遂に見つけました洞穴と立ちはだかる最初の強敵です
“魔王”、この世の魔族や魔人を束ねる長にして王の存在。
並みいる魔族たちを黙らせ、支配し、力のある魔人たちを束ね、友好的に使役する存在。
前世ではファンタジー作品に出てくる頻度が高く、お姫様を誘拐した後に勇者に倒されてしまう。
大抵の結末はこんな感じだ。
だが、魔王とは言うが、簡単に魔族や魔神なんかを想像しがちだが過去には人に対する暴言としても使われていたらしい。
実際に本当かどうかは不明ではあるが、この世界に置いては魔族や魔人族を束ねる王のことだろう。
「魔王ねぇ。確かにそんなようなことを言っていたな。」
「うんうん。話を覚えていてくれて助かるわ~。続きを話しやすいもん。」
「んで?それがどうしたんだ。」
「えっと、この世界の魔王は強すぎる魔王なの。」
「魔王ってのは大概が強いんじゃないか?普通は人間では敵わない相手で、だからこそ勇者が存在するんだろ?」
「普通はね。でも、この世界の魔王は違う。異常なまでの強さなの。」
「異常っつたって勇者が勝てない相手ではないんだろ?」
「そ・れ・が!そうとも限らないの。何故なら魔王が保有している能力が“時限転生”だから。」
「おい、それって・・・。」
「そう、死んでもすぐに復活するの。だから倒されたとしても時を戻して蘇り、記憶を保有した状態で勇者と戦うから対策済みで戦うことになるの。だから結局勝てないのよ。強すぎでしょ?」
「チート性能だな。」
「そんなんだからさ、かれこれ勇者が既に七人も殺されちゃってさ。職業勇者を引き当てるのも難しいのに多くの勇者を殺されちゃって、もうたまったもんじゃないわ!」
地団駄を踏んでいる姿は女神からは程遠い姿である。
だが、気持ちを理解できなくはない。
最初に聞いた話と総合するに、魔王はクルミナの世界にとっては邪魔な存在。
その存在を消すために勇者を七人も派遣した。
ところが、何度でも蘇ってしまうことから何人勇者を送ろうが返り討ちにあうだけである。
現状、絶対に倒せない存在ということだ。
「だからさ、海藤には幸せに生きてほしいと思ってるから忠告をしようと思ったの。」
「忠告?」
「うん。海藤がいるオウゴンガの森って、今は魔王領だから下手なことはしない方がいいよって。」
「・・・そんな場所に僕を導いたのかお前は。」
「・・・テヘペロ!」
(憎い!僕はこいつが憎い!)
「そう怒らないでよ。海藤が死なないように忠告してあげたんだからさ。それに・・・。」
天を見上げ、真剣な目で一点を見ている。
「私はこれからもじゃんじゃんガチャを引いて、勇者を当て、何度でもこの世界に派遣するわ。それしか私にはできないもの。少しでも早くこの世界が平和になるために。」
「・・・カッコいいこと言ってるけど、結局は他力本願だし、魔王の攻略法を見つけない限りは特攻隊どまりなんですが?それはどうお考えで?」
「ふふ。」
鼻をこすり、カイドウを微笑む。
「私にできるのはこれだけよ。」
「辞めればいいんじゃないかなこの駄目神。」
「やめてーーー!そんな蠅以下を見るような目はやめてーーー!」
「いや、蠅に失礼だろ。あいつらは人の糞にたかってまで懸命に生きようとしてんだから。お前は埃以下だ。」
「生物ですらないの!?」
「だって何の役にも立たないし。」
「酷い!?」
「というよりも、女神の力で魔王をどうにかできないのか?」
「え~っと、私の世界に私の力は大きな影響を与えることはできないのよ。せいぜい神託を与えるとかぐらい?だから力の強い魔王をどうにかできる訳じゃないのよ。そもそもできたら勇者なんて送らないし。」
(いい訳だけど正論だな。いい訳だけど。)
「いいじゃない!私は私なりに頑張ってるんだから!魔王の能力だってようやく掴んだ情報なのよ!少しは褒めなさいよ!バカ!」
「ははは。いくらでも言うがいい。結局は駄目神の遠吠えだ。」
「せめて感情をこめて言って!」
「さて、話は以上か?なら帰してくれ。」
「あ、ちょっと待って海藤!最後にもう一つだけいい?」
「何だ?」
「あまり魔族や魔人たちと関わらない方がいいよ。」
「はぁ?」
「その、クゥだっけ?あの子は理解のある子みたいだけど、全ての者がそういう訳ではないわ。中には無条件で海藤を殺そうとするものもいると思うの。だから、極力関わらない方がいいわ。」
「・・・一応、頭の片隅に置いておくわ。」
「うん、そうして。本気で貴方にはこの世界で幸せになって欲しいから。」
優しい微笑はやはり女神なのだなと思う。
そんなことを思うと、視界がだんだんと霧に包まれる。
クルミナが何か言っているが、聞き取れない。
けれど、重要なことではないだろう。
何故ならカイドウは勇者ではない。
職業野生児なのだから。
「・・・うっ・・・んあ?」
封印が解かれたように瞼が開く。
