王都へ…ですか?勇者さま。①
ただいま♪ 帰ってきました♪
久々の投稿です。
更新を楽しみにしてくれた方、遅くなりすみませんでした。
話しの方も第70話に到達です。
いやーっ、書けば書ける物なのですね(照゛゛)
第70話『王都へ・・・ですか?勇者さま。①』お楽しみ下さい。
ではでは。 ふえん
「じゃあね。三人、仲良くしててね♪」
ミオンとルチア、二人が見守る中、べそをかいたままだが、漸くシオンは頑張ってフェンから離れる。
「お兄、ちゃん、、、」
離れるには離れてくれたんだけど、、
それは…弱々しく心細そうに…
『うるうる』と上目遣いで、今にも涙が溢れ落ちそうなキラキラした瞳で見つめてくる…
くぅーっ!可愛過ぎる、、、
こんな顔をされたら誰だって今すぐ抱き締めて思う存分、頭を撫でて慰めてあげたくなっちゃうよ、、。
・・・でも駄目だ。
せっかくシオンが頑張って我慢して離れてくれたのだから。
今、僕から抱き締めたりしたら、、シオンはもう離してくれない気がする。
僕もちゃんとした『お兄ちゃん』じゃなきゃだよね…我慢、我慢、、と。
シオンの手前、気丈に振る舞ってはいるけどミオンもルチアも、本当は、、、って所なのだろう。
隠そうとしても二人供『離れたくない』と、顔に書いてある様だ。
「大丈夫。すぐに帰ってくるからね。二人供、シオンの事、宜しくね。」
「ルチアは何か困った事が有ったらすぐにガルンさんに言うんだよ?」
「治療はいつまで掛かるか分からないけどミヤの事、頼んだよ。」
「それと、、んーと、、それと、、」
心配しだすと切りが無い…言い忘れた事が無いか?、、という自分の思考まで心配になってくる。
フェンの心配が尽きなそうな顔を見て気遣ってくれたのかミオンが言う。
「心配しないで下さい…大丈夫です、フェン様。二人供、私がちゃんと面倒を見てますから。」
・・・流石はミオン、お姉さんだよね。
フェンもミオンが『見ててくれる』と一言、言ってくれるだけで安心出来る。
「うん。ありがとう、ミオン。二人供、お姉ちゃんの言う事をちゃんと聞くんだよ?」
「うん。」シオンは頷く。
「はい。」ルチアも頷く。
助かるよ、ミオン。…だけど本当はミオンだって…なんだよね?
でも今はミオンの気持ちに甘える事にする。
「じゃあ行って来るよ!」
町を出る前にミヤの様子を見に立ち寄るが、まだ治療は終わらないらしかった。
シズ…は自分で治療していると言ってたそうだけど、まだ森から帰って来ないそうだ。
…まあ、シズが自分で大丈夫って言っていたそうなので心配なんて必要ないと言い切っていい。
何せシズの頼もしいお友達達は治療も一流なのだ…ともすれば人間の医者や神官よりも腕が良いかも、なのだから。
…きっと帰る頃には、ミヤもシズも元気になって僕を待っててくれるよね♪
そうとなれば、早く用事を済ませて帰って来なきゃ!
フェンは一路、王都へ向かい馬を走らせる。
順調に行くか…と思ったけど、やはり、、と言うか、当然ながら最初の町への入り口で衛兵に見咎められ、止められる。
「イーストノエルの勇者、、フェンだな!」
うーん。有名人だなー、、悪い意味でなければ嬉しい事の筈なんだけど…。
残念ながら、王国から手配されていて…の有名なのだ。
「そうです。僕がイーストノエルのフェンです。」
衛兵達がざわめきだす。
…本物か?、、いや、手配者が易々と認めるのはおかしい?、、元々我々を皆殺しにするつもりだから名乗り出たのでは?
憶測は容赦なく、また切りが無い…
なんで見ず知らずの衛兵達を何の意味も無く『皆殺し』にしなきゃなの?
どれだけフェンの情報がねじ曲げられて伝わっているのやら…
フェンは呆れるが、兵士達の反応は当然とも言えたのだ。
どうして手配になったのか?
