対決!ゴブリライダーです
(あれがゴブリライダー・・・。)
虎のような生き物はカイドウの視線に気づいたのか、唸り声をあげている。
「さぁカイドウ!どうやって勝つのかしら?」
「何?」
リリアナの言葉に年輩の男が反応する。
「・・・無理じゃね?」
「はぁ!?」
「いやだって数が多すぎるしさ。こっちはまともに戦えて二人だろ?」
「このおっさんもいるでしょ!」
(いつの間に数に加えたんですかリリアナさん?)
リリアナに指をさされ、一瞬だけ驚いたが咳払いをして気を取り直す。
「あ~お嬢ちゃん?この数を前に勝つ負ける以前に戦うことは出来ないんだ。」
「何でよ?ビビってんのかしら?」
リリアナの安い挑発には乗らない。
「そういう訳ではない。戦えるならこの命などおしくはない。だが敵には人質がいる。その状況で下手な攻撃などしようものなら人質皆殺されるであろう。」
「その前に片付ければいいのよ!」
(リリアナ様にはその方法を教えて欲しい。)
「ど、どうやってそんなことが出来るんだ?」
「いいこと!数は大きな質の前には無力なのよ!」
ドヤ顔でカイドウを見る。
言葉を失ったカイドウは同じく言葉を失った年輩の男の肩をそっと叩く。
「い、いや!それはそうかもしれないが、ゴブリライダーはとても強い。いくらゴブリンに強くても・・・。」
「なら超えればいいわ!倒せ無い敵がいるなら倒せるように強くなって倒せばいいのよ。当たり前のことでしょ?」
年輩の男は顔面にパンチを喰らった気がして、噴き出して笑う。
「ダハハハ!その通りだなお嬢ちゃん!気に入った!」
腰の剣を出し、リリアナの前に置く。
「ワシの名はオルゲン・ミッサ!この戦いに力を貸そう!」
「当たり前のことを今さら言わないでちょうだい。」
(ま、マジかよ・・・。)
二人の世界にカイドウは何も言えなかった。
「期限は明日の朝だ。」
小さな小屋に場所を移し、地図を広げてカイドウたちは話し合う。
「目視ではおよそ50体のゴブリンと10体のゴブリライダーがここにいる。だが森の中にも伏兵の可能性があるであろう。」
オルゲンは駒を置きながら状況を再度説明していく。
「可能性はありません。」
オルゲンが置いた駒をララがどける。
「な!?」
「確証はあるのララ?」
「はいお嬢様。木々に聞きましたが、オルゲンさんが述べた数以上はいません。」
「そうか!お主はハイビスか!」
「はい、ですのでいません。」
「ならばこの数、兵士を導入すれば勝てるやもしれん!」
「いいや、問題はまだあるんダゼ。あのリーダー格のゴブリライダー、見たことない魔物を従えていたんダゼ」
(確かに虎のような生き物だったな。他は犬みたいだったのに。)
「確かにそうだが、先程よりも勝てる見込みが出来た。今はそれを素直に喜ぼう。」
オルゲンは兵士の駒を置いていく。
「ゴブリンは一人一体で問題ないだろう。ゴブリライダーについては三人で一体。リーダー格は・・・。」
「カイドウ一人で十分よ!」
リリアナお手製の駒がドンッと置かれる。
「む!だが一人では・・・。」
「問題ないわ!むしろ足手まといになるぐらいよ!」
「いや流石に一人では・・・。」
「出来るわ!私が認めた男でしょ!やり遂げなさいよ!」
(横暴だ!?)
「お嬢様、僭越ながら私がアニキさんのサポートに回ります。」
ララお手製の駒が置かれる。
「ならこれで決まりよ!早速行動に移しましょう!」
カイドウの気持ちを他に置き、戦いの舞台がスムーズにできつつあった。
(もう考えるのがしんどい。)
オルゲンの声に賛同する兵士は多く、バルギウスの許可も無くココ村の多くの兵士がゴブリンたちと対じする形で武器を構えていた。
「・・・コレハドウイウリョウケンカナ?」
流石に百人近い数の兵士が並べばゴブリライダーも違和感を覚える。
「ワシらは義勇兵!貴様らゴブリンを倒し、女性たちを解放する者共だ!!」
オルゲンの声に合わせるように兵士たちは声をあげる。
「ホォ。オンナドモガオカサレテモイイト?」
「させません!」
ララが地面に触れると、木々の根っこが地面を食い破り檻を囲む。
「ナニ!?」
「今だ!義勇兵の者共よ!かかれ!!」
オルゲンの突進と共に兵士たちも駆け出していく。
「死いぃぃぃぃぃぃねぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「ケギャ!?」
ゴブリンたちが動揺している隙に兵士たちが襲い掛かる。
「オマエタチ!ナニヲシテイルハンゲキダ!」
リーダー格のゴブリライダーの声に反応してゴブリライダーたちは瞬時に動くが、ゴブリンは対応できていない。
「クソ!」
立て直そうとゴブリンに近づこうとするが、根っこが邪魔をする。
「キサマッ!」
「貴方の相手はアニキさんです!」
(ララの根っこでどうにかなんないかなぁ。)
オルゲンから貰った剣を腰から抜き、構える。
だが、経験の浅いカイドウの構えは素人から見ても下手くそに見える。
「ゲギャギャギャ。ソイツガオレノアイテダト?ワラワセルナヨコムスメ。コイ!ガレオン!」
ガレオンと呼ばれた虎のような生き物は根っこの壁を軽々と超え、ゴブリライダーの横に立つ。
「グルルルル・・・。」
(これって二対一だよね?)
