらしく、その姿を偽ることのできる能力がある魔女は、ふわふわの白い毛の空飛ぶトカゲ……小竜に姿を変えるとそう俺と行動を共にする提案をする。


 「しかも、そんな伝説上の生物……一瞬でどこかの研究所に誘拐されるぞっ」


 「僕がそんな、簡単に人間ごときに捕まると思うのかい?」


 「自分には戦う力が無いとか言っていたばかりだろ……」


 「そこは、俺が守るとか……言えない訳かい君は……」

 ぱたぱたと白いトカゲが飛びながら小さなてのひらを肩の横でひろげ、やれやれと言う。



 「なぜ、会ったばかりの謎の生物を命がけでまもらないとならない……」


 「まぁ、君はその能力に目覚めた以上、これからも厄介ごとに巻き込まれる訳だが……」


 「……さらりと言うなよ」


 「そんな君に僕が必要だという訳だ……」


 「それじゃ、そう思えるような何かをしてくれよ」


 「やれやれ……文句ばかりだね……」

 「ともあれ、お腹が空いたよ……まずは腹ごしらえとでもいこうじゃないか」


 「おまえが俺の晩飯を半分食ったばかりだろ……」


 「僕は食べ盛りの小竜だよ、あんな肉まん一つで満腹になると思うのかい?」


 「いったい……おまえはどっちの姿が本当なんだ……それともまた別なのか?」


 「僕を可愛い小竜だからと怒らせないことだね……君くらいの人間、ぺろりと食べるんだよ」


 「俺の頭くらいの大きさの姿で怖いことを言わないでくれ……」

 そんなやり取りをしながら、俺は結局……自分でできる簡単なモノを作ると二人で食べた。




 *  *  *



 翌日の学校……


 ホームルームを終え……女性の教師が教室の外へと出て行く。

 机の横のフックの部分にかけていたバック。

 そこから、白いフワフワした何者かがいつの間にか顔をひょっこりと出している。


 まぁ……少しだけバックのチャックを開けていたとはいえ……息苦しいだろうが、それを承知で着いてきたのだと思っていたが……



 「え……なに、それ……ぬいぐるみ?かわいいんだけどっ」

 周りの女子がそれを見て騒ぎ始める。


 俺は顔を青ざめながら……懸命に弁解の言葉を探す。


 「え……なになに……」

 女子が集まり始め……


 「ちっ……水無瀬……てめぇ、邪魔ッ」

 ガンッと俺の後ろの席を蹴る。


 黒髪の黒縁の丸眼鏡の女子は……無表情に机の上に頭を乗せるようにスマホをいじっていたが……机がずれ、一緒に机の上にのっていた雑誌が落ちる。


 「え……水無瀬、何か落ちたよ……え、イケメンじゃん……これ、水無瀬の推し?」

 ぐしゃりとその雑誌の表紙を踏みながら女子が尋ねる。


 「やめてやれよ……だってそれ人じゃねーじゃん」


 「Vチューバーだっけ……顔に自信のないやつがなんか絵の皮かぶっていきってんだろ」



 「やめろよっ」

 俺は小さくそう周りに言う。


 一瞬……無表情にまるで自分がそこに存在していない様に周りに無視を決め込んでいた水無瀬が瞳を俺に向けるがすぐに元に戻す。


 「人の好きなモノをそうやって馬鹿にするみたいにいじるなよ……」


 「えっ……なに、なに水無瀬なんて庇ってんのおまえっ」