なんて理由や事実を知らないのだから…。
もしかすると獣王と結託して王国転覆を企んでいる、、、とか思われているのかも。
領主がミヤ達を己の欲望の為に襲った事や、討伐隊の隊長の件も、、、
全て自分達が撒いた種が原因で、結果的に命を落としたのだ。
そう。自業自得だ。
それを王国は認めようとしない…認めたくないのだろう。
全て、獣王や獣人が仕出かした事で済ませたいのだ。
…と、いう上からの情報や指令しか知らない兵士達は、、、
当然ながら、フェンもミヤも『凶悪な犯罪者』だと思われていても仕方ない。
そして、この兵士達の警戒だ。
フェンの挙動に細心の注意を払っているのだ。
何気なく、剣になど触れようものなら、即座にこの場に居る兵士全員に斬り掛かられる事、請け合いだ。
それも理解出来る。
一般の兵士には、敵対するかもしれない勇者など恐怖の対象でしかないだろう。
強大なモンスターを倒す為の力が、普通の人間である自分達に向けられるかも…
言い切ろう。戦う事になれば、この場に居る王国の兵士は全員『死ぬ』のだ。
兵士達の共通した思いは、、、
『何で逃げていた筈なのに自分達の居る町に現れたりしたんだ!!』だ。
そして、、
出来る事なら『見なかった事にしたい』だ。
フェンとて解っている。
だからこそ言いたい。
『じゃあ、何で呼び止めたのですか?』と。
最初から見過ごせば、、見過ごした事にしてしまえば良かったのだから。
「僕はファリス教団の大司教様より、国への報告を依頼されて王都へ向かう途中です。」
「教団は国から正式な依頼を受けて獣王との交渉に当たったのです。」
「僕が王都へ行くのを邪魔するのは、国からの依頼を妨害しているのと同じ事です。」
「このまま通してくれるなら王都まで真っ直ぐ参ります、、ただ、」
「ここで僕を捕らえようと言うなら、抵抗させてもらいますし、王都へ行くのも考えさせて貰います。」
衛兵達は考える。
何も自ら王都へ行くと言っている勇者に手を出して被害を出した挙げ句、王都へ行くのも止める…なんて言い出されては堪らない。
このまま行ってもらうのが現実的だろう。
…だが、だ。
相手は勇者とは言っても手配者なのだ。
『王都へ行く』と言っていたのに途中で逃げてしまわない保証など何も無い。
「勇者フェン殿、我々は貴方を捕らえないが、、一人、王都までの随行を許可願おう。」
…嘘なんて言いませんってば…少し不服めいた表情を見せるフェンに衛兵は続ける。
「これも仕事ですのでお気を悪くなさらずに…衛兵が随行すれば道中の検問も難なく通過出来ますし…」
確かに筋の通った理由ではある。
町や関ごとに今回の様なやりとりが有るのは遠慮したい。
「良いでしょう。何方かお願いします。」
せっかくフェンが了承したのだが、、、
急な話しな上、自分達など容易く殺せる手配者に同行する…拘束して護送するのとは訳が違う。
誰も好き好んで『私が!』と言う訳がなかった。
居心地の悪い沈黙の末、埒があかないと思ったのか衛兵の隊長が言う。
「志願者が居ない様だな…では、、衛士リクに同行を命ずる、以上。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。何で自分なのですか?」
「衛士リク、貴君が適任だからだ。」
「適任、、って、私は衛兵になってまだ日が…」
「…だからだ。王国への忠誠心を見せてみろ!」
話を聞いていて、本人はともかく、フェンは納得する。
フェンにはそんな気は全く無いが、事情を知らない衛兵たちは思っているのだ、、、
同行した者は、途中で万が一、勇者の気が変われば即座に殺される運命だ…と。
そして、それは、この隊に居るどんなに強い者だろうと変わる事は無い。
…ならば、仮に『そう』なったとしても人的損害が一番小さい者に当たらせるのが妥当だろう…
ならば、、と、いう事で、入隊したばかりの、このリクという青年に白羽の矢が立ったのだ。
「ですが…こんな…大任を自分の様な者に…」
リクとて『王国の兵士として、その名に恥じぬ働きをしてみせる!』と兵士になったのだ。
流石に入隊したてなだけはあり、忠誠心に関してはこの隊の中では最も高いと自負している。
…ただ、忠誠心では自分の身を守れない事も重々、解っているのだ。
リクに限らず他の隊員、言っている隊長自身も。
だからこそ、誰も名乗り出ず、リクが指名されたのだ。
『何で僕が、、』という気持ちは有るが、王国への忠誠心と勇者への憧れ、、興味が背中を押す。
兵士なら誰もが少なからず持っている感情…を、リクも当然、持っている。
勇者にしてお尋ね者…
このフェンという勇者とは、どんな人物なのだろう?
