第30話 公爵との交渉
「我々は貴方にたいして助けるつもりはあります。ですがただで動くわけにはいきません、それは理解していただけますね?」
公爵は頷いている。
「私が欲しいのは今、艦隊が停泊している群島です。」
周囲の海が荒れており、船は接近しにくい、資源は豊富。艦船施設はないが後で作れば良い。
「分かった、それで良いのか?君達ならばもっといい場所があると思うが、」
「それをすると貴族がうるさいでしょう?その代わり群島を改造するのでしたら文句は来にくいですからね。」
今あるものを取れば問題があるが、元からないに等しいものならば、問題なく入手出来るだろう。それにあそこには金属資源、重油等の戦略物資が眠っている。近寄りにくい場所だから本拠地にするには最適だろう。
「貴方が何を考えているのかは分かりません、ですが帝国の進行を阻止してくれるのならば、私は貴方の事を擁護する事を約束します。」
「その言葉に偽りはありませんか?」
「我が家名にかけて」
貴族が家名をかけるのは余程の事がないとしないそうだ。これは信用しても良いと判断できる。裏切ったら攻撃すれば良いだけだし。
「その代わりに我々が敵を国境線まで押し返します、ただし国境を越えてまでは追撃しません。後で国境線を教えてください。次に押し返しましたら傭兵という契約はなくなります。いつまでもこき使われるのは本意ではないですから。捕虜などは貴族などの特権階級はあなた方に引き渡します、ですが他の一般兵士は我々に任せていただきます、これで宜しいですか?」
「陸上の敵の押し返しにも協力いただけるのか、それはありがたい。だが貴族などの捕虜が要らないのはどういうことなんです。」
ふむ、やはり平民は価値が無いのか。
「貴族などの特権階級ならば交渉に使えるでしょう、その間に一般兵士を国に帰します、一人や二人でも厄介でしょうが、それが万単位ならどうしますか?そうでなくても負けたという事実は隠したい難いものです。噂が広がれば自然に帝国は中から崩壊しますよ。ついでに装備を渡してやれば反乱軍ができクーデターに近いものになるでしょうね。」
「な、なるほど。分かりました。帝国の撃退の際には我々も同行させて欲しいのですが。」
「いいですよ、では三日後に迎えに来ますから、次は港に迎えの船を入れます。よろしいですね?」
「今回はどうやって来られたんですか?」
「ここの北側に湖がありましたので着水させて貰いました、では失礼します。行こう楓君」
「はっ」
中庭に行き晴嵐改に乗り込むのだった。




