サバイバル生活1日目終了です
「んじゃ基本的にはスキルは産まれてきたときに持っているものが全てなんだな?」
「そういうことになるかな。オラも火の弾しかスキルは無いし。」
「じゃあ次の話をしようぜ。」
会話してくれることが嬉しくなり、耳がピコピコと動く。
「お、オラでよければ!」
「お前以外に誰がいるんだよ?」
「だ、だよね。へへへ。」
カイドウは呆れたように息を吐く。
「気を取り直して聞くぞ?」
「うん!」
「さっきお前はここは初めてって言ったよな?なんでこんな場所に?というかここはオウゴンガの森で間違いないか?」
「間違いないよ。ここはオウゴンガの森って呼ばれているよ。オラがここに来た理由は新たな部族を作るためだよ。」
「新たな部族?どういうことだ?」
「えっと、オラたち魔小者は部族を作り、集落を形成するんだけど、ずっと同じ場所にいたら全滅する恐れがあるでしょ?だから祖先に選ばれた男の魔小者たちは自分の部族を作るために集落に適している場所、そして花嫁を探すんだ。オラは選ばれたんだ!」
自信満々に言っている。
正直どうでもいいことを聞いてしまったような気もしなくはないが、無言よりはましと考える。
だが、興味を惹かれることを聞いた。
(集落か。前世では人と関わってこなかったけど、今世は人と関わってもいいかもな。・・・いや、どうなんだろ。前世では信頼している人に裏切られたし、身内だと思っていた輩は全員金にしか興味なかったし、小学校ではイジメの現場を目撃したし、その現場を教頭は無視してたし、人間関係なんてあっていいことなんて無いかもな。・・・うん、やめておこうかな集落。)
「そんで選ばれたオラと他の仲間は集落を出て、旅に出たんだ。仲間は海や山に向かって行って、オラはこの森に来たんだ。へへへ。」
「何でこの森にしたんだ?」
「え?う~ん、森には木の実があるから食料に困らないと思ったからなんだけど?」
「他にも森はあっただろう?」
「それはそうかもしれないけど、オラの集落から一番近い森はここだったんだよ。・・・その、こんな奥深くに来ようとは思ってなかったけど・・・。」
「ここは奥深いのか?」
「正しいかどうかわからないけど、ここってたぶんオウゴンガの森の北の方だよね?」
「いや、知らん。」
「そ、そうなの?オラはてっきりここに住んでいるとばかり。」
(しまったな。そういう設定にしておいた方が良かった可能性を潰してしまったな。面倒だが、記憶喪失を装う。)
「すまんな。僕は目が覚めたらこの森にいたんだ。それ以前のことは何にも覚えていない。とりあえず腹が減ったから何か食い物ないか探していただけだ。」
「え!?そうなの!?それは大変じゃないの!?」
「仕方ないだろう?どうしようもないんだから。」
「そ、それもそうだね。オラも何もできないや。」
「そうだろ?」
ト・クゥは黙ってしまう。
その表情は同情に満ちている。
別に同情してほしい訳ではないが、この設定にしてしまった以上、無視することにする。
今日一日で結構色々学ぶことができたし、寝ることにする。
ト・クゥに背中を向け、横になる。
仄暗い水底に落ちていく感覚と共に、瞼はゆっくりと閉じた。
サバイバル生活2日目。
朝の寒さに身をよじりながら、目覚める。
ぐっすりと寝てしまったため、せっかく起こした火が消えてしまっている。
少しだけ残念に思いながらも諦めることにする。
(というか、体の疲れを感じないぞ?)
