半魔族のメイド、ネネです
あの決闘から四日が経った。
「・・・ふむ。」
「どうですか?」
「問題はありませんよ。回復に向けて順調です。」
カイドウはホッと胸を撫でおろす。
あの決闘での最後の技、スキル影狼。
現在のカイドウでは体に負担が大きく、肩を酷く痛めていた。
「どのくらいでカイドウは戦えるようになりますか?」
「申し訳ありませんがしばらくは安静です。今回は筋を酷く痛めたにすぎませんでしたが、下手をしたら脱臼、もしくは骨を砕いていたところです。」
(こわっ!)
「安静の後にリハビリ、それを考えたら・・・一ヶ月は戦うようなことはお勧めしません。ですが、もう日常生活をしても問題ないでしょう。」
「ありがとうございますお医者様。」
「いえいえ。この村を守って頂いた英雄の診療が出来るということで、私は誇りに思っていますよ。それでは次回は一週間後ということで。」
「はい、お願いします。」
あの日からリリアナはカイドウの世話を甲斐甲斐しく行っていた。
「後遺症とかなくてよかったわねカイドウ。」
「へ?あ、ああ。」
医者の前だったからカイドウは平然としていたが、リリアナの前だと動揺してしまう。
あの日の接吻以来、カイドウの目はどうしてもリリアナの唇に行ってしまう。
だから意識してしまっている。
(リリアナは・・・そうでもなさそうなんだよあなぁ。)
リリアナは何事も無かったように様々なことで動いて要る。
「リリアナ様、冒険者について。バルギウス様がお話があるそうです。」
「わかったわ。カイドウは念のため今日一日安静にしていなさい。いいわね?」
「あ、はい。」
「見張りは・・・そうね。ネネに頼んどいてちょうだい。」
「畏まりました。」
「じゃあ行ってくるわ。」
リリアナは手を振ると、馬車に乗って行く。
この数日でカイドウが分かったのは皆が皆、自由に動いていることだ。
リリアナは言わずもがなで、ララはリリアナにつきっきり。
ミムルは庭に大きな畑を作っているし、クルミは衣服づくりに夢中。
元々裁縫師という職業があったらしい。
カミラは酒場で働き、オルゲンは騎士たちの指導。
クゥとパンプンはオウゴンガの森を探索しているらしい。
「何て言うか・・・暇だな。」
「そうッスか?」
猫耳猫尻尾、毛並みは白髪。
あちらの世界ではコスプレと言われたほうが納得できるこの女性はネネ。
6人のメイドの一人である。
「寝てばかりっていうのは暇なもんだよネネ。」
「ん~自分にはよくわからないッス。お仕事が無いことはとても楽でいいじゃないッスか。」
(この目は本当のことを言っている目だな。)
「・・・何て言うか、ネネって他のメイドたちとは違うよね。」
「そうなんッスか!?自分、何かやらかしましたッスか!?」
「いいやそんなことは無いよ。その、自意識過剰と思わないでね?ネネはさ、他のメイドと違って僕にあんまり興味なさそうって感じなんだよね。」
「興味満々ッスよ?」
「いやまぁそうなんだろうけど、何と言いますか・・・未知に対する興味っぽい気がするんだよ。他の子たちは僕を好いているから何でも知りたいみたいな感じだけど。」
「あ~やっぱりそういうのってわかるもんなんッスね。」
「じゃあやっぱり?」
「リリアナ様にも見抜かれたッス。その・・・ダメなんッスかね?」
「ダメじゃないけど、何で?」
ネネは先程までの明るい雰囲気から暗い、寂しそうな雰囲気になる。
「カイドウ様は、自分の姿をどう思うッスか?」
「コスプ・・・こほんっ。可愛いと思うけど?」
(あぶねぇ。危うくコスプレイヤーって言いかけたぜ。)
「か、可愛いんッスか!?自分が!?」
(うん?どこからどう見ても君は美少女の部類でしょ?そりゃまぁリリアナに比べたら・・・うん胸のサイズは勝っているかな。ってそんなことじゃないか。)
「ネネは可愛いと思うけど・・・何かあったの?」
「その、気持ち悪くないんッスか?」
明らかに耳は垂れ、尻尾は元気なく垂れ下がっている。
「えっと何で?」
「自分・・・その、半魔族ッスよ?」
「ごめん半魔族って何?」
カイドウの返答にネネはキョトンっとすると、噴き出して笑う。
「ニャニャニャ!」
(う~ん僕は何か面白いことを言ったのかな?)
「カイドウ様は面白いッス。・・・半魔族っていうのは、先祖のどこかで魔族と交わっている者に現れる証拠みたいなもんッス。」
「えっと、つまり?」
「自分の御先祖様の誰かが魔族と交わり子供を設けたッス。その結果、時は流れて自分にその証拠である魔族の血が表に出たんッス。それがこの耳と尻尾ッス。」
(軽い気持ちでコスプレとか思ってごめんなさい。)
「あ~僕ってその、ね?」
「聞いてるッス。記憶が無いんッスよね?」
(うん、そういう設定ね。)
「・・・じゃあ半魔族を知って、どう思うッスか?」
(どうって聞かれてもコスプレイヤー以外には美少女という認識しかないんだけど?)
「その、気持ち悪いッスか?」
「うん、それはない。ネネは相変わらず可愛いと思うよ。」
「ニャニャ!」
耳はピコピコと動き、尻尾は嬉しそうに振られる。
まるで本物の猫のようだとカイドウは思うのだった。




