決戦!緑小者魔術師です
ララの後を追って進むと、明かりが次第に強くなり、開けた場所に出る。
開けた場所は少しだけ下にさがっており、周りが観客席のように高くなっている。
「ギギャギャ!ヨクキタナシンニュウシャ。マズハキサマラノユウキヲホメヨウ。」
中央にはドレスを身に纏った杖を持つ緑小者が立っている。
(あいつがボスか。)
槌を握りなおし、ゆっくりと近づく。
「ソウオビエルナ。キサマラニヨコヤリハフヨウ。ワレガジキジキニアイテヲシテヤル。カンシャスルガイイ。」
「緑小者がしゃべってる・・・!?」
自分の知識にないことにクゥは驚きを隠せていない。
「ただの緑小者では無さそうだな。」
「ギギャギャ。ワレハタダノゴブリンデハナイ。オウヨリチカラヲサズカッタモノ、ゴブリメイジコソガワレデアル。」
「緑小者魔術師!?そんなの聞いたことないよ!?」
「ギギャギャ!ソウダロウナ。オウニミトメラレタワレダカラコソノスガタ。イビルゴトキノチエナド、ムイミニスギン。」
「・・・ララはどうした?」
「ララ?アア、アノハイビスカ。ソレナラ・・・。」
指を鳴らすと、奥から二匹の緑小者が出てくる。
その手にはララが捕まっている。
「離して!!」
「ララ!?」
「ララをどうする気だ?」
「ギギャギャ!ソレヲワレラニキクノカ?コタエハモチロン、ナエドコダ。」
手に力が籠る。
「オシャベリハココマデニシヨウ。サァ、カカッテコイ!」
自信満々に構え、カイドウたちを待ち受ける。
「行くぞクー!」
「うん!」
カイドウは突っ走り、緑小者魔術師に向かっていく。
「スキル!火の弾!!」
クゥの手から火の玉が現れ、緑小者魔術師に向かって飛んで行く。
それを目隠しに使い、殴ろうと考えていたがそれは虚しく終わる。
「ナンダソレハ?ハナシニナラン。ファイアートハコウイウモノダ!」
緑小者魔術師の周りに数十個の火の玉が現れる。
クゥの火の玉よりも大きい火の玉がカイドウとクゥに向かって飛んでくる。
「なッ!?」
「えーーーー!?」
予想外の出来事ではあったが、ギリギリで全て避ける。
これが遊ばれていたことにカイドウたちは気づいていない。
「ちょっと待てよ!クー!これはどういうことだ!」
「わかんないよ!?」
「ギギャギャ!ショセンハイビル。ジャクシャノファイアーナド、ナイノトオナジダナ。」
もう一度、火の玉を出現させカイドウたちを遊ぶように飛ばしてくる。
「うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!!?」
「チッ!」
二人はギリギリのところで避けて、頭を動かす。
「クー!どういうことか説明してくれよ!」
「そんなこと言われても!?」
「ギギャギャ!」
楽しそうに当てない程度に火の玉を飛ばしてくる。
「チッックショーーー!!どうなってんだーーー!!」
(答え。魔力の違いです。)
「魔力!?」
突然の機械じみたアナウンスに叫ぶ。
(そうです。魔力の違いにより、味方クゥと敵ゴブリメイジの使うスキルに差が出ています。)
「クー!魔力の違いだ!」
「そ、そうか!魔力か!確かにそれなら説明できる!」
火の玉を避けてカイドウに近づく。
「魔力っていうのはオラたちに生まれつき備わっている力だって村長が言ってた!魔力の大きさによって同じスキルでも差ができてしまうって言ってたと思うよ!」
「じゃああいつの魔力は!」
「かなり高いんじゃないかな。だからこそあれだけの火の弾をだしても疲れていないんだ。」
「こっちは後何発撃てる?」
「後二回だけ。」
嫌な汗をかきつつも冷静に考える。
要は数が多ければいい訳ではない。
本体に当ててこそである。
あれだけの数を撃っても一発も当たっていないのでは意味がない。
その点こちらは後二発ではあるが、その二発を当てればいいだけの話。
考えれば簡単である。
「なら、僕があいつの気を引く。その隙にお前の火の弾を一発でもいいから顔面に当てろ。その後は僕がどうにかする。」
「わかった!」
二人は散り散りに動き、なるべく対照的な位置にいるように逃げる。
「ギギャギャ。サクセンハムイミ。キサマラハココデワレラノショクリョウニナルノダ!ファイアー!」
火の玉が縦横無尽に飛んでくる。
だがやはり一発も当たらない。
(あいつの魔力が分からない以上、長期戦は不利。決めるなら早い方が得策!)
火の玉の隙をつき、緑小者魔術師に一気に近づく。
「うりゃああああぁぁぁぁぁ!!」
わざと雄たけびを上げてこちらに気を引かせる。
「ムダナコトヲ。ファイアー!」
飛んでくる火の玉を避けてどんどん近づいていく。
「コシャクナ!ファイアー!」
全ての火の玉がカイドウに集中して飛んでくる。
(きた!)
「スキル!火の弾!!」
かなり近づいていたクーが火の玉を飛ばす。
(当たる!)
