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花は微笑まない  作者: 青空
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話し合いの終わり


青い光が頭の中で弾ける。

前世の記憶がなくなるのは、樹に罰が与えられる時。

樹が人を殺したり、尊厳を踏みにじったその時に私の前世の記憶と共に樹の私とあの子に関する記憶も消える。

これが一番平和的で樹にとって辛い罰だと思ったのだ。

青い光が樹の手の甲に吸い込まれて消えていく。そして残ったのは、青い花と雪の結晶を象った私の魔導師としての紋章だった。

青い光が散り散りになって空気に溶けていく。

音が戻ってくる。風の音が妙に大きく聞こえた。

「フィオーレ!何を代償にしたのです?」

プリュイさんが駆け寄ってきて私の肩を掴む。

「どこか痛いところはありませんか?ここがどこだかわかりますか?」

と心配してくれるその温かさが、胸が苦しくなるほど嬉しかった。

「アンダンティカの王宮です。大丈夫ですよ、プリュイさん」

大したものは差し出していないと笑うと、プリュイさんは未だに心配そうな顔をしながらも納得してくれた。

「フィオ、ナイスな贈り物だねー。じゃあオイラからも呪いをプレゼント」

首にナイフを突きつけられて、さらに契約魔法までかけられた負荷でぐったりしている樹にルーナが追いついをかける。

「キョーダイたちに迷惑かけたら、オイラが君の首を掻き切りに行きまーす」

ルーナがチェシャ猫みたいにニヤニヤ笑う。が、やることがえげつない。

呪いは人間でいうところの契約魔法。ただ、代償が必要なくその代わり効果が薄い魔族限定の魔法だ。

だから本来は子どものしつけてして使われることが多い。例えば子どもが人様に迷惑をかけるようないたずらをした時にすぐにそのことが親に伝わるとか、いたずらした回数が記録されるとか…。

ちなみに服役中の犯罪者にはこれよりももっと重い呪いがかけられて、もし牢屋から脱走したり罪を重ねた場合には警吏にすぐに伝えられるという使われ方もしている。

つまり、呪いは最近では絶対的な信頼のおける告げ口になっているのだ。

だからこそ、日常的に使われている呪いはすぐに形となって樹を縛った。

「やめろ!」

樹は顔を青くして騒ぐ。けど、それくらいでルーナの拘束は緩まない。

魔族の筋力は…特に、魔族の中でも身体能力に優れた鱗猫族のルーナの力は一般の人間がどうこうできるものではないのだ。

「どんな呪いをかけられても、僕は花を取り戻すからな!」

「花はもういないわよ。…それでも私を手に入れたいなら、魔女王の封印をかけ直して、私とルーナの魔法を解くことね」

あいにく、私はカエルの王子様の呪いを解いてあげるお姫様ではないの。むしろ呪いを重ねがけする魔女だから。

「フィオーレ、不審者を挑発するんじゃない!」

「大丈夫じゃないですよ王サマ。アイツの魔法は誰にも破れません」

レオンのまるで当たり前の事実を告げる口調がくすぐったい。

普段は引きこもりだの魔法バカだの言われているけれど、それでも信頼されてるよのね。…逆も然り、だけれど。

「…やってやる!必ず花を!花をっ…!」

「うるさいですね。ルーナ、放り出してください」

「はいはいっと」

プリュイさんとルーナによって部屋の外に追い出された樹は、それでも花、花、と叫んでいた。

そらでももう恐くないのは、周りに信頼する仲間たちがたくさんいるからだわ。

扉が完全に閉じる。

部屋にほっとするような静けさが広まった。

不意に後ろからゴホン、と咳払いと音が聞こえた。振り返ると、未だに椅子に縛られていた王様が無駄にキリッとした顔で、

「さて、フィオーレ、レオン、ルーナ。情報収集頼んだぞ」

と宣う。

…我らが王は顔も整っているし、威厳もあるし、国民にも慕われているのになんでこんなに残念なのかしらね。

「御意!」

「はい!」

「任せとけ!」

レオンと傅きながらも、私は残念な王様の残念な扱いにため息をついたのだった。


その次の日の朝、夜明けを待たずに私たちはアンダンティカ王宮を旅立った。


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