厄介ごとが起きそう?です
「全く不愉快です!」
初めて見るララの憤慨ではあるが、無表情故に分かりづらい。
ただ言葉の強さで怒っていることは何となくわかる。
「気にするなよ。あいつの気持ちもわからなくはないんだからな。」
「じゃあ何でカイドウは手伝わないんだ?バルギウスさんの気持ちが分かるんだろ?」
「分かったところで僕には関係ないって言うのが答えじゃダメかな?」
「そ、そうかもしれないけどさ。何て言うか、あたし的にも緑小者の巣は潰すべきだと思うんだよ。その、経験者としては、さ。」
カミラの言いたいことが理解できたカイドウではあるが、それでも気持ちは揺らがない。
今回の緑小者の巣を潰す協力をして上手くいっても、次を要求され、次第にどんどん強い敵を倒すように命じられてしまう。
(僕は勇者じゃないんだ。)
結局のところ、どこかで妥協しない限り争いは続いていく。
それが人間の恐ろしさでもあり、生きとし生ける者の定めなのかもしれない。
「カミラには悪いけど、僕は勇者でも、ましてや英雄でもない。」
立ち止まり、カミラの目を見てハッキリと言う。
「僕はカイドウ。単なる村人Aと変わらないんだよ。」
「でも!」
「それに僕は自ら争いをする為にここに来たんじゃない。仲間であるリリアナを迎えに来たんだ。」
「そうです!お嬢様が最優先事項です!」
ずいっと前に出てきたリリアナを戻し、カミラにとどめの一言をぶつける。
「それに、クーやミムル、クルミが心配して待ってるんだ。争いなんかに参加してる暇は無い。」
「・・・そう、だね。」
それ以上、カミラが話すことはなかった。
「よろしいのですか!」
身勝手に出て行ったカイドウに怒りを覚え、兵士の一人がバルギウスに迫る。
「このままでよろしいのですか!バルギウス様!」
「仕方がない。」
「いいえ!それでは他の者へ示しがつきません!あ奴を即刻見つけ出し、裁きを与えるべきです!」
「そ、そうだ!」
兵士の声に賛同する者が一人。
「あ、ああ!あいつはバルギウス様を馬鹿にしてる!」
「ああ!俺もそう思う!」
「あいつにはハッキリと身分というものをわからせなければならない!」
一人、また一人と兵士たちが賛同し、悪い流れが出来つつあった。
「やめろ!」
だが、そうはならなかった。
「彼には彼なりの考えがあるんだ。それを俺たちが否定し、彼に無理強いをしいるのは身勝手だ。まるで魔物ようだよ。」
兵士たちの怒りが少しづつ鎮火していく。
「それにこのままの彼を無理矢理に手伝わせても隊列に乱れが生じるだけの可能性もある。そう考えたらこれで良かったとも思わないか?」
「そうですな。」
答え辛そうな兵士たちの間を通り抜けてきた年配の男が答える。
「わしらにはわしらの戦い方がある。緑小者の巣はわしらの手で潰そうではないか。」
「その通りだ。俺たちで潰そう。」
前を見ているバルギウスの言葉に兵士たちは従う以外の選択はなかった。
「待たせたわね。」
大量の布袋を持って現れたリリアナにパンプンは目を白黒させる。
「ず、随分と買ったんダゼ。」
「そうね!だから早く持ってちょうだい!」
相変わらずさに感動すらパンプンは覚える。
「ところで、結構買い物に時間かかっちゃったけど、何してたのよあんた。」
「おれさまダゼ?おれさまは情報収集をしていたんダゼ。」
「情報収集?なんのよ?」
「色々ダゼ。美味しい食べ物から兵士たちの動き、それからこの辺りの魔物の情報、何でもダゼ。」
「兵士の動きまでわかるの!?」
「まぁなダゼ。」
「それで目ぼしいものはあったのかしら?」
「ああダゼ。どうやら兵士たちとここの現領主であるバルギウスに連れて行かれた奴らがいるらしい。」
「はぁ?何で連れて行かれたのよ?ていうか誰よそいつらは?」
「う~むダゼ。」
答えるべきかどうか悩んでいるとリリアナに背中を叩かれる。
「ハッキリしなさい!」
「わ、わかったんダゼ。連れて行かれた理由は不明だが、連れて行かれたのは男一人と女一人、それから花少女一人らしい。」
「へぇ~。」
「・・・これはあくまでおれさまの推論だが、そいつらはお嬢ちゃんのお仲間じゃないのか?ダゼ。」
「はぁ!?何でそういう話になるのよ!」
「いや、花少女をこの辺でと考えたらそうなるんダゼ。」
リリアナの頭にカイドウとララの顔が浮かぶが、首を振って消す。
「で、でもどうしてここにあいつらがいるのよ!?」
「・・・それを答える前にお嬢ちゃんに一つ質問なんダゼ。」
荷物を置き、顔を見据えて質問する。
「な、なによ?」
「お嬢ちゃんはあいつらにしっかりとここに来ることを伝えてきたのか?ダゼ。」
リリアナの目がゆっくりとスライドするのを見て、パンプンは確信する。
