とりあえず、水を確保です
カイドウたちは水場からの道に目印をつけながら拠点に戻った。
拠点に戻り、早速樽を作ろうとしていた。
「水を溜めておくのには樽がやはり一番かな。」
「だねー。でも、どうやって作る?接着する物が無いよ?」
「まぁ接着する物は今はないが、樽は木と太い紐、後はコーティングできるものがあれば作ることは可能だ。」
「ええ!?それ本当!?」
「ああ。ただ、今の道具ではそもそも木を綺麗に切ることができないから、当分はこの洞窟に落ちていたバケツで水を溜めておくしかないな。」
「じゃあ・・・頑張ろうか?」
「だな。ララは戻って来た奴に事情を説明してくれ。」
「わかりましたアニキさん。」
ララを残し、カイドウとクゥは水汲みを開始した。
何度も往復し、拠点に会ったバケツを一つ残し、全てに水を入れた。
入れ終わる頃には日が暮れていた。
時は少し遡る。
拠点で別れた後、クルミとミムルは果物を探して森を歩いていた。
「本当に何もないね~。」
「んだな。」
森を進んでも草木が生い茂るばかりで、花すら咲いていない。
ある意味不気味な雰囲気を醸し出している。
「動物もなかなか見ないね~。」
「んだな。」
歩けど歩けど、先も見えない森の中。
「食べれそうな物も見当たらないね~。」
「んだな。」
続かない会話に、クルミは心の中で苦笑いを浮かべる。
「そろそろ戻る?」
「んだな。」
ミムルとの関係が前途多難な気がして、これ以上の会話は控えることをクルミは決意した。
その頃、リリアナとカミラは無言のまま森の奥へどんどんと進んでいた。
だが、言葉にしなくても互いに協力し合い、助け合って奥へ進んでいく。
傍から見れば喧嘩しているのかとも思われる会話の無さだが、実際は互いに嫌っていたりするからの無言なのではなく、探り合っているからの無言なのである。
(帰る場所もない私は、あの拠点で生活しなければならない。生きていくだけなら問題ないでしょうけど、それでは駄目よ。拠点に人が増えれば、そこが住処になる。集落や村、はたまた町になるかもしれない。そうなった時、ただの町の人Aになる気はないわ。必ず地位を得て見せる。その為に必要なことはあの男の気を引いて、私の虜にすること。来るべき日が来れば・・・まぁ結婚を考えても・・・ん~でも、なんかいまいちパッとしないのよね~あいつ。)
差し出されたカミラの手を取り、岩を上る。
(兄さんは元気だろうか。昔から家族思いで、人一倍責任感が強いから心配だな。自分を責めてないことを願うけど・・・。いいや、今はここで生きることを、カイドウ君に恩返しすることを考えよう。彼のおかげで、あたしは人間として、もう一度生きることができるのだから。感謝しても感謝しきれない。あたしにできることなら何でもしよう。)
リリアナに肩を叩かれ、振り向くと、指で進む方向を示される。
それに頷き、素直について行く。
(現状を把握すると、ミムルは敵ではないわ。まだまだ子供だし、地位とかそんなもの考えてもいなさそうだし。それに・・・言っては悪いけど、あいつにとっても女としては見れないでしょ、うん。)
辺りを見回し、左に進むことをカミラに伝えて進む。
(何があたしにできるんだろ?料理は得意だけど・・・材料が無いしな。作ろうにも作れないし。拠点には鍋があったし、果物でもあればジャムでも作ってみるか?)
それほど高くない岩に昇り、草木以外何も見えないことをリリアナに伝え、奥に進む。
(クルミは私よりスタイルはいいけど、恋愛とか何も考えていなさそうなのよね~。だからあいつがクルミに迫っても、絶対にクルミは分かっていなくて何事もなく終わるわ。・・・いいえ、そもそもあいつはヘタレ。クルミに迫ることすらないわね、うん。)
背の高い草をかき分け、道なき道を進む。
(・・・やっぱり男の人は、その、体を求めてくるのだろうか?い、いや、その、嫌というわけじゃないし体に自信が無い訳じゃないけど、む、胸も大きいし・・・って、そんなわけないか。)
悲しい気持ちになるが、表情には出さないようにする。
(やはり問題はカミラね。あの胸は凶器だわ。あの胸の前にはどんな男も必ず見惚れるわ。あいつも例外なく、ね。体磨きには精を出してきたけど、母さんもそれほど大きくはなかったし、期待は・・・できないわね。)
カミラの見ていないところで、自分の現在の胸の大きさを再確認する。
(あたしは・・・緑小者によって汚された。汚い体だ。こんな体を、誰が好き好んで欲するのだろう。事情を知らなければもしかしたらいるかもしれないが、カイドウ君は違う。あたしの事情を知っている。知っていてこの汚い体を抱くわけがない。・・・あたしは・・・あたしには、何ができるんだろう?)
