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記憶ですか?勇者さま。

おはようございます♪

第69話投稿です。

ミオンとシオン、、二人の『あの店』での記憶、、

偶然という奇跡だったの?、、な話しです。

ではお楽しみ下さい。 ふえん




今、こうしてミオンとシオンが居られるのはフェン様のお蔭だ。


それは、運が良かった、、いや、奇跡と言って良いだろう。


あの日、あの時間に店にフェン様が来なかったら、、、


私とシオンは死んでいた、、殺されていただろう。


フェン様から経緯は聞いている。


本当に、偶然の中の偶然が重なったからこそ、ミオン達、姉弟は助かったのだ。


昼食の為の店を探して裏道へと来たフェン様達…たまたまミオン達の店に勘違いで入ったのだ。


そして、偶然なのか、勇者としての勘なのか、シオンが処分されかけている事に気付いてくれた。


そして、店の脇道に踏み込み暴行を止め、シオンを救ってくれた…買ってくれたのだ。



あの日、、、


もし、フェン様が大通りの食堂で食事をしていたら?


もし、店に入り、間違いに気付いて嫌悪し、話しもせずに即、立ち去っていたら?


もし、店先で聞こえた音に違和感を感じず、無視して立ち去っていたら?


今、私達は生きていない。


・・・シオンはそのまま処分されただろう。


・・・私も店の男を許せず抵抗し、逆に殺されていただろう。


だが、運命は姉弟を生かした。


運命はミオン達を苦しめた店の男達と同じ種族の人間、、フェンに助けさせたのだ。


フェン様は異変に気付き、死の淵からシオンを救ってくれた。


そして、私まで・・・。



ミオン達も何もしなかった訳では無かった。


生き残る為に考え、備え、実行した。


シオンは女の子として暮らし、二人で空腹に耐えた。


そして、常々シオンには話してあった。


「いい?シオン。もし、お姉ちゃんよりも先に誰かに買われたら、の時の話よ。」


「そんなの、、嫌、、。」


「嫌、じゃないの。シオン。そうなるかもしれないのだから、良く聞いて。」


「うん。」


「まず一番大事なのは、シオンを買った人がシオンをどう扱うか、よ。」


「うん。」


「もし、シオンに酷い事をする様な人間だったら…」


「だったら…?」


「まずは我慢するの。そして、、人間が油断して、そうね、外へシオンを連れ出した時に逃げるの。」


「いいわね、シオン。」


「うん。でも、、お姉ちゃんは、、?」


「待って、シオン。続きが有るの。」


「うん。」


「シオンが先に買われた後、もしも買った人間がシオンを大切にしてくれる様な人間だった時の事。」


「もし、良いご主人様だったなら…お願いするの『お姉ちゃんも買って下さい。』って。」


「うん。」


「お金持ちの人間なら、私も買ってくれるかもしれないからね。」


「でも、これだけは注意して!、、、絶対に無理にお願いしちゃ駄目。」


「どうして?」


「シオンが無事で居る事が第一なんだからね。」


「無理なお願いで、シオンがご主人様の機嫌を損ねる様な事はしちゃ駄目。」


「で、でも、、…お姉ちゃんは?」


「お姉ちゃんの心配は要らないわ。シオンからの連絡が暫く無ければ、私も、ここから逃げるから。」



・・・嘘だ。


・・・逃げられる位なら、とっくに逃げている。


私達も、この店に居る他の獣人達も解っている。、、、逃げられない、と。


奇跡でも起これば…最近聞いた『獣王軍』という集団でも助けに来てくれたら、、、無いよね、、。


・・・可能性の話しでは助かったりしない!!


「シオンが無事で居る事によって、お姉ちゃんの助かる可能性も高くなるんだから。分かった?シオン。」


「うん。」


「シオンと私の順番が逆でも同じよ。」


「私がご主人様に気に入られてシオンを買いに・・・助けに来てあげるからね♪」


「うん。待ってる!」


・・・そう上手く行く訳が無いのは解っている。


私やシオンを買う様な人間が、普通な人間の筈が無いのだ。


『良い人間』の可能性など、低い、、いや、無いと言った方がより正確だろう。


私が酷い人間に買われ、シオンを助けに来れなかったとしたら、、


私なら低い可能性だが、幸運が重なれば奇跡的に逃げられるかもだけど・・・


シオンには『ここから逃げる』という選択は無い、、実際にも無理だろう。


それは二人にとっては『死』を意味する。


私は買われた先で殺され、シオンはこの店で処分される時を待つだけだ。


・・・だから私は買われる訳にはいかない。


万が一、買おうとする人間が居たら牙を立ててでも、諦めさせる。


何とかシオンだけでも先に・・・


正直、シオンだけ店から逃がせれば、私自身は逃走に失敗して死んでも構わない。


、、、なんて事をシオンが知れば『僕も残る』と言い出すのは目に見えているので言わない。


ほんの少しでも生き残れる可能性が高まるなら、手を打っておくべきなのだ。


「いい?シオン。…もしもの時は、、いいわね?」


「うん。お姉ちゃん。」



だが、無情にも時は流れて行く。


誰かに買われる機会すらも無いままに、シオンの処分が決まり、そして実行されたのだ。


店の脇の路地で店員の男達によって処分は始まる。


処分・・・それは、廃棄。


・・・シオンは殺される、という事。


男達の容赦無い殴打、、痛みの中でシオンは思う。


「ごめんなさい。お姉ちゃん…僕…もう駄目、、みたい…」


薄れる意識の中、優しく微笑むお姉ちゃんの顔が目に浮かぶ、、そして頷く。


お姉ちゃん、、、


そして意識を失った。



身体を揺すられる感覚、、お姉ちゃん?


