知らされる最悪の知らせです
朝日が昇る頃、カイドウは起床し、即座に動きやすい服装に着替え、中庭で準備運動を始める。
よく体をほぐした後、中庭内をジョギングする。
ジョギングが終わるころになると、ムーアも姿を見せる。
「しっかりやっているな。」
「はい!」
「では今日も立ち回りから始める。槍を構えろ!」
「はい!」
これが最近の朝の日課だ。
ムーアの指導の下、槍での戦闘の立ち回り、軽い打ち合い、試合とこなし、着実に技術を磨いていく。
「なかなか様になって来たなカイドウ。」
「ありがとうございます。」
「明日からは技の習得を目指してみよう。覚えの遅いお前は苦労するかもしれないが、決して諦めるな。もっとも、諦めの悪さは問題無いか。」
「あははは。」
「では素振りを軽くしてからあがれ。私は先にシャワーを頂こう。」
「どうぞどうぞ。」
去って行くムーアを見送ってからカイドウは素振りを再開する。
(う~ん。技の取得か。これまでで技術はかなり上達したと思うけど、技ってそんなに簡単に習得できるのか?レベルアップでしか習得したことないぞ?いったいどうやって・・・まさか強制的にレベルアップさせるのか!?)
「う~ん。謎だ。」
「アニキーーーー!!!!」
「ん?」
聞き覚えのある久しぶりの声。
振り返ると、血相を変えたクゥとパンプンがこちらに走ってくるのが見える。
「クー!それに・・・パンプンだったけ?」
「ハァハァ。あ、アニキ!」
「ど、どうしたんだよ?そんなに慌てて。」
「た、大変なんダゼ。」
「は?何が?」
「ご、ごぶり、ゴブリジェネラルが!?」
「なるほどね。」
応接間にはカイドウとクゥたちを含めた5人が席に座る。
「状況は理解したわ。敵にこの場所がバレたのね。」
「うん!しかもゴブリジェネラルっていう奴がこっちに来るんだ!オラ、急いで知らせなきゃって!」
「ありがとうクゥ。」
「この事をバルギウス様にも知らせなければ!?」
出て行こうとするムーアをメイド二人が阻む。
「・・・何の真似だ?」
ムーアの鋭い視線がカイドウに刺さる。
(ぼ、僕じゃありましぇーーーん!!)
「勝手な真似はしないで頂けるかしら。」
リリアナの言葉にムーアの殺気の方向が変わる。
「まだバルギウスに知らせるべきではないわ。そうよね?カイドウ。」
「え!?いや、その・・・。」
(知らんがな!!)
「冗談はほどほどにしろよ。この事がどれほどの一大事か。貴様はわかっているのか?」
「貴方こそ私の屋敷で勝手な真似ができると思ってるの?」
いつの間にかララがリリアナの後ろに立ち、戦闘態勢に入る。
それに応えるようにムーアの右手が剣に置かれる。
メイドたちも戦闘準備に入りだす。
「ちょ、ちょっと待って!?」
その間にクゥが割り込む。
「今は味方内で喧嘩してる場合じゃないよ!どうするのかを話し合わないと!」
「クゥの言う通りダゼ。お前たち、落ち着くんダゼ。」
二人の言葉に、皆戦闘態勢を止める。
(・・・あれ?これって僕がやるべきだったのでは?)
「そ、それでリリアナ、何でバルギウスに知らせないの?」
「カイドウ・・・本気で言ってるの?」
(わりかし本気です。)
「理由は簡単よ。バルギウスに信用性が無いからよ。」
「そ、それだけ?」
「そうよ。これ以上の理由はないでしょ?」
(う、う~ん・・・確かにバルギウスは僕もあんまり信用してないけど、悪い奴ではないような・・・。)
ララに新しいお茶を用意させ、リリアナはそれを一口飲む。
「この前、あいつと話してハッキリとしたわ。あいつは自分の利益の為に人を利用してるのよ。カイドウ、貴方のこともね。」
「ま、マジですか?」
「大真面目に言ってるわ。このままじゃ貴方は使い潰されるだけよ。」
「バルギウス様がそんなことするわけ・・・!?」
「あら?思い当たる節があるのかしら?」
「・・・何でも、ない。」
ムーアの嫌な顔を見て、あの日の話を思い出す。
ムーアの過去、お姫様の代わりに生贄にされた話を。
「だ、だが!知らせるべきだ!ゴブリジェネラルが進行してくるのなら我々の軍を動かさないと!」
「パンプン。」
「なんダゼ?」
「貴方の主観で構わないから聞かせなさい。ゴブリジェネラルに勝てるかどうかを。」
何の迷いもなく、パンプンは首を横に振る。
「不可能ダゼ。ゴブリジェネラルはかなり強い、ダゼ。それに加えてのゴブリンの軍、ダゼ。カイドウが強いからって数の暴力の前では意味が無いんダゼ。」
「私の見解と一致ね。」
「だからと言って黙って見過ごすのか!?」
「勝てない相手と戦って私のカイドウを失うぐらいなら逃げる選択をするわ。」
(そこに僕の自由意思はない。ここ重要!)
「くっ!だ、だが!」
「悪いけど、貴方が言っている軍、あの兵士たちの集まりも期待できないわ。素人の私の目から見ても練度不足が見られる時点で死ぬようなものよ。」
反論できず、ムーアは唇を噛む。
「バルギウスが聞き分けのいい男なら即座に知らせたわ。けれどあの男は違う。聞き分けの悪い馬鹿よ。私がクゥとパンプンにお願いしたから知り得た情報よ。簡単には知らせないわ。」
「お願い・・・だったのか、ダゼ?」
パンプンの疑問を笑顔で黙らせ、リリアナはムーアに向き直る。
「貴方のことは拘束させてもらうわ。こちらで話し合いを行った後で解放してあげる。」
メイド二人はムーアの両腕を掴む。
「ちょ!?」
カイドウの言葉よりも早く、ムーアは連れて行かれた。
抵抗は、無かった。




