決闘の申し込みです
打ち込みを始めて一時間、カイドウのランダムスキルの種に変化はない。
(ん~おかしいなぁ。そろそろ芽吹くと思ったんだけどな。)
何度も何度も藁人形に打ち込んではいるものの、ランダムスキルの種に変化が無いことがカイドウを少しだけ焦らせる。
「や、やったよカイドウ!」
ビービに見せられたランダムスキルの種は黄色く光り輝いている。
それが芽吹いたことを示している。
「ふむ。お前は芽吹いたな。じゃあ明日に備えて今日は終わりにしろ。いいな?」
「は~い。あ、でもここにいてもいいですか?」
「・・・構わない。」
ムーアはそれだけビービに言って元の場所に戻る。
「えへへ。カイドウも頑張れ!」
「おう。」
先程よりも強めにカイドウは打ち込みをする。
(しかし僕は槍が得意武器なんじゃなかったのか?芽吹く様子が無いんだが・・・。)
(答え。貴方に得意武器はありません。比較的、槍と斧が扱いやすいということです。)
(な、なるほど。けどじゃあランダムスキルの種はどういう風に判定するんだ?その場合。)
(答え。ランダムスキルの種は判定に困っている状態です。このまま訓練というものを続けても芽吹くかどうかは不明です。)
(え!?じゃあ僕はいつまでも終わらないってこと!?)
(答え。簡単に申し上げればそういうことになります。)
(どうすんだよ!?)
(答え。正規の方法ではランダムスキルの種が芽吹く、つまり判定するまで根気よく訓練を続ける以外に方法はありません。)
(そんな馬鹿な!?・・・ん?正規の方法では?じゃあそれ以外の方法があるのか?)
(答え。裏技的なものはあります。)
(そ、その方法は!?)
(・・・。)
(おい!!)
(答え。その方法をお使いになるのですか?)
(・・・はい?何だその質問は?正規の方法では困難なら使うしかないだろ?)
(答え。わかりました。ランダムスキルの種を強制的に芽吹かせる方法があります。)
(おお!)
(答え。強いものとの戦闘の勝利です。)
(・・・へ?)
(答え。強いものと戦闘で勝つことでランダムスキルの種にその武器が使えるということを認識させます。)
(その強いものって・・・。)
(答え。貴方自身よりも実力のあるものとの戦闘です。)
自然とカイドウの視線はムーアに向く。
(答え。ムーアはその条件に適合可です。)
(ムーア先生に勝てってことかよ!?無理に決まってんだろ!?)
(答え。ムーアでなくとも可。貴方より実力があるものなら誰でも可。ただし、槍を得意武器とランダムスキルの種に認識させるのであるならば槍を使用した上で勝て。と、いうことです。)
(無理だっての!それ以外に方法は無いのかよ!?)
(答え。現在所持しているランダムスキルの種に拘らず、既に芽吹いたランダムスキルの種を奪うという方法もあります。)
(それじゃ泥棒じゃん!そんなの犯罪じゃん!いいわけないじゃん!)
(答え。ランダムスキルの種に拘らず、槍スキルの種を探す方法もあります。)
(・・・ちなみにそれはどこにあるのかな?)
(答え。スキルの種は魔力の多い場所に姿を見せます。)
(つぅまぁりぃ?)
(答え。魔王の領地は適していると判断します。)
(バッキャロウ!!そんな自殺志願者みたいなことできるかーーー!!!)
(答え。では、“迷宮”で槍スキルの種を探す方法もあります。)
(迷宮?それは何?)
(答え。迷宮とはこの世界に自然と発生する場所のことです。それはお城の形をしているのものもあれば、洞窟の形をしているもの、塔のような形をしているもの、島のような形をしているものなど多種多様に存在します。迷宮の共通点はランダムに生成される宝とそれを守るモンスターがいることです。)
(・・・その迷宮っていうので一番近い場所はどこ?)
(答え。ここから近い場所はオウゴンガの森に存在する『大樹』です。)
(大樹?オウゴンガの森にあるのか?)
(答え。あります。ですが通常、迷宮へはパーティを組んで参加します。)
(一人ではダメなのか?)
(答え。迷宮の入り口は特殊な魔法陣に覆われていて、迷宮ごとの指定を守ったパーティのみ迷宮に挑むことが可能です。その指定の中には一人で挑むものも存在する可能性を否定はしませんが、原則としてはパーティを組むことが条件です。)
(なるほど。オウゴンガの森の大樹はパーティでないと挑めないと?)
