カナデル帝国から?です
「っ!?」
姿を見せ、一歩足を出した瞬間にカイドウは殺意に襲われ怯んでしまう。
深呼吸をし、そっと両手を見せて敵意が無いことをアピールすると殺意が少し薄れる。
一歩、また一歩とゆっくりと近づく。
このまま部屋に入れるのか、そう思ったがそうはいかなかった。
「止まれ!!」
女性から数歩離れた場所で止められる。
じろりと観察するように確認してから女性は声を張る。
「何者だ!名を名乗れ!」
「僕はカイドウ。一応この村に住んでいる者です。」
「ここは何処だ!」
「えっと、オウゴンガの森近くのココ村です。」
「オウゴンガの森?ココ村だと?」
「はい。」
「・・・。」
「あの・・・。」
女性は険しい顔一瞬見せるが、すぐさま頭を掻いて睨みつけてくる。
「嘘ではないな?証明できる物はあるか?」
「嘘ではないです。証明できる物は・・・あそこにいるバルギウス様ではダメですか?」
バルギウスを様付けするのは嫌だったが、不用意な疑念を持たれないために我慢する。
「・・・嘘をついているようには見えない。じゃあ本当にここはカナデル帝国でも魔王城でもないのか?」
ブツブツとつぶやいていてあまり聞き取れなかったが、カイドウは“カナデル帝国”という言葉だけは聞き取れた。
(カナデル帝国?ここら辺では聞かないな。てことはやはり瞬間移動?でも、彼女は驚いていた。つまり、誰かにここへ飛ばされた?何の為に?もう少し聞く必要あるな。)
「あの何があったんですか?貴方達はいったい・・・?」
「黙れ!貴様は質問にだけ答えていろ!」
それだけ言うと、またしてもブツブツと何かをつぶやき始める。
(ダメだ。敵意むき出しでこちらの話しなんて聞く気がない。こうなったら下手に出て少しづつ情報を聞き出すか。)
「失礼しました。そのお体の具合は・・・?」
「黙れって言ってるだろ!」
「いえ、そういう訳にはいきません。病気や怪我をしているのならすぐに手当てをしないとなりません。」
女性は何か言おうとしたが、口ごもる。
こちらの正当性が通ったのだ。
「・・・怪我や病気はない。」
「それは他の方もですか?」
「・・・ああ。」
「では、皆さんお目覚めに?なら食事の用意を・・・。」
「今いい。まだ俺しか目を覚ましていない。」
(他三名は未だ意識戻らず、か。)
「貴方だけでも食事を取ってはどうですか?」
「いい。食欲がない。」
「そうですか?では、何か必要な物はありませんか?」
「ない。」
「では、必要な物がありましたらお呼びください。失礼します。」
「・・・なぁ。」
カイドウが去ろうとした時、弱々しい声で呼び止められる。
「ここは本当にココ村なのか?何かの間違いじゃ・・・。」
「残念ですがここはココ村です。」
「・・・そうか。」
最初の殺意むき出しが嘘のように消え、女性は部屋の中へ消えていく。
同情を覚えるが、カイドウにはどうすることも出来ない。
とにかく手に入った情報をもとにバルギウスに話を聞くことにした。
「カナデル帝国だと?本当に彼女はそう言っていたのか?」
「知ってるのか?」
部屋に戻ってすぐにバルギウスに得た情報を伝えると、カイドウは訝しがられてしまう。
「もし、それが事実ならかなり現実離れしたことが起こっていることになる。地図を。」
バルギウスの指示に従い、兵士はテーブルの上に地図を広げる。
地図はかなり大雑把に描かれている。
「ここがだいたいのココ村位置だ。そしてここがカナデル帝国。」
大雑把な地図でもかなりの距離があることがわかる。
「ゴブリジェネラルだけでも頭を抱えているのに今度はカナデル帝国だ。ありえないだろ。」
「瞬間移動みたいな魔法があるんじゃないのか?」
「少なくとも俺は知らない。仮にそういう魔法があったとして目的は何だ?あの様子だと彼女らの意志を無視した結果のように見えるが?」
「同感だけど、それ以外に説明がつかないだろ。カナデル帝国からわざわざココ村に来る理由なんてないだろ?ましてやあんな殺意むき出しじゃあ話も出来ないじゃないか。」
「カイドウの言う通りだな。だとすると、だ。俺が仕入れた情報ではカナデル帝国は現在魔王軍と戦争している。その魔王軍の中に相手を何処かへ飛ばす魔法があるってことだな。」
さらっと重要そうな情報を話す。
それがカイドウを無関係にさせないようにしているのが見え見えで気持ちが悪い。
「ん?どうかしたか?」
わざとらしい態度に、カイドウはため息しか出ない。
「・・・他に知っていることはあるのか?あれば話せよバルギウス。」
「カナデル帝国に関してはある程度の情報はあるが、今は関係なさそうだ。それより彼女たちだ。どのように扱えばいい?」
素直に話さないところも増々気持ちが悪いが、カイドウは文句も言わずに口を開く。
「彼女たちは落ち着くまでほっとけばいいだろ。それよりもゴブリジェネラルをどうするかだ。」
カイドウの言葉を待っていたかのように、村の入り口から不穏な音が聞こえ、兵士が部屋の中に転がり込んできた。




