槍の自主訓練です
「では始めますかな。」
早朝、訓練場にてカイドウはオルゲンと対峙する。
「はい!お願いします!」
「うむ。まずはカイドウ殿に槍について理解して頂きます。」
(おー!なんかそれっぽい!)
「と言ってもワシも槍が得意な訳ではありませんので、そのつもりでお願いしますぞ。」
「はい!」
「まず槍とは、剣と違い自分自身で武器のリーチを変えることが出来る武器です。これは柄にあります。剣の柄はこのように短く、先は全て刃になっていますな。」
オルゲンが剣を抜いて実際に見せる。
「ですが、槍は刃は短いものの、柄はとても長い。これが槍の最もの特徴でしょう。」
カイドウは手に持つ槍を見て頷く。
「また、盾との相性もとても良いのですぞ。大きな盾を構え、相手を近づけずに撃退する。なんていう戦い方も槍にはありますな。」
(ふむふむ。)
「そして何よりも槍の戦いは“突き”にあります。槍の攻撃としては基本であり、最大の攻撃力を誇ります。まずはこの藁人形についてみてくだされ。」
いつものようにカイドウは藁人形に向かって突く。
だが、昨日とほとんど変わりはない。
「こんな感じだけど・・・どう、かな?」
「なるほど。」
槍の一突きだけでオルゲンはカイドウに何が足りないのかを理解する。
「恐らくでありますが、カイドウ殿は腕力も不足していますが突き方も良くない。」
「突き方?何か変なの?」
「いいですか、カイドウ殿。槍の突きは単純に前に腕を出せばいいわけではないのです。腕力がかなりあればそれでもいい威力にはなりますが、最大の攻撃力にはなりえません。コツは腕を捻り出すことですぞ。」
「ひねりだす?どういうことですか?」
「ちょっと拝借して・・・。」
オルゲンはカイドウから槍を借り、藁人形の前に立つ。
柄の真ん中ら辺を持ち、自分の体より後ろの位置に腕を持っていく。
軽く深呼吸すると、思いっきり腕を目の前の藁人形に向かって捻り出す。
すると、藁人形は良い音を立てて風穴を開ける。
(すごっ!?)
「こんなもんですかな。これが捻り出すということですカイドウ殿。」
「もう一回いいですか!」
「うむ。では、今度はゆっくり動きましょう。」
オルゲンに何度か実演をしてもらい、カイドウは突き方を学び、すぐさま自分に当てはめる。
何度か空気に向かって突きだし、感覚を学ぶ。
「では、やってみてください。」
「はい!」
カイドウは藁人形の前に立つ。
(見よう見まねだけど・・・!)
オルゲンの動きをほとんど完璧に近い状態で真似し、藁人形に突きを放つ。
先程とは比べ物にならない音を立てて、藁人形に穴をあける。
「お見事です。」
(すごい!全然違うじゃないか!)
「では、朝ご飯まではこの突きの練習を。」
「はい!」
突き方が分かると、苦だった訓練が楽しく感じるのであった。
カイドウが槍の訓練に夢中になる中、オルゲンは少し離れた場所に歩いていく。
「そこで見ているのだろう。ムーア。」
「・・・はい。」
木の裏から出てこようとしないムーアに軽く肩を下げ、オルゲンは木に寄りかかる。
「気になるのか?」
「・・・一応、私の下で訓練している兵ですので。」
「そうか。して、今のカイドウ殿のは合格か?」
「・・・いいえ。」
「クハハハ!だろうな。あの威力ではワシでも不合格だ。」
「ですが、昨日よりかは見込みがあります。やはり私の教え方は不適切なのでしょう。」
「違うな。」
「え?」
先程までの雰囲気と変わり、オルゲンは真剣な目になる。
「お前の教え方ではない。お前の心の問題だ。」
オルゲンの指摘がムーアの確信に触れ、ムーアは嫌な顔になる。
「いつまで過去に縛り続けるつもりだ?そろそろ自分自身を許してやることだ。ムーア。」
「私は・・・ッ!?」
脳裏に過るは忌々しい記憶。
その記憶は今のムーアを責めるように見える。
「・・・失礼します。」
「ムーア!」
「カイドウに伝えてください。早々に諦めろと。」
それだけ言い残し、ムーアは去って行く。
「まったく・・・。」
懐からペンダントを取り出す。
「このペンダントを早く返したいんだがな。」
中の写真を見ることなく、オルゲンはペンダントをしまった。
「取りあえずは妥協点でしょう。」
持ってきたサンドイッチを頬張りながらカイドウは頷く。
「ここからは突き以外の戦い方です。槍はその長い柄を使った薙ぎ払いや叩きつけなどがあります。」
「ふむ。」
「実際にやって見るのは容易でしょう。ですが、それを効果的に使うのは難しい。例えば薙ぎ払いなら複数のゴブリンが迫ってきた場合に有効であり、薙ぎ払うだけでは十分なダメージにならないので、そこから追撃の突きを放つのがセオリーですな。叩きつけは相手が複数ではない時に四角から脳天にめがけて放ちます。場合によってはそれでも十分でないこともありますので、そこからの突きに派生しますぞ。」
(なるほどな。やったことは無いが格ゲーのコンボみたいな感じか。)
「朝食後はこの二つの流れを訓練しましょう。」
「はい!」
素直なカイドウにオルゲンは笑みが零れるのであった。
今回から文章を短くさせてもらいました。
読んで頂いている方に少しでも早く続きを読んでもらうために、考えた末にそうさせてもらいました。
勝手な判断をお許しください。
これからもお楽しみいただけるように精進しますので、よろしくお願いします。




