武器を作ってみました
戦えと野生の勘が囁いてはいるが、現状不可能なことをカイドウは理解している。
不可能な理由はいくつもあるが、その中でも大きいものが2つ。
1つ目は武器の有無である。
魔狼や漆黒狼は爪や牙などの武器になるものがあるが、カイドウには丈夫な爪も、切り裂くような牙もない。
かといって、剣や弓のような物もない。
手持ちで武器になりそうなものは松明ぐらいなものである。
松明で戦えなくはないだろうが、殺傷力は低く、風の能力で火は消されてしまうだけである。
したがって、魔狼や漆黒狼と戦うための武器が無い現状では勝てないと判断できる。
2つ目はスキルである。
魔狼に関してはスキルがあるかどうかは考えないにしても、漆黒狼には風を操る能力、つまり風に関するスキルは間違いなく保有している。
クーの持つスキル:火の弾では漆黒狼のスキルと相性は最悪であり、カイドウのスキル:野生の威圧は威嚇であり、漆黒狼に効かない可能性の方が高い。
そうなると、現状有用なスキルもない。
「打つ手なしとはこのことだな。」
「で、でしょ?だからここは逃げようよ。」
「・・・勘は戦えって言ってるけど、せめて武器を手に入れてからだな。じゃないと、戦いじゃなくて自殺志願だしな。」
「じゃあ!逃げよう!」
クーとカイドウは気づかれないよう細心の注意をはらい、その場を後にし、元の場所に戻った。
「はぁ~惜しかったよね。魔狼だけだったらアニキが勝てるのに。」
「それはどうだか知らないが、結局いつかは武器が必要になるし、今は洞穴を見つけただけでも良しとしないとな。」
「うん。でも武器か~。」
「そういえばクーは武器らしい武器を持っていないよな?」
「うん。僕は不得意だったんだよ。剣も弓も槍もね。」
「それでよく旅立ったな。」
呆れて息を吐く。
「ま、まぁ僕にはスキルがあったからね。それにここに来るまで魔狼以外では何もなかったし。」
「ふ~んそうか。」
「ほ、ほんとうだよ!?」
「わかったわかった。しかし、スキルっていうのは相当価値が高いのか?」
「そうだね~人間や魔人でも使えない人はいるし、何より魔物でスキル持ちは珍しいかな?僕が生まれた村の同年代では僕を含めて7人だったし。」
「それは何人中だ?」
「え?えっと、同い年は20人ぐらいかな?」
(ということは20人中7人がスキル保有。確率で言えばだいたい3割。あそこにいた魔狼の5匹の内少なくとも2匹はスキルを持っている可能性があるのか。)
「ますます勝てそうにないな。現状。」
「うん無理だとオラも思う。仲間が増えれば話は違うけど。」
頭の中で1人の女性がよぎる。
浮かびそうになった考えを振り払い、話を変える。
「まずは武器が先だ。お前みたいに都合よく仲間になってもらえる保証はないからな。」
「そうなると剣は無理だし、弓もあまり期待できないとなると、槍、かな?」
「槍か~。」
「槍なら木を削ってできるし、木剣と違って殺傷能力はあると思うよ。突き刺すとか。」
「だが、木を削るものが無い。丸石で地道に削るか?」
「丸石があるなら槌はどう?」
「なるほど槌か。」
「うん!槌なら打撃だから削る必要もないし、縄代わりの蔓ならいっぱいあるし、何よりも木を倒すこともできるよ!」
「よし、決まりだな。槌を作ろう。」
「じゃあ太い棒と大きめの丸石が必要だね。」
「じゃあ早速作るぞ!」
「おーー!」
目的を決めた2人の行動は早かった。
「丸石はこれでいいだろう。」
人間の頭ぐらいの大きさの丸石を地面に置く。
「太めの棒もこれでいいかな?」
成人女性のでぐらいの太さである。
「んじゃこれを・・・。」
太めの棒を地面に置き、丸石の高さを決める。
決めたら軽く傷を作り、そこを中心に蔓を巻く。
少し巻いたら丸石を置き、ぐるぐるに巻いていく。
蔓は中心にだけ巻き、左右には巻かない。
固く結び丸石を落ちないようにしっかりと固定すれば完成である。
「じゃあ試し切りならぬ試し打ち。」
持ち上げて軽く振っても丸石が飛ばないことを確認してから木に向かって勢い良く振る。
大きな音を立てるが、木は倒れることはない。
打ち付けたところを見れば、木が砕けている。
手作りの槌の方は問題なさそうである。
「よし!完成だな!」
「やったねアニキ!」
「次はクーのだな。クーは武器どうする?」
「そ、それなんだけど・・・。」
もじもじと動き、言葉を濁す。
「ハッキリ言えよクー。」
「オラは武器を扱う才能は無いからさ、出来る限りスキルで援護はするけど、あの洞穴を手に入れるためにも仲間を増やさない?それが一番いいと思うんだ、オラ。」
クーの意見は正しく聞こえる。
