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槍の訓練と新たな家です

(何だこれは?)

キラキラと光るビー玉サイズの石を空に掲げると透明色が透き通り、空が見える。

「これはランダムスキルの種だ。」

(ランダムスキル?)

「こいつは面白い性質を持っていてな。ある程度の個人の得意な武器を見抜く力があるのだ。」

(ほうほう。)

「これからお前らには好きな武器を選んでもらう。その武器にあった訓練を続ければこのランダムスキルの種は芽吹き、色を透明から黄色に変化させるだろう。変化したランダムスキルの種を食べればスキル習得だ。ただし、自分の得意な武器と判断されなければ芽吹くことは無い。つまり!武器を変更しろということだ。」

(なるほどな。こいつで得意武器を見つけ、その修業を行うのか。)

「こいつを持ってこれからの訓練には参加してもらう。三日ほど経てば判断が分かるだろう。早くランダムスキルの種が芽吹けば次の訓練に早くに参加できるのだ。芽吹かなければ次の訓練には進めないと思え。最後に、もしどの武器か迷っているのなら私に聞け。これまで育ててきた経験からある程度のアドバイスは出来るだろうよ。」

(となると、どの武器を選ぶかだな。とりあえずは自分の思うままにやってみよう。)

「では、呼ばれた者から前へ進め。」


「カイドウは何にするの?」

「う~ん・・・。」

(答え。貴方は職業が野生児の為、ある程度の武器は使用可能です。ですが、得意とされると考えるのであるならばオススメは槍、斧系の武器がよろしいかと。)

「槍か斧にするかな。」

「え!?剣じゃないの!?ゴブリライダーとの戦いでは剣だったじゃん!」

「あれは急ごしらえだしな。」

「そっか~。じゃあ私と一緒に槍にしようよ!」

(断る理由もないな。それに一人よりかはマシか。)

「なんだなんだ?お前らは槍にするのかよ。」

「うん!ミリンダは?」

「アタイはもちろん大剣だな!」

想像の大剣を背中から抜き、構えて見せる。

「おお!」

「まぁ、結局はこいつが選ぶんだろうけどな。」

(確かにそうだな。こいつが皆の得意武器を選んでくれる。それはつまりどんなにその武器で戦うことを望んでもその武器での成長は望めないということだ。僕の場合は最初っから当たりを引けるけどみんなは・・・。)

「ハズレた時はそん時考えるよ。」

ミリンダの屈託のない笑顔はすごいとカイドウは思う。

「次、カイドウ!」

「はい。」

「さぁ、好きな武器を選べ。」

「じゃあ槍で。」

「ん?槍か?」

「はい。」

「そうか。なら持っていけ。」

木箱の中に入っている槍を一つ取る。

「では次、ビービ!」

「は~い。」


辺りを見回し、兵士は頷く。

「全員武器は行きわたったな。では、担当官の前に集まれ。」

カイドウが向かった先にはブロンドヘアーの片目が隠れた女性が立っている。

「よろしく。私はクリン・ムーア。ムーアと呼んで欲しい。これから三日間、君たちは槍のお試し期間だ。ただ、自分の合わないと思ったら早々に変えてもらって構わない。」

ムーアの前にはカイドウやビービを含めて6人が立っている。

そのほとんどが女性で、男はカイドウともう一人しかいない。

ムーアは全員の目を見て息を吐く。

「さて、訓練を始める。こちらについてこい。」

ムーアの後について行くと、藁人形が立っている。

「これからこの藁人形に打ち込んでもらう。このように・・・なッ!!」

一瞬で背中から槍を取り、目の前の藁人形を貫く。

貫かれた藁人形は形を保てずの崩壊して、藁を散らかす。

「手本は以上だ。」

(こ、これが手本!?)

「では、各自藁人形の前に立って好きなだけ打ち込め。ただし、休むことは禁ずる。休む際は私に許可を求めろ。以上だ。」

(スパルタってもんじゃねぇぞ!?さっきのあれで何を理解するんだよ!?)

「えい!」

ビービが打ち込んだ藁人形は槍が軽く刺さって止まる。

(ああなるのが目に見えてるだろ。さっきのはスキルか何かか?)

「どうしたカイドウ。さっさと打ち込め。」

(とりあえずやってみるか!)

槍を両手でしっかりと握り、全力で藁人形に打ち込む。

槍は予想通り藁人形に軽く刺さって止まってしまう。

「もう一度だ!」

それから数時間、カイドウたちは槍を打ち込む続けた。

しかし、誰も貫くことは無かった。


「今日はここまで!」

太陽が沈みかけの頃に訓練は終了した。

残念ながら初日からランダムスキルの種が芽吹いた者はいなかった。

「明日の訓練でも昼前は本日同様走り込みだ。昼食を経て、まだ槍を続けるならばここに来い。話は以上、解散!」

それだけ言い残し、ムーアは去って行く。

「だはぁ。」

気の抜けた声を出してビービはその場に座り込む。

「疲れたぁ。今日は全然ダメだったなぁ。」

「そうだな。」

(どうやったらあんな風に貫けるんだ?全然コツがわからん。)

