勝利の鍵です
太陽が落ち、火の明かりが頼りになる頃。
ゴブリジェネラル軍は遂にココ村付近に陣を構えた。
陣の中央ではゴブリジェネラルが優雅に食事をしている。
ただ、食べているものは・・・人間の肉である。
ナイフとフォークを器用に扱い、切り取った肉を口に運ぶ。
「報告アリ。」
「・・・ゴブニン。人間共にこちらノ意志は示せたノカ?」
「警告ト意志。証明セリ。」
「ソウカ。これで種族ノ繁栄は約束されたも同然ダナ。」
「質問。」
「何ダ?申セゴブニン。」
「警告ト意志ノ必要性。」
「うむ。」
最後の肉を口に運び、ゆっくりと咀嚼してから飲み込む。
「我々ゴブリンにとって、馳走とは何カ。それは人間共ノ赤子の肉ダ。柔らかく、そして程よい乳臭サ。一度味わってしまうト、止められナイ。だが、その馳走は無限デハナイ。限りがあるノダ。何人もの人間ノメスを孕ませたところデ産まれてクルのは九分九厘我らガ同胞。我らノ馳走は人間同士ノ交尾でしか産まれてコナイ。ここまで言えば、何故このような後手に回るようなコトヲしたか分かるナ?」
「納得セリ。次。質問。敵、反撃ハ?」
「こちらの慈悲に従わない場合ダナ?その場合は活きの良いメス全てト何匹かのオスガキを捕まえ、残りは皆殺しダ。特に老人共ハ必要ナイ。」
「・・・御意ニ。」
納得したかどうかはわからないが、ゴブニンは姿を消す。
「・・・人間共を蹂躙スル方が楽ではアルガナ。」
ゴブリジェネラルは檻から目に生気が感じられない女性を引っ張り出し、天幕の中へと姿を消した。
「何事だ?」
「で、伝令!物見より報告!ゴブリンらしき敵から書状あり!な、内容は・・・。」
「内容は何だ?」
「な、内容は!“許しを請こえ。贄を差し出せば許そう。”と!」
「何だそのふざけた言葉は!!」
「ひっ!?」
力の限りテーブルを叩いてバルギウスは怒りを露にする。
その迫力に報告に来た兵士は怯む。
「完全に敵は上から目線だな。どうすんだバルギウス?従うのか?」
「従うわけないだろ!誰を贄に出すって言うんだ!!」
「じゃあ戦うのか?それとも逃げるのか?」
「戦うに決まっている!逃げたところで結局敗けたのと同じ!ならば戦わなければ意味がないだろ!」
「じゃあどうやって戦う?ハッキリ言って無謀だぞ。」
「・・・。」
助けを求めるように周りの兵士を見るが、誰も口を開かない。
カイドウからもたらされた情報が正しいと、皆が思っているからだ。
つまり、勝てないと。
バルギウスが答えられないことなんてカイドウには最初っから分かっていた。
分かっていたからこそ、感情論ではなく目の前の障害を冷静に見てもらう必要があったのだ。
「・・・現状の戦力ではココ村は、勝てない。」
口に出すと、絶望感がさらに増す。
だが、それでもバルギウスは話し続ける。
「戦いを挑んでも死ぬだけで何も変わらない。むしろ従った時よりもっと酷い目に遭わされるかもしれない。だが、逃げたところで・・・。」
どんなに思考を広げても答えは出ない。
勝てるビジョンが見えない以上、答えなど到底出るとは思えない。
だからバルギウスは思い切った選択をする。
「・・・カイドウ。」
「ん?なんだ?」
「君にココ村の全軍の指揮を預ける。」
「なッ!?」
思い切り過ぎるバルギウスの決断に、兵士たちも困惑を隠せない。
だがカイドウはそうなることを想定していたように地図と向き合う。
「ゴブリンは何処から姿を見せた?」
「へ?」
「何処だって聞いてんだ。」
「あ。えっとこちらからです。」
兵士の示した部分から想定されるゴブリジェネラル達のある程度の位置を想像し、考える。
この状況を如何にして乗り切るのか。
「なるほど。それでワシを呼んだんですなカイドウ殿。」
如何にして乗り切るか。
戦闘経験の少ないカイドウだけで考えるよりも戦闘経験豊富な者と考える方が糸口が見つかる。
そう思ったカイドウはオルゲンを呼んだ。
「どうすれば勝てる?もしくは撃退できると思う?オルゲン。」
「そうですな・・・。」
バルギウス達が見守る中、オルゲンは少しの思考で答えを出す。
「現状どう足掻いても勝つことは不可能でしょうな。」
「やっぱり無理か。」
「ですが、撃退の可能性はあるかと。」
「本当か!?」
「うむ。軍が敵にやられて最も嫌なことが何か。カイドウ殿はお分かりかな?」
「指揮系統の破壊とか?」
「うむ。それも嫌ですな。ですが最も嫌なことは別にありましてな。それは信じていたものが壊されることですぞ。」
「信頼していたもの?」
「この場合、ゴブリジェネラルの死ですな。」
オルゲンの発言をいち早くした理解したバルギウスは驚きの表情を隠せない。
「お、オルゲン殿はゴブリジェネラルを倒すことがこの戦いの勝利の鍵だと言うのか!?あの大群の中で!?」
「それしか道はないでしょうな。」
オルゲンの導き出した答えに、誰も反論は出来なかった。




