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王都へ…ですか?勇者さま。④

僕のこの気持ち、、?

傷だらけの女の子を放ってなんか置けないよ!

うん。普通だよね。うん、うん。

でも、、、綺麗だ、、、。

ドキドキのフェン君、、どうする?

では、第73話『王都へ…ですか?勇者さま。④』

お楽しみ下さい。

ではでは。  ふえん




うぅ、、ん~、、まだ眠いよ。。。


温かい感触が身体全体を包む。


不思議と疲れと痛みが抜けて行き、気持ちとは裏腹に身体は動きたいと言っている様だ。


んっ、、気持ちいい・・・あっ!そうなんだ・・・私、、勇者に殺され、、て?


違う。勇者は私に咬まれて死んだ筈だから、もう一人の男に、、、


ここは、、天国なの?、、天国に来れたんだよね?、、良かった、、、


今まで我慢して、頑張って生きてきた事が報われたんだよね?


嬉しい・・・


やっぱり天国って気持ちいい所なんだね、、、





アルシェは施設を管理していた貴族の手を咬み、逃げ出した。


、、追っ手を倒し、更に必死に逃げた。


逃げた・・


逃げた・・・


逃げた・・・・


・・・でも・・・逃げ切れなかった。


何とか山まで逃げたのだが、峠近くで寒さと疲労、傷の為に動けなくなってしまう。


そうしている内に追っ手が現れる。


耳を疑った。


・・・えっ!? 勇者!?、、そんな・・・


確かに、二人の内、一人の男が、そう呼ばれていた。


たかだか私の為に、、逃げ出した獣人一人の為に、まさか勇者が来るなんて・・・


笑ってしまうが、これが現実だ。


人間は何時だってそうだ。


一人一人は貧弱なのに集団になると狂暴になるのだ。


そして、弱者に対しては、どこまでも高圧的。


そして、己が不利になれば急に弱者を気取るのだ。


自分を強者と勘違いしていた貴族の男には咬みついてやった…生きてはいまい。



貴族の男だけは絶対に許せなかった。


私の友達…他の村から連れて来られ、私と一緒にここで生きてきた大事な友達。


それを、、、



私は失った事によって、失った感情を取り戻せたのだ。


諦め、搾取され続ける日常…当たり前に受け入れていた日常から逃げ出す決心が出来た。


だが、逃げ出す前に、あの男、、貴族の男だけは、、殺す!!


・・・


・・・・そして私は目的を果たしたのだ。


今の状況、、どう考えても貴族を殺した事により、勇者が来たのだろう。


あの貴族には勇者を動かせるだけの実力が有ったという事だ。


だが、私を前に何やら言い争いを始める二人組の男。


何?、、手柄の奪い合い?・・・なんて醜い争いなんだ。


・・・誰かを殺す事により得る手柄を競うなんて、、、


やっぱり人間って・・・あの施設の人間だけが特別ではないのだ。


邪悪だ!・・・人間でない者に対して人間は、どこまでも残酷な種族なのだ。


この二人から見れば、私なんか対価を得る為の格好の獲物でしかないのだろう。


しかも、容易く殺せるであろう相手だ。


こんなに美味しい場面なのだ。


どちらが賞金を手にするか、、殺すのかで争うのに理由など必要ないのだろう。


賞金を争って同胞を蹴落とす、、人間族が考えそうな事だ。


お金に目が眩んだであろう男達は私には目もくれずに言い争っている。


私は二匹の野獣の前に投げ出された肉片も同然だ。


絶望的?


いや!、なら存分に、この小さなチャンスを活用するまでだ!


アルシェは自分を無視する二人の前から逃げ出そうと試みる、、、


、、が、寒さで身体が思う様に動かない…地を這う姿は、その場でもがいている様にしか見えないだろう。


折角のチャンスを活かせない自分が恨めしい。


駄目、、か。・・・もう逃げられないや。


・・・違う、な。


・・・相手は勇者だ。私の身体が万全でも、どのみち逃げられなかっただろう。


覚悟を決める。


こうなれば刺し違えてでも勇者も殺してみせる。


・・・


・・・・


そして、私は成功し、殺した。なぜか殺させてくれたのだ、勇者は・・・。






暖かく心地よい。


死んでから天国で幸せな気分って少し違う気もするけど、これも自分が今まで頑張って来た結果なのだろう。


なら、、素直に喜んで、素直に受け入れて良いだろう。


・・・嬉しい。


寒さで感覚が無くなっていた手足の先まで今なら鮮明に分かる。


固く踏み固められた街道を這ったせいで、砂利や木片で傷付けた傷が少しだけピリピリと滲みる。


・・・滲みる??


死んだのに?…天国には滲みる、、『痛い』という感覚が有るのだな、と初めて知った。


知ったからと言って、どうなる訳でもないのだろうが・・・


じゃあ、、天国ってどんな所なんだろ?