かなりの間寝ていたのか、太陽が真上に見える。
(結構話していたんだな。)
うっすらとしか女神との会話の記憶が無いが、特に重要そうなものは無かったから特には気にしない。
体を起こし、辺りを見るとクゥがいない。
(どこ行ったんだ?・・・まぁいいか。)
そこまで重要視せず、慣れた手つきで岩ガエルを串刺しにして焼いていく。
そのうち匂いにつられて戻ってくると思いながら2匹目を串刺しにした。
「ふっふ~ん~ふっふ~ん~。」
陽気なリズムを奏でながらクゥは昨日カイドウが歩いた反対側の方向を歩いていく。
「アニキ驚くかな~オラが洞穴を見つけたら褒めてくれるかな~。」
ワクワクしながらどんどん進む。
その姿は無防備で無警戒である。
他の生物からすれば簡単に狩れる獲物である。
しかし、クゥを襲うようなことは起きない。
運がいいのか悪いのか、他の生物をそもそも発見できてないのだ。
見つかるのは穴の中の岩ガエルぐらいである。
「う~ん一応持ってきた箱がいっぱいになっちゃたなぁ。」
箱の中でぎゅうぎゅう詰めにされ悲鳴を上げている。
五月蠅いが、特に気にはしない。
「そろそろ戻ろうかな。ここまで歩いたけど、洞穴も使えそうな物も見当たらないし。・・・う~ん、ん?」
何かの音が聞こえ、クゥは辺りを見回す。
再び聞こえた音を頼りに音のする方へと歩いていく。
「これって!」
即座にカイドウに知らせるためにクゥは走り出した。
「ん~いい具合に焼けてきたな。」
「アニキーーーー!!」
「お!帰って来たな。」
息を切らしながらクゥは駆け寄ってくる。
「お帰り。カエルが焼けたぞ。」
「あ、アニキ!大変だ!すごいものを見つけた!」
「ん?そうなのか?でも、それよりもまずは腹ごしらえだ。食え。」
「え!?で、でも!?」
「腹が減っちゃ何もできないぞ。」
ぐぎゅるるる~。
「腹、鳴いてるぞ。」
「・・・うん。」
クゥはおとなしくカエルを食べ、お腹を満たした。
「それで?」
「うん!すごいものを見つけたんだ!こっちに来て!」
クゥが走って行く後をカイドウはマラソン感覚で走り、ついて行く。
火の場所から結構走った場所までくると、クゥは止まり、指を口に当てる。
それが意味するところは“静かに”である。
だが、そんなことをしなくてもカイドウは野生の勘でこの先に何がいるかを理解する。
(この気配は確か・・・魔狼だったか?)
「見てアニキ。あそこ。」
指さした先に見えたものは五匹の魔狼と、自分が昨日探し続けたもの。
「やったなクー。洞穴だ。」
魔狼の巣だと思われる洞穴はカイドウやクーが入るのに十分な大きさである。
問題があるとすれば目視で確認できる魔狼で全てかどうかである。
(最も五匹の時点でもヤバいけどな。)
「どうしようアニキ。あんなに魔狼がたくさんいるよ。」
「そうだな。あの洞穴は是非とも手に入れたいし・・・戦うか?」
「た、戦うの!?」
「しっ!声がデケェ!」
何かの音に反応して魔狼が辺りを警戒するが、何も発見できずに警戒が解かれる。
そのことにホッとし、息を吐く。
「ごめんアニキ。」
「いや、今のは俺も悪い。けど、戦い以外ではあの洞穴は手に入らんだろ?」
「そうだよね。アニキなら他の方法が浮かぶかなって思って。」
「何で?」
「だって、アニキはオラと仲間になったでしょ?だからそういう方法を知っているのかなって。」
「う、う~ん。」
(確かに五匹に対してこちらは一人と一匹。数的に不利なのは確かだ。加えてあくまで目視で五匹だから厳密に言えば五匹以上になる。最初の遭遇の時もたまたまスキルが発動したおかげで勝てたが、あくまで魔狼が逃げ出したに過ぎない。魔狼の実力を知らない状況で、不利な戦いは避けるべきだ。しかし!あの洞穴は今後の生活に必要不可欠!何としても手に入れたい!どうするべきか・・・。)
唸り声をあげて考えていると、洞穴から出てくる大きな姿が視界に入る。
その姿はどの魔狼よりも大きく、そして美しい黒い毛並み、余裕のあるように見える表情や歩き方の優雅さから、神聖な生き物のように見える。
(何だあれは・・・?)
「あ、アニキ!?マズいよ!?」
小さな声なのに、とてつもない恐怖を抱いている声である。
「何がだ?俺にもわかるように説明してくれ。」
「あれは漆黒狼だよ!」
漆黒狼は魔狼の長である。
基本的には魔狼の長は強い魔狼になるのだが、漆黒狼は強い魔狼が進化した姿なのである。
魔物は時としてこのような進化を遂げるのである。
漆黒狼になったことで、風を操る能力を身に付けているため近づくことすら困難な魔物である。
「進化ってマジかよ。」
「や、止めようアニキ。勝ってこないよ。」
クーのしょぼくれた表情からもかなり強いことがわかる。
だが、カイドウには野生の勘が囁いている。
“逃げるな恐れるな戦え”と。




