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・・・決着です

「これでッ!」

「くっ!」

先程から何回止めを刺そうとしたのか。

数えるのが馬鹿馬鹿しいほどの数をカイドウは全て防ぎきっている。

そのことが着実にムーアを追い詰める。

「今度こそはッ!」

「ぐっ!」

だが、やはりカイドウには当たらない。

間髪入れずに距離を取っては突く。

これを何度も何度も繰り返しているのに、まだまだスキルすら開花していないのに。

「何故だ!」

焦りは次第に怒りへと変化を遂げ、言葉となって姿を見せる。

「はぁはぁ。」

「何故!当たらない!」

ムーアの問いに対する答えを、カイドウは持っていない。

何故当たらないのか、それはカイドウにもわからない。

「クソッ!」

何度目かの突き、確実に息の根を止めるための攻撃。

「ッ!!」

「なッ!?」

その攻撃をカイドウは受け止めず、かわした。


「はぁはぁ。よし。」

ムーアの驚きをかき消すかのように兵士たちから歓声が上がる。

「やるじゃないカイドウ!その調子よ!今度はこっちから攻撃しなさい!」

「アニキさん、頑張ってください。」

リリアナたちからの応援。

けれど、カイドウの耳には届いていない。

(体が・・・熱い。)

抜けそうな力を入れなおし、槍を構える。

「チッ。」

距離を取ったムーアは攻めずにカイドウの様子を窺う。

(目が霞む・・・音が聞こえない・・・何がどうなっているんだ僕は・・・。)

(答え。貴方の体力の限界、及び精神的限界です。)

(げん・・・かい・・・?)

(答え。著しい体力の低下、酷使した体、全集中による精神の疲れなど。様々な要因が重なった結果の現れです。)

(僕は・・・負ける・・・のか・・・?)

(答え。何をもって負けと見なすか定かではありませんが、勝つことは困難です。)

(どうすることも、できないのか?)

(・・・答え。これ以上、戦闘行為を続けることはお勧めしません。)

(いや・・・だ・・・!あきらめ・・・たくない!)

カイドウの懐から眩い光が放たれる。

「なにっ!?」

(・・・答え。ランダムスキルの種が開花しました。)

「・・・スキル。」

「なッ!?」

一瞬、消えたと思ったカイドウがムーアの目の前に姿を見せる。

「影狼(かげろう)。」

しなる鞭のように槍が放たれる。

「くッ!!!」

瞬間の判断が生死を分ける。

高音を轟かせ、カイドウの槍が宙を舞う。

「・・・スキル、脅威の反射。」

ムーアはスキルを、使わざるを得なかった。


「・・・ん。」

目を開けると、そこには白い天井・・・ではなく。

「キヒヒ。」

「うおっ!?」

そこにはルルゥーの目があった。

「キヒヒ。お目覚めですかご主人様。」

「あ、うん。」

「キヒヒ。それは残念。もう少しで・・・いえ、お目覚めになられて良かったです。ほんと。キヒヒ。」

(もう少しって何!?)

「ではでは。お嬢様たちをお呼びしましょう。キヒヒ。」

ルルゥーはすぐさま部屋を出て行く。

(・・・ここは、屋敷だよな。ってことは・・・。)

「負け、たのか。」

目頭が熱くなる。

だが、足音が聞こえてきたので涙は流さない。

「おお。お目覚めになられたかカイドウ殿。」

「オルゲンさん・・・。」

オルゲンはベットの横の椅子に腰を下ろす。

「・・・残念でしたな。」

「うん・・・ごめんね。負けてしまって。あんなに訓練してくれたのに。」

「お気になさるな。皆、カイドウ殿に恩がある身。カイドウ殿の頼みを断る者などいませんよ。」

「そっか・・・けど、悔しいなぁ。」

耐えていたはずの涙は自然と零れる。

「勝てるなんて自惚れてはいないけど、認めさせるぐらいはって、思っていたのに。悔しい・・・悔しいよ、オルゲン。」

「・・・ですな。」

涙を我慢しようと、シーツを握る手に力が入るが止まらない。

「ちくしょう・・・。」

「顔をあげなさいカイドウ。」

「・・・リリアナ?」

部屋に入ってくるなり、リリアナはカイドウを抱きしめる。

「リリアナ!?」

「誇りに思いなさいカイドウ。貴方は勝てないと言われていたあの女に、一太刀入れたのよ。だから、もう泣くのを止めなさい。」

「リリアナ・・・。」

リリアナの小さな手は震えている。

それが、涙を堪えているということをカイドウに伝える。

「・・・ごめん。負けて。」

「まったくよ。でも、かっこよかったわ。」

「・・・うん。」

「カイドウ、誓いなさい。」

「え?」

「今日の教訓を胸に刻み、今後二度と負けないと。誓いなさい。」

(それは流石に無理があるような・・・。)

「誓いなさい!」

面と向かって言われる言葉。

涙を流しながらも気丈に命令する姿に、自然と笑みが零れる。

「うん、うん!もう、二度と負けないよ。」

「絶対よ。絶対に負けるんじゃないわよ。」

「うん!」

「返事はハイよ。」

(そこは別にいいんじゃ・・・。)

「返事は?」

もう涙は無い、あるのは笑顔のみ。

「ハイ!」

「ふふ。それでこそ私のカイドウよ。」

リリアナの唇が優しくカイドウの唇と重なった。



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