村の皆も待って居てくれる筈だ。


早く探して、、会いたいな。


天国を感覚だけでなく、この目で確かめなきゃ。


アルシェは目を開ける。


・・・・!!


一瞬、、思考が停止する程に驚いた。


「勇、、者、フェン…どうして…!?」


目の前には、ここには居る筈のない人物…どう見ても勇者フェンが居る。


何で?…勇者フェンも死んで、私と一緒に同じく天国へ来れたのか?


なぜだ!!


勇者は私の同胞を数多く殺したのに!!


なぜ私と同じく天国に居るんだ!!


神様の判断に唾を吐く行為だが、アルシェは納得行かず不満をもらす。


私を、、私達を虐げた人間…その代表の様な者である勇者が、、なぜ天国に?、、地獄に堕ちて当然のはずだ!!


だが、勇者フェンは生前と同じ言葉を私に投げ掛けてくる。


「大丈夫だよ。もう大丈夫だからね。」


何だ?・・・何を言っている?


何でこの男は死んでまで私に同じ言葉を囁くの?


・・・死んだ後でも勇者を気取るつもりなの、、か?


それは自分を殺した相手に掛ける言葉ではない。


自分を殺した相手だ。


怨みの言葉、憎しみの言葉、、それが出て当然ではないか!!


なのに・・・なぜ?


思考を読み取ろうとアルシェもフェンを見つめる。


少し赤い勇者の顔、、その瞳も私の目を真っ直ぐ見ている。


なぜ?・・・うゎっぷ、、、お、お湯?!


アルシェは自分が今居た位置から、ずり落ちて初めて気付く。


私、、お湯、、湯船に浸かってるの?


ここは・・・?


勇者フェンばかりに気を取られて周りを見ていなかった…なに…ここ…は…?


天国、、、じゃない?!


イメージでしかないが、アルシェの中で天国とは、もっとピカピカと光輝いているイメージだった。


だが、、これは・・・。


薄暗い部屋。木造の壁、天井。そしてアルシェ自身が浸かっている湯船。


とても、、お世辞にも…天国…じゃないよね?


じゃあ、、私、、生きているの!?なんで??


思わず『ザバッ』っと湯船内で立ち上がる。


途端にフェンが赤かった顔を更に赤くして目を逸らす。


・・・一体?、、ここは?


アルシェの疑問を見透かした様にフェンが告げる。


「ここは町の宿屋だよ。大丈夫、もう誰も君を傷付けたりしないから…。」


「どうし…て?…」


「蛇人族さん達は寒さで動けなくなっちゃうんだよね?」


「傷だらけで泥まみれの女の子を、寒い山中にそのまま放っては置けないし…」


「汚れていると傷に悪いから、服と、あと君の身体も洗わせてもらったよ。」


「お湯にも回復のポーションを入れたんだけど、、まだどこか痛い所、有るかな?」


周囲を見渡すと、風呂桶にアルシェが着ていた服が浸けてある。


・・・山からここまで運んでくれたの?・・・殺そうとした私を?


フェンはまだアルシェから目を逸らしたままだ。


「あの…湯船に浸かって…座ってくれないかな?」


ぎこちない、オドオドした喋り方でフェンはアルシェにお願いする。


なんで?・・・勇者ともなれば強者の筈だ。


私に言う事を聞かせたいなら、、力ずくで言う事を聞かせれば良いだろう。


そう。・・・人間らしく。


今までアルシェが施設で会った人間は皆、そんな人間ばかりだったのだ。


酷い人間なら、酷い人間らしく。


なのに、、なぜ?




フェン達は麓の町へと峠を下る。


リクが同意したのを確認すると、フェンは着ていた外套を外し、アルシェを背負い、また外套を羽織る。


フェンは服を通して触れ合い、分かる。


アルシェの身体はフェンが予想したより、相当冷たかった。


抱き締め、腕に咬み付かれた時に感じた体温よりも更に冷たい。


人間だったなら『死んでいる』と判断してもおかしくない程に冷たいのだ。


蛇人族が寒さに弱い事は頭では理解しているフェンだが、、不安になる。


呼吸も鼓動も感じられるが、、弱い。


それが今にも止まってしまうのでは?、、という心配が頭から離れない。


・・・急いで身体を温めなきゃ!


自分の寒さなんて気にしていられない、とばかりに一気に町へと下りて宿を取る。


部屋割りでリクが不満を洩らすが、有無を言わさず別々の部屋を取る。


リクがまた、この子を『やはり赤目の蛇人族だから殺します』とか言い出す心配が有るからだ。


部屋へ入ると暖炉の火で、うっすらと暖かいが、この子を温めるにはまだ足りない…。


それに、フェン達から逃げようと街道を這いずったせいで、泥だらけなのだ。


傷口からの血と泥が混ざり黒く変色してしまっている。


先ずは清潔に・・・それから温めてあげなきゃ!