前世では運動した後は、決まって朝起きるのがダルかった。
だが、今はそんな気はしない。
むしろスッキリとした目覚めである。
自分の体の調子の良さに驚きながらも、ト・クゥの様子を見る。
逃げる恐れもあったが、涎を垂らしているのを見ると杞憂だったようである。
(ん~こいつを今後も利用できねぇかな。)
火を起こすのが大変なことを靴紐を結びなおしながら思い出す。
火を起こせるらしいト・クゥはとても貴重な存在だとカイドウは認識している。
だが、問題がある。
(前世で友達、というか仲の良い人がいなかった僕はこいつをどうやって今後も利用していくかだよな。友達や仲間になるのが手っ取り早いんだろうけど、僕には勧誘の技術はねぇぞ。そもそも友達ってどうしたらなるんだ?仲間は・・・仲間になってよ?か?だが、そう言われてこいつが仲間になる保証はねぇよな?だったらむしろこいつを僕の奴隷にするか?いや、裏切られる可能性がある行動は避けたいよな。そうなると、う~ん・・・。)
薄っすらと瞼が開く。
考え事をしている間にト・クゥは目を覚ます。
起きる前に縛りぐらい取ればよかったなどと思っていると、ト・クゥはこちらに気づく。
「よ、よぉ。」
裏返りそうになる声を我慢し、何となく挨拶をする。
目をパチクリしている様から、失敗かなどと考えていると。
「うん、おはよう。」
笑顔で挨拶を返してくる。
心の中で息を吐きながら次の言葉を考える。
「悪いが、食料はねぇから朝飯はねぇぞ?」
発言した言葉にガッカリとしながらも言ってしまったことを変えることはできないので、表情に出さないようにする。
「あ、それならオラが木の実を持ってるよ?」
(やべぇ!?それは僕が食べましたって言えねぇ・・・知らないフリをしよう。)
「そうか?ならその縛りを外してやるよ。」
蔓を外すと、自由になったことを確認し、ト・クゥはピョンピョンと跳ねる。
あの状態で寝させたのは良くなかったか?などと変なことを思う。
「うーーーん!自由だ!」
両手を限界まで広げる。
そしてたくさんの新鮮な空気を吸い込み、息を吐く。
「さて!」
腰の小さな袋をもぞもぞと動かして木の実を探す。
だが、そんなものはあるわけがないのでカイドウはいい訳の準備を始める。
「あれ?あれ?あれ!?」
「ドウシタンダ?」
棒読みになっているが、続けることにする。
「オラが集めた木の実が無い!?紐も無い!?」
「ソウナノカ?逃げている時に落としたんじゃないか?」
段々慣れたので、棒読みは消える。
「そうかもしれない。ごめん。期待させるようなことを言って。」
「気にするな。最初っから期待などしていない。」
「うぅ。」
がっくりと肩を落とし、耳も垂れる。
落としたのではなく、食べてしまったし、紐は火起こしの材料になったしで、ト・クゥは悪くないのに謝らせてしまった罪悪感が多少なりとも感じる。
「あ~その、なんかこの辺で食えそうなもんとかに心当たりはないか?」
「え?う、う~ん。」
頭を悩ませてはいるが、良い答えが出てこない様子である。
「この際、食えれば何でもいいぞ?」
とりあえず答えやすいようにしておく。
「えっと、森だから木の実を探せばあるだろうけど、オラの知らない木の実だったら食べない方がいいと思うんだ。毒を持ってることが多いからさ。」
「んじゃ木の実以外ではないのか?例えばキノコとか?」
「う~んオラもある程度はわかるけど、木の実と同じことになるかな。君が気にしないなら1つだけ心当たりはあるけど・・・。」
「何だ?この際、本当に何でもいいぞ?」
「カエルなんてどうかな?」
「カエルがいるのか!?」
食い気味にト・クゥの肩を掴む。
「う、うん!岩ガエルって言って、大概岩のある所には巣を作ってるよ。オラ、逃げてるときにでっかい岩を見たんだ。あそこにいるかもしれない。」
「それはどこだ!?」
「逃げてる時だったから合ってるかどうかわかんないけど、あっち。」
「よし!行くか!」
「え!?オラもいいの!?」
「何言ってんだよ、お前がいなきゃ正確な場所がわかんねぇだろ。」
「う、うん!」
カイドウの後ろをト・クゥは小走り気味について行く。
二人はカエルを求めて、森の中を歩き出した。
大きな後ろ姿に、ト・クゥは心が躍った。
~ト・クゥの日記1日目~
今日は待ちに待った旅立ちの日!
オラとト・キキ、ト・ミィは意気揚々と集落を出て行く。
出て行く際、父と母は不安そうにオラのことを見ていたけど、心配しないで!
オラは必ず新しい集落を作って、しっかりと族長として集落を守るから!
そしたら父も母も集落に招待するからね!
気分は上場、オラの旅は絶対に成功する!
ト・キキもト・ミィも負けないぞってオラと張り合っているから心配はないかな。
も、最もオラが言えたことじゃないけど・・・。
二人には言えないけど、オラは少しだけ不安なんだよな。
ト・キキは土を操るスキルを持っているから建物を作るのに大いに役立つし、ト・ミィはとても強い風を操るスキルがあるから木を切るのに困らなさそうだけど、オラのは弱い火の玉を出せるスキルだから。
こんなんじゃ、オラは集落どころか、嫁さんも見つからないかも。
そんなことばかり考えているうちに二人と別れてしまった。
独りぼっちになって初めて思う心細さ。
オラ、こんなに寂しいと思ったことなんてないよ。
ト・キキは集落の場所に海を選んでいたなぁ。
土を操るスキルがあるからどこでも成功するんだろうなぁ。
ト・ミィは山を選んでいたなぁ。
自分の風を操るスキルを最大限に活かすんだってさ。
みんな考えてるんだなぁ。
オラは何にも考えてないや。
とりあえず、食料に困らないようにオラは森を選ぼう。
どこの森がいいかなぁ。
と、言っても父と母を呼ぶんなら近い森の方がいいよね。
その方が疲れないで済むもんね!
よし!決めた!オラはオウゴンガの森にしよう!
そんなノリで決めたオウゴンガの森に明日入る。
オラの集落は絶対居心地のいい場所にするんだ!
明日に夢をはせて、今日はもう寝よう。
食料の木の実は美味しいなぁ。
オウゴンガの森にも美味しい木の実はあるよね?
・・・おやすみなさい。




