勝敗?です
怒号が森の中を飛び交う。
ゴブリンたちの慌ただしく動き回る様子、小鳥たちが逃げ惑う姿を見て、戦いが始まったことを悟る。
「は、始まったんダゼ。」
森の中を腰を低くして進んで行く影が4つ。
カイドウたちである。
ゴブリンが進むのとは反対方向に進み続けて数分。
一行にゴブリジェネラルらしき姿を視認できていない。
「しかし驚いたんダゼ。まさか俺様たちを利用するとはな、ダゼ。」
「お前とクーしかゴブリジェネラルを見てないんだ。協力してもらうしかないだろ。それに出来る限り兵士はあっちに置いとかなきゃならないし。」
「だからって俺様たち4人で倒せる程甘くは無いんダゼ。」
「わかってるよそんなことは。」
奥へ進めば進むほどにゴブリンの数は減っている。
だが、それでも圧倒的にゴブリンの方が多い。
「しかし!ダゼ。その女は信用していいのか?ダゼ。」
パンプンの視線はクゥの裏にいるムーアに向けられる。
「この女は危険じゃないのか?ダゼ。」
「心配するなよ。ムーア先生の実力は僕が身をもって知ってるし、裏切るような人じゃないよ。」
「本当か?ダゼ。クゥもそう思っているのか?ダゼ。」
「ん~オラはアニキを信じてるから。」
「ほらな?問題ないだろ?」
「いや、そういうことなのか?ダゼ。」
いまいちパンプンはムーアを信用できないでいるが、頭の中の雑念を振り払い、目の前の作戦に集中し直した。
本来ならパンプンはこの話を受けなかった。
自分では『由緒正しき野菜汁族の貴族。強い男。弱きを助ける男。』などと言ってはいるが、パンプン自身は小心者で、自分が最も生き延びられる方法しか選んでこなかった。
この場合なら‟即逃げる”、それがいつもの選択だ。
だがそうしなかった。
それは自分よりも弱そうなクゥがこの作戦に参加したからかもしれない。
もしかしたら勝てるかもしれないっていう希望が僅かでも感じたからかもしれない。
「やべぇ・・・んダゼ。」
その希望を打ち砕き、この場に居合わせてしまったことを絶望させるほどの強靭な姿を、パンプンは見てしまう。
ゴブリジェネラルである。
チラ見した時よりも、物語で聞いた姿よりも、大きくて、怖い存在。
隠れるどころか周りに護衛すら置かずに堂々と立つ姿。
その姿こそがゴブリジェネラルを強者と伝えている。
パンプンだけではない。
カイドウもムーアも、そしてクゥも同じ感想を抱いている。
「あ、あれがゴブリジェネラル。話には聞いていたが、これ程とは。どうするんだカイドウ。」
「あ、アニキ?」
ムーアやクゥの視線を浴びても、カイドウは答えられない。
それはカイドウの心を絶望が支配し始めているからだ。
カイドウは、心の何処で今回の戦いも勝てると思っていた。
初めて戦ったゴブリメイジやゴブリライダーたち、どちらも強敵ではあったが結果的にはカイドウが勝ってきた。
それはカイドウの心に、不思議な余裕があったからだ。
それは勇気だったのかもしれない。
けど、それを微塵も感じさせないほどのゴブリジェネラルの圧倒的恐怖。
『死ぬかもしれない。』そんな感想しか出てこない。
「やっぱり無謀なんダゼ。見た感じゴブリジェネラルしか見えないのが救いなんダゼ。」
「どうするカイドウ。この作戦を止めるか?今ならまだ間に合うかもしれないが?」
「・・・いや、やろう。ここまで来てビビッて帰ったなんて笑えない。作戦通りにやろう。クー。準備いいか?」
「い、いつでもいいよアニキ!」
「よし。二人もいいな?」
パンプンとムーアは頷く。
「・・・やれ!クー!」
「行くぞォ!スキル:ファイアー!!」
クゥの手から放たれた火の弾は迷うことなくゴブリジェネラルの頭に直撃した。
「グッ!?」
突然の攻撃にゴブリジェネラルの反応は遅れ、火の弾の直撃を許してしまう。
これが火の系統スキルの上位フィガであったならば数分程痛みで動けなかったかもしれない。
もしくはそのまま頭を飛ばされて戦闘不能になっていたかもしれない。
だが所詮は下位スキルのファイアー。ゴブリジェネラルの顔をヒリヒリさせる程度で戦闘に支障はない。
「誰ダ!」
すぐさま臨戦態勢に移るが、それよりも早くカイドウの刃はゴブリジェネラルの首を捉える。
「貰ったあァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
ゴブリジェネラルが動くよりも早く、カイドウの刃は首に触れる。
キィンッッ!!
くるくると回転した刃はすぐ近くの地面に突き刺さる。
「残念だったナ。小僧。」
カイドウの剣はゴブリジェネラルの首に傷をつけるどころか、逆に刃を折られてしまう。
刺さると思っていたカイドウにとっては予想外である。
「フンッッ!」
だからゴブリジェネラルの拳を避けれなかった。
「ギッ!!?」
顔面に直撃し、ゴブリンのような悲鳴を上げながらカイドウは吹き飛ぶ。
「カイドウ!!!?!?」
抵抗することを忘れ、カイドウはそのまま地面に落ちた。




