火起こしと見たことない生き物です
あれからどのくらい歩いただろう。
森の中ということもあって、どのくらいの時間が経ったかなんてわからない。
上を見上げても太陽はおろか、空すら見えない。
どんなに歩き続けても、水なんて音すら聞こえない。
(どこまで奥深いんだこれ?頼んどいてあれだけどさ、もう少し、な?)
歩き続けたため、とりあえず水を諦める。
(匂いは我慢だな。)
丁度よい長さの棒を拾い、近くに生えていた蔓と合わせてみたことない生き物を縛り上げる。
逃げられないことを確認し、火おこしに取り掛かる。
(とりあえず形は出来たな。)
石で円を作り、円の中には枝を何本か並べる。
(さっきのスキルでどうにかできるか?)
頭の中で確認するように聞くが、何も起きない。
(・・・ダメか?)
先程の様に頭の中にアナウンスは流れない。
仕方がないので、前世で読んだサバイバルの本を思い出す。
(必要な物は紐と枝、板に燃えやすいものだな。)
枝と板はそこら辺に落ちている手ごろなものを選び、燃えやすいものに葉っぱを選択する。
(問題は紐だな。)
麻から作るわけにもいかないし、代わりになる蔓では耐久性に難がある。
(そもそも麻なんて自生しているのか?)
ここに来るまでの光景を思い出すが、そんなものは無い。
息を吐き、火すらを起こせないことに軽く視線を落とすと、自分の足元に目がいく。
そこで気づく、自分が靴を履いていることに。
「あるじゃん紐。」
靴を脱ぎ、靴紐を取る。
「あとは・・・。」
枝を軽くしならせ、両端を紐で結び、弓のような形を作る。
ちょうど真ん中ぐらいの紐の部分に真っすぐな少し太めの枝を絡ませる。
弓を持って動かせることを確認し、板の上に絡ませた枝の先端を置く。
「これで動かせば・・・。」
弓を左右に動かし、枝が回ることを確認してから速く動かす。
枝はすごい勢いで回り続ける。
だが、何の変化もない。
(まだまだ!)
カイドウは諦めず、動かし続ける。
数分後、火は起きなかった。
(何が足りないんだ?)
目の前の道具を見ながら考える。
これだけの道具があれば火は起きると考えていたが、その考えを捨てる。
(もう一度、一から考え直すぞ。)
もう一度、記憶の海に入る。
色んな光景の中から図書館にいる自分を選び出す。
可能性を探し、様々な本を読んでいる光景が見える。
(あん時は才能探しに生を燃やしてたな・・・。)
物思いにふけそうな自分の頬を叩き、欲しい記憶を探す。
(あった!これだ!)
自分が休憩の時に読んでいたサバイバルの本が見える。
そこの火起こしのページで気づく。
「着火剤だ!」
本の中には油分を含む竹が使われていた。
さっそく竹を探しに立ち上がるが、この森の中に竹などなかったことを自分自身で記憶している。
「ダメだ・・・。」
意気消沈し、座り込む。
知識だけではどうにもならないことを現在進行形で体感している。
ぐぎゅるるぅぅぅ~。
虚しく、腹が鳴る。
(いっそのこと、生で食うか?)
振り返り、見たことない生き物を見てまた気づく。
腰に小さな袋をぶら下げているのを。
「何だこれ?」
その小さな袋を取り、中を確認すると、木のみの他に藁で編んだ紐のような物が入っている。
笑みがこぼれる。
これで火が起こせると思い、藁紐をほぐし、藁にする。
(これを・・・。)
先程の火起こしの道具の下にいれ、再度動かし続ける。
すると、すぐに煙が立ち、火の赤みが見える。
「今だ!」
すぐさま自分の作った石の円の中にいれ、葉っぱをちぎって入れる。
息を吹きかけ、酸素が燃えるのを促す。
息を吹き葉っぱを入れ続けると、小さな火は徐々に大きくなり、枝も燃やし始める。
「よし!」
何とか火を起こすことに成功した。
小さくガッツポーズをし、すぐさま見たことない生き物を火の近くにかざす。
魚を焼くようにじっくりと待つ。
その間、小さな袋に入っていた木の実を食べてみる。
(・・・マズくはないが、美味くもないな。味的には薄味のミカンだな。それもかなり。)
カイドウは我慢して木の実を食べる。
生きるため、食べれる物は食べなければならない。
(死んだ俺が今は本気で生きようとしている。・・・不思議なもんだ。)
そんなことを考えながら、焼けるのをじっくりと待つことにした。
(・・・温かい。)
意識を失ってからしばらく経ち、朦朧とする中感じたのは温かいということだった。
(何で温かいんだろ?)