 「なに、自分も男のくせにかわいいぬいぐるみだいすきだから馬鹿にすんなってこと?」

 きゃーきゃーと周りの女子共が余計に勢いずく……


 「どうでもいいから……足、その足どけろ……本、踏んでるって」


 「あーー、きっも……陰キャ同士宜しくやってろ……」

 ぞろぞろと女子たちが自分の席に戻っていく……


 「ごめん……巻き込んじゃって……」

 俺は雑誌を拾い上げ、俺の事も無視し続ける彼女の机の上に表紙を軽くほろって雑誌を置くと前を向き直す。


 「はぁーあ……また外れた」

 そう彼女は俺の背後でそう呟き……


 「ほっんと……ついてない……」

 己の不運を呪うように……

 ガラッと椅子の脚と床がこすれる音をたてるように椅子を後ろに後退させるように立ち上がると……


 スマホと丸眼鏡を外して……机の上に置く。



 「今……きもって言ったのおまえ?」

 水無瀬は眼鏡を外した光の宿っていない瞳をギロリと一人の女子に向けると……


 その場で加速するように椅子に座る女の前までかけよると……


 素人とは思えない動きでその場で飛び上ると、突き出した右足の上履きの裏側でその女子の胸板あたりに叩き込み……椅子の上から隣の机に激突するほど突き飛ばす。


 今の流れにどこに沸点があったのかはわからないが……教室が完全に沈黙している中で水無瀬は自分の机へと戻る。



 *  *  *



 「おいっ……水無瀬ー面かせよっ」

 放課後……俺は余計なものがカバンの中に入ってくることを迷惑そうにする小竜を無視しながら参考書を詰め込んでいると……後ろの席で数名の女子が水無瀬を取り囲んでいる。


 水無瀬は黙ってその女子たちについて行く。


 机にはソシャゲの画面を開いたままのスマホが乗っかていて……

 10連を引いた画面は……レアという名の、一番価値の低いRという文字が10個並んで居る。


 「ほんと……不運だな……」

 俺はそれを眺めながら……当然、責任を感じている。

 事の引き金は俺であり……俺も彼女も犠牲者だ。


 そう……俺についてきたミリスという名の小竜を見る。


 「おい……助けにいくつもりか?」

 自分の時のように正義感で、顔をつっこむつもりかといつの間にか女子トイレの前で俺の隣にいるシュウが言う。


 「さすがに……女子トイレに突入するのはまずいだろ……」

 シュウが今にも飛び込みそうな俺を見て言う。


 「なぁ……ミリス……ミリスちゃんっ!!」

 今になって、きっちりぬいぐるみのふりを決め込む魔女にいら立ちを覚える。


 「先生呼んでくるしかないんじゃね?」



 *  *  *



 「ぎゃははははっ」

 青いトイレ掃除ようのバケツに組んであった水を目の前の女子に浴びせて、何がそんなに楽しいのか大笑いしている女子。


 水の重さで……かけていた眼鏡が少しずり落ち……制服がびしょびしょに……黒い短い髪から水を滴らせながら……つまらなそうにどこかを見つめている。


 「おいっ……水無瀬、どうしたよ……さっきあたしを蹴った勢いわよぉ……あんなにイキってたのに、あたしらを目の前にした瞬間、ビビっちゃってんじゃねーの」


 「ふっ」

 仲間を引き連れた時点でイキりはじめた女を見て思わず笑ってしまった顔を隠す様に顔を伏せる。