「キサマノアイテナドガレオンデジュウブンダ!ヤレ!ガレオン!」
「グガァッ!!」
一跳びでカイドウの喉元に爪が伸びる。
慌てて剣で守るが、力負けして簡単に吹き飛ぶ。
「ぐっ。」
攻撃されないようにすぐさま立ち上がって構える。
「ゲギャギャギャ!ザコジャナイカコイツハ!」
(想像よりも動きが遅いぞこの虎。)
カイドウは深呼吸をし、スキルを発動する。
「スキル、野生の小力。」
全身に力がみなぎり、スキルが発動したことを確認する。
「・・・ナニヲシタ?」
カイドウの雰囲気が変わったことにゴブリライダーはすぐに気づく。
「行くぞ虎!!」
一気にガレオンの懐に入り、剣を突き立てる。
だが、刺さらない。
「は?」
「グガァッ!」
薙ぎ払うように手で攻撃してくるが、瞬時に離れる。
「何がどうなって・・・。」
「グギャギャギャ。ガレオンノタイモウハコウテツナミノキョウド。カンタンニツラヌケルカバカメ。」
「マジかよ。」
「グガァッ!」
飛び掛かってくるのを余裕で避けるが、攻撃の手段を失ったカイドウは防戦一方である。
「グギャギャギャ。ドコマデモツノダソノタイリョクハ。」
飛び掛かりを避け、薙ぎ払う攻撃も避ける。
(柔らかい場所は・・・あそこか。)
早くも攻撃の手段を思いついたカイドウはチャンスを待ちながらガレオンの攻撃を避けた。
リストとにらめっこしていたバルギウスは息を吐く。
自分の裁量で人が犯される。
その重圧に耐えきれず、誰を差し出すのかをバルギウスは決めあぐねていた。
「ふぅ~・・・ん?外が騒がしいな。」
リストを放り投げ、窓の外を見て目を見開く。
「これはいったい!?」
バルギウスは考えるよりも先に体が動いた。
(よし!だんだんと見えてきたぞ。)
ガレオンの攻撃を避けながらカイドウは反撃のチャンスを見つける。
「グガァッ!」
「今だ!」
ガレオンが飛び掛かって来た瞬間、カイドウもガレオンに飛び掛かる。
「バカメ!ソノママシネ!」
「グガァッ!」
「ここだあぁぁぁぁぁっ!!」
ガレオンの攻撃を避け、剣を口の中に差し込む。
「ブガァッ!?」
カイドウの差した剣はガレオンの喉に突き刺さる。
跳んだ勢いのままにガレオンは地面に激突し、そのまま倒れる。
「バ、バカナッ!?」
「よし!」
刺した剣を抜き、ゴブリライダーに向けて構える。
「後はお前だけだな。」
「クッ!ガレオン!ガレオンッ!!」
ゴブリライダーの呼びかけにガレオンは反応を示さない。
「チッ!」
腰の剣を抜き、ゴブリライダーも構える。
「一気に決めるぞ!!」
一歩踏み込んだ瞬間、カイドウとゴブリライダーの間合いは詰まらない。
「・・・え?」
「ゲギャギャギャ。ドウヤラノウリョクハキレタヨウダナ。」
「マジかよ!?」
(答え。マジです。)
(おおい!?)
「スキル、アクセル!」
ゴブリライダーは紅く光り、一瞬でカイドウの背後に回る。
「なっ!?」
「シネ!」
無情にもゴブリライダーの刃はカイドウの背中を斬りつける。
「うがっ!?」
斬りつけた勢いのままにカイドウは倒れる。
「うぎぃ!?スキル!超自然回復!」
斬られた背中の傷はすごい勢いで塞がっていく。
「ホォ。マダスキルヲモッテイタカ。ダガ、カイフクカ。ナラ!」
立ち上がったカイドウの背後に回り斬りつける。
「うがぁっ!?」
「カイフクデキナクナルマデキリツヅケルダケダ!」
ゴブリライダーの斬撃をカイドウはガードできずに喰らい続けた。
「これは!?」
城壁の上から見下ろした景色は、兵士たちが勇猛果敢に戦う姿。
ゴブリンの多くは倒れているが、兵士たちもまた倒れている。
特にゴブリライダーは強く、未だに二体しか倒せていない。
「何が起きている!?」
視界にオルゲンがゴブリライダーを倒すのが入る。
「オルゲン!?」
「バルギウス様!」
物見をしていた兵士がバルギウスの下に駆け寄り、膝をつく。
「どういう状況だこれは!?」
「ハッ!オルゲン様が将となり戦いを始めました!あの男も一緒です!」
「あの男?カイドウのことか!?」
周りを見ると、カイドウがゴブリライダーに斬られているのが見える。
「カイドウ!?」
「現在の戦況はゴブリンのほとんどを殲滅。残すはゴブリライダーたちのみです!」
「勝っているのか?」
「このまま押し切れれば我々の勝ちです!」
兵士の希望に満ちた目にバルギウスは自然と笑みが零れた。