「その様子じゃあ言っていないんダゼ。なら簡単な話ダゼ。きっとあいつらは消えたお嬢ちゃんを探しに来たんダゼ。それ以外に考えられないんダゼ。」
「それじゃあせっかくの計画がパァじゃない!」
「・・・自業自得、だと思うんダゼ。」
「ぐっ。」
パンプンの真っすぐな言葉にリリアナは反論できない。
「とにかく、合流することを勧めるんダゼ。これ以上騒ぎを大きくしたくないんならダゼ。」
「あ~もう!分かったわよ!パンプン、探しに行くわよ!」
「了解ダゼ。」
リリアナは一度、道具屋に立ち寄って荷物を預けてからカイドウたちを探しに向かった。
「ほぉ。」
カイドウたちは商店が並ぶ道で果物を見ていた。
「お兄ちゃん、それは今日入ったばかりの新鮮なやつだよ!」
威勢のいいおばちゃんに会釈をしながら果物を見る。
(見たことの無い果物だ。形は苺に似ているのに色が紫色。こっちは葡萄のような形なのに色がオレンジ色だ。どれもこれも見たことが・・・バナナだけは同じなのな。)
人房とって見つめる。
「そいつはヴァナーナだよ。甘さは控えめだが、栄養は満点だよ!」
(名前は違うのかよ!てか、ヴァナーナって・・・ふふっ。)
少しだけつぼに入りかけたが、顔には出さない。
「アニキさん、こんなところで油を売っていないで早くお嬢様を探しましょう。」
「慌てるなよララ。むやみやたらに探しても見つかるわけないだろ。こういうのはまず情報収集するのがセオリーだ。」
「そうなのですか?」
「そういうものだ。なぁおばちゃん。」
「はいよ!買うのかい?」
「いいや悪いが買えない。今手持ちがないんだよ。」
「そうなのかい?大変だね~お兄ちゃんも。」
「まぁな。んでさ、俺たち仲間を探してるんだけど、リリアナっていう中学生ぐらいの女の子なんだけど・・・。」
「ちゅうがくせい?が、何なのかわかんないけどリリアナっていう子は見かけていないねぇ。」
「そうか。」
カイドウが帰ろうとした時、腕を掴まれる。
「へ?」
「待ちなお兄ちゃん。文無しでそんな可愛らしい子たちを飢え死にさせるきかい?」
「え?い、いいや。」
カイドウの言葉におばちゃんはニヤッと笑う。
「なら、そのお仲間を探しながらもお腹を満たせるいい方法があるよ。」
(この流れは俺にもわかる、手伝う奴やん。)
瞬時に奥からエプロンを持ってきた満面の笑みのおばちゃんにカイドウは逆らえなかった。
「ん?何だこの人だかりは?」
「お前知らないのかよ!今、果物屋で可愛い子と巨乳の子が接客してんだよ!」
「マジで!?」
「マジもマジ!今やここはその子たちを見たくて大行列さ!」
「お、俺も並ぼうっと。」
「あ!俺も俺も!」
次から次へと人だかりができ、おばちゃんは満足そうに頷く。
「今日の売り上げは間違いなく生涯一だよ。」
「そうですかい。」
おばちゃんは隣で微妙なカイドウの顔をチラッと見て、前を向く。
「・・・あんたたちはココ村の人間じゃないね。」
「わかるのか?」
「わかるさ!商売人を舐めちゃいけないよ!人の顔を覚えんのは得意なんだからさ!」
「すごいんだな。」
自信満々の顔にカイドウは素直に賞賛する。
「だからわかるのよ。ここにいればあんたの仲間も見つかるってね。」
「そう、なのか?」
「ああ!これだけ盛り上がっていれば向こうから来るだろうし、商売人であるあたしの目をもってすれば見かけない奴を見つけるのはすぐさ。」
「それはありがたいよ。」
パンっと手を叩き、奥から果物を持ってきてカイドウの前に置く。
「これは?」
「あんたはあの子らと違って果物のことを理解していない感じだったから理解してもらおうとね。」
(先程までの接客を見ていたのはこういうことか。)
「んじゃ、有難く。」
「はいよ。お代はいいからね。これはさーびす?ってやつよ。」
カイドウは、まず初めにヴァナーナから食べてみる。
「うん味の薄いバナナだね。」
「何言ってんだい?ヴァナーナなんだから当たり前だろ?」
「まぁそうですね。」
次は紫色の苺を食べてみる。
(???!?!!?)
「変な顔してどうしたんだい?」
「あ、いやその・・・。」
(見た目は紫色の苺なのに味が葡萄って・・・もしかして!)
そう思ってオレンジ色の葡萄を食べると案の定、蜜柑の味である。
(これってもしかして・・・。)
「どうだい?どれも新鮮で美味いだろ?」
「う、うん。美味しいですよ。」
(見た目じゃなくて色で味が決まってるなこれ。てことは・・・。)
赤色の蜜柑の皮をむいて口に放り込む。
「これは蜜柑のままかい!!」
味は蜜柑であった、色は赤色なのに。
「みかん?それはみかんじゃなくてミィキャンだよお兄ちゃん?」
(だからなにその変な訛りの名前は!)
残りのミィキャンを食べていると、目の前を横切る兵士の顔がカイドウの目に入る。
その顔は青ざめていた。




