リリアナのお買い物です
「待たせたわね。」
「いいやダゼ。」
パンプンは懐から布袋を取り出し、リリアナに渡す。
「これは?」
「金ダゼ。目標の金貨5枚とはいかなかったが、金貨2枚と銀貨8枚、それに銅貨7枚にはなったんダゼ。」
「そう、有難く頂戴するわ。」
布袋を漁り、中から銀貨1枚取り出してパンプンに渡す。
「ん?これはなんダゼ?」
「道案内料よ。これで私の行きたい場所に案内しなさい。」
微妙に頬が赤いことから照れているのだと分かる。
それを指摘するほど、パンプンは無謀ではない。
「貰っておくんダゼ。それで、どこに案内すればいいんダゼ?」
「そうね・・・とりあえずは道具が欲しいわ。畑仕事で使うようなやつね。」
「農具か、ダゼ。ならこっちダゼ。」
パンプンの後をついていくと、中央通りから少し離れた店に入って行く。
「邪魔するんダゼ。」
「お、カボチャじゃねーか。」
厳ついおっちゃんがニヤリと笑って声を掛けてくる。
「んあ?女連れとは珍しいじゃねーか。お前のこれか?」
小指を立てて見せる。
「ふっ。違うんダゼ。この嬢ちゃんは農具を買いに来ただけなんダゼ。おれさまはその手伝いダゼ。」
「どうも。」
リリアナは軽く会釈する。
「ほ~農具か。農具と言っても色々あるぜ。何が欲しいんだい?」
「畑を耕せる物が欲しいんだけど?」
「畑だな。ならこの辺りだな。」
鍬などが置いてある場所にリリアナを案内する。
「結構色々あるのね。」
「まぁな。形もそうだが、使われている鉱物でも値段が変わっちまう。例えば・・・。」
灰色の鍬と淡い緑色の鍬を持つ。
「こっちは鉄を使って作られた鍬だ。一般的な鍬で、値段は銀貨1枚。こっちはミスリルを使って作られた鍬だ。鉄と違ってとても丈夫で簡単には壊れることはねぇ。ただし、ミスリルが貴重な鉱物だから値は張る。金貨1枚と銀貨2枚だな。」
「ず、ずいぶん違うのね。」
「それだけミスリルは貴重ってことだ。ちなみに個人的なオススメは・・・。」
二つの鍬を元に戻し、赤茶色の鍬を手に取る。
「こいつだな。」
「それは?」
「こいつは赤銅っつうまぁまぁ珍しい鉱物を使って作られた代物だ。鉄製の鍬よりも値が高い銀貨2枚と銅貨5枚だが、丈夫さについてはこいつが一番だな。壊れにくいし、錆びにくいときたもんだ。まぁミスリルほどじゃねぇが、鉄を買うぐらいだったらこっちを買うことを勧めるぜ。」
「銀貨2枚と銅貨5枚か・・・。」
布袋内を確認し、頷く。
「決めたわ。その鍬を二本ちょうだい。」
「毎度アリ!二本で銀貨4枚にしてやろう。」
「え!?いいの!?」
「構わねぇぜ。嬢ちゃんが可愛いってことと、俺の勧めを買ってもらうんだからな。少しぐらいはまけてやるよ。」
「ありがとう!あ、おの後もお買い物があるから預かってもらってもいいかしら?」
「あいよ。」
リリアナは銀貨4枚払い、店を後にした。
「次はどこに行くんだぜ?」
「そうね・・・服と言いたいんだけど、正直迷うわね。」
残りのお金の数を頭の中で計算しながら答える。
「最低でも食料は確保したいし、他の道具も欲しいのよね。」
「なるほど、ダゼ。なら服は自分たちで作るのはどうダゼ?」
「作る?」
「そうダゼ。服を買うのは金がかかるが、布は安いんダゼ。」
「なるほどね。けど、作れるかしら?」
「そこはどうにかしてほしいんダゼ。」
「ん~背に腹は代えられないってところかな。よし、そうしましょう!」
「ちょいと待ちな嬢ちゃん。」
振り返ると、先程のおっちゃんが店の表に出てきている。
「さっきの・・・。」
「すまねぇな。話が聞こえちまったからよ。じじいのお節介を聞く気があるならいい買い物術があるぜ。」
「聞かせてちょうだい。」
リリアナは迷わずに聞く。
「へへっ。この道を少し進むとな、裏道に行けるんだよ。その裏道にある『キーモン』っつう店があるんだよ。そこはな、いらなくなった服を買い取り、綺麗に洗濯してから客に安く売ってんだよ。俺の来ているこのシャツなんか同じの三枚で銅貨2枚だぜ。」
「いいわね!布を買って服を作るより安いじゃない!」
「問題点があるとしたら目当ての服が必ずあるとは限らないっつうところだな。」
「構わないわよ。着れる服なら何でもいいんだから。」
「じゃあ行ってみな。『キーモン』だからな。」
「わかったわ!ありがとう!行きましょうパンプン。」
「いいネタだったんダゼ。」
「いいってことよ。」
パンプンとリリアナは『キーモン』という店に向かって走って行った。
「これは・・・。」
カイドウたちはリリアナを追いかけてココ村を発見した。
「木々が言うにはお嬢様はあの中に入って行ったそうです。」
「こんなところに本当に村があるなんて・・・。」
信じられないものを見たような顔でカミラは言う。
「しかし、かなり警備が厳しいな。」