瞼を何度も動かし、徐々に目の前の光景が見え始める。
それと同時に記憶も蘇る。
(オラは確か、魔狼に襲われて、それで?それで・・・そう、見たことない人が目の前に降ってきて、それで・・・。)
意識が覚醒し、目の前の光景を理解する。
煌々と燃える火が視界に入る。
「へ?」
動けないことも理解し、自分の状況をハッキリとわかる。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「何だ!?」
火の温かさに当てられ、寝そうになっていたカイドウは飛び起きる。
「助けてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
そして気づく、目の前の見たことない生き物が叫んでいることを。
「・・・絞めるか。」
「やめてぇぇぇぇぇぇ!!オラは食べても美味しくないよぉぉぉぉぉぉ!!」
「いや、それはこれから食う俺が決めることだし。」
「絶対に美味しくないよぉぉ!!何ならオラが持ってる木の実をあげるから!!ゆぅぅるぅぅしぃぃてぇぇ!!」
涙を豪快に流し、鼻水を叫びながらまき散らす。
その光景を見て、食欲が失せる。
「・・・はぁ~。」
火から遠ざける。
ただ逃げられる危険性を考慮し、縛ったままである。
「あ、ありがとうぅぅ。」
「礼はいらん。ただ単純に食う気が失せただけだ。」
「それでも食べないでくれてありがとう。」
涙で火が消えてないことを確認し、葉っぱと枝を適当に入れる。
「そ、それに、オラのこと、助けてくれたよね?」
「助けた?そんな覚えはないけど?」
「い、いやほら!魔狼から助けてくれたじゃん!」
「魔狼?・・・あの狼か?」
「そう!それ!あいつは魔狼っていう魔物なんだ!」
「ふ~ん。食えるのか?」
「え?」
「魔狼は食えるのかって。」
「えっと、食べたっていうことは聞いたことないけど・・・君はあれを食べるの?」
「いや知らねぇ。ただ食えるかどうか聞いただけだ。」
「そ、そうなんだ・・・。」
会話が切れる。
気まずい空気が流れるが、カイドウは気にしない。
黙って火が消えないように葉っぱと枝を交互にいれる。
「あ、あの・・・。」
「そういえばさっき魔物って言ったよな?」
「え?う、うん!」
「あいつは動物じゃないのか?」
「動物じゃないよ。魔物だよ。」
「動物はいないのか?」
「いるところにはいるけど、だいたいは人間の住んでるところかな?」
「この辺には?」
「わ、わかんない。オラもここは初めてだし・・・。」
「そうか。」
あからさまに肩を落とされる。
何か話さなければと考え、なぜか自己紹介を選択する。
「お、オラはト・クゥ!魔小者のト・クゥ!」
「魔小者?」
「うん!よく緑小者と間違われるけど、違うよ!尻尾の形や肌の色も緑小者のような緑色じゃなくて赤茶色だし。」
「・・・そうか。」
「そ、それに!オラたち魔小者は緑小者と違って知恵があるしね!あいつらは知恵の欠片もないやつらなんだ!」
「ふ~ん。」
また会話が切れる。
ト・クゥは脳をフル回転させ、どうにか話をつなげようと努力する。
「き、き、君の、名前は?」
「僕か?」
「う、うん!オラも名前が知りたいんだ!」
「・・・カイドウだ。」
「カイドウ?それが字かな?名前は?」
「いや名前がカイドウだ。」
「そうなの?じゃあ字は?」
「・・・ねぇな。」
「え!?そうなの!?」
じろりと睨まれ、口を瞬時に閉じる。
「あざな、だったか?それが無いとなんかダメなのか?」
「えっと、その、字無しは無能の証拠って言われてる・・・。」
「・・・まぁその通りかもな。」
素直に認めたことに驚く。
「で、でも!さっきスキルを使っていたよね?スキルが使えるってことは無能じゃないと思うんだけど・・・。」
「そうなのか?」
「うん!無能な者はスキルは一切使えないはず。・・・自身無いけど。あ、でも!オラも使えるよ!スキル!」
「へぇ~どんな?」
「火の玉を出せるんだ!」
「マジか!」
食いつきがいいことにト・クゥは嬉しくなる。
「うん!オラのスキル、火の弾は火の玉を出せるよ!も、最もまだまだ弱いけど・・・。」
「そんなことはどうでもいい!問題は火がつけられることだ!それは無限に火を出せるのか!?」
「無限は無理だよ・・・。」
「なんだ・・・そうか・・・。」
気落ちされる。
「で、でも1日に3回は使えるし、寝れば次の日も3回使えるよ!」
「ほぉ。どういう仕組みだ?」
興味を持てくれたことにホッとする。
「えっと、スキルっていうのは産まれ持ってくる才能なんだ。だから産まれてきたときに決まってるからオラの場合は1日3回なんだよ。」
「ふ~んよくわかんねぇな。スキルは今後覚えることはできないのか?」
「できなくはないけど、基本的には無理だよ。」
「無理なのに可能なのか?」
「えっとね、スキルを覚えるにはスキルボールが必要なんだ。」
「スキルボール?」
「うん。スキルボールはほとんど発見されないし、見た人も少ないよ。だけど、実際にスキルボールを使ってスキルを獲得した人がいるんだ。確か、人間の誰かだったよ?」
「ふ~ん。そんじゃスキルボールさえあれば、スキルを覚え続けられるんだな?」
「そうだけど、欲しいものが必ず手に入るとは限らないよ?」
「それはスキルボールの中身がランダムっていうことか?」
「そう。」
「なるほど・・・。」
カイドウの中でト・クゥの利用価値が上がる。
(もう少し話を聞いてみるか。処遇はそれからにしよう。)
口角が上がりそうになるのを我慢し、話を続けた。