皆が憧れる勇者とは一体どんな人物なのか?
普通の村人では一生会う機会など『無い』筈の勇者が目の前に居るのだ。
姿を見るだけでも定期的に国民の前で演説をする国王様よりもレアと言って良いだろう。
その勇者と同行しようというのだ。
道々、話す機会も有る事だろう。
考え方一つで、これは『またとない機会を得た』とも言えるのだ。
「了解しました。衛兵リク、命に代えましても勇者フェンを王都まで案内致します。」
王都まで『護衛します』や『連行します』と言わなかったのはフェンへの気遣いなのかどうか、、、
ただ、フェンは思った…面倒事が一つ増えた、と。
極力、、『命に代えましても』とか言う人間には近付きたくない。
フェンはリクを、出来れば避けたい人物と見た。
それは真面目に有言実行してしまう可能性が有るからだ。
もし、実際に『命に代えて守ってくれた』として、助けられた人、、フェンが本当に喜ぶとでも思っているのだろうか?
内心、同行するのは良いが、大人しくしていて欲しいのだ。
同行を認めたのは失敗だったかな?とも思ったけど、こちらからも頼んだのだから今更、やっぱり駄目…とは言えない。
このリクという青年も、フェンからすれば杞憂としか言えない事態を想像した上で覚悟して同行すると言っているのだ。
「宜しくお願いします。」
こうなれば、リクさんには『何もせずに』王都まで同行してもらい、何事も無く帰ってもらうだけだ。
『何もしない』で手柄になるのだから、美味しい仕事だとも言えなくもない。
皆が敬遠する仕事を受けるのだから、それなりの利点、、報酬や褒美が有って然るべきなのだ。
#頑張って、、何もしないでね、、リクさん♪
口には出さず、お願いにも似た視線をリクに向けるフェン。
フェンの視線にリクも気付き、思う。
この勇者フェンという男は一体…
そもそも、勇者と呼ばれたのは魔王を討伐した祖父なのだという。
このフェンという男は王都で勇者継承の儀を行い、勇者になったと聞いている。
要は世界の為に戦った正義の人で、魔物を倒す強大な力を持った人、、、
、、とは限らない、という事なのだ。
世間でよく聞く『二代目』と言われたり『どら息子』と呼ばれる者達の様に、勇者の名に威を借る人物なのかも…
力も無く、正義の心の欠片も無い、極悪非道な人物なのかも。
…いや、力が無いなら、まだ幸いだ。
どんな悪人も力が無ければ問題ない…悪事を働けば即座に制圧されるだけだ。
だが、力有る悪人は最悪だ。
その実力を持って、あらゆる欲望も実現させるのだ。
・・・この男は?
残念ながら『後者』の確率が高い。
足を踏み入れたら誰も帰った者が居ないと言われる獣王の町から生還しただけでも驚くべき事なのだ。
その上、王国から手配され追われる身だというのだから。
僕は…生きて帰れるのか?、、、いや、生きて帰る!、、必ずだ!!
リクは決心し、気合いを入れる。
…なんてリクの決意は、全くの的外れだとは当人は微塵も思っていない。真剣だ。
「じゃあ、宜しくお願いします。リク、、さん?」
見た目、僕よりも歳上に見えるので、『さん』だよね?
「こちらこそ。宜しくお願いします・・・勇者フェン殿。」
・・・うわー、またしなきゃ駄目なのかな?
