侵入!緑小者の巣穴です
「歩きながらでいいから緑小者についてもう少し教えてくれ。」
「うん。それはいいけど、何が知りたいのアニキ?」
ララを先頭に緑小者の巣へ向かって歩いていく。
緑小者の巣は結構距離があるのか、“かなり歩きます”と言われた。
なので折角だからもう少しだけ情報を仕入れておく。
「例えば・・・そう!職業だ!」
「しょく、ぎょう?」
「ああ。お前たちも職業があるんだろ?クーは何の職業だ?」
「あ~しょくぎょうって人間が持ってる“職業”のことか。オラたち魔物には基本的に職業は無いよ?」
「無いのか!?」
「うん。人間に進化はないでしょ?オラたちは職業の代わりに進化があるんだ。」
(確かに人間に進化は無いのかもしれないけど・・・。)
「だが、進化って魔物全てができるのか?」
「可能といえば可能だし、不可能だといえば不可能、かな?」
「どういうことだ?」
「ん~と、魔物は全部進化できる可能性を秘めているんだって村長が言ってた。だけど、必ず進化できるとは限らないんだよ。進化もせず、そのまま死んでしまう魔物の方が多いかな。進化って結構珍しいといえば珍しいから。」
「じゃああの漆黒狼は・・・。」
「優秀な魔物だね、あれは。」
(そんな奴に勝てるのか?はぁ・・・。)
挑む前に心が折れかける。
しかしこれから挑むのは緑小者、話が逸れかけたが気を取り戻して聞いてみる。
「緑小者も進化するんだよな?」
「まぁ魔物だし。」
「進化したらどうなるんだ?」
「さぁ?」
「さぁって・・・。」
「仕方ないよ。緑小者だよ?知能の欠片もない魔物だよ?進化するかもしれないけど、進化した姿を聞いたことも無いし、おそらく誰も知らないよ。そもそも緑小者は嫌われものの魔物だし。」
(クーって緑小者が嫌いなんだな。)
「酷い言われようだな。」
「そういうもんじゃない?」
「そういうもんか。・・・じゃあ戦い方もわからないんだな。」
「いや、戦い方は知ってるよ。あいつらはただ暴れるだけだよ。使えるものは使うけど。」
「何で戦い方は知ってるんだよ。あ~じゃあ何か注意点とかあるか?」
「あるよ!緑小者は1匹でも襲ってくるけど、複数で襲うことの方が多いんだ。だから1匹と侮らない方がいいよ。」
(知能は無いのに群れで襲うのか?それって・・・。)
「静かにお願いします。」
ララが立ち止まり、指を口に当てる。
「そろそろ見えてきます。」
頷き、口を閉じて歩く。
少し歩くと開けた場所が見え、丘が見える。
側面に洞穴があり、その前には3匹の緑小者が立っている。
(おいおいあれって警備じゃないか!?知能が無いってやっぱり嘘なのか!?)
途端に背中に汗が流れた。
みすぼらしい服を着た緑小者が欠伸をする。
太陽が本日も何もないことを伝えるように輝いている。
「ギギギ。」
「ギィーギ?」
「ギギガ、ガガギーギ。」
暇すぎて、ずぼらな警備なのに襲ってくる魔物はいない。
平和そうに談笑している姿が見える。
「あれが緑小者・・・。」
初めて見た緑小者はファンタジー小説に出てくる緑小者のままである。
「あいつら・・・変だ!」
「お前もそう思うか。」
「あいつらには知能なんて無いはずなのに、武器を持ってる!?」
よく見ると、腰にナイフのようなものを下げている。
遠目でもわかるぐらいに錆びついている。
「ここにお嬢様が囚われていますアニキさん。」
「う~ん。少し予想外のことが起こっているな。」
「ごめんアニキ。僕の知識不足だったよ。」
肩をガックリと落とす。
「これは気合を入れないとな。とりあえず、あいつらで実力を見よう。ララはここにいろよ。」
「はい。」
「クーは何か投げてあいつらの油断を誘ってくれ。」
「う、うん!」
「よし・・・行くぞ!」
槌を握りなおし、立ち上がる。
その瞬間にクゥは近くに落ちていた小石を明後日の方向に投げる。
投げられた小石が落ちると、緑小者はそれに気づく。
「ギギ?」
1匹がそれに近づいていく。
そこを狙い、2匹の内、何も考えていなさそうなほうの緑小者に殴りかかる。
「うりゃああああぁぁぁぁぁ!!」
思いっきり頭に振り下ろす。
何か嫌なものを潰す音と共に緑小者の頭はへこみ、力なく倒れる。
突然カイドウが現れたことで、もう1匹は驚いていて動けていない。
「どりゃああああぁぁぁぁぁ!!」
その隙を狙い横払いで殴る。
軋む音を響かせ、どこかに吹き飛んでいく。
小石を見に行った緑小者は驚いていたが、すぐさま腰のナイフを抜き、構える。
「ギギャアアアァァァァァァァァ!!!」
雄たけびを上げて襲ってくる。
だが、動きがそれほど早くない。
(・・・これは!)
