ミムルと話してみる、です
「もうそろそろいいかな~?」
肉汁を滴らせたレインボーフィッシュが光る。
「そろそろいいかもな。だが、リリアナたちを待たないと怒られるんじゃないか?」
リリアナのお怒り顔が簡単に想像つく。
「そ、そうだね。待ってよう・・・。」
目の前のご馳走から目を逸らし、空腹を紛らわす。
だが、焼ける音が耳の中を通り、脳を犯そうとしてくる。
クゥは瞬時に耳を塞ぎ、目を閉じる。
「・・・何してるんだ?」
「誘惑に勝って見せる。」
何かと戦うクゥをほっとくことにし、ミムルとの会話を試みる。
(落ち着け僕。相手は年下の女の子。しっかりと対応すれば話ぐらい簡単さ。)
「な、にゃあ!」
いきなり裏返った声が洞窟内を木霊する。
(うあぁぁぁぁぁ!?)
「いきなりどうしましたかアニキさん?」
ミムルは反応せず、代わりにララが聞いてくる。
「・・・ララもレインボーフィッシュを食べれるのか?」
「食物を摂取することは可能ですが、別段摂取しなくても生存できます。私たち花少女は水さえあれば生きていけるので。」
「でも、食べ物を食べれないわけじゃないんだな?」
「はい、問題なく食べれます。」
「じゃあララも食おうな?」
「・・・よろしいのでしょうか?皆様の方を優先した方が・・・。」
「こういうのはみんなで食うから美味いんだよ。な、なぁ?ミムル?」
(今のはいい流れで話をもっていけたんじゃないの僕?)
「んだな。」
それ以上の会話は無い。
(はい失敗しました。)
表情は努めて明るくしているが、心には打撃を受けている。
(早くみんなと話すべきなんだけどなぁ。困った。はぁ~特に職業を聞き出さないと。)
特に目的もなく、焚火をつつく。
(会話ってこんなに難しかったのかよ。前世は必要なしとかカッコつけて考えてたけど、単なるコミュ障なだけだったんだなぁ。はぁ~やっぱり僕は大勢と一緒に暮らすことは困難なのか?ここをリリアナたちに渡してクーと共に他の場所に移動すべきか?)
頭の中をネガティブな思考が動き始める。
(そもそもクーと友達になれたことそのものが奇跡だったんじゃないのか?それなのに、今度は人間の、それも女の子と仲良くなろうなんてステップを飛ばしすぎなんじゃないか?もっとクーのような魔物で慣れてから、それからまずは男の子と・・・。)
「あんのぉ?」
(いいや、そもそも人間と仲良くなる必要はあるのか?クーのような魔物たちと仲良くなれるだけでもいいじゃないか。そうだよ!何も人間と仲良くする必要は・・・。)
「あんのぉ!」
「えっ!?」
予想外の大きな声に素直に驚く。
「な、何かな?」
引きつった笑顔を隠しきれない。
「あんのぉ、わたす、ララちゃんからお話を聞いたん、です。」
(何を話したの!?)
「カイドウさんが、怖い魔物を、たった一人で、倒したっつうお話を、です。」
「い、いや!?ぼ、僕一人なんかじゃないよ?く、クーが一緒に・・・。」
「ん~でも、僕はほとんど役に立ってなかったよ?」
「いやいや!お前がサポートしてくれたから勝てたんだろ?あの戦いは僕とクーの勝利だ。」
断言されて照れる。
「んだとも、カイドウさんが戦ってくれたのは事実だ、です。そんのぉ・・・怖か、なかった、です?」
「え?こ、怖い?えっと・・・?」
(あれそういえば・・・。)
「そんなに怖くなかったかな?なんか流れで戦った感じだし?」
「ほうなんか!?」
「ほ、ほうです?」
「んだらば、えれぇなぁ~。」
にこぉっと笑う。
出会って初めて見るミムルの笑顔である。
(あれ?僕、ミムルと話してる!?)
自然と話せていた?ような気がして、カイドウは嬉しくなる。
「ま、まぁ無我夢中だったんだよ、うん。」
「ほうかぁ。カイドウさんはえれぇなぁ~。わたすなんか怖くて丸まってたくれぇだよ、です。」
「その、無理しなくていいよミムル。話しやすいように話しなよ。」
「ええのか?」
「うん。別に僕は気にしない、かな。あ、でもリリアナには頑張って敬語で話した方がいいかも?」
「んだな。カイドウさんには普段のわたすで話すんよ。」
「オラもいいよミムル!」
「私もですミムルさん。」
二人に笑顔を向けられ、ますますミムルは笑顔になる。
「ほうかぁ。んだば、これからもよろしくお願いするってよ。」
(ヨッシャー!ミムルと仲良くなれそうだぞ僕!よし、このままの流れで・・・。)
「ところでミムル、君の職業は何かな?」
「へ?」
(少しストレートだったか?)
