リリアナが行方不明!?かもです
「ところでお嬢ちゃん、売れる物はあったのか、ダゼ。」
「無かったわ!」
リリアナの堂々たる物言いに一瞬だけ言葉を失う。
「・・・お、おう、ダゼ?」
「あの糞緑小者女以外に興味なかったのよ。物資をしまっている場所には売れる物なんて何一つないし、食料も無いしで最悪よ!」
「それは・・・まぁそういう奴らだから仕方ないんだぜ。だけどどうするんダゼ?このまま手ぶらで村に行くつもりなのか?ダゼ。」
「いざとなったらこれを売ってみるわ。」
腰に差したナイフを見せる。
「こいつは・・・悪いがお嬢ちゃん、なまくらは売れないと思うんダゼ。」
「そんなことは私でも何となくわかるけど、本当にこれぐらいだったのよ。」
「なら、道中で珍しい薬草でも採取していくことにするのが得策ダゼ。」
「私はそういうのを見分けられないわよ?」
「このおれさまを誰だと思ってんダゼ?泣く子も黙る由緒正しき野菜汁族の貴族、ダゼ。使える野草から食べれるキノコまで見分けることなんて造作ないんダゼ。」
パンプンがドヤ顔で見てくる。
「なら貴方が集めなさい。」
「お、おう?ダゼ。」
「それが効率的よ。売り上げは・・・そうね、3:7にしてあげる。」
「・・・ちなみにどちらがさ・・・。」
「貴方が3で私が7に決まっているでしょ?」
曇りのない目にパンプンは素直に頷く。
「思った通りの答えをありがとうなんダゼ。」
「当然でしょ。」
皮肉が届かなかったことに心の中でため息を吐く。
「とにかく、ダゼ。薬草なりキノコなり採取して行こうなんダゼ。」
「頼むわね。」
手伝う気も無いことに肩をすくめた。
「森の中心かぁ。」
カイドウたちはとりあえず洞窟に戻り、クゥに尋ねてみることにした。
「この森についてあまり詳しくはないけど、“主様”になら心当たりはあるよ。」
「誰なんだ?」
「おそらく古代樹林族のことだと思うんだ。」
「古代樹林?」
「うん。彼らはいつから生きているのか誰も知らないんだけど、森がある場所には必ずいるんだ。だからこのオウゴンガの森にも古代樹林はいると思うよ。」
「んじゃあその古代樹林を探せばいいんだな。」
「たぶんね。だけど、それが森の中心だというのなら探すのは骨が折れると思うよ。」
カイドウは唸りながら悩む。
こういう時、地図があればすぐにでも向かえるのだが地図は無い。
さらにこの森に漆黒狼以外の危険な魔物がいなければ、地道に探すことも頑張れるがその保証もない。
「手詰まりだな。」
「ララに頼むのはダメなの?」
「ララにもそう聞いてみたが・・・。」
チラッとララを見る。
「木々たちは森の中心以外何も答えてくれませんでした。申し訳ありません。」
ララは肩を落とす。
「んだら地道に探すしかねぇべさ。」
「それしかないね。」
ミムルとクゥの言葉にカイドウは素直に頷けない。
「何の話し~。」
起きてきたクルミとカミラが合流する。
「おはよう!」
「おはよう~。」
「おはよ。」
クゥたちは軽く挨拶を済ますと、リリアナがいないことに気づく。
「あれ?お嬢様は?」
「え?いないの?てっきりもう起きてこっちにいると思ったんだけど?」
全員が顔を見合わせる。
「・・・どういうことだ?寝床にはいないのか?」
「寝床にはいないよ。あたしの横は空だったからね。」
カミラが嘘をついている様子はない。
「とりあえず女性陣でこの洞窟内を探してくれ。俺とクゥは洞窟周りを見てみるから。」
「わ、わかった。」
「んだな。」
カイドウたちは分かれてリリアナを探したが、結局見つけることは出来なかった。
「こいつは素晴らしいんダゼ。」
木の根元に生えている草を取り、匂いを嗅いで頷く。
「それは何よ?」
「こいつは“ボーゼン”というハーブの仲間ダゼ。ハーブティーにはあまり向かないんだが、匂い消しにはとても使われるハーブなんダゼ。」
生えているボーゼンを三割ほど採取し、袋に入れる。
「全部取らないの?」
「全て取ってしまえば、今後ボーゼンを採取することが出来なくなるんダゼ。だからほんの少し、自然の恵みに感謝してもらうんダゼ。」
「ふ~ん。」
パンプンは立ち上がり、先に進む。
「この森はなかなか不思議なんダゼ。」
「何がよ?」
「これほど豊かな自然に囲まれているのに動物を一匹も見ないんダゼ。」
言われてリリアナは鳥一匹も見ないことに気づく。
「どういうことかしら?森に鳥も見ないなんて変よね?」
「おそらく魔王の影響なんダゼ。」
「魔王の?どういう意味よ?」
「おれさまにもよくはわからないんダゼ。だけど、魔王の進軍の多さは異常だと、おれさまは思うんダゼ。」
「異常って・・・それがこの森にどういう影響を与えて動物がいないのよ?」
「この森は既に魔王に支配されているんじゃないかっていうことダゼ。支配されているのなら魔物が多く住み着き、動物たちは食べられないよう逃げたんじゃないかっていうことなんダゼ。」
「じゃあその大量の魔物は何処よ?」
ピタっと歩みを止め、辺りを見回す。