レンガでできた壁の上に立つ武装した者たちを見てカイドウは言う。
「行きましょうアニキさん!あの中にお嬢様がいるんです!」
「落ち着けララ。このまま行ってもあの中には入れてもらえないよ。」
「なぜですか?」
「見ず知らずの僕たちを入れるような雰囲気じゃないだろう?それにララも知らない奴を洞窟の中に入れるのか?」
「それは・・・。」
返す言葉もなく、ララは黙ってしまう。
「じゃああたしらはここで待っているしかないのか?」
「そうだな・・・。」
(ここで待機していたとして、リリアナが必ず出てくる保証はない。それに火でも使いようものなら不審に思うだろうし、下手すれば敵と間違われて攻撃を受ける可能性も・・・だったら・・・。)
「あの村に入ってみるか?」
「そうしましょうアニキさん!」
「いいのかい?」
「敵意が無いことを示せば大丈夫だと信じよう。ここにいてもどうにもならないし。」
「わかったよ。それでいこう。」
「どこに行くんだい?」
声がした瞬間、頬に冷たいものを感じる。
瞬時にカイドウは動こうとするが、肩を掴まれる。
「むやみやたらに動かない方がいい。それに・・・。」
草むらから複数の武装した男たちが出てきてカイドウたちを囲む。
「この状況ではどうにもできないだろう?」
「・・・声を出しても?」
「叫ばないと誓えるのならいいよ。」
振り返ると、微笑を浮かべた色白の男が立っている。
唾を飲みこみ、落ち着いた声でカイドウは話を始める。
「僕たちに敵対の意志はない、です。」
「証拠は?」
優しい声なのに、どこか棘を感じる。
「信じてもらうしかない、です。僕たちは仲間を探してここまで来たんです。」
「仲間?」
「リリアナっていう女の子です。」
「知っているか?」
周りの男たちに聞くが、全員首を横に振る。
「そんな女は知らないようだが?なぜココ村にその女がいると思うんだい?」
「それは・・・。」
(どうする?正直に話すか?)
「答えられないのかい?」
男たちの武器を握る手に力が入る。
「隣にいるララは花少女ていう種族で、植物と会話ができるんだ、です。それでここら辺の木々に聞いて・・・。」
「なるほど。君の話をまとめると、木々に聞いた情報でそのリリアナという女があの村にいることを知り、駆け付けたと。」
「その通りです。」
「ふ~ん・・・。」
値踏みするようにカイドウたち、一人一人をじっくりと見る。
「・・・確かに君たちに敵対の意志はなさそうだな。そんなヘンテコな武器ではあの城壁も壊せないだろう。」
微妙な気持ちになるが、とりあえず安堵する。
「しかし、驚いたな。ココ村の人以外にも人間がいたなんてな。」
「それは、その・・・。」
「あたしの責任です。」
カイドウが答えに困っていると、カミラが口を開く。
「あたしたちが緑小者に捕まってしまって、それをカイドウ君は助けに来てくれたんです。」
話してよかったのかと思い、カミラを見ると、静かに頷く。
「なるほど緑小者に。それは大変だったね。では君たちに新たな質問だ。その緑小者の巣はどこだい?この近くにあるのなら早急に潰さないと・・・。」
「カイドウ君一人で全ての緑小者を倒しました。」
「え?」
「なので緑小者の巣には一匹も緑小者はいません。」
男の雰囲気が少し変わり、男たちのカイドウを見る目が変わる。
(何この雰囲気?)
「・・・それは事実、かな?」
「事実だよ、です。」
カミラの目を見て、男は頷く。
「君の言葉を信じよう。」
男が納得したことに周りの男たちが驚く。
「落ち着けお前たち。・・・ココ村は君たちを歓迎しよう。もう少し話を聞きたいから場所を移してもいいかな?」
カイドウたちは頷く。
「では行こう。」
男を先導に、武装した男たちがカイドウたちを囲み、ココ村へ入って行った。
「ここら辺かしら?」
裏道を歩きながら周りを見回す。
「あったんダゼ。」
小さな店の前でパンプンが止まる。
「ここなの?」
「看板に『キーモン』って書いてあるんだダゼ。」
「確かにそうね・・・じゃあパンプンはここで待っててちょうだい。」
「わかったんダゼ。」
リリアナは店の中に入って行った。
店の中は少し暗い。
キョロキョロと見回すと、服が多くあり、値段もどれも安い。
「安いわね。」
服を手に取ろうとして、視線に気づく。
振り返って見ると、机に頬杖をついているショートヘアーの女性と目が合う。
「こ、こんにちわ!」
「こんにちわ~。」
緩い声がリリアナの耳に入ってくる。
「見かけない顔だね~。ここは初めてかな~?」
「え、ええ。」
「ふへへ~素直だね~。わたしは素直なの好きだよ~。」
ニヤニヤと笑われて微妙な気持ちになる。
「み、見てもいいかしら?」
「ふへへ~良い物はないと思うけど、自由に見ていってね~。」
適当に会釈して、リリアナは服を再度見始めた。




