崩れ落ちるディアナです
「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・。」
「ひ、姫様?」
映像に流れる兵士の抵抗なき死。
「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・。」
「姫様!しっかり!」
必死に一人でも多くの兵士を生かそうと鬼の形相で叱咤を飛ばすサイモン。
「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・。」
「映像を止めろ!!」
紅蓮隊を率いて敵の進行を苦渋の顔で止めている兄カーニバル。
「嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ・・・。」
「姫様!目を覚ましてください!!」
ちっぽけなスケルトンナイトごときに苦戦を強いられ、敵大将の前にすらたどり着けない父ゼアン。
「グェッフフフ。だらしのない姿ですねぇ。」
「嘘だアァァァァァァァァァァァァッ!!?!!?!?」
ディアナの精神を崩壊するのに、これ以上の理由はいらなかった。
「あ・・・ア・・・ぁ・・・ァ・・・。」
目から光は消え、先程までの覇気はない。
勇ましい立ち姿から一変、力なく膝から崩れ落ち、少女のように座ってしまう。
「姫様!?」
これまで仕えてきて始めて見る主の姿。
憧れた後ろ姿も、奮い立たせてくれた背中も、勇ましい横顔も、そこにはない。
あるのは見たくなかった抜け殻。
「おやおや?どうかなさいましたか?」
デ・メキンの言葉にも、ディアナは反応できない。
「ん~壊れちゃいましたかね。どうです?もう一度私に攻撃してここから脱出してみませんか?今度は成功するかもしれませんよ。」
安い挑発にもディアナは何も答えない。
その姿に部下の兵士たちも何も言えない。
「本当に人間という生き物は脆いですねぇ。こんなことでもう動けないんですか?ねぇ?」
光りの無い瞳から涙が零れる。
産まれてきてこれまで生きてきた人生で、ディアナは子供のころ以来泣くことは無かった。
それは憧れた強い父の背中に触れたくて、一生懸命努力してきた代償。
子供らしさを失って手に入れた誇り。
「さてさてと。静かになってくれたようなので、貴方をご招待しましょうかね。」
デ・メキンは映像を消すと、先程とは違う小さな魔法陣を描き、ディアナたちの下に滑らせる。
「な、何を!?」
何も言えないディアナに変わり、部下の一人が怯えながら聞く。
「これは転移魔法陣ですよ。言ったでしょう、そちらのお嬢さんを我らが求める強者の母親にすると。ということは父親もご用意しているということですよ。」
ディアナを守るように兵士たちは武器を構える。
しかし先程の力強さは無く、手も足もガタガタと震えている。
「ご安心ください。貴方達も選んであげたのですよ。というのはですね、父親の所在は掴んでいるのですが、正確な場所までは。つまり貴方達はお嬢さんの父親探しと身の回りのお世話をしてもらうために生かしてあげたのです。」
「そ、そんなことすると思っているのか!」
「グェッフフフ。勇ましいのは微笑ましいですが、もう少し震えを抑えたほうが良いですよ。それとですねぇ・・・貴方達は私に逆らうことは出来ないんですよぉ。グェッフフフ~。」
「貴様に従う気はないわ!」
「それが従うんですよねぇ。グェッフフフ~。」
不愉快な顔に矢を射るが、もちろん何の意味もなく刺さるだけ。
そのことが悔しくて、兵士も涙を流し始める。
「実はこの場所、入った際に呪いがかかるような仕掛けがありましてねぇ。」
「の、呪い?」
「ええ。私の命令に逆らって欲しくないですからねぇ。ああ、もちろん先ほど言ったことを守って頂ければ呪いが発動することは無いですよぉ。貴方達はね。グェッフフフ。」
兵士の一人は無意識に目が下に動き、自分の胸元に手のひらサイズの魔法陣が描かれていることに気づく。
「ひっ!?」
「グェッフフフ。」
「貴方達は・・・って。ひ、姫様は違うの!?」
「ええ。お嬢さんはちゃんとした父親と結ばれないと、生きている意味は無いので。」
「貴様ァァァァッ!!」
「では皆さん、ご~機嫌~よ~。」
槍で攻撃しようとしたが、その前に足元の魔法陣が光り、ディアナたちは消えた。
火が照らす。
太陽が沈むころ、バルギウスは館前に数十人の男を集めることに成功した。
「諸君、君たちに聞いて欲しいことがある。」
ほとんどの男の身なりは薄汚く、態度もそれほど良くはない。
だが、それに怯むことなくバルギウスは声を発する。
「君たちに集まって貰ったのは頼みたい仕事があるからだ。それは君たちにこのココ村の周辺探査をしてもらうことだ。」
反応は予想通り良くはない。
「もちろん、君たちには危険な仕事をしてもらうのだから報酬もそれなりの物を用意させてもらう。が、報酬の内容についてはこの仕事を受ける者だけに開示させてもらう。」
男たちの反応が明らかに変わり、皆が皆思うように話し始める。
「バルギウス様。」
望んでいた光景にバルギウスは隣にいた兵士の呼びかけに、笑みをこぼした。