ごめんなさい、、お姉ちゃんが話してくれた事が全部無駄になっちゃう、、、はっ!


意識が戻る・・・駄目だ、、生きなきゃ、、


朦朧とした意識の中で、必死に訴える・・・


「ごめんなさい、ごめんなさい、、まだ、、働けます、、働けます…」


「大丈夫だよ。もう少しだから頑張って。」


聞いた事の無い優しい声・・・頬に風を感じる・・・走っている、、の?


ぼんやりと周囲に目を向けると街中を走っている様だった。


立ち止まり、何かを話して断られ、また走る、を繰り返しているの?


「この子の治療を!」


・・・治療?、、誰の?、、僕の?、、ううん、私の?


知らない人間の男が私の治療を頼んでくれてる?


、、、どうして?、、要らない筈の私を、どうして??


人間の男は背負った私に気遣ってくれているのか、なるべく揺れない様に走ってくれている。


・・・知らない人間・・・店の男ではない・・・ここは外・・・


もしかして…新しいご主人様、、なの?


お姉ちゃんが言っていた事が頭に浮かぶ…助けなきゃ…お姉ちゃんを。


シオンを治療しようとしてくれているご主人様だ、、なら、、良いご主人、、様?


自分の血の匂いで覚えにくいが、必死にしがみつき、気を失う前に匂いを覚える…


ご主人様・・・の匂い・・・


自分の命も危ういのにシオンは思う。


お姉ちゃんの言った事・・・守らなきゃ・・・


ご主人様、、、お姉ちゃんを、、ミオンお姉ちゃんを助けて・・・


シオンの言葉は声にならなかった。



次に気付いた時にシオンは見知らぬ場所に居た。


見覚えの無い室内、、ベッドに寝かされている。


どこ?・・・ここ??


周りには変わったローブを着た男達が数人でシオンを取り囲んでいる。


変わった格好、、村に一人だけ居た神官さんの服に似ている。


痛かった身体の苦痛が和らいでいる。


新しいご主人様は、あのまま探し続けて治療してくれる所を見付けてくれたのだろう。


、、あっ!、、ご主人様、、は?、、どこ?


背負われていたので顔も知らないご主人様・・・どこ?


辺りを見渡すが、、、居ない。


格好が違う。


匂いも違う。


ご主人様、、が居ない。


治療をしていた神官の一人が言う。


「治療の目処は立ちましたが、この獣人、、どうしますか?」


「まずは完全に治るまで治療を続けましょう。」


「ですが、あの男…運び込んだ男は戻って来るでしょうか?」


「彼は、きっと戻って来ます。私は人を見る目には自信が有ります。」


「そうですか?セイショウさん…帰って来ない時の事も考えておいた方が賢明かと思いますよ。」


「では聞きます…帰って来なかったら?」


「それはもう決まっています。兵士に引渡し『元居た場所』へ戻ってもらうしかないでしょう。」


・・・!!


元居た場所、、あの店へ?


帰される、、嫌だ、、それに駄目だ。


新しいご主人様と一緒に、お姉ちゃんを助けなければならないのだから。


ご主人様・・・どこ?・・・助けて!!ご主人様・・・


シオンは身体が動く様になった途端に治療を行ってくれていた神官さん達の隙を見て逃げ出した。


ご主人様、、、


逃げたはいいが、治療も途中の病み上がりだ。


しかも、目当ての『ご主人様』の顔すら知らない。


・・・どうしたらいいの?・・・お姉ちゃん・・・


答えてくれるお姉ちゃんはここには居ない。


唯一、判っているのはご主人様の『匂い』だけだ。


見て分からないなら、嗅いで探すしかない。


シオンは走った。痛む身体の事など気にせずに。


追いかけて来る数だけは多い神官達の匂いを確かめつつ。


居ない・・・何処なの?、、ご主人様、、


いや!、、きっと居る。、、私を助けてくれたご主人様を僕は信じる。


いよいよ体力の限界で視界も定かでなくなり、シオンが諦めかけた時、希望は訪れた。


先程から何度もシオンの逃亡を阻止しようと立ち塞がり邪魔をする男、、、


だが、、今度は怖い気迫が無い。、、優しく気遣う気持ちが伝わってくる。


、、そう言えば、、近付くのすら危ないのでこの男の匂いは・・・


フェンは優しく問いかける。


「ごめんね、、ほら、おいで。」


抱き付いてシオンは確認して確信する…ご主人様だ。


「・・・ご主人様・・・」


「そうだよ、ご主人様だよ。いい子だから治療の続き受けようね。」


フェンの背中に収まりつつ、シオンは思う。


このご主人様なら、きっとお姉ちゃんも助けてくれる、と。


、、、なら、ご主人様の言う事は何でも聞くべきだ。


治療を受けて、と言うなら、大人しく治療されるまでだ。


一刻も早く、お姉ちゃんを助けないと・・・


そして治療を終えたシオンは宿屋で、お姉ちゃん、、私の事をフェン様にお願いしてくれたのだ。


私が話した通りに。


そして、フェン様は言葉通り、私まで助けてくれたのだ。



幸運?


奇跡?


言葉にするのは簡単だが、フェン様が居て、行動してくれた結果なのだ。


決して運命の神様が何かしてくれた訳ではない。


フェン様が私の護りたい者や守りたい物を守ってくれたのだ。


私に出来る事なんて少ない。


少ないからこそ末永く、、ずっとフェン様の傍に居て尽くして行く。


フェン様のしてくれた事は私達にとっては何にも代えがたい事なのだから。






読んでくれて、ありがとう♪

次の投稿は、、、いつかな、、?

気長に待ってくれると嬉しいです。

ではでは。  ふえん

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