魔王軍の動きです
「魔王が出てきてからの戦いは戦いなんかじゃなかった。あれはもはや殺戮だ。思い出したくもない!」
いつの間にかムーアの目に涙が見える。
「アバランも魔王の一言で戦い方を変え、兄さんは・・・あっけなく倒れた。まるでそれまでは遊んでいたように急に強くなったんだ。」
(・・・否定は出来ないな。)
「拮抗していた戦線はすぐさま崩壊し、一瞬で魔王軍優勢になった。アバランを中心に国は攻め込まれた。民はほとんどが殺されたが、生き残れたものは散り散りに。ダラン殿はその時間を稼ぐために最後の一人になっても魔王と戦い続けた。」
(つまり魔王は人でも戦えるってことだよな。それとも魔王も遊ぶ趣味があるのか?いずれにしてもあの女神の話通りになったら僕は魔王と・・・うう、逃げてぇ。)
「私は騎士団長、父上に命令されてバルギウス様とローレシア様を逃がそうとした。バルギウス様はすぐさま見つけたけど、ローレシア様は・・・見当たらなかった。」
「てことは生きてる可能性も・・・。」
「あって欲しい!でなければローレシア様が亡くなったのは兄さんのせいということだ!!」
よくわからない感情のままにムーアは机を叩く。
「・・・バルギウス様は今でも兄さんを恨んでいる。兄さんさえ戦いを挑まなければ、国は滅ばなかったんだから・・・当然といえば当然だ。」
(でもムーアさんはお兄さんのおかげで命拾いしたと。因果なものだな。)
「・・・あの、変な質問しますけど魔王ってどんな戦い方でしたか?」
「ん?どういうことだ?」
「いや、何となく・・・そう!参考程度に!」
「よくわからない。」
「え?」
「少ししか見ていないが、ダラン殿のあの剣筋を全て片手で防いでしまえた。それぐらいしかわからない。」
(う、う~ん参考にならない。)
「お部屋の準備できたッス!」
「そうか。カイドウ、私の話はここまでだ。明日からよろしく頼む。」
それだけ言い残し、ムーアはカイドウの前から去って行った。
カイドウは魔王の異次元の強さと第三の将アバランの存在を知ることが出来た。
「ダンドー様。お食事のご用意が出来ました。」
「メデルか。悪いな。雑務をさせてしまって。」
「いいえ。ダンドー様の下で働けること、このメデル感激しております。」
「そんなもんか。」
ダンドーは感謝の意を伝えるようにメデルの頭を撫でる。
メデルはそれを嬉しそうにはにかむ。
「メシにしよう。お前もこいメデル。」
「はい!ダンドー様。」
料理が用意された席にはダンドーの他にメデル、そしてドン・ボボが酒を浴びるように飲んでいる。
「ドベベベベ。すっかりその位置が板に付いたなぁ。鬼族のお嬢ちゃん。」
「お褒め頂き光栄ですドン・ボボ様。」
「ドベベベベ!」
ダンドーはナイフとフォークを器用に扱い、肉を口に運ぶ。
「ドン・ボボ。カナデル帝国との戦況はどうなのだ?未だに勝利の報告が無いようだが?」
「どうやら奴さんら結構粘っているようだぞ。時期にアバランが動くとの話だ。」
「何?アバランがか?それは事実なのだろうな?」
「事実以外にワシャ言わないわ!」
二人の話を聴いていたメデルは恐る恐る話に加わる。
「勉強不足ですみません。アバラン様が戦に出ることはどういう意味なのでしょうか?」
「ドベベベベ。お嬢ちゃんは知らないだろうなぁ。」
「アバランは我らが魔王軍の中でも最強の軍。第三の将の地位に付いてはいるが、戦だけを見るのならアバランは誰にも負けないだろう。」
「ワシャらでも勝てんという話だお嬢ちゃん。」
「だ、ダンドー様やドン・ボボ様よりもですか!?」
「無論。一対一の戦いなら結果はわからないがな。」
「ワシャ負けそう。」
ドン・ボボはおどけるように言う。
「要するにだ。アバランが動くということは人間共はそれほどの強さを見せているということだ。これは魔王様の策が外れたと見るべきか?」
「ドベベベベ。滅多なことを言うなダンドー。首がいくつあっても足らんぞ?」
「俺は冷静に分析しただけだ。位置的にアバランが動くよりも俺たちの方が近い。違うか?」
「物資の横取りを危惧、ということかのぉ。」
最後の肉を口の中に入れ、軽く咀嚼して飲み込む。
「そう考えるのなら俺たちでは手こずる程の強さを人間が見せているということになる。」
ダンドーの言葉にメデルの足は震える。
「ドベベベベ。心配しなくてもええ。お嬢ちゃんが戦うことは無い。戦いはワシャらに任せておけばええ。」
「当然だ。有能なメデルを失うような戦いはせん。変な話だが、人間が俺たちの想像よりも強いということはだ。小耳にはさんだオウゴンガの森の話も・・・あながち人間の仕業かもな。」
「オウゴンガの森の話?」
「ドベベベベ。ゴブリメイジは雑魚だろ。人間なら簡単に殺せるわ。恐れることは無いわい。」
メデルの知らない話をダンドーたちは続ける。
「だが、ゴブリルークが動いたとも聞いたぞ。」
「・・・ゴブリルークだと?」
先程まで陽気に笑っていたドン・ボボの表情が変わった。