勇者って呼ばないで・・・のくだりを、、、
あーっ、、、面倒なので止める事にした、、説明を。
どうせ王都までの事なのだから我慢するか、説明は省いてガツンと言う、という事に結論付ける。
「さあ!参りましょう!」
やけに高いヤル気と気合いを見せるリクさん。
別に戦いに向かう訳じゃないんだから…
何もせずに道々で呼び止めるであろう衛兵への対応だけしてくれれば良いのだ。
轡を並べて二人が行く。
最初は緊張気味だったリクも慣れて来たのか、ポツリ、ポツリとフェンに話し掛けて来る様になった。
「勇者様はどういう鍛練を積んで来られたのですか?」
衛兵、、兵士という職業柄、やはり強くなる事には関心が有る様だ。
途端に勇者の単語が出る…勇者様は止めて欲しいと何度も繰り返して言っているのにな、、
そもそも、王都まで『同行』とは言っているが、実際には手配者を『連行』しているのと同じなのだから。
その被疑者を兵士が『様付け』で呼んでいたらおかしいですよね?
「・・・『勇者様』は止めて下さい。」
少し嫌な顔をして言ってみる。
これは効いた様だ。
実際にはそんな事は無いが『勇者の機嫌を損ねたら殺されるかも…』という噂が効いているのだろう。
すぐさま代案を提示してきた。
「す、すいません。では…フェン殿では?」
「それでお願いします。」
フェンの不機嫌そうな顔も普通に戻っている。
フェンは今まで相手が男性だろうが女性だろうが、特に隔てる事無く平等に接しているつもりだ。
そして、実際にそうして来た筈なのだが・・・
だが、理解した。
同性と異性では間違いなく気分的な部分で隔たりが有る。
正直な所、リクさんに対してミヤやルチアと同じ問答を繰り返す気にはなれなかった。
ミヤやルチアには、ちゃんと自分の気持ちを伝え、丁寧に説得して呼び方を改めて貰ったのだ。
その『やり取り』も面倒だとか、嫌だ、とは思わず、逆に楽しくさえあった。
・・・だけど、、
相手がミヤやルチアだから、、女の子だから、何度でも繰り返し説明しても苦にならなかったのだろう。
男性であるリクに、勇者と呼ばないで…の件をもう一度説明…とか考えるだけで気が重い。
誰にでも分け隔てなく…なんて事はフェンでさえも『しているつもり』でしかなかったのだ。
無意識に同性より異性を大切に思うのは生物なら当然の事とも言える。
リクへの『説明が面倒』とフェンが思い、つい嫌な顔をしてしまったのも仕方がない事だったのだ。
・・・と、いうフェンの内心など知る由もないリク。
緊張よりも興味が勝っているのか、呼び方など意に介さず、興味の湧くままに質問する。
「では、フェン殿は一体どんな鍛練を?」
どんな鍛練を?って言われても困る。
フェンが素直に答えるなら答えは一つしなかい。
だが、その答えはリクさんが望む答えではない事も分かりきっている。
フェンが素直に答えるなら、、
『普通に鍛練しました。』だ。
フェンは爺ちゃん、、前勇者であるジンに教わった。
その為、他の者から教わった事が無いのだ。
なので『爺ちゃん』の鍛練がフェンにとっての『普通』であり、極、当たり前の誰もが行っている鍛練だという認識なのだ。
「普通に剣の型や素振り等をしていました。師匠は祖父のジンでしたが…」
「へえ!そうなんですか?」
特に何をした、とも言っていないがジンの名を聞き、リクは目を輝かせる。
気分的にはフェンが前勇者パーティーの話を聞いてワクワクしたのと同じ感じなのだろう。
「何か珍しい鍛練はしたのでしょうか?」
、、う~ん、だから分からないのだ。
普通の鍛練、の筈だ。多分だけど…。
王都へ向かうフェンとリク。
考え方も似ている様で違うのです。
皆さんの周りにも居ませんか?
言ってる事は正しいけど、、でも納得出来ない人が、、、
世の中にはよく有る事なのです。
次回は『王都へ・・・ですか?勇者さま。②』です。
お楽しみに♪