「わたすは働いたことないかんよ。職業なんてないんよ?」
(あれ?そうなの?)
(答え。この世界に生きる人々は自身の産まれ持った職業適性を知りません。)
(あ~僕は異世界人だからか。なるほどなるほど。なら・・・。)
「じゃあここに来る前は何をしていたんだ?」
「わたすは父親と母親の畑仕事の手伝いを毎日してたんよ。わたすは村出身だかん、学校には通えんかったん。」
(学校?この世界にもあるのか?)
「学校なんてあるのか?」
「アニキは知らないの?」
「生憎僕は目が覚めたらこの森にいたんだ。それ以前の記憶も知らないよ。」
(嘘だけど。)
「ほうか!?それは偉い大変やんなぁ。きおくそうしつ?ってやつよな。」
「えーーーっ!?アニキ記憶喪失なの!?」
「た、た、た、た、大変です!」
「おいおい落ち着け。僕は気にしてないから。その内蘇るのを待つだけだよ。」
カイドウの落ち着いた雰囲気に三人はそれ以上は何も言えない。
「でもそうか。ミムルは畑仕事ができるんだな?」
「んだな。だけんど、道具も種もないんよ?どうすん?」
「う~ん。道具はどうにかできるかもしれないけど、流石に種はなぁ。ララ、種とか持ってない?」
「私は持っていません。ですが、植物たちに聞けばもしかしたら手に入るかもしれません。」
「よし。ならララは明日植物に聞いてくれ。俺とクーとミムルは畑を作ってみよう。」
「おー!」
「んだな!」
いつの間にか四人は笑顔で会話を自然としている。
「さて、明日の予定が決まったところで、ミムル、学校について教えてくれないか?」
「がっこの何が知りたいん?」
「何の学校なんだ?」
「ん~とな。たしか・・・。」
「魔術、および剣術など。戦うために必要な訓練、座学。それからマナーなんかも学ぶわよ。」
後ろから聞こえる声に、振り返るとリリアナたちが立っている。
「あ、お、おか、えり。」
(ダメだーー!!まだミムルにしか会話できないぃぃぃぃぃ!)
「連れてきたよ~。」
クルミはミムルの横に座る。
「ただいまカイドウ君。」
「今帰ったわ。」
リリアナとカミラはカイドウを挟んで座る。
(おい!?やめろ!?)
「おいおい。まさかまだ緑小者がいやがるとはな、ダゼ。」
腰から棍棒を取り出し、クゥに向けて構える。
「へぇ?」
「覚悟しな緑小者ダゼ。お嬢ちゃんたちを苦しめようとした、罰ダゼ。」
すぅーっと動き、クゥに向かって棍棒を振り下ろす。
「う、うわぁぁ!?」
「ちょっと!?」
リリアナが止める前に横を静かに素早く動く。
「え!?」
「ん?」
振り下ろす直前、目の前に拳が見える。
「おやこれは・・・。」
「っしゃらあ!!」
力の限りに顔面?を殴り飛ばす。
「お~ふ。」
逆らうことなく、綺麗な弧を描き吹き飛んでいく。
「大丈夫かクー!?」
「な、なんとか。」
無事を確認し、即座に腰の槌を手に取る。
「何だお前!」
怒鳴りつけたが、反応はない。
「・・・ん?」
構えを解き、吹き飛んだ場所に近づくとすすり泣く声が聞こえる。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい申しませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい申しませんごめんなさいごめんなさいごめんなさい調子に乗りましたごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・。」
「えっと?」
「あ~カイドウ。そいつはパンプンって言う、その、旅人かな?」
「えっ!?」
殴り飛ばしたことに罪悪感を感じ、レインボーフィッシュをご馳走することにした。
~ト・クゥ日記~
色んなことがありすぎて日記を書けていなかったので、久々に書いてみる。
オラたちはララと出会い、お嬢様を救うために緑小者と戦うことになったんだ。
オラは初めは余裕でしょって思ってたけど、現実は甘くなかったんだ。
なんと緑小者が進化した緑小者魔術師がいたんだ!
緑小者とは比べられないほど強くて、オラたちは負けそうになっちゃったんだ!?
動けないオラ、囚われたララ、そして傷ついたアニキ。
怖くて、情けなくて、動けないオラとは違い、アニキはすぐさま新たなスキルを使用して、緑小者魔術師を下し、緑小者の殲滅に成功しちゃった!
流石アニキ!
そして新しい仲間、リリアナお嬢様に加え、カミラにクルミ、ミムルが増えたんだ!
やったねアニキ!
そしてオラたちの拠点、後の集落も手に入って、ほくほくだよ~。
これからまだまだ色々あると思うけど、頑張っていくぞ!おー!




