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カナデル帝国の現状です

花が咲き誇る庭園。

何も知らないような暢気な顔をした犬が走り回る庭の中央では、丸テーブルを囲んで六人の人間が座っている。

「以上より、我が軍は次なる拠点を目指し、進軍中とのことです。」

「快勝か。流石は紅獅子殿ですな。陛下。」

「ああ。」

陛下と呼ばれた男は何の感情もなく答える。

「続いては儂からよろしいかのぉ?」

「答えよミヨ婆。」

ミヨ婆と呼ばれたご老人は立ち上がり、一礼してから口を開く。

「この国の防衛大臣として発言させて頂く。結果から申せばあまりよろしい状況ではないのぉ。」

「何故だ?」

「紅獅子殿の勝利は良くも悪くも民に希望を持たせすぎているんじゃ。負けた場合の避難先などを考えておらん。このままでは負けた場合はそのまま雪崩れ込まれてこの国の民は全滅じゃのぉ。」

「ふむ。紅獅子殿の活躍が民に浮かれる理由を設けてしもうたか。商業大臣としては活気があって経済が回り、民が喜びに満ちていることは大変好ましいのじゃがな。」

立派な髭を撫でつつも、微妙な表情になる。

「ですがこうも考えられんか?各々方。紅獅子殿が魔王すらも屠ると。その方はどう思う?紅獅子殿の右腕の娘として。」

「はい。お答えさせて頂くなら、魔王に勝つことは通常では困難です。そのことは父上も心得ている模様。陛下には先に申し上げましたが、紅獅子殿のは頃合いを見て逃亡する算段です。」

「なんと!?」

眼鏡を軽く動かしてから、若い女性は謝罪の意味も込めて深く頭を下げる。

「まぁ、しゃあねぇんじゃねぇの?魔王軍は未知数だし、何より物資が心持たねぇよ。貿易大臣として言わせてもらうけどなぁ、他の国は滅びまくって近くにいねぇのよ。貿易相手が。」

チャラそうな中年の男は悪びれる様子もなく肩をすくめる。

「では今は貴様は何の仕事もしていないと余(よ)に報告するつもりだったのか?」

明らかな敵意にも男は悪びれることなく、肩をすくめるだけである。

「使えん男だ。」

「そう言うでない。こ奴はこ奴なりにやるべきことをやっておる。それはこのミヨが保証しましょうぞ陛下。」

「ならば何をしているか、この場で報告しろ。」

頭を掻きながら男は立ち上がって答える。

「えっとね~。今はちょっと遠いけどミーティア公国に頼んで物資の援助と冒険者の貸し出しを依頼中かな。何ならこの国の民を奴さんに受け入れてもらえるように頼むこともできるでしょうねぇ。」

「ミーティアか。あそこの王は好かん。弱腰の軟弱王ではないか。」

「だが冒険者の質は一流よ?名のある冒険者チームを5つも抱えているだけあるねぇ。それに物資が豊富だ。背に海を構えているだけあって貿易が盛んだしね。陛下は奴さんの王様の事嫌いかもしれねぇけど、あそこ以外ではもう海を渡るしかないっしょ。それとも陛下はミール宗教国やバンビア王国のような末路を辿るんですかい?」

「おい!言いすぎじゃぞ貿易大臣!不敬罪に問われても文句は言えんぞ!」

「はいはい。法務大臣さんよ。」

態度が気に入らないのか、法務大臣と呼ばれたご老人は立派な髭を何度も撫でて気を抑えようとしている。

「ククク。」

だがそれとは打って変わって陛下は上機嫌そうに薄っすらと笑う。

「やはり貴様は面白いな貿易大臣、いやカリバよ。余にこれほど食って掛かるのは貴様だけぞ。」

「誉め言葉として受け取っときますよ陛下。」

「実際に褒めておる。他の者共は余に怯えて声すら出さん。だが貴様らは余が間違えた道に進めば正してくれようぞ。よい、カリバよその交易を続けよ。余が許そう。」

「はいよ。あっと、それからね陛下。一応アランベルグ共和国にもうちの部下を視察に行かせてんだけどね。あんまし良い声が無いのよ。だから期待しないでちょうだいよ、陛下。」

「ふんっ。愚問を申すなカリバ。貴様なら開かない扉をこじ開けれるだろ?軟弱な声は止めよ。」

「へ~い。」

「他に報告はあるか?無ければ茶の時間にするが?」

陛下の言葉に全員の目がある男に集まる。

その男はフードを目深にかぶり、この報告会が始まってから一言も発していない。

視線が集まっても、男は何も発しない。

「・・・バロン。余に何か報告はあるか?」

「・・・いえ。」

「内政大臣としてもか?」

「・・・特には。」

何とも言えない緊張感漂う間が少しあり、誰かの頬を汗が伝うと、陛下は手を叩く。

「では開きだ。茶の時間にしようぞ。」

時が動き出したことに気づいたように、ハッとなったメイドたちはすぐさまお茶の準備を始めた。


ゼアンが酒を煽っている頃、ディアナは自分の兵を引き連れて周辺探索に勤しんでいた。

「姫様。そろそろお休みになった方が。」

「いいえ。何の成果もなしにはそうはいきません。皆さんも辛いでしょうが、励みましょう。」

「は、はい。」

「姫様。こちらお飲み物です。」

「ありがとう。・・・ふぅ。しかし、この辺りはほとんど何もありませんね。」

「ですね。もう少し辺鄙な場所だと思っていましたが・・・魔王の領地ではその考えを捨てた方がよいでしょうね。」

「そうね。」

「姫様。ここら一帯の地図は完成しました。」

「そう見せて・・・これは。」

「はい。そこには洞窟がありました。中は確認できていません。」

「そうですか。ならば確認しましょう。」

「今からですか!?明るくなってからの方が。」

「そうはいきません。成果を得られないうちは帰りません。」

ディアナの強い意志に部下の兵士たちはそれ以上は何も言わずに洞窟へと案内をした。



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