 「うらーーーっ」

 仕返しとばかりに……ふりあげた足で水無瀬の身体を蹴り飛ばす。



 *  *  *



 ギィと女子トイレのドアが開くと……

 一人の女子生徒が出てくる。


 「なに……無月くん……覗き?」

 びしょびしょに濡れている水無瀬が俺を見る。


 「おい……大丈夫か……先生に……」


 「ううん……別に何かあったわけじゃない……私が《《不運》》ってだけ……無月くんも私には近寄らない方がいいよ……私の能力ふうんに巻き込まれるから……



 ひたひたと……水を滴らせながら教室の方へと歩いていく。


 「おい……」


 「あぁ……」

 彼女の後姿にはうっすらと薄い水色のオーラ……魔力が残っている。


 「やれやれ……早くも三人目の能力者とは……」


 「うぉっ……ぬいぐるみが喋った」


 「ミリスちゃんだよ……シュウは俺が本当にぬいぐるみを持ってきたとでも思ってたのか?」


 「え……あ……あぁ……人にはいろんな趣味があってもいいよな……」


 「だからちげーよっ……って……水無瀬を追わないとっ」




 ガラリッと教室のドアを開くと……

 俺たちを待っていたというように……窓際の夕日の光を背に水無瀬が立っている。



 「ねぇ……トウカくん……私ってすごく不運なんだ……」

 余り話したことがなかったこともあり呼び方が変わっているのに気になることはなかったが……


 「あぁ……よくさ、恋愛ゲームとかであるじゃない……何か好感度あがっていくと……呼び方がどんどん変わってくみたいな……」

 どこかで俺は彼女の好感度をあげていたのか……彼女はそう言いながら……


 「見たんでしょ……」

 彼女はスマホに目を落とし……自分の不運を……そのガチャ運の無さのことを言っているのか……それとも、さっきの後姿……魔力の残影を言っているのか……


 「私も見たんだ……昨日……ふたり、あんな夜にさ浜辺でなにしてたの?」


 「にしし……さて、彼女は敵か味方か……」

 ミリスがいつの間にか、女子高生に姿を変え……白い髪、黒いマントと黒いとんがり帽子を被って俺の背後に立っている。


 「水無瀬……ナギサ……もちろん、知ってくれてると思うけど……」

 俺は思わず生唾を飲み込みながら……軽く頷く。


 とんとんと右足のつまさきを立て、ぴょんぴょんと小さく飛び跳ねる。

 まるで、軽い準備運動をするように……

 眼鏡を自分の席に綺麗に畳むと……


 こちらに加速をつけ走ってくる。


 俺は咄嗟に防御魔力を両手に巻き付けると顔の前にクロスさせた両腕でそれを受け止める。


 「あっ……スカートの中はスパッツ履いてるよ?かわせないふりしてスカートの中覗こうとしても無駄だから……」

 「まぁ、私のぱんつなんて需要ないだろうけど……一応、好きな人以外には見せたくないんだ……」


 「おい……いきなり襲い掛かってきて何言ってんだよっ」


 「少し前に……トウカくんより先に、この能力について私に教えてくれた人……が言ってたんだ……自分以外は信じるなって……まぁ、もちろん……そいつのことを信じた訳じゃないけどさ……どっちが正しいか……なんてまだわからないし……」