余裕で振りかぶったナイフを避け、槌を頭に叩き落とす。
何の抵抗もなく緑小者は地面に倒れ、静かになった。
「・・・やった、のか?」
動かなくなった緑小者を見下ろして息を吐く。
「な、何とかなったな。」
「アニキーーー!!」
クゥとララが駆け寄ってくる。
「やったねアニキ!」
「すごいですアニキさん!」
2人は興奮して飛び跳ねている。
「喜ぶのは早いぞ。これからこの巣穴に入って行くんだ。ここからが本番てやつだな。」
「素直じゃないな~アニキは。今は喜ぼうよ?」
「そうですよアニキさん!」
「そ、そんなことよりまずは戦利品を集めるぞ!」
赤くなった頬を見られないようにそっぽを向く。
「へへ。」
「えへへ。」
そんなカイドウを見て、頬が緩くなった。
どこかの洞窟の部屋。
ドレスを脱ぎ捨てた緑小者は軋むベット上で快楽を貪っている。
「ドウシタ?モウコエモデナイカ?」
引きちぎった腕を目の前でゆっくりと咀嚼する。
反応が無いことが少し癇に障るが、それでも下の快楽があるので気分を害さない。
「ギギギギ!?」
奇声を上げて1匹の緑小者が入ってくる。
「ウルサイゾキサマ!セッカクノオタノシミガダイナシダ!」
動かなくなった肌色の物体を投げ捨てる。
「ギギガ!ギーギィギィギ!?」
「・・・ナニ?シンニュウシャダト?ミハリハドウシタ?」
「ギ、ギギィィ」
「シンダノカ?ツカエヌヤツラメ。シンニュウシャハイマドコダ?」
「ギギィギーガッガ。」
「・・・フム。センリヒン、トイウトコロカ。ドウヤラタダノバカデハナサソウダナ。ワガネジロノケイビハドウナッテイル?」
「ギッギギガ、ギーギギ。」
「ワカッタ。ミナニツタエヨ。サクセンアルファダ。イケッ!」
「ギギ!!」
慌てて出て行く。
「・・・マッタク、イノチシラズガコノモリニイルトハナ。」
ドレスを身に付け、杖を片手にゆっくりと歩き出した。
「このナイフは錆びてはいるが使えそうだ。」
「でも、それ以外はないね。」
「まぁそんなもんだろ。むしろナイフが2本も手に入ったんだ。喜ぶべきだぞ?」
「そうだね!」
ナイフをクゥに渡し、死体を適当に避けておく。
「終わりましたか?」
「ああ。待たせたな。」
洞穴に近づき、耳を澄ます。
「・・・静かだな。」
「・・・だね。」
「ここでいいんだよな?」
「はい。この先にお嬢様がいるはずです。」
「よし。ララは松明を持ってくれ。絶対に手放すなよ?」
「はい!」
握る手に力が入る。
「クーはナイフを大切に持ってろよ。もう一つの松明は俺が持つ。」
松明に火をつけ、中を照らす。
少し先しか見えないが、意外と松明の火だけでも明るい。
「うし。行くぞ。」
気合を入れなおして緑小者の巣穴に侵入を始めた。
慌てず、ゆっくりと道を進んでいく。
横に道はなく、くねくねと曲がった一本道のみである。
「・・・何もないな。」
「そ、そうだね。」
「あれは?」
道の先には下に続く階段が見える。
「なるほどな。一本道の理由はこれか。」
階段の下からは異臭が漂っている。
「・・・臭いな。」
顔をしかめ、鼻を隠す。
「すっごく臭い。だから緑小者は嫌われるんだ。」
クゥは涙目で鼻を抑える。
「この先にお嬢様が・・・。」
無意識に手に力が入る。
「降りるぞ。」
一段一段、罠を警戒しながら階段を降りた。
降りると、一段と匂いがきつくなる。
悪臭に耐え、周りを見ると、道が広がり、横の道も結構見える。
「気を抜くなよ。それから勝手な行動は厳禁だ。いいな。」
二人は頷く。
それを確認してから歩き出す。
するとすぐさま、横の道から大量の緑小者が姿を見せ、雄たけびを上げる。
「ひっ!?」
「チッ!!」
槌をすぐさま構え、出方を待つが、雄たけびを上げるだけで襲ってこない。
「・・・どういうことだ?」
「わ、わからないよ!?」
怯えてカイドウの裾を掴む。
「掴むな。動きづらい。」
「ご、ごめんアニキ。」
すぐさま手を離す。
「・・・襲ってこないなら進むべきか?」
「で、でもそうしてうしろを取るつもりかも!?危険だよアニキ!?」
「じゃあ一旦上に戻って立て直すか?」
『・・・シンニュウシャ、キイテイルカ?』
洞穴内に声が響く。
「何だ!?」
『キコエテイルノナラソノママススメ。ユウキガアルナラナ。』
横の道は緑小者が大量で進めそうになく、前に進む以外は戻るしか道が無い。
「・・・どうする?この奥に、進むべきか?」
「わ、わかんない。け、けどオラは止めたほうが・・・。」
迷っていると、ララが前に出る。
「ララ!」
「ここまで来たのなら進むべきです。こうしている間にもお嬢様が怖がっているかもしれません!早く助けないと!進みましょうアニキさん!」
了承も得ずに歩き出す。
「おい!・・・ったく、勝手な行動はするなって言ったよな!?」
追いかけるようにカイドウも歩き出す。
「ま、待ってよアニキ!?」
慌ててクゥも駆け出した。




