ディアナの反攻です
「おや?どういうおつもりですか?」
剣を向けられてなお、デ・メキンは全く怯んでいない。
「貴方を倒します!そうすればこの魔法攻撃も無くなるでしょう。何より、貴方達の事情など知った事ではありません!」
ディアナの行動に呼応して後ろにいた兵士たちも武器を構える。
「ふむふむ。実に愚かしい選択ですが、興味はありますねぇ。この状況の人間がどのようにして私を倒そうとするのか。グェッフフフ。」
デ・メキンは嘲笑い、挑発するように両手を広げる。
「・・・何の真似ですか。」
「どうぞお気になさらず。私は貴方達の攻撃を全て受け止めようと思っただけですので。」
「ほざくな!」
一人の兵士が弓を射る。
真っすぐ飛ぶ矢は何の抵抗もなくデ・メキンの腹に刺さる。
「っし!」
喜んだのもつかの間、デ・メキンに苦しがっている様子はない。
むしろ不思議そうに自分のお腹に刺さっている矢を見て、観察しているように見える。
「ハァァァッ!!」
その隙をついて兵士の二人の槍が交差してデ・メキンを串刺しにする。
が、これも全く効いていない様子。
「馬鹿なッ!?」
「驚くのは後です!!」
抵抗してこないことをいいことに、ディアナはデ・メキンの首と思われる一番大きい目玉の付いた頭部斬り飛ばす。
目玉は一回転すると、酒の水たまりに軽い音を立てて落ちる。
「まだです!!」
すかさずディアナは反す剣でのこりの目玉も斬り飛ばす。
その姿に意を決した兵士たちもデ・メキンに追撃を与える。
何度も突き刺し、何度も射て、何度も斬り刻む。
酒の水たまりがどす黒い赤色に染まる頃には、デ・メキンの体は肉塊に成り果てていた。
「や、やったのか?」
兵士のつぶやきにディアナは即座に首を横に振る。
「え?」
「まだ倒せていません。」
「で、ですが姫様、もう敵は・・・。」
「証拠にこの場が消えていません。」
ディアナの言葉に兵士たちはすぐに周りを見て、ディアナの周りに固まる。
「ど、どういうことですか!?」
「つまり・・・。」
「グェッフフフ~。」
あの嫌な笑い声と共にデ・メキンは先程と同じように姿を見せる。
「っ!」
デ・メキンの何の変化もない姿にディアナの構える剣が少し震える。
「ふむふむ。これが貴方達の抵抗ですか?随分と芸の無いことですねぇ。」
「貴方はいったい・・・何ですか!!」
ディアナの悲鳴にも似た怒声にデ・メキンはいやらしい笑みを浮かべて饒舌に語る。
「私が貴方達の前に素直に姿を現すと本気で思っていたのですか?貴方達は私が何をしなくても死ぬのに?術者が術を解かれる恐れのある行動をするとでも?それとも私が貴方達人間に慈悲をかけると?どれも馬鹿げた話ですよねぇ?そんな私に全くの得のない行動、するわけないじゃないですか~。グェッフフフ~。」
愉快そうに笑うと、手を叩いて水たまりに魔法陣をゆっくりと描く。
「何をっ!?」
「とても面白いものを見せてくれた貴方達に私からのご褒美ですよ。と、言っても貴方達の最後の希望を打ち砕き、従順になって頂くためのご褒美ですけどね~。」
魔法陣は薄っすらと光ると、水たまりに映像が流れた。
それは、何の前触れなく起こった。
カーニバルがディアナ捜索隊を編成し、ゼアンがディアナの身を案じていた時だった。
「ッ!!!?!?」
血相を変えた兵士がゼアンのもとに転がり込んできた。
「て、敵襲ーーーー!!」
その声と同時に外からカラカラという音が響きだす。
兵士に声を掛けることもなく、陣から出ると、目の間を埋め尽くすスケルトンの軍勢が見える。
「これは!?」
サイモンの疑問に答えるように声が重く響く。
「我が名は魔王軍第三の将アバラン!これより魔王様の命により、貴様らを殲滅する!スケルトンナイト共よ!蹂躙せよ!!」
スケルトンナイトと呼ばれた剣と盾を構えてた骸骨剣士の大軍は少しのずれもなく前進する。
「ひっ!?」
陣より少し離れていた兵士をスケルトンナイトは目の前にいたというだけで何の躊躇いもなく斬り捨てる。
その光景を見て、ようやく兵士たちは何が起きているかを理解し、慌てて戦いの準備を始める。
「ジジイ!!」
カーニバルは一目散にゼアンの下に駆け寄る。
「カーニバル!貴様はすぐさま紅蓮隊を招集しろ!サイモン!急ぎ体勢を立て直せ!」
それだけ言い残し、ゼアンは大剣を担いでスケルトンナイトに駆けていく。
そこからは阿鼻叫喚だった。
カーニバルの指示の下、集った紅蓮隊はまだしも、他の兵士たちは態勢を立て直せないままに次々と斬り殺されて行く。
一部のスケルトンナイトはゼアンによって葬られているが、それも数が少ない。
何故ならゼアンも予想できなかったスケルトンナイトの強さが通常のものとは比べられないほどに強かったからだ。
それでもゼアンのおかげで被害を抑えられるだけ抑えられた。
その隙を逃さないようにサイモンは生き残っている兵士を集め、撤退を指示した。
「どうです?実に愉快な光景でしょ?」
「・・・嘘だ。」
目の前の映像が信じられず、ディアナは小さな声で否定した。