部屋のお風呂に入れる事にする。


女の子をお風呂に入れる位の事は、妹達を入れて来ているので朝飯前だ。


手早く服を脱がせる。


脱がせると言ってもボロボロのチュニックに下着だけだ…妹達と何ら変わらない。


変わらない。


筈だった・・・のだが、、


脱がせて事実を目の当たりにし、再度驚き、そして見入ってしまう。


彼女は見えていた手足だけではなく、身体中傷だらけだったのだ。


フェンは目が離せなくなっていた。


それは『見入ってしまった』、と言うより『魅入ってしまった』、、、


文字通り、魅入られたかの様に・・・


傷だらけの身体、なのに傷一つ無い乳房、、お尻、、


妹達より女性としての主張が始まった身体、、


そんな筈はないのだが、フェンは思った、、


『綺麗だ』と。


そして、


『この子を守ってあげなきゃ!!』と。


いや、違う。


『この子を守りたい!!』と。






・・・ん?、、恥ずかしがっているの?


アルシェには無い・・・昔は在ったのに今は薄れてしてしまった感情。


アルシェの囚われていた施設では、アルシェは唯の『器』だった。


休息時間以外、、作業時は常に裸にされていたのだ。


アルシェの器としての役割。


それは赤眼の蛇人族に咬まれた時の為の血清、、薬作りの為の血液の確保だ。


アルシェは捕らわれ、ここへ連れて来られてからは日常的に身体を傷付けられ、血を採られる毎日を送っていたのだ。


そう。アルシェは材料である血液を生み出す為だけの『器』として扱われたのだ。


傷が重なると治りが悪い為、傷は次々に身体の違う場所に増えていった。


血液の採取を繰返し、アルシェの身体には消えない傷が出来ていったのだ。


月日が過ぎ、最初は恥ずかしがっていた裸も、当然の様に繰り返される内に、その感覚は薄れていった。





回復のポーション入りの湯船に浸かる女の子を目の前にして、フェンはドキドキが止まらなかった。


女の子の裸・・・可愛い裸には耐性がついている。


『お兄ちゃんと一緒に入る!』と言われて、妹達と入っていたので、少し恥ずかしいが、まあ、平気になった方だと思う。


でも・・・アルシェの裸は違った。


真っ白な肌。


その肌に刻まれた消えないであろう複数の傷。


その中にあって女性である事を主張する部分には、なぜか傷が一つも無いのだ。


アルシェの過去を知らないフェンは勝手に想像してしまう。


人間が、そういう目的に使う為に『この子を作った』のだと。


そういう目的…性的目的の為だけに、この子の、、女の子の身体に傷を付けたのだ、と。


絶対に許せない。


非道い話だ。


もし仮に、フェンの目の前で傷付ける行為が行われていたりしたら絶対に許さない。


だが、フェン自身もアルシェの裸を見てからドキドキが治まらないのだ。


誰かを守る、助ける事を日頃から意識せずに当たり前に感じ、実行しているフェン。


アルシェの身体の傷を見てから目が離せなくなっていた。


全身傷だらけの『この子を守りたい』という気持ちが強く起こる。


その傷だらけの身体の中で女性である事を主張する部分だけ一切の傷が無い、という違和感が、アルシェが女性である事を更に強くアピールしたのだ。


・・・綺麗だ。


傷だらけの女の子に言うべき言葉でない事だけは確かなのだが、、


『護りたい。』


フェンは思う。


、、と、同時に、


『自分の物にしたい』


とも、思ったのだ。



間違ってる!!



他人を自分の『物』に、なんて・・・


まるでフェンが奴隷としてこの子を欲しているみたいではないか!!


これでは自分が、、フェンが嫌悪する貴族達と同類ではないか。


フェンは自分の考えなのに、自分で怖くなる。


解かってもいるのだ。


『護りたい』という気持ちで誰かを欲するのと『欲望の為だけ』に欲しいと思うのではまるで違う事は。・・・でも、、、


フェンは自分の中に生まれた感情が分からない。理解出来ない。


誰かを『守る!』、護りたいという感情は理解出来る。今までも有った。


だが、『誰かが欲しい!』という感情をフェンは体験した事が無かった。



フェンは気付かない。


何時ものように、傷だらけの女の子なら、助けたくなって、傍に居てあげたくなって当然だよね?


・・・と、自分の気持ちを特別な感情による物だ、とは思わない。


自分に都合の良い、一番簡単な理由を付けて結論付け、納得してしまう。



「何の心配も要らないよ、、改めまして。僕はフェンだよ。君は?」



違うのだ。



フェンの中に生まれた感情。



それは、、、



「、、私、、私は、、アルシェ、、、」









人間は敵よ!!

アルシェさん、、人間に対してプンプンです、、、。

『地獄に堕ちろっ!』って、、何もそこまで、、。

そんなアルシェが気になって仕方ないフェン。

僕のこの気持ちって・・・?

次話もお楽しみに。

ではでは。   ふえん

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