聖剣エクスカリバー(仮)
ここ、レニオンには唯一の観光資源と呼べるものがある。
「これが聖剣エクスカリバーか」
4人組パーティのリーダーであるジルは、目の前の大岩に刺さった剣を見つめてそう呟いた。
成人男性の3倍の高さはあろうかという大岩のてっぺんに、キラキラと輝く『聖剣エクスカリバー』が刺さっている。
「う、美しい・・・これは我が勇者・ジルにこそ相応しい」
「ジルなら抜けるわ、その剣はジルのものよっ」
剣に見とれる自称勇者ジルの周りで、同パーティの3人が騒いでいる。
刀身に反射する陽の光が美しい。
ジルは、握り締めた聖剣エクスカリバーを見つめて叫んだ。
「な、何か魔力的なものを感じる・・・・・・かも知れない」
「さすがねジルっ!」
うっとりと勇者を見つめる3人組。
グッと、聖剣エクスカリバーの柄を握り直したジルは、全身全霊で剣を引き抜こうと試みた。
「ぐぉぉぉぉぉっっっっっ!」
しかし抜けない。
ビクともしない。
「くそっ、今日は調子が出ないっ!明日だ!明日も挑戦してやるっ」
「諦めないでジルっ、貴方ならできるわっ!今日の所は村の宿に泊まりましょっ」
自称勇者パーティーは、そう言って現在泊っている宿に戻って行った。
暫くして。
彼らが見えなくなった頃、近くの大木の陰から数人の男女が顔を出した。
この村の住人である。
「・・・行ったか?」
「何日目だ?あいつ、しつこいんじゃ・・・」
「まぁ、そのおかげでこの村にお金を落としてくれているんだから、文句は言っちゃだめだよ」
うんうんと、神妙な顔で頷く。
内の1人が聖剣の柄を握り、グッと力を込めてみる。
当然抜けない。
「ゲルク、これが抜けるわけないだろ」
だよなぁ。絶対抜ける訳ないよなぁ。
分かっちゃいるけど。と、肩を竦めて見せた。
「だってこれ、剣の周りをコンクリートで固めてあるし・・・それに、仮に抜けた所でこいつは何の御利益もない偽物だしなぁ」
そう。これは村の観光資源の一つにと、村長が考えた聖剣エクスカリバー(仮)であった。
つまり先程、勇者が感じた魔力は『勘違い』なのである。
偽物に、魔力なんてある訳はないのだ。
この聖剣エクスカリバーは、村の『光の鍛冶師・ガッシュ』が、ノリで作った剣なのだから。
簡単に抜けない様に、剣先は刀身よりも幅が広く、抜こうとしても剣の周りに流し込んだコンクリートが引っ掛かって抜けない様になっている。
「最初に村長がこんな事やろうなんて言った時は、こんなもんで村に人が来るなんて思わなかったが、意外と来るもんだなぁ」
「最近、自称勇者多いもんなぁ」
勇者と言えば割と女の子にモテるらしく、ここ最近増えてきている。それに比例して、この村の財政も潤っているのだから、馬鹿には出来ない。
村の住人達は顔を見合わせ、腕を組んで目を閉じる。
おのおの思う所があるが、唯一共通して感じる事が一つだけ。
『勇者、万歳』




