交渉?決裂です
「クー?その人と協力して緑小者たちを倒したのかい?二人で?」
兵士の誰かの喉が鳴る。
カイドウが口を開こうとした時、ララが前に出る。
「そうです!アニキさんがクゥさんと共に大量の緑小者を倒しました!これでいいですか?」
バルギウスの目の輝きが増すのを見て、カイドウは頭を抱える。
「それが事実ならぜひ頼みたいことがある!」
「却下だ。」
勢い任せに言おうとして、挫かれる。
「ま、まだ何も・・・。」
「僕は協力する気はない。以上だ。」
カイドウは立ち去ろうとするが、兵士たちがそれを阻止する。
「話だけでも聞いて欲しい!」
「嫌だ。」
「頼む!」
バルギウスはカイドウの前に行き、頭を下げる。
その姿を見ても首を縦に振らないカイドウに対して、兵士たちの怒りが募りだす。
「な、なぁ?」
「何だ?」
「話だけでも聞いてやらないか?ここまでしてるんだからさ。な?」
(厄介ごとはごめんだから聞かないようにしてんのに・・・はぁ~。)
実力行使でもない限りここから出られない以上、カイドウはカミラの言う通りにする。
「わかった。話だけ聞いてやる。」
「ありがとう!」
二人は座りなおしたが、カイドウは不貞腐れていた。
「へへっ。話を聞いてくれてありがとねリリアナ。そういう訳だからこの村以外に村ができることなんて無いよ。」
「話は分かったわ。けど、それとこれとは別よ。村は作る意志さえあれば出来るわ。」
リリアナの揺るがない瞳に、アモンは父親が一瞬見える。
「・・・アモン?」
「はえ?あ、ああ。うん、頑張ってね?リリアナ。」
「当たり前じゃない。」
再び服選びに戻ったリリアナをボーっと見る。
「気のせい?かな・・・。」
「何か言ったかしら?」
「う、ううん。何にも~。」
それから少しして、リリアナの服選びが終わる。
「とりあえずはこんなもんね。」
「決まったの~?」
「ええ。あとは・・・。」
店内を細かく物色するが、見当たらない。
「何かお探し~?」
「ええ。その、む、胸当てはどこかしら?」
「え?」
アモンの視線が下に動き、数秒して顔に戻る。
「えっと・・・。」
「・・・何か問題でも?」
冷たいリリアナの声に動じずに思ったことをアモンは口にする。
「えっと、必要なの?」
「当たり前でしょ!!あんた馬鹿なの!?」
「いや~必要サイズに満たしていないような~。」
「それ以上言うならこの店を破壊するわ。」
リリアナの魂のこもった声に、本気さがうかがえる。
「う、うん。む、胸当てね?胸当てはこっちだよ。」
お見せの奥に進むと、女性用の下着がたくさん置かれている。
端の方には男性用も見える。
「お客様の中には人に見られるのが嫌っていう人もいるからね~。」
「その気持ちは理解できるわ。」
リリアナは胸当てを一枚一枚丁寧に見て、安くて丈夫そうな物を籠に入れていく。
(これで私とクルミとミムル、ララはオッケーね。あとは・・・。)
かなりの大きさの胸当てを手に取り、考える。
(こ、このぐらいかしら?い、嫌もう少し小さく・・・いえ、それは私の願望ね。カミラのサイズは・・・。)
店の中でも上から数えた方が早い大きさを手に取る。
「お、大きいわね。」
「・・・ふふ。」
菩薩のような笑みを浮かべたアモンがリリアナに笑いかける。
「・・・何よ?」
「夢を見ることは大事だよね。」
「ちょっと!!それってどういう意味よ!?」
「八百屋のおじさんも言ってたよ。『女の胸には夢が詰まっている。』って。」
「その八百屋の糞ジジイには会わないようにするわ。」
「それも買うの~?わたしはオススメしないな~。」
「何か勘違いしているようだから一応訂正しておくわ。これは私の仲間用のものよ。」
「ッ!だよね~!いや~良かった~。うんうん。無謀な夢は見るもんじゃないよ~。」
「・・・貴方、本気でこの店を潰したいのかしら?」
真っ黒な炎がリリアナの背後に見え、アモンはすぐさま自分の口を塞ぐ。
「それが正しい判断よアモン。」
大きいサイズもいくつか籠に入れて、最後の買い物をする。
「ん?仲間には男性もいるの~?」
「ええ。」
手に取ったもさっとした下着を見ては戻す。
それをリリアナは何度も繰り返す。
「結構慎重に選ぶね~。彼氏~?」
「いいえ。未来の旦那用よ。」
「え?彼氏じゃないのに?」
「将来は結婚するんだから関係ないわ。だからこういうところで他との勝負をしていかなくちゃ。」
「ふ~ん。結構大変なんだね~。」
「貴方って・・・まぁいいわ。」
リリアナはクゥのは適当に選び、一番高い物と、そこそこの値段の物をカイドウ用に購入した。
「頼みというのは他でもない。君と仲間のクゥ君に討伐隊に加わって欲しい。」
バルギウスが手を叩くと兵士二人がかりで大きな地図を広げる。
「ここがココ村だ。」
ちょっとだけ開けた場所を指さす。
「そして討伐目標はここにいる。」
