王様ですか?勇者さま。
本当に帰っちゃった、、、
リカ、、頑張って何か話すんじゃなかったの?
・・・・・えーっと、、、
帰っちゃったものは仕方がないよね…。
「お待たせ。ミヤの番だよ。おいで。」
「はい、勇者様。」
部屋に入って来たミヤからいつもとは違う雰囲気が漂っている…。
・・・ それに僕の事、 『 勇者様 』 って?
「どうかしたの? ミヤ。こっちへおいでよ。」
「はい。失礼します。」
…あれ?、ミヤもリカみたいに緊張しているのかな?
「ミヤ、この部屋は椅子が無いからベッドに座りなよ。」
言ったもののミヤは動かない…フェンを見つめたままだ。
「…ミヤ?、どうしたの?」
ミヤはフェンの正面まで来ると言う。
「聞いて欲しい事があります。」
いつになく真剣なミヤに一抹の不安を感じる。
「話してごらんよ、ミヤ。どうしたの?」
『バッ』…急にベッドではなく床にひれ伏すミヤ。
正座し頭を床に付け手のひらを見せひれ伏している。
「ミ、ミヤ!、ど、どうしたの?」
何がどうしたのか理解できず、フェンの方が驚いて混乱する。
「勇者様にお願いがあります。」
「、、お願い?」
自分に対してひれ伏しているミヤに不安が増していく。
「いいから早く立って。ほら、ベッドに座ってよ。」
それでもミヤは動かない…。
「今日は勇者様に聞いて戴きたいお願いが有ります。」
「お願い?」
・・・ミヤ?、、なんでそんな他人行儀な話し方するの?
それに、僕の事を何でまた『 勇者様 』って呼んでいるの?
「何、、ミヤ?、改まってさ…何でも言ってよ。」
・・・・
ミヤが話し出した内容は、、予想外だった。
「勇者様にミヤの仲間達、、種族の皆を救って欲しいのです。」
・・・どう聞いても、結婚、、の話じゃない?
「ミヤの仲間?、、友達とか?、、人間に捕まってるの?」
「いいえ。私の友達の話しではありません。」
「私の仲間・・・獣人達、全てを助けて欲しいのです。」
「獣人達全てを助ける…って、想像出来ないんだけど…」
「勇者様は『 この町 』を見てどう思いますか?」
「ここ?…獣王…ガルンさんが治めるだけあって、皆、幸せそうだよね。」
、、もし自分に何か有った時はミヤ達をここへ住まわせたいと思う程だ。
、、安心して住める場所・・・獣人には天国だろう。
「そうです。皆、幸せそうです…ここに『 住めれば 』の話しですが、、」
「でも一歩でも町を出れば違うのです。」
「セグラムの町を見て分かったと思います。」
「領主は元より、領主を毛嫌いしていた領民でさえも、同じなのです。」
「報酬目当てに、罪悪感無く、簡単に獣人に刃を向けるのです。」
「今の王国領に獣人が安心して暮らせる場所など、ここにしかないのです。」
「うん。沢山の獣人が居て、皆が安心して暮らせるのはここだけだよ。」
フェンの家の様に獣人も隔てなく暮らしているケースは少ないだろう。
、、、と言うか探す方が大変だろう。
「都会では人間同様の待遇で雇い働かせる貴族や商人、個人も中には居ます。」
「それは人間同士の世間体がそうさせている面が大きいのです。」
『 あの家は奴隷を使っている 』 なんて噂は誰しも嬉しいものではない。
ただ、地方へ向かうにつれ、獣人の扱いは酷いものへとなる傾向がある。
ミヤの話す地方では獣人は既に 『 獣人 』 ではなく、ただの 『 物 』 だ。
・・・人間の欲求のままに使われ、捨てられる存在なのだと言う。
圧倒的な数の人間と少数の種族、、、
、、、その人間が人間の為に作った法律は獣人を守ってはくれなかった。
獣人はあくまで人間の所有物、 『 物 』 として扱われた。
人身売買は嫌悪する人間は多いが、対象が獣人になると途端に感覚が薄れる。
まるで 『 ペット 』 の売買と同じ感覚なのだ。
この事が悲劇を生む。
自分の意志で人間と暮らすのではなく 『 強制的に 』 暮らさせられる者、、
人間に狩られ、売られる獣人が出て来たのである。
商売目的で専門で獣人を狩る人間、、冒険者も出て来る。
そして、捕まった獣人、その大半は 『 物 』 としての扱いを受ける。
人間で言う所の 『 奴隷 』 だ。
「そして今、、も、どこかで私達の身に起こった様な事が、、、」
フェンは 『 ゾッ 』 とする。
最初にフェンと話して満面の笑顔で微笑んでいたミオンでさえ被害者なのだ。
フェンの知らない所、、この国の中でどれだけの悲劇が起こっているのか、、。
「勇者様には 『 王 』 になって欲しいのです。」
「・・・えっ?、、『 王 』 ?」
「はい、、ガルン様の様な王に・・・」
「そんな…王様なんて 『 パッ 』 っと成れる物じゃないよ?」
「そうです…だから、、、」
「勇者様は… 『 リカと結婚 』 して下さい。」
「ミ、ミヤ…何でリカと結婚しろだなんて事を言うの?」
・・・そもそも日頃から僕と結婚したいって、、、
、、、独り占めしたいと言ってたのはミヤだよね?