(答え。オウゴンガの森の大樹の指定はパーティ人数五人。必要条件4種の武器種ならびにスキル水魔法系を所有している者。以上です。)
(うん。今から探しても無理だなそれは。ということは正規の方法か、強い奴を倒すかの二択か。どちらもかなりしんどいぞ。)
「先程から手が止まっているぞカイドウ。」
「ほへ?」
会話に夢中になりすぎてカイドウは槍の打ち込みが止まっていた。
「どうした?もう辞めるか?」
「え!?い、いや、あの!?」
「辞めるのであるならば止めはしない。」
「つ、続けます!続けさせてください!」
「ならば打ち込み続けろ・・・と、言いたいがお前は早々に武器を変更したほうが良いだろう。」
「なんで!?」
「理由は二つ。一つは槍の才能が無いと判断できるからだ。」
「どうして!?」
「他の者と比べ、お前の槍の使い方は下手くそだ。藁人形を見てみろ。」
言われた通りに藁人形を見てみると、カイドウの藁人形には小さな穴が無数に開いているが、他の者、特にビービの藁人形は穴の数は少ないが、明らかにカイドウの打ち込んだ穴より大きい。
「二つ目は・・・私個人の疑問だ。お前は確か、ゴブリライダーとの戦闘では剣を使っていたと聞いたが?」
「それは!・・・そうですけど。」
「ならば剣を使えばいい。なぜ槍を選ぶ?」
「なぜって・・・。」
(単純に得意武器だと思ったから何て言えないよなぁ。)
「答えられないのか?そんな状態でよくも今日まで訓練に励んだものだ。」
ムーアに返す言葉がなく、カイドウは黙るしかない。
「槍に拘りがないのなら辞めることを強く勧める。そんな気持ちでこのまま訓練を続けたとしてもランダムスキルの種は答えてはくれない。」
それが答えだというようにランダムスキルの種も変化を見せない。
「話は以上だ。カイドウ、ここを去れ。」
「・・・待ってくださいムーア先生。」
立ち去ろうとしていたムーアをカイドウは無意識に止める。
「そこまで言うなら実戦で判断してくださいよ。」
「実戦だと?」
「僕と闘って少しでも才能が有るとムーア先生が判断したら続けさせてください。けどもし、実戦を通しても才能が無いと判断したら僕は素直に槍を辞めます。」
「カイドウ!?」
ビービの驚きを無視するようにムーアとカイドウの模擬試合が決定してしまった。
「やらかしたあぁぁぁぁぁ!?」
カイドウは部屋で悶える。
「ご主人様、何をやらかしたのですか?」
メイドたちの中でカイドウ担当という役割が日ごとに回ってくる。
これはメイドたちがカイドウを愛しすぎて仕事を疎かにしてしまうために決まった措置である。
今日担当のメイドはミシェルという女の子で、年齢は14歳。
珍しい紫の長い髪を綺麗に束ねてる。
正確はおとなしく、カイドウは見た目の印象ではメイドの中で一番信頼している。
「いや、何て言うか、決闘を申し込んじゃって・・・。」
「決闘、ですか?なぜそのようなことに?」
「う~ん・・・成り行きと言いますか何と言いますか。僕自身わかりません。」
「そうですか。ですが、何かしら譲れないものがあったのではないでしょうか。」
「譲れないもの?」
「亡き父がいつも亡き母と喧嘩するたびに言っていました。『男には誰にも譲れないものがあるんだ!』と。きっとご主人様にもあったのではないでしょうか。」
「そう、なのかもな。」
昼間の出来事を思い出すようにカイドウは目を閉じる。
『僕と戦って少しでも才能が有るとムーア先生が判断したら続けさせてください。けどもし、実戦を通しても才能が無いと判断したら僕は素直に槍を辞めます。』
『カイドウ!?』
『ふむ。私には何のメリットも感じないが?なぜ戦わなければならない?』
『ムーア先生のメリットは知りません。ですが、戦う理由ならあります。』
『それは?』
『貴方が僕を決めつけたからです!僕に槍の才能が無いと言いますが、決めるのは貴方じゃない!ランダムスキルの種だ!』
『そのランダムスキルの種が芽吹かないということはお前に才能が無いと判断したからじゃないのか。』
『違う!ランダムスキルの種は早く芽吹く場合と遅く芽吹く場合があると教官は言っていました!なら、遅いだけかもしれないじゃないですか!』
『ふむ。お前の言葉には一理あるな。だが・・・。』
『その続きは聞きません!どうしても槍を使うことを止めたいのなら僕と戦ってください!それがムーア先生の僕と戦う理由です!』
『・・・良いだろう。お前の安い挑発に乗ってやる。明後日は訓練も休みだからその時にお前と決闘してやる。』
(明後日か。明後日までに少しでも実力をあげないとムーア先生に認めてもらうことなんてできないぞ。どうする?)
「うおっ!?」
目を開けると、ミシェルが顔を覗きこんでいる。
「ビックリした。」
「ご主人様、驚かせて申し訳ありません。ですが、お夕食が出来たそうです。」
「わかった。行こうか。」
ミシェルの先導で食堂に向かう途中、カイドウはオルゲンに会う。
「む?カイドウ殿。夕飯か?」
「オルゲンさん・・・!そうだ!オルゲンさん!明日、特訓に付き合ってもらってもいいですか!」
「特訓?ですか。訓練はどうされる?」
「明日は休みをもらいました。なので・・・。」
カイドウは軽く事情を説明すると、オルゲンは快く引き受けてくれた。




