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孤独が好きな結界使いは独りじゃない  作者: Mです。


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第一話

 放課後、酷く退屈な学校行事がようやく終わった。

 人生に一度しかない青春を謳歌することなく……大人のちになってから公開するとは知らずに……


 だが、一つ言っておこう……

 俺の人生など安心と安全だけで構築されている。


 俺の人生は防御にステータスを全振りしている。

 一人、自分の席の必要な参考書をカバンに詰め込みながら、脳内で自分だれに向けているのかもわからない言い訳を続ける。


 窓際の前から三番目の席……

 その後ろには、放課後なのに席に座ったまま、ブツブツと何かを呟きながらスマホをいじっている黒髪、肩より短い後ろ髪が外ハネした、地味な黒縁の丸眼鏡のクラスメイト……恐らく、ソシャゲをやっているのだろう。


 誰かと、つるんだり、話をしているところは見たことが無い……勝手ながら俺と同じ人種だと思っている……


 いや、俺も友達が全く居ないわけでは無い……

 ただ、親友と呼べるような相手……常に一緒に居る人間ともだちは居ない、造らない……


 人間、どんなに身を固めたところで、結局……内部からの攻撃ことばには弱い……だったら、人間それを必要以上に近づけないことだ。



 「あーーー、またでない……80連まわしてんのに、すり抜けもでないとか有りかよっ」

 俺が夕日が差し込む窓に背を向け、教室を出ようとすると……後ろの女子が俺に目線を送った気がしてふとそっちの方を向くが、女子生徒はスマホに向かいぶつぶつ文句を言っている。


 ・  ・  ・


 俺が教室を出ると……ガタリとスマホに目を落としたまま女子生徒が椅子を膝の後ろあたりで後ろに押しのけるように立ち上がり……机の横のフックにかかっているカバンをスマホを覗き込んだまま手に取る。



 ・  ・  ・



 学校の帰り道……坂になった並木道をくだりながら……下った先の道路の先が海と浜辺になっている駄菓子屋で肉まんを2つ購入する。


 俺はため息をひとつついて……エンカウントを避けられなさそうな、赤いジャケットとその赤より少し濃い紅色のスカートの女子生徒を眺める。


 同じ学校の制服……もちろん、黒い短い髪の俺の後ろの席の女子という訳ではなく……真っ白な長い髪、ファンタジーものの魔法学園ものの映画にでてきそうな短い黒いマントと俺と目が合うと、手品のように取り出した黒いとんがり帽子をその白い髪の上から深くかぶる。


 「おやおや……そろそろ、僕みたいな人物と出会う頃だとは思っていたのだろ……」


 その言葉に……気がかりがないといえば噓になる。

 ()()には……数日前に気づいていた。


 正直、そのおかげでちょっとしたトラブルが怖くなくなった……。

 自惚れかもしれない……多分、目の前に俺に拳銃を向けた男が立っていても俺は平然としていられるかもしれない。



 だから……目の前のような人間が立っていたとしても……


 気が付くと……少し歩き……遠ざかった先ほどの駄菓子屋……最近はそれ以外のものも色々置いているが……その店の前のベンチに後ろの席の女子が座っている。


 道路を走る車はほとんどない……


 ようするに人はほとんどいない。



 「なんのことか……さっぱりわからないけど……」


 「ミリス……僕のことは、親しみをこめて、ミリスちゃんか魔女ちゃんとでも

呼んでくれたまえ……」

 にししっと白い歯を見せながら一人楽しそうに笑っている。


 「無月むつき トウカ……」

 一応、名乗っておく……


 「で……魔女ちゃんはどうして……こんな場所に?」


 「無月むつき トウカ……何か不思議な事はなかったかい?」


 「……不思議な事?……たとえば?」

 俺は……思い当たるところがありながらもそう答える。


 「不思議なものが見えるようになった……とか、不思議な力が使えるようになった……とかね」

 可愛らしいピンク色の瞳で俺を見つめるように自称魔女が言う。



 「おい……シュウ……ちゃんと持ってきたんだろうな」

 離れた場所……道路を渡った先、海のある浜辺にある大きな岩場の影……

 同じ学園の俺もそこまで身長は高くないが……俺よりも身長が低い、ほとんど話したことは無いがクラスメイト……下手すれば女子よりも身長は低いが本人それを気にしているのか俺よりも筋肉質な体系だ。