それが、、なぜ??
「驚いたかもしれませんが、これが現実的な選択です・・・」
「勇者様の言う通り 『 王様 』 になんか簡単には成れません。」
「民を集め、町を起こす、、開墾も必要です、、。」
「その為には多くの歳月が必要になるでしょう。」
「勇者様には現実的に人脈や資金なんて無いのです。」
「イーストノエルの町で完結していた勇者様には後ろ盾も在りません。」
「ですが、、今回、良い 『 人脈 』 が出来ました、、、」
「、、、『 獣王 』 と 『 リカ 』 です。」
「ここ、獣王軍の本拠地は既に『 町 』 の体を成しています。」
「このまま開発、開拓を続ければ都市、、国も夢ではないでしょう。」
「、、そして 『 リカ 』 は、勇者様を、、気に入っている、、。」
「獣王様は、子供は、、一人だけ、、、です、、」
「、、、その、、一人娘、、のリカと、、」
「、、、結婚、、すれば、、、」
・・・聞いてられない・・・聞いていられる訳がない。
「「 ミヤ!、、止めてよ!! 」」
「、、これが、、現実的な、、方法です、、勇者様、、」
「現実的?、、確かに現実的かもね?、、、でも、駄目だよ。」
「ど、どう、、してですか、、勇者、様?」
「それは、、 『 現実的 』 ではない 『 現実 』 が目の前に在るからだよ?」
「・・・??、、どういう、、事か、、解かり、、ません。」
「じゃあ、ミヤ?…何でミヤが泣きながらお願いしなきゃなの?」
お願いの内容は、、確かに立派だ。
自らは、、ミヤは我慢するから獣人達を助けて欲しいと言う。
立派だ…でも…納得は出来ない、、フェン自身が許せないのだ。
「ミヤのお願いは…僕から見ても、勇者よりも勇者らしいお願いだよ。」
「、、だったら、、」
「だからこそ 『 駄目 』 なんだよ…。」
「…どう…して?」
「ミヤが一人で我慢して悲しむ必要なんてないんだよ?」
「…でも、、これはミヤからのお願いです、、」
「 『ミヤからの?』 …ミヤの個人的なお願いなの?…違うよね?」
「ミヤだけでなく獣人さん達…皆がそう思っている事だよね?」
「なんでミヤだけが我慢しなくちゃなの?…そんなの許せないよ。」
「それに、ミヤ、本当に?、、、」
「、、、本当に僕とリカが結婚して欲しいと思ってるの?」
・・・・・
返事の代わりにミヤの栗色の瞳からは涙が更にポロポロと溢れ落ちる。
、、、もう答えなんて聞くまでもないよね、、
ミヤは本心では、そんな事は望んでいないのだ。
「勇者様、、、」
「答える前に、いつも通りに呼んでよ、ミヤ、、『 フェンさま 』って。」
「、、、フェンさま、、、どうしてですか?」
「どうして駄目かって?、、、ミヤが泣いてるからだよ、、、。」
話の途中からミヤは 『 ぽろぽろ 』 と涙を流しながらお願いしているのだ。
ミヤの栗色の瞳から流れる涙は綺麗でいて、切なく、痛々しかった。
「私の、、ミヤの涙なんか関係ありません、、もっと大切な、、、」
「ミヤ、、、もっと大切な、、って、何が大切なの?」
「・・・・・」
「ミヤが悲しくなる様な方法なんて絶対に駄目、、間違ってるよ。」
「、、、、で、、も、、」
「 『 でも 』 じゃないよ、ミヤ、、。」
「、、ミヤ、僕は 『 獣人皆 』 より 『 ミヤ 』 の方が大事なんだよ?」
、、、ミヤの視線が揺らぐ、、、
「、、でも、私は、、皆を、、獣人の皆を、、、」
「・・・じゃあ、ミヤの言う通り、リカと 『 結婚 』 しようかな?」
『 ビクッ 』、、ミヤが、ガクガクと震えている、、、
「、、そ、そう、です。、、フェンさま、、はリカ、、と、、」
、、、ミヤ、何で? ミヤがそんなに我慢して、悲しんで、、、
、、、それで獣人達が幸せになって僕に 『 喜べ 』 とでも言うつもりなの?
