サバイバル生活一週間経ちました
「実に美味、なんダゼ。」
口の周りを汚しながらレインボーフィッシュをゆっくりと食べている。
(どうやったらあんなに汚れるんだよ。というよりも、本当にこの魚、味がバラバラなのな。さっきまでピザ味で今はシチュー味って・・・正直、美味しくはないな。)
心の中で文句を言いつつも、食料には変わりないので無言で食べる。
周りを見ると皆が美味しそうに、満足そうに食べているのでカイドウの気持ちを理解できる者はいないのだろう。
「おっと、紹介が遅れたな、ダゼ。」
立ち上がり奇妙なポーズをとる。
「おれさまは由緒正しき野菜汁族の貴族、パンプン様、なんダゼ。」
どやぁっとでも聞こえてきそうなほどの顔である。
「あ、ああ。」
違う意味で反応しづらい。
「ところでその緑小者はペットなのか?ダゼ。余り良い趣味とは言えないな、ダゼ。」
「オラはペットじゃねェッ!!てか、緑小者でもないやいッ!!」
「何?ダゼ。どこからどう見ても・・・。」
「どっからどう見ても魔小者族だ!」
「魔小者族?ダゼ。」
「そうだ!オラは魔小者族のト・クゥ!緑小者と一緒にするなよ!」
「ふ~む、ダゼ。それは失礼なことをした、ダゼ。」
握手を求め、クゥはそれに応える。
「おれさまは村から出たばかりの半人前、ダゼ。知らないことだらけだったと言い訳させてくれ、ダゼ。」
「分かれば別にいいよ。」
「それにしても、ダゼ。」
カイドウから順に見ていく。
「ふっ、ダゼ。ここにもおれさまの理想の花嫁はいないようダゼ。」
肩を落とし、首をゆっくりと横に振る。
(理想の花嫁?どっかで聞いたような・・・。)
「え!?パンプンも探してるの!?」
「おいおいいきなり呼び捨ては・・・ん?ダゼ。“も”ということは・・・ダゼ。」
「うん!オラも花嫁を探して旅に出たんだよ!」
(そういえばそんなようなことを言っていたな~。もちろん覚えていたよ、うん。)
「なるほど、ダゼ。言わば同じ目的を持つ同志であり、ライバルという訳だな、ダゼ。」
「ら、らいばる?オラは別にそんな気はないけど?」
「ほぉ?ダゼ。ならばお前が好きになった女をおれさまが頂いても文句はないんだな?ダゼ。」
「それはッ!?」
何かを言おうとして、言い淀む。
「ふっ、ダゼ。もし自分自身に自信が無いとか言うのであるならば、ダゼ。」
立ち上がりまた奇妙なポーズを決める。
「自信が持てないなら誇りを持て!ダゼ。」
「誇り?」
「そうダゼ。どんな誇りでもいいんダゼ。」
「自信が持てないのに誇りを持てって、おかしくないかしら?」
「どこもおかしくなんか無いんダゼ。自信を持てない奴に自信を持てと言ったところで何も変わらないんダゼ。だがな、誇りを持つことで男っていう生き物は強くもカッコよくも何にでもなれる生き物なんダゼ。」
(ふむふむ。言いたいことは何となくわかる・・・かも?)
「そ、そっか!わかったオラも誇りを持つよ!」
「それが輝く未来の自分につながるんダゼ。」
クゥとパンプンは熱い握手を交わす。
「ふっ、ダゼ。どうやらおれさまの理想の花嫁よりも先に頼もしい友が見つかっちまったようダゼ。」
「そうだぜ!」
意気投合する二人を少しだけ羨ましく見るカイドウであった。
「さて、とダゼ。」
レインボーフィッシュを食べ終え、荷物を担ぐ。
「ん?どうしたのパンプン?」
「ダチ公、おれさまは理想の花嫁探しの旅に戻るんダゼ。」
「え!?いなくなっちゃうの!?ここにいようよ!パンプン!」
「ふっ、ダゼ。ダチ公の気持ちは嬉しくて泣けるが、おれさまは目的を成し遂げるまで旅を続けると誇りに誓ったんダゼ。それでもおれさまをダチ公は止めるかい?ダゼ。」
「パンプゥゥゥゥゥゥゥンン!!」
互いに抱きしめあい、肩を叩き合う。
「また逢う日まで、ダゼ、ダチ公ダゼ。」
「うん!!」
背中にダンディズムを背負いながら去って行くパンプンをクゥは瞬きせずに見守った。
「・・・どう解釈したらいいのかしら?」
「ん~わっかんない?」
「わたすは、その・・・。」
「男の別れに言葉はいらないってことだろ?」
(カミラが理解を示した!?)