カイドウはクーの過去を知らない。
だからクーが努力をし、頑張った結果が武器に対する才能無しなら納得はできる。
しかし、クーが本当に武器の才能が無いと言い切れるのだろうかと考えてしまう。
確かに剣や弓、槍に関しては才能が無かったのかもしれない。
けれど、才能が無いから下手くそだとは限らない。
ある程度は使えるのではないだろうか。
さらに言えば、他の武器に関しては才能が有るかもしれない。
今後武器を手に入れる機会が増えたら積極的にクーに使わせてみることを密かに誓う。
「仲間って言っても当てでもあるのか?」
「ないけど。けど、探せば協力してくれる人がいるかもしれないよ。」
クーの考えはわからなくはない。
仲間が増えれば数的不利も変えることができることからも仲間を増やすことは洞穴を手に入れる可能性を高めるとも言える。
だが、仲間が増えれば裏切られる可能性も増える。
カイドウの記憶では人間は平気で裏切るし、仲間を売る。
その理由は様々で、自分が悪くないようにとか、先生に媚びるためだったりしたのを覚えている。
その考えが頭の中にある限り、カイドウは仲間を増やすことに尻込みしてしまう。
何よりも仲間が増えればクーが裏切る可能性だって考えられる。
そうなってしまえば自分は独りぼっちになってしまう。
(クーはそんなことしないようにも見えるが、念には念を入れよだ。)
「当てがないなら現状でどうにかしたほうがいい。」
「だけど・・・。」
「ならこうしよう。忠誠を誓わせる。」
「忠誠?どういうこと?」
「仲間になってもらうと同時に俺が上であることを頭に叩き込むってことだ。」
「なるほど!オラのようにだね!」
(自覚あったんかい!)
「まぁそんな感じだ。」
「わかりやすくて良いと思うよ。その方が裏切る可能性は無いし、何よりアニキがボスだからね!」
(いつの間にかボス扱いですか。まぁその方がいいか。)
「その通りだ。」
「じゃあ!探しに行こうアニキ!」
「その前に1つだけお前に聞きたい。」
「何?オラの答えられるものなら答えるよ。」
「実は僕には1つだけ当てがあるんだ。そいつについて知りたい。」
「本当!?どんな魔物だったの!?」
「えっとな、頭に大きな一輪の花が咲いていて、体は人間と同じようなつくりで緑色、足だけ違っていて木みたいだった。」
「それってもしかして花少女かもしれない。」
「花少女?」
「うん!花少女っていうのはね・・・。」
花少女、名前から予想できる通り花と一体化した少女の魔物である。
花少女の本体は花そのものであり、人間の部分は本体ではない。
なのである程度の傷は人間の部分であれば完治する。
しかし、花の部分が傷つけば簡単に死んでしまう魔物である。
花は住んでいる花畑によって変わってしまうが、基本的にはハイビスカスに似た花である。
性格はおとなしく、昔は人間に飼われることも多かった。
「花少女の花粉はいい匂いなんだよ。」
「なるほど。」
(確かに甘い香りだったな。)
「でもこんな場所にもいるんだね花少女。」
「普通はいないのか?」
「そんなことはないと思うけど、花少女の近くには必ず花畑があるんだよ。でもオラは花畑なんて見てないし、そもそも花も見てないからいないと思ってた。」
「そっか。けど、今の話を聞く限り戦力にはならなさそうだな。」
「う~んそうだね。花少女は好戦的ってわけじゃないし。でも、話はできると思うよ?そうすれば仲間になってくれる魔物の話も聞けるんじゃないかな?」
「ふむ。」
「それに花少女が仲間になってくれれば蜜が手に入るかもしれないよ!」
「ほう。」
「花少女は蜜を集めるのが得意だからね。」
「食料が増えるわけだな。」
「そういうこと!」
「なら行くか!」
「うん!」
カイドウたちは昨日見かけた花畑を目指し、歩き始めた。
だが花少女が簡単に仲間にならないということをこの時は知る由もなかった。
~ト・クゥの日記2日目~
今日は色々とあったので少しだけ書くことにする。
まずオウゴンガの森は広く、簡単に迷子になってしまった。
そして魔狼に襲われるというトンでも展開に流石のオラも死を覚悟した。
だけど、オラは死ななかった。
なぜなら空からアニキが降って来たから!
アニキはスキル1つで魔狼の群れを追い払い、オラを華麗に救って見せた。
しかも、そのことを誇大して言わないところもアニキの魅力の1つだと思う。
さらにアニキは頭がいい!
岩ガエルをあっさりと捕まえちゃうんだもん。
すごいよね!
・・・カエル、美味しかったなぁ。
明日からも食べれると思うと、幸せだなぁ。
さて、明日から色々と必要になってくるから頑張るぞ!