ココ村から指を西の方に動かし、森の中を指す。
「そこに何がいるんだ?」
「ここに緑小者の巣があるんだ。」
(まだあったのかよ。)
呆れてため息が出る。
「そいつらを倒すってことか?」
「ああ。だが、簡単なことじゃないんだ。」
バルギウスは悔しそうに唇を噛む。
「何が簡単ではないのでしょうか?アニキさんなら簡単に倒せますよ?」
(ララさんや、そういうことは言わないで欲しいね。)
「何か理由がるのか?」
「ここには、緑小者騎乗獣がいるんだ。それも複数体。」
「緑小者騎乗獣?なんだそりゃ?」
「知らないのか?奴らは知能の無い緑小者と違い、動物と心を通わせることが出来るんだ。心を通わせた動物に乗り、共に戦う。緑小者が可愛く見えるぐらい強い。」
嘘は言っていなさそうなので、それ以上は追及しない。
「どうだろうか?俺たちと一緒に緑小者騎乗獣たちと戦ってはくれないか?」
兵士たちの圧が強くなり、断りづらい雰囲気を作り出す。
「断る。」
けれど、カイドウは揺らがない。
「・・・どうしてもか?」
「ああ。嫌なもんは嫌だ。」
「・・・理由を聞いても?」
「僕は戦うのが嫌いだ。」
それだけ言ってカイドウは黙る。
「そ、それだけかい?」
「これ以上の理由が欲しいなら言ってやる。僕は戦うのが嫌いだし、理由の無い戦いは最も嫌いだ。」
「理由ならある!」
力強く言ったバルギウスは立ち上がる。
「魔物は滅ぼさなければならない存在だ!それも緑小者。奴らは人に害しか及ぼさない!被害者を増やさないためにも絶対に滅ぼさなければならないんだ!」
「・・・バルギウスの大切な人でも捕まっているのか?」
「それは・・・。」
「それともココ村の誰かが捕まっているのか?」
「・・・いや。だけど!奴らをこのまま見逃せば被害者が出るかもしれないだろ!」
だんだんとバルギウスの頭に血が上る。
「それを否定はしない。けれど現状では誰も捕まっていないんだろ?ならわざわざ戦う理由はないな。」
表情すら変わらないカイドウに、バルギウスの怒りが限界に近づく。
「だからって何もしないままでいいのかよ!!」
「良いも悪いも無い。僕はむやみやたらにハチの巣を突きたくないだけだ。」
「被害者が出てからでは遅いんだぞ!分かっているのかカイドウ!!」
「だからお前のその考えを僕は否定しないって言ってるだろ。だけど、それと僕が戦いに協力するかは別の話だ。僕に戦う理由がない以上、僕は戦わない。」
「何でだよ!!」
テーブルを乗り越えて、カイドウの胸ぐらを掴み上げる。
「何でだよ!何で力があるのに使わない!この村を!民を!何でだよ!!カイドウ!!」
バルギウスの手を上から握る。
「何度も同じことを言わすなバルギウス。僕には戦う理由はない。何ならハッキリと言ってやるか?」
「何を!」
「僕はこの村がどうなろうと、この村の人が酷い目に遭おうとも、僕には関係ない。」
「カイドウ!!」
腰の剣を抜き、カイドウの首に当てる。
それに合わせるように兵士たちも剣を抜き、カイドウたちを囲む。
「・・・どうした?殺したければ殺せばいい。」
「ちょっと!?」
カミラが動こうとするのをララが止める。
「ララ!?」
「動かない方が良いと判断します。」
ララの言う通り、動けば兵士たちの剣が飛んできそうで、カミラは動けない。
「フーッ!フーッ!」
「殺す気がないなら離せ。」
「・・・どうしても戦わない気かカイドウ。」
「何度でも言うが、僕には戦う理由はない。」
首に剣を当てられてもカイドウの瞳に動揺の色はない。
「ッ!」
カイドウを離し、剣を戻して膝をつく。
「頼むよカイドウ!」
床に頭をこすりつけて懇願する。
「頼むから!頼むから俺に力を貸してくれよカイドウ!」
バルギウスはみっともなく涙を流しながら訴える。
その姿を見ても全く動じていないカイドウに兵士たちが詰め寄る。
「貴様!殺されたいのか!」
「バルギウス様のこの姿を見ても何も思わないのか!」
「お前に人間の心は無いのか!!」
「俺は殺されたいとは思っていないし、バルギウスのこの姿に思うところは無いし、人間の心はある。だからこそ戦わない。戦って僕の仲間に被害が出るのは嫌だ。」
どんなにバルギウスが懇願しても首を縦に振らないカイドウにしびれを切らした兵士の一人がカミラの首に剣を当てる。
「こいつがどうなってもいいのか!」
「ひっ!?」
「やめ・・・!?」
バルギウスが止める前に兵士は床に倒れ伏す。
「いい加減にしろよ。お前のやっていることは知能の無い緑小者と同じだぞ。」
先程まで目の前にいたカイドウがいない。
「大丈夫か?」
「あ、ああ。」
カミラに被害が無いことを確認し、バルギウスに向き直る。
「緑小者の巣を潰したければ勝手にやれ。僕たちを巻き込むな。」
それ以上の会話を打ち切り、カイドウはカミラとララを連れて部屋を出て行った。