パンプンと別れた後、皆は自分の部屋を決め眠りについた。
だが、悪臭になれていないカイドウは眠れずにいた。
「く、くさい・・・。」
簡易的な布団での寝心地の悪さも相まって意識がはっきりと覚醒する。
寝ることを諦めたカイドウは明日以降にやることを地面に書き記していく。
「まずは悪臭問題の改善と畑作りだな。」
明日の日にちを書こうとして手が止まる。
「そういえば僕はここに来てどのくらい経ったんだ?」
色々ありすぎてよく覚えていない。
思い出そうと記憶をたどった瞬間、意識が消える。
ほんの数秒で意識は戻り、視線を上げるとそこには笑う女性が立っている。
「うふふ。また呼んじゃった。」
舌を出して可愛さアピールをカイドウにしてくる。
「・・・ああ。クルミナか。」
「反応薄ッ!?もっとこうなんか無いの?愛しの女神様に会えて幸せ的な?」
「・・・特には?」
「ぶーぶーっ!」
「ブタの真似?」
「ちーがーうーだーろー!」
駄々っ子みたいに地団駄を踏むたびに揺れる双丘の果実を無意識に見てしまう男の性にカイドウは自己嫌悪する。
「もう~や~ら~し~い~。」
ニタニタ笑いながらカイドウの頬を指でグリグリする。
「呼んだ用件は何だ?」
めんどくさいので弁明せずに話を変える。
「あ!そうそう!どうどう?この世界で一週間経った訳だけど、そろそろ生の良さに目覚めたんじゃないの?ねぇねぇ?」
(そうか、もう一週間か。)
「そ・ろ・そ・ろ、性にも目覚めっちゃったり?やだ~女神と秘め事すりゅ?」
しみじみとこれまでの出来事を振り返りそうになって我に戻される。
「お前は本当に女神か?」
「正真正銘の女神だよ?なんなら証拠見せる?」
「証拠?」
胸の前で祈るように手を組むと、白い光に包まれる。
眩しい光を遮ろう為に手を目の前に出す。
光が弱まってきた頃合いを見て、手を降ろし目を見開く。
そこには背中から大きな二枚の翼を生やし、頭の上には天使の輪を光らせ、儚げな表情で微笑む先程とは別人の誰かがいる。
「この姿こそが私本来の姿なのです。」
声には誰であろうと納得させるような重みがある。
「いかがでしょうか?海藤。」
本名で呼ばれ、思わず唾を飲み込む。
首を少し傾げる、この動作だけなのに平伏して謝罪したい欲求に動かされる。
「わ、わかったから!元に戻ってくれ!」
悲痛ともとれるような声でクルミナに頼む。
クルミナはニコっと笑い、姿を戻す。
「どうよどうよ?女神でしょ?私?」
先程と別人のクルミナにホッと胸を撫でおろす。
「女神なのはわかった。だがもう二度とあの姿を僕には見せないでくれ。」
「えーーーっ!?何で何で!?」
(荘厳すぎて逃げ出したいからだよ。)
「はぁ!?そこは押し倒して自分の物にしたくなるくらいに魅力的だからだよでしょ!」
「何でだよ!?」
「この自慢のボディに不服がある男は存在しない!」
迫力のある顔に思わず黙ってしまう。
「どや?反論もないでしょ?」
くねくねと自分の体を見せつけてくるクルミナが少しだけムカつき、頭を叩く。
「あいたっ!?何で叩くのよ!」
「ムカついたからぁ?」
ねっとりと嫌見たらしく言い捨てる。
「ちょっとひどくない!?仮にも女神よ私!?」
「自分で仮って言うなよ。」
「・・・それは!・・・ごめん。でも女神だよ私!?叩くんじゃんくて犯し・・・拝みなさい!」
「お前は欲求を捨ててから僕に会え!」
会話に疲れ、ため息が出る。
このままではずっとここにいさせられそうな気がしたので話を戻す。
「とりあえず!まぁ、その、なんだ。あの世界で生きて見て、悪くはないかなっと思う。」
ニタァっと満面の笑みを浮かべる。
「そうかそうか!それは良かった良かった!これでもう自殺すようなことはないよね?ね!」
「ま、まぁそうだな。」
「ならいいんだ~。」
くるっと明後日の方向を向き、光るものを拭う。
その姿に多少の罪悪感を感じ、謝罪の言葉がこみ上げてくる。
「クルミ・・・。」
「いや~でもおしいな~。」
「ん?」
「カイドウが生きることにまだ意味を見出せそうになかったら快楽漬けにして私のペットに・・・。」
「お前は何で自分を貶めることが一級品なんだ?」
「褒めても母乳はまだ出ないよ?」
「出さなくていい!求めてない!」
「嘘だあぁぁァァァァァァッ!!」
劇画風な顔になる。
対応するのがめんどくさいので無視して帰ることを考える。
「・・・もう用件は済んだか?なら僕を返して・・・。」
「あ、そうそう話したいことがもう一つだけあったんだ。」
胸の谷間から一枚の写真を取り出す。
「・・・これは?」
その写真には教会っぽい風景の中で祈りを捧げる人々が写っている。
「教会か?これを僕に見せて何だって言うんだよ?」
「違う違う。真ん中の子に注目!」
もう一度写真を見ると、中央辺りに懸命に祈っている可愛らしい女の子の姿が写っている。
「もしかして・・・。」
「察しがいいじゃない!そうこの子が何を隠そう君と同じ世界同じ時代に生きていた子の生まれ変わった姿だよ。どうどう?可愛い?」
「まぁ可愛いとは思うが、これがなんだよ?」
「え?あーそのなんていうかね~。・・・隠さずに言うわ。この子の国が次の魔王の標的になったのよ。」
「へ?あ、ああ。そうなのか?」
「うん。だからさ・・・。」
真面目な顔になり、膝をついて頭を地面につける。
「お願い!この子が助けを求めたら無条件で助けてあげて!」
「いやそんなことを言われてもな。」
「おねがいしまーーーす!!」
お茶らけた雰囲気でないことから本気だということがカイドウに伝わる。
(正直面倒ことは避けたいんだけどな。はぁ~仕方ない。)
「わかったよ。助けを求めたら無条件で助けてやるよ。」
「ほんと?ほんとにほんと!?」
「ああ。約束するよ。」
太陽のような笑顔を見せて、抱き着いてくる。
「本当にお願いね!」
「わ、わかったよ!?」
「何か情報を掴んだらすぐに知らせるから!」
その言葉を聞いた瞬間にカイドウの意識は無くなった。