「ミヤ、、泣かないで。 ミヤが泣くと僕も悲しいよ?」
「ちゃんとミヤのお願いは聞いてあげるよ。」
「じゃあ、、リカと、、結婚、、?」
「ううん、結婚はしない。」
「??、、ミヤのせいで、、ミヤが居るから、結婚、、しないの?」
「違うよ、ミヤ。ミヤの前に二人には、もう話してあるんだよ、、」
「、、『 今は結婚とか考えてないし、する気も無い 』 ってね。」
「でも、、それじゃあ、、」
「さっきも言ったけど、ミヤのお願いは聞いてあげるからね。」
「但し、、ミヤの悲しまない様な方法でね♪」
、、、そんな都合の良い方法なんて有る訳がない、、
、、ない、、と思うが、フェンさまなら何とかしてくれる気がした。
「ミヤのお願いは本当は僕がお願いされなくても、しなきゃいけない事なんだよ…。」
「だから僕は僕として勇者に相応しい行動をとるよ。」
「ただ…それはミヤを含めて皆が悲しまない方法を考えて…だよ。」
「もしそれで悪い結果になったとしても、ミヤは何も悪くなんかないんだよ…。」
「・・・それは 『 勇者 』 としての僕の責任だからね。」
「だからミヤ、泣かないで、、泣かなくてもいいんだよ。」
「ミヤには…いつも笑って傍に居て欲しいんだ、、」
「・・・駄目、かな?・・・ミヤ?」
「僕の 『 お願い 』 、、ミヤ、聞いてくれる?」
「そんな・・・お願いなんて、、」
…そんな事ない、、お願いしているのは私で、フェンさまではない。
ない…はずなのに…
言われた事をゆっくりと時間を掛けて静かに理解するミヤ。
「…はい。フェンさま…お願いします、、」
ミヤの涙は止まらない、、、。
でも、さっきの悲しい涙から、温かい涙に変わった気がした。
「分かったからミヤ、何時までも床に居ないでベッドに座ろうよ。」
『 ぽん、ぽん 』 と布団を叩いて、『 ここへおいでよ 』 と促すと、
漸くミヤは立ってくれた。
床から立ち上がったミヤはベッド…ではなく、フェンの胸に飛び込んで来る。
「フェン…さま…私、、、」
いつになく、強くフェンを抱き締めるミヤ。
ミヤ、、、泣くほど頑張ってお願いしたんだもんね、、。
「頑張ったね、、ミヤ。」
フェンも普段より、しっかりとミヤを抱き締め、受け止めてあげる。
そして頭を撫でながら言う。
「大丈夫、大丈夫だからね…ミヤ。」
フェンの自分に対する労りの気持ちが伝わって来る。
何も変わらない普通の 『 なでなで 』 なのに普段よりも気持ち良く思える。
「…フェンさまは…優しすぎます、、、、、、、、 好き 、、」
最後に呟く様に言った小さな 『 好き 』 はフェンに届く前に溶けて消えた。
ミヤの頭を撫でながら考える、、、
それにしても、、、
昨日の夜、ミヤはミオンの事を説明してくれた。
その後、一人でこんな事、、獣人達全体の事を考えていたなんて、、。
自分の事で一杯一杯な僕より、余程 『 勇者 』 らしいよね。。。
前にも思っていた筈なのに、、、
『 女の子 一人守れずに 何が勇者だ 』、、と。
ずっと一緒に居てくれるミヤの願いを叶える。
それが、獣人全体、、人間も含めた皆の幸せに繋がるはずだ。
最初の目標が『 王様 』 っていうのはハードル上げ過ぎな気もするけど、
目標は高い位が丁度良いのかもしれない、、、。
安心したのかミヤは抱き付いたまま少しウトウトし始めていた。
「ミヤ、王様ってどうやったらなれるのかな?」
「まずは拠点となる場所が必要にゃ。」
「それからフェンさまを王と認める住民もにゃ。」
「王位を継承したのでもなければ最初は国ではないにゃ。」
「まずは小さなコミュニティーからにゃ。」
「うーん。先は長そうだね、、。」
「そうにゃ。今は何も無い『裸の王様』同然にゃ。」
「はっ!、、、裸の王様?、、、良いかも♡♡」
「・・・王様になるの止めようかな?」
「う、嘘ですにゃ!、、ちょっと夢見ただけにゃ!」