 「だったらさぁーーっ」

 素人とは思えない動き……蹴り技を次々と繰り出してくる。


 「私は不運だから……気を付けてね……巻き込まれちゃうかも……」

 パリーンと二階の教室の窓が突然割れる。


 しかも一枚……綺麗に砕けている。


 思わずカウンターで出していた俺のパンチ……それを回避した水無瀬。

 後ろにバックステップした彼女の足元にはいつの間にか水たまりがあり……

 つるりと足元を取られるように……


 「うわっ」

 そのまま彼女が割れた窓から身体が教室の外に落ちそうになる。


 「おいっ」

 俺は思わず手を伸ばすと……まるで彼女は待っていたように俺の手首を掴むと……

 彼女と一緒に二階の教室から落下する。


 「トウカッ!!」

 シュウが心配そうに窓から身を乗り出す様に覗き込む。


 「くっ」

 俺は透明な板を丁度下にあった自転車置き場の屋根の上に結界の板を作るとそこに水無瀬の身体を抱えるように落下し……勢い余るように自転車置き場の屋根に転がり落ちる。


 「わっ」

 「きゃっ……人が落ちてきた?」


 お互いに屋根の下に着地し、そんな俺たちを見て近くに居た生徒が叫ぶような声で騒ぎ出す。


 「……大丈夫か、お前ら……おい、おまえ……火四島ひしじまッおまえの仕業かっ」

 その場に居た体育会系の男子教師が窓から覗くシュウの姿を見上げ叫ぶ。


 「いっ!!ちがっちがうってっ!!お……おい、トウカ……大丈夫なのかっ」

 心配そうに叫ぶシュウを他所に俺と水無瀬は、注目が外れてるうちに学園の中に走る。



 「おいっ……水無瀬、何考えて……」


 「トウカ……ナギサ、私の名前……」

 いつの間にか呼び捨てになっている水無瀬が俺に名前で呼べとでも言うように……


 「私がそう呼んでるのにトウカは苗字で呼ぶのって不公平だと思う」


 「だから……こんな敵対しながらする会話じゃないだろっ」


 激しい蹴り技を繰り出し、生徒の残っていない廊下で俺は追い詰められていく。



 *  *  *


 「なぁ……魔女……いったいどうなって……」


 「君の時と一緒だよ……」

 追ってきた教師から身を隠しながら、シュウがミリスへと尋ねる。


 「俺の時と……?」


 「やはり……記憶が無いのか……君は初めからトウカに敵意も無く、拳を向けたのかい?」

 そう言われ、シュウが不思議そうに自分の右の手のひらを見ている。


 「そういや……なんか能力を解放して、トウカの姿を見かけたら……」


 「()()()()能力者が居るってことさ……」


 「君……誰かからか、この能力について話を聞いてはいないかい?」

 「一種の催眠だよ……本気で殺し合いをさせようってほど強力なものではないみたいだけどね……何が目的なのか……なんて、僕の言える台詞じゃないのかもしれないけどね」


 「……そういえば……あれ……誰だっけか」

 ぼんやり何かを思い出したシュウはすぐに忘れたように言う。



 *  *  *



 カキーンとバットが爽快にボールを弾いた音が響く。

 放課後、部活も始まり……野球部がグランドで活動している音が聞こえる。


 「ねぇ……トウカはさ……なんかソシャゲってやってる……ねぇ……ガチャってまぢ理不尽……悪い文明だと思わない?」


 「……いや、少しくらいはやったことはあるけど……そこまではまったことは」


 「聞いてよ……この間、120連でようやく最高レア出てさ……そっからまた今、90連……すり抜けすらなし……まぢ引退考えるわ」


 「確率ってのは収束するって言うだろ?単にさ……調子の良かった時の記憶が曖昧なだけでさ……」


 「あーないない、あれ……嘘、嘘っぱち……最高レアが4%って言われてる中で引いた数を確立計算したら完全に破綻してるから……やっぱ私って世界一不運なのよ……無償石全部とかして課金してもさ……でなかった時の自分の運の無さ……本当に呪いたくなるわ……付き合ってくれる……私の八つ当たり」


 「悪いけど……それは不運じゃないだろ……財布を落としてなくしたってならそりゃ、運が悪かったなと慰めてやるけど……ギャンブルのようなものにお金継ぎ込んだってならそれは自分のお金管理の問題だ……」


 「あー、それ言っちゃう?それはマイナス発言だ……トウカ()()

 そう、くん付けに格下げされ、蹴りを何度も繰り出してくる。


 不運……彼女はそう言っていた能力……

 突然割れたガラス……


 カキーンというバットがボールを弾く音がする。


 蹴りに気を取られていると……


 パリーンッ俺のすぐ横のガラスが割れ……ガラスを割った野球ボールが俺の頭を目掛け飛んでくる。


 透明な板が間一髪でそれを受け止めると……ボールが破裂するように飛び散る。


 破裂するほどの打球?直撃していたら……ちょっとぞっとする。

 この能力、魔力を得てから打たれ強さ、傷の回復も早くなった気はするが……


 「ほら……不運……私の近くに居たら巻き込まれるんだよ」

 確かに……そうならないように考え、部活をする場所を決めているだろう……

 そんな、考慮されていたのにも関わらず校舎の中へと飛んできた打球……


 不運……彼女の言う不運。

 ソシャゲで最高レアを引けたい程度……

 それが……能力……?


 気が付くと……床が少し濡れている。

 目の前にはだいぶ乾いたといっても先ほどまでずぶぬれだったナギサ……


 床に水が零れていてもおかしくはない……


 だが……濡れているのは……俺の横。


 俺は横に張っている防御結界の透明な板を見る。


 ぴちゃ、ぴちゃと水の滴る音が聞こえる。


 「なぁ……ナギサ……お前、本当に不運なのか?」

 「あ……能力の……ほうな?」

 俺は……目の前の不幸女子へと尋ねる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