「でも私、槍を続けるよ!カイドウは?」

「僕も続ける。ムーア先生のあの綺麗な貫きは心が動くのに十分だったよ。」

「だよね。よーし!明日も頑張ろうカイドウ!」

「おう。」

槍を戻し、訓練場を後にする。

「ところでカイドウは今日も兵舎かな?」

訓練をする上でカイドウは兵舎の一室を借りていた。

元々誰も使っていない部屋だったので誰も気にしていない。

だが、リリアナは良しとしなかったのだ。

それは訓練を始めて初日のことである。

「ちょっと!女の兵士もいるじゃない!」

兵舎は男女共用であり、兵士の7割は男だが3割は女性である。

魔王の支配下にある以上、いつでも戦闘できるように志願兵の性別は関係ないと、バルギウスが決めたのだ。

「こんな所にカイドウは置いてはいられないわ!待ってなさいカイドウ!私が何とかするから!」

それだけ言い残し、リリアナは走って行ってしまった。

(結局それ以来、リリアナとは会ってないな。まぁ今日もあの何もない部屋に戻ろう。)

「あれ?あそこにいるのって・・・オルゲン様!?」

「え?」

兵舎の入り口にはオルゲンが腕を組んで立っている。

兵士たちは羨望の目でオルゲンを見ているが、誰も近づこうとはしない。

(なんかアイドルみたいな感じだな。)

そんなことを思っていると、カイドウを見つけたオルゲンが近づいてくる。

「カイドウ殿。迎えに来たぞ。」

「は?迎え?」

「うむ。先程部屋も確認したが荷物も少ないし、このまま行くぞ。」

「え?どこへ?」

有無を言わさず、カイドウはオルゲンに首根っこを掴まれて兵舎を後にする。

その光景を見た兵士たちの羨望と殺気の目に晒されながら。


「これは現実ですか?」

現在カイドウの目の前には立派な屋敷が見えている。

「ここがカイドウ殿の家だ。中で仲間たちも待っているぞ。」

「どういうことなの?」

「まぁ中に入ればわかるだろう。」

オルゲンに背中を押され、扉を開いて中に入ると、見知らぬ六人のメイドとメイド服を着たララが出迎えてくれる。

「おかえりなさいませご主人様。」

「おかえりなさいアニキさん。」

「・・・え?あ、はい。」

メイドたちはララにお辞儀をすると、それぞれに歩いていく。

「アニキさん、こちらへどうぞ。お嬢様が待っています。」

「・・・え?」

ララに手を引かれるがままに歩いていくと、広間に案内される。

「アニキ!」

一番に駆け付けてくれたのはクゥだった。

「クー!?何でここに!?」

「私がここに移動させたのよ。」

リリアナはドヤ顔で言う。

よく見ればクゥだけでなくクルミやミムルもいる。

「あたしも驚いたんだよ。」

カミラは驚きすぎて動けずにいるカイドウの背中を押してソファーに座らせる。

「ひんさしぶりだんなカイドウさん。」

(このあどけない笑顔は間違いなくミムル本人。)

「いや~こんなに出世するとはねカイドウ君。」

(この元気いっぱいの笑顔はクルミ本人。そしてクー。夢じゃないようだな。)

「・・・どういうことか説明を求めても?」

「あ~実はさ、あの後リリアナがバルギウスにきょうか、もとい交渉をしてね。」

(今恐喝って言おうとしなかった?ねぇ?)

「結構粘ってこうなりました。」

「いやもっと詳しく説明して!」

「要するによ!あんたの活躍を取引材料にしてこの屋敷やメイド、ある程度の資金、そしてクゥたちを連れてくるなど様々な要求を通したのよ。まぁそのせいでちょっとばかし時間がかかっちゃったけどね。」

(何この子怖い。)

「というわけで今日からここが私たちの家よカイドウ。」

「すごいよアニキ!こんな屋敷に住めるなんて!!」

「んだな。わたすはまだ緊張してまうけんど。」

「あははは!慣れだよ慣れ。」

(いや君は慣れすぎ。)

「さぁさぁカイドウ。お風呂に入ってきなさい。その後は食事よ。」

状況をよく理解できぬままにカイドウはメイドに連れられて風呂に入りに行く。

その際、服を脱がせようとしたメイドをしっかりと追い出しました。


「あのさリリアナ、少し聞いてもいいか?」

「何かしら?」

リリアナは優雅にぶどうジュースを飲んでいる。

「何かメイドの視線がちょっと、いやかなり気になるんだけど?」

カイドウがどこかに動くたびにメイドがついてくる。

それはどこへでもである。

お風呂だろうがトイレだろうがお構いなしの状態。

「まぁ面接をそういう基準にしたからね。」

「どういうこと?」

「面接内容は自己紹介、得意分野、文字の読み書き。そしてカイドウに対する好感度よ。」

(最後の必要!?)

「質問はこう。我らが主であるカイドウに対し、どう思っているか。これについて彼女らは真っ先に『愛している』と答えた信頼に足る子たちよ。」

(何それ怖い。というかどうりでトイレ中、外から聞こえる息が荒かったのか・・・気を付けよう。)

新たな家を手に入れたカイドウは貞操の危機を感じながらもその夜を過ごした。



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