「・・・そういえば魔物も見ていないな、ダゼ。」
「ここにはあなた以外魔物はいないわよ。」
「まぁそうなるな、ダゼ。」
腕を組み考えるが、答えが浮かばずに首を傾げる。
「どういうことなんダゼ?」
「知らないわよ。そんなことより今その袋にある草を全部売ったらいくらぐらいになるのかしら?」
「そんなこと、ダゼ?・・・ふぅ~まぁいいんダゼ。この袋の中のハーブや薬草を売ればだいたい銀貨3枚ってところだぜ。」
「銀貨3枚!?少ないじゃない!どういうことよパンプン!」
「よく使われるハーブに回復薬になる薬草の一部なんダゼ?量があっても高く売れる訳がないんダゼ。」
ニヤッと笑う。
「堂々と言うな!このろくでなし!」
「ろ、ろくでなし?ダゼ。銀貨3枚は十分な金額ダゼ?」
「全然足りないわ!必要な物は大量にあるのよ?せめて金貨5枚ね!」
「き、金貨5枚!?ダゼ!?そんな金額の薬草を集めるのは不可能なんダゼ!?」
「不可能と決めるのは己よパンプン!貴方が不可能と思わない限り出来ないことはないわ!」
「む、無茶苦茶なんダゼ・・・。」
ガックリと肩を落としたパンプンはなるべく言われた金額に近づけるように目を凝らすのであった。
「どうだった?」
洞窟の大広間に集まったカイドウたちはリリアナを見つけられなかった。
「何処にもいないよ!」
「リリアナ、いったいどこに行ったんだよ。」
カミラは悔しそうに唇を噛む。
「何か無くなった物は?」
「ナイフが一つだけありませんでした。お嬢様が持っていたのでしょうか?」
「俺たち以外に侵入者みたいな奴がいないのならそうだろうな。なぁクー、あれはあったか?」
「もちろんだよ!オラがここに保管して持ってるもん!」
腰に下げた袋を見せつける。
「だとしたらナイフ一本だけ持って出かけたのか?何の為に?」
「それは・・・オラにもわかんないよ。」
自信無げにクゥは肩を落とす。
「無事ならいいんだけんど・・・。」
「ねぇカミラ。カミラは何か知らないの?昨日は二人で行動してたじゃん?」
「え?あ、ああ。だけど、そんな様子は・・・。」
少し考えてカミラはあることに思い当たる。
「カミラさんは何かご存じなのでしょうか?」
ララがカミラに迫る。
「え!?あ、えっと、その・・・実はさ。」
カミラは気まずそうにぽつりぽつり言葉を紡いでいく。
それをまとめるとこうなる。
洞窟に戻る前、カミラとリリアナはパンプンの自慢話を聞き流していた。
その自慢話の中でリリアナが興味を引く話があった。
それはこの森の近くに村があるという話である。
村があるという話を聞いたリリアナはパンプンの話を無視して村について詳しく聞き出していたそうだ。
「だから、その、もしかしたら村に行ったのかもしれない。」
「それが事実だったら大変だよ!?地図も無しに森の中をむやみやたらに進んだら遭難するのは確実だよ!?」
「ッ!?」
いてもたってもいられなくなったリリアナが駆けだそうとするのをカイドウが止める。
「アニキさんッ!?」
「落ち着けララ。お前まで遭難する気か?」
「ですが!お嬢様が!?」
「まだリリアナが村に行ったと決まったわけじゃない。いいから落ち着け。」
「ですが!」
「落ち着け。」
言い知れぬ迫力にララは口を閉ざす。
「村に向かったかどうかは置いといたとしてもリリアナがこの洞窟にいない以上、森に向かった可能性は大いにある。だからこそ、ララの力が必要だ。」
「私の、ですか?」
「ああ。ララの力で木に聞くんだ。“リリアナを見なかったか?”って。」
「なるほど!ララの、花少女の力を使えば探せるかも!」
「んだら、さっそく探すべ!」
「そうだよ!探そう!」
「ああ!あたしも探すよ!」
「待て!」
カイドウは今にも飛び出していきそうなクゥたちを手で遮る。
「仮にリリアナが戻ってくることも考慮して二手に分かれよう。森へは僕とララ、あとは・・・。」
「あたしを連れてってくれ!」
カミラが前に出てくる。
「あたしはリリアナを止めれたのに、ただ寝てただけだ!これでリリアナに何かあったら・・・あたしはあたしを二度と許してやれない!」
カミラの真剣な目にカイドウは首を横には触れない。
「わかった。じゃあ改めて。森へ行くのは僕とララ、それからカミラ。残りはここで待機。いいか、リリアナ以外は決して洞窟に招き入れるなよ?」
クゥたちは頷く。
「それからクー、一時的にお前がこの洞窟のリーダーな。」
「うん!・・・ファッ!?」
突然のことに一瞬理解が遅れる。
「お、オラがリーダー!?」
「この中で僕が最も信頼しているのはクー、お前だ。頼めるよな?」
周りの視線とカイドウの信頼しきった目の前ではクゥは頷くことしかできなかった。
※補足説明
この世界でのお金について。
この世界のお金は4つの貨幣が使われている。
聖貨、金貨、銀貨、銅貨である。
価値基準として
聖貨1枚=金貨100枚
金貨1枚=銀貨10枚
銀貨1枚=銅貨10枚
となる。