 ちょっと猫背のなで肩な歩き方が余計に彼を小さく見せている……

 確か、火四島ひしじまシュウ……彼の名前だったはず。



 学校の先輩……3学年の生徒にそのなで肩の肩に手をまわされ、人目のつかないところへと連れていかれている。


 正義の味方なんて柄ではない……


 「にっしっしぃ……」

 そんな俺がどうするのか……魔女は楽しそうに見ている。



 *  *  *


 「なんスか……金なら持ってねぇッスよ……先輩……」


 「そういうなよ……シュウ、俺……今月のお金、全部使っちまってよ……ぴんちなんだよ……なぁ」

 一人の男がそのシュウという男子生徒の肩に手をまわしながら彼に身長を合わせるように頭の位置を低くしながら言う。


 にやにやとその周りを別の3人の男が取り囲むように立っている。


 わかりやすい威圧の仕方だ。

 もちろん、そんな彼を心配してここに来た訳だが……



 ガンッ……


 「どう……なってるんだ?」

 取り巻きの一人がそう声を漏らす。


 シュウの肩に手をまわしていた、3年の男子が岩に叩きつけられるように……蹲っている。


 「はぁ……」

 シュウがため息をつくと……他の男を睨みつける。


 「うっ……うわぁ」

 怯えるように男たちが見るシュウの姿……

 赤黒いオーラのようなものが身体から溢れている。

 それが、彼らにも見えているのかはわからない……


 「まっまて……おまえら……」

 一人残される、リーダーかくぽい男……


 赤黒い手甲をシュウがまとっていてそれを男に振り下ろす。

 が、その手が途中で止まる。


 彼を守ろうと思っていた力を別に使う。


 「誰だよ……」

 邪魔に入った俺をシュウが睨みつける。


 透明な壁に遮られるように腕を停止させ……


 「お前も……()()()()()()()?」


 「らしい……な……」

 「っても、俺のは防御一点なんだ……」


 数日前に突如……身に付いた特殊能力……

 最初は……夢か何かかと思ったが……


 もしも……いつも被害者だったものが、こんな力を手に入れたとなれば……


 こうして……おしかえしに使うのは……ごく普通の流れなのだろう。



 「待てって……俺は別にお前と喧嘩したいわけじゃ……」

 標的を俺に移す様に猫背の身体をこちらへと向けている。

 俺は両手のてのひらをシュウに向け、その意思を伝えるが……


 「な……なにもんだ……おまえら……」

 恐らく、力は見えていない……

 でも……何か普通じゃないことをしている……

 それには気が付いているのだろう……


 「あんたはさっさとこの場を去れ」

 俺は目の前の人間が先輩という立場を忘れ、強い口調で言う。


 ガンッ


 俺の目の前にある透明な壁をシュウの赤黒い手甲が殴りつける。



 「俺が防御特化なら、あんたは攻撃特化か……」

 能力の特性を分析するように……


 「にしし……君の能力でその攻撃は防げるようだが……どうするんだい?防御にげてるだけじゃ……彼は倒せないんじゃないのかい?」


 「だったら……助けてくれよ……見た目はなんだか強そうだろ、あんた?」


 「おやおや、いきなり僕を頼る奴があるかい……それに僕は見た目だけだよ」

 そう、あっさりと魔女じぶんの凄さを否定してしまう。


 「それと、親しみを込めて呼べと言ったはずだよ、次は返事をしてやらないからね」

 しかも……なんだか、拗ねている。



 「うらぁーーーっ」

 そんなくだらないやり取りをミリスとしていると、いつの間にか俺の目の前に手甲を振りかぶるシュウの姿がある。


 いつの間にか……張った透明な板の前に立たれていた……その能力。

 透明な板を魔力に戻すと右手と左手にまとわりつく。


 薄い翡翠色に光りを纏うように…輝く両手を顔の前でクロスさせるように手甲を防ぐ。


 「あっつぅ……」

 手甲が赤黒いオーラを纏っている。


 「火属性……」

 その拳を防ぎながらも……その熱風のようなものが拳を防ぐ衝撃と共に襲ってくる。


 小柄で筋肉質、脚力もある……その能力と合わさり、鋭い拳を何度も振り下ろされる。


 「くそ……」


 「どうした……そんなもんかっ……てめぇっ」


 「たく……人を殴ったことはないんだよっ」

 そう言いながら、右腕へ魔力をさらに送り……右手に張り付いている結界の魔力を高める。


 防御特化……例えそれが攻撃に適していないとはいえ……

 あらゆる攻撃を防げるだけの防壁の魔力……

 その魔力を纏った拳を能力にぶつければ……

 その拳を叩き込めば……


 「なっ!?」

 シュウの手甲が纏っていた赤黒いオーラが消化される……


 クロスカウンターを入れるようにその右手がシュウの左の頬を殴り飛ばす。



 いつの間にかあたりは真っ暗になっていて……

 海の波の音が聞こえる。


 シュウは大の字に浜辺に倒れていて……

 とっくに開いている目で夜空を眺めている。



 「えっと……トウカ……だっけ……」

 さっきまで……敵対していたとは思えないほど、普通にシュウが話しかけてくる。


 「なんなんだ……これ」

 おそらく、自分の手甲のうりょくを指して言っている……


 「さぁ……俺にもわからない……」


 「よっと……」

 シュウは砂浜に倒れたまま足裏をつけると、器用に飛び跳ねつま先だけを砂浜につけるようにしゃがんでいる。


 相変わらずの猫背で身体を丸めるように……

 俺もそのとなりに座り込む。


 「まぁ……そんな気はしていたけど、俺だけじゃなかったってことだよな」

 シュウはそう自分の身に着けた手甲の手のひらを見ながら……それを解除する。


 「そのへん、どうなんだ……ミリス……」

 俺は勝手に俺の肉まんのひとつを頬張っている自称魔女へと尋ねる。


 「……どうなんです……ミリスちゃん?」

 俺はそう言い直すと……


 「君たちは世界に選ばれた……英雄ヒーローさ……そう言われたら満足かい?」

 にししと魔女が得意の笑い方をする。


 「ん……これ、うまいな……君も食べるかい……無月トウカ」

 そう岩場の上に座るミリスが俺の買った肉まんがもう一つ入っている袋を投げてよこす。


 「俺のだよ……」

 そう小さな声で愚痴りながら袋から取り出したそれにかぶりつく。


 「おっ……うまそうだな、トウカ……俺にもくれ」

 食べかけの肉まんに横からかぶりつく。


 「おい……」

 俺の食べかけの部分を躊躇することなく……


 「いいだろ……少しくらい」


 「……わかったよ、ほら」

 俺はシュウがかぶりついた部分を取り除くように小さく千切るとその部分を手渡す。


 「おい……今、拳を交えてお互いの食べかけのものくらい食べあえるくらい友情を深めた神展開だっただろ……何、迷惑そうに俺の食べかけ部分引きちぎって渡してんだよっ」

 なんだか、当の本人はご立腹のようだ。



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