無謀な作戦の始まりです
反論の声は無かったが、疑問点は皆あった。
だが反論できない以上、声には出せない。
「まず、十中八九戦えば負けるということを念頭に置いて話すぞ。ゴブリジェネラルの強さは計り知れないことを祖先達が証明してくれている。最も、人間もそこまで弱い生き物ではないから強い者なら勝てるであろう。まぁ今回の場合は無理だがな。」
「で、ではどうやってゴブリジェネラルを殺すのだ?まともにも戦えないのだろ?」
「そうですぞバルギウス殿。正面からは戦えぬ。」
言っている意味が理解できないでいると、兵士の一人がぽつりと言う。
「まさか暗殺・・・。」
その言葉にバルギウスも瞬時に理解する。
「ま、まさか隙を狙っての暗殺だと!?そんなことが可能か!?」
「可能かどうかは現状把握できませんな。だが、ゴブリジェネラルを倒せる方法があるとしたら現状では暗殺しかあるまい。」
(暗殺か。確かにそれなら強さなんて関係ない。それこそ不死身でもない限り殺せば終わる。だけど、だけど敵の大将がそんな簡単に暗殺できるわけない。きっと防衛はしっかりしてるはず。)
「しかし!しかしだオルゲン!暗殺は盗賊なんかが得意としているが、ここにいるのは皆兵士だぞ?冒険者なんてほとんどいない。そんな状態の我が軍でゴブリジェネラルを暗殺など出来るのか!?」
(最もの意見だな。暗殺にも種類があるが、俺たちはそのどれも出来ない。でもゴブリジェネラルを倒すことが唯一の攻略の糸口。なら・・・。)
「弓兵で狙うのはどうだ?」
「カイドウ。残念だが、今回の作戦を任せられるような正確さを持った弓兵はうちにはいない。失敗して終わりだ。」
(弓兵は無理か。この世界に前世の銃のような武器があれば俺でも可能性はあったかもなぁ。ま、無いんだけどね。)
「ならば奇襲でしょうな。」
「オルゲン正気か!?奇襲などで倒せるほど敵は甘くない!失敗したらそれこそ死だ。」
「だがそれ以外に方法はないでしょうな。信頼できる弓兵も居なければ暗殺に長けた者もいない。ならばゴブリジェネラルを倒せる方法は奇襲以外にあるまい。敵は見た目が違くてもゴブリン。騎士道精神など持ち合わせていないであろうな。」
オルゲンの言葉にカイドウを除いてはやはり誰も納得できない。
そもそも奇襲というのは成功確率が八割以上の時に行うことが定石。
この確率は敵との力の差が無ければないほどにどんどん上がるが、今回はハッキリとこちらが下だと分かる。
オルゲンの見立てでもせいぜい2割の成功率。
何よりも難題なのはただの奇襲とは違い、ゴブリジェネラルを倒す必要があること。
ゴブリジェネラルを倒せる者などそう多くはない。
「仮に奇襲するとしてだ。どのようなタイミングでするのだ?」
「一番は戦いの最中ですな。敵の意識がそちらに向いていますからな。」
「戦いの最中って・・・オルゲンの頭の中にある作戦とはどんなものだ?話してくれ。」
「うむ。まずゴブリジェネラルを倒せる者が奇襲に向かう。その間、多くの兵士はゴブリンどもと戦いを続ける形になりましょう。」
「防衛線ということか。だが、ゴブリジェネラルを倒せる者など・・・。」
「カイドウ殿しかおるまい。カイドウ殿に2,3人の兵士を預け、奇襲してもらう。残りでこの村を守るしかないでしょうな。」
「百余名で守れると思うか?」
「ゴブリン相手ならば可能でしょうが・・・正直、ゴブリライダーが出てきてしまうと無理でしょうな。ゴブリメイジなど居たら完全に敗けですな。」
「ダメじゃないか!?」
叩く力が弱々しい。
バルギウスの気持ちが分かる兵士たちは自然と下を向いてしまう。
「でもやるしかないんだろ?」
カイドウの言葉に、バルギウスは黙って頷く。
「ならやるしかない。オルゲンの作戦で。」
勝てる未来が見えない戦いを、カイドウたちは選択することになった。
「答エ。求ム。」
城壁に兵士たちが集まる中、ゴブニンは姿を見せる。
兵士たちに緊張が走り、握る手に力が入る。
「・・・答エハ?」
全員の視線がゴブニンに集まる中、中年の男が城壁の上に姿を見せる。
「お前さんがこの前のゴブリンか?」
「答エヲ。」
「答えねぇ・・・これを見てどう思うよ?」
「・・・後悔シロ。」
城壁の上の砲台の数、兵士の人数。
それらからは誰が見ても戦う意思が見て取れる。
それはゴブニンも例外ではない。
ゆっくりとゴブニンの手があげられる。
その合図を待っていたかのようにゴブリンたちが次々と森から姿を見せ、人間のように陣を展開し始める。
「こいつはぁ・・・ちょっとやべぇな。」
想像以上のゴブリンの数、ゴブリライダーにゴブリメイジ。
少数のゴブニンに同じく少数のゴブリセージ。
敵を見誤った。それがこの時の兵士たちの総意だった。