リリアナはカミラの気配を感じなくなり、辺りを見回す。
すると、後ろの方で立ち尽くしているのがのが目に入る。
疑問に思いながらも駆け寄り、肩を叩く。
「どうかしたかしら?何か見つけた?それとも疲れたのかしら?」
リリアナの優しい声にカミラはポロっと本音の一部を吐露する。
「あたしには、何ができるんだろ。」
「え?」
「あたしには、何もないのかな。」
「言っている意味が分からないわ。でもそうね・・・まずは知ってもらうことじゃないかしら?」
「知ってもらう?」
「ええ。現状、貴方のことは貴方が一番詳しいわ。誰よりもね。最もその誰かは貴方のことをほとんど知らないわ。その証拠に、私は貴方のことをほとんど知らないもの。知っていることと言えば、カミラという名前、お兄さんに会うという目的。そして・・・う、羨ましい限りですけど、スタイルがいいわ。」
リリアナはカミラの大きな胸を前に、悔しい表情を見せる。
「あ、あんまり見られると・・・。」
恥ずかしくなり、腕で胸を隠そうとする。
そのせいで胸は潰れ、柔らかさをリリアナに伝える。
「ま、まぁ!私はまだ発展途上!お父様の遺伝に賭け、これからの成長に思いを馳せますわ!こほんっ。とりあえず、私が言いたいことはね。貴方のことをあまり知らない現状で、貴方に出来ることなんて何も求めていないわ。求めているのは、貴方についてあなたが教えてくれることよ。・・・育乳の方法とか。」
最後の方はボソッと言ったため聞き取れなかったが、自分のことを励ましてくれていることは伝わってくる。
「へへっ。ありがとね。リリアナ。」
「別に構わないわ。貴方とは仲良くなりたいもの。」
(私があいつに億が一にも選ばれなかった場合の保険として、ね。)
リリアナの腹黒さなど梅雨知らず、カミラの中のリリアナに対する好感度は上がっていたのであった。
何も見つけられないままに戻って来たクルミとミムルはララから事情を聴いて、カイドウたちの手伝いをしようと志願したが、カイドウに却下された。
「全員でやるほどの量じゃないってさ。クルミとミムルには拠点の掃除をしておいて。だってさ。」
クゥはカイドウに言われたことをそのままクルミたちに伝え、水汲みに戻る。
その自分よりもはるかに小さい背中を見て、クルミは目を伏せて言う。
「・・・やっぱり、私たちは信用、されてないのかな。」
「どういうことですか?」
純粋な目でララに聞かれ、クルミは言い辛そうに話し出す。
「だ、だって、あんなに小さいクゥには水汲みの仕事をさせるのに、私たちにはさせてくれないし。その、直接は、話してくれなかったし。」
クルミの言葉にミムルも思うところがあり、頷く。
クルミたちの気持ちを理解できないララは首を傾げ、リリアナの言葉を思い出して手を叩く。
「なるほど!それは説明する必要がありますね。」
「え!?」
「まず水汲みについてですが、元々アニキさんとクゥさん二人で終わる量のバケツしかないため手助けの必要はないと判断したのだと思います。直接そのことをお二人にアニキさんが伝えなかったのは、お嬢様がおっしゃっていた“ヘタレ”という種族だからです。決してお二人を信用していないからとかではありません。」
本気の目で言うララにクルミは吹き出してしまう。
「ぶっふ!ララ、それは違うよ~。“ヘタレ”は種族じゃないよ。あははは!」
「では何でしょう?」
「う~んそうだな~ヘタレって言うのは男として情けないってことかな?」
「アニキさんは情けなくなんかありません!ここに住み着いていた緑小者をたった一人で倒したんですよ!ヘタレがそう意味ならそれはお嬢様は間違っているということです!」
「へ~一人で倒したんだ。・・・ちょっと見直したかも。」
「早速お嬢様に間違いを指摘しなければなりませんね!」
気合を入れて立ち上がるララの手をクルミは即座に掴む。
「ちょ、ちょっと!?ララはここにいてって言われたんでしょ!?」
「そういえばそうですね。」
すぐに冷静になり座る。
その速さに驚きつつもクルミはララの横に座る。
「ねぇララ、もう少しだけ聞かせてくれない?カイドウさんとクゥについて。」
「私の知っている範囲でよろしければ構いませんよ?」
「わ、わたすも!」
カイドウの知らないところでカイドウの好感度が若干ではあるが上がるのであった。
「う~ん。」
ある程度の水汲みを終え、カイドウは小さな池を見ながら唸る。
「どうしたのアニキ?水汲みはこれでお終いだよ?」
「いやな。ここにいる魚を手に入れたいな~っと思ってな。」
「いいね!今晩は焼き魚に決定だね!えへへ。今から楽しみだな~。」
「でだ。どうやって取るかな~って考えていてな。」
「普通に手掴みは?」
「できるのかクーに?」
「・・・たぶん。」
「じゃあやってみろよ。」
結果は目に見えていた。
案の定、クゥは触れることすらできずに陸に上がる。
「できませんでした。」
肩を落とし、落ち込む。
「いいかクー。こういう山の中の池や川の魚は警戒心が高いんだ。だから捕獲することはとても難しいんだよ。罠を作ろうにも材料は無いし、釣り竿に適した物も見当たらないしな。そうなると方法は手掴み、もしくは銛になる。」
「銛?銛なんて無いよアニキ。」
「作ればいい。幸い、切れ味は最悪だがナイフはあるわけだからな。」
「じゃあ早速作ろうよ!」
「まぁ待て。貴重なナイフが無限にあるわけじゃない。俺たちの持っているナイフは全部で五本。一本は調理に使う。予備に一本。戦闘用に二本と考えてもいる。使えるのは一本のみ。だが、銛で簡単に取れるほど魚っていうのは・・・。」
(答え。スキル:野生の小力を使用すれば簡単に捕獲可能。)
「・・・いいか、魚っていうのは・・・。」
(答え!簡単に捕獲可能!)
「・・・うん、簡単らしいわ。」
「そうなの!?流石アニキ!」
腑に落ちないままにカイドウは銛を作りに一旦拠点に戻って行った。
その足は少し、重かった。