持つ槌に力が入る。
だが・・・緑小者魔術師に焦りはない。
「ギギャギャ。」
むしろ笑っている。
「アサハカダナ。キサマノハイインハ、イビルナドヲシンジタコトダ。」
飛んできた火の玉を喰い、胃袋へ流し込む。
「なッ!?」
「コノテイドノファイアーナド、ショクジトカワラン!」
先に近づいていたクゥを杖で殴り飛ばす。
「ぎゃ!?」
「クー!?」
「キサマニハコレヲツカオウ。アースニードル!」
足元から槌が棘のような形で高速で伸び、カイドウの横っ腹を貫く。
「がっ!?」
「アニキさん!!」
「ギギャギャ。ショセンハムシケラヨ。」
「あ、アニキ・・・。」
足に力が入らず、クゥは立てない。
「く・・・そ・・・。」
(油断した。油断した!僕はここで死ぬのか!?お腹が痛い!?こんな痛み、産まれて初めてだよ!?チクショウ!!花少女なんて味方にしようなんて思わなければ・・・。)
(答え。それは違います。)
(は?今なんて?)
(答え。それは違います。花少女を助けることは、貴方の成長を促します。)
(意味わかんねぇよ。僕はもう死ぬんだろ!?)
(答え。違います。)
(何が違うんだよ!!)
(貴方は緑小者を三匹倒したことにより、新たなスキルを二つ獲得しています。)
(スキルを!?しかも二つ!?)
(そう。スキル:超自然回復。スキル:野生の小力。この二つのスキルを獲得しました。)
(ならそれを使う!)
(どちらをですか?)
(どちらもだ!)
(イエス。)
カイドウは力を振り絞り、土の棘を砕き、地面に着地する。
「ホーウ。マダウゴケルカ?」
「スキル!超自然回復!!スキル!野生の小力!!」
傷口がみるみる塞がり、体の内から力が湧いてくる。
「ナンダソノスキルハ?」
「行くぞ!」
一歩蹴った瞬間、一気に間合いが詰まる。
「ギガッ!?」
「どおぉぉぉりぃやああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
渾身の力を籠めて槌を振る。
骨が軋む音を立てながら吹き飛ぶ。
「ギギャアアアァァァァァァァァ!?」
(まだ生きていやがる!)
すかさず間合いを詰め、上から叩きつける
「ギガッ!?」
「うりゃりゃりゃりゃーーー!!」
変な叫び声をあげながら何度も何度も叩きつける
「ヤ、ヤメ、ヤメ、テ、ク・・・レ・・・。」
伸ばしていた手がゆっくりと地面に着いた。
「ハァハァハァ。」
肩が上下し、悪臭のことなど忘れ一気に息を吸う。
「やったぞーーー!!」
緑小者たちは突然の雄たけびに驚き、ララを離す。
「アニキさーーん!!」
ララは駆け寄り飛びつく。
「ララ!」
「すごいです!カッコいいです!」
「そ、そう?」
「流石アニキ!」
よろよろとクゥが歩いてくる。
「クー!」
駆け寄り受け止める。
「へへ。アニキなら勝てるって信じてた!」
「まぁな!」
三人が喜ぶ中、緑小者たちは動揺して動けずにいる。
「で、こいつらはどうするべきだ?」
「殺すべきだよ!」
「殺すべきです!」
二人からの返答にため息を吐き、槌を握りなおす。
「悪く思うなよ。」
そこからはただの虐殺であった。
スキル:野生の小力を発動させたカイドウに勝てるものはおらず、一匹、また一匹と死んでいく。
最初こそ、返り討ちにしてやろうと襲ってきた緑小者たちではあったが、勝てないということを認識してからは散り散りに逃げていく。
カイドウは出来るだけ多くの緑小者を殺したが、全部殺せたかどうかは不明である。
「お前で、最後だ!」
「ギギガ!?」
ぐしゃりという嫌な音と共に緑小者は力なく倒れる。
「ふぅ~・・・終わったな。」
他に緑小者がいないことを確認し、開けた場所に戻る。
「アニキーー!」
手を振ってクゥが迎えてくれる。
「終わったぞ。」
「うん!」
「・・・ララは?」
「えっと、お嬢様を探しに行ったよ?」
「そうか。んで、こいつからは何か獲れたか?」
足で緑小者魔術師を小突く。
「この杖と、魔法瓶が二つかな。」
「魔法瓶?何だそりゃ?」
「成分を確認しなくちゃわからないけど、たぶんこの色からして回復薬(小)だと思う。」
「回復薬!?それってもしかして・・・。」
「飲めば傷や病が治るよ。だけど・・・なんかこれ薄いんだよね色が。」
「へ?」
「もっと濃い緑色のはずなんだよ回復薬(小)は。なのにこれはどちらかといえば黄緑色に近いよね。だからきっと粗悪品だね。」
「そ、そっか・・・。」
「けど、傷ぐらいは治せると思うよ。アニキの傷に・・・あれ?塞がってる?」
「ん?ああ、スキルのおかげでな。」
「え!?他にもスキルがあったの!?」
「いや、覚えた。どうやら僕は敵を倒せばスキルを習得できるのかもしれん。」
「なにそれすごい!?」
目を見開いて喜ぶクゥを見て、本当に勝ったのだなとしみじみと実感した。
「・・・生きてるといいな。」
「ん?何が?」
ララが辛い思いをしないことを願った。




