逃避ですか?勇者さま。
「ちゃんと追えてるかにゃ?」
犬人族の能力、『 嗅覚 』 でフェンの匂いを追跡しているのだ。
『 コクリ 』 と頷き肯定するシオン。
怖くて仕方ないのだろう。
シオンは館を出てからも姉のミオンの手を握ったまま離せないでいる。
そのミオンも相当ショックだったのだろう。見るからに顔色が悪い。
だがシオンを護ろうという一念からか、気丈に周辺に気を配っている。
『フェンさまから任されたのだから二人を必ずフェンさまの元へ、、、』
ミヤの気持ちはこの一つだった。
フェンからの気遣いに応えようとした結果が今の状況だ。
フェンの希望であったであろう事、、、
『街へ出掛けて、何事も無く宿屋へ戻る』
、、、という約束は、もう守れない。
ならば、任された『二人を』無事にフェンさまの元へ、、、
『ミヤが二人を見ててくれるから安心して僕も依頼に集中出来るんだよ』
私を、、ミヤの事を信頼して任せてくれたのだ。
「、、それなのに、、、」
ミヤは悔しくて仕方なかった。
なぜ?、、、なぜ、こんな事になってしまったの?
白昼堂々、公衆の面前で『獣人狩り』が行なわれるなどと考えもしなかった。
今考えれば、街の人達は『獣人狩り』と聞いても粛々と行動していた、、。
、、この街では『珍しくない』という事なのだろう。
納得は出来ないが、幾ら獣人とは言え、既に『誰かの所有物』の
可能性だってある。
それを捕らえて問答無用で連れ去ろうと言うのだ。
もしこれが他の町で行なわれたら間違いなく『問題』になるだろう。
『獣人から』ではなく、その『所有者から』の訴えによって、、、。
それが、、この街には、、無い。
それは、この街の領主が『治安維持の為』と称して『公認』しているからだろう。
今になりミヤは思い出す。
クロスシティーでの朝の散歩時に獣人の女性から受けた注意、、、
、、警告とも取れる言葉、、、
『あの領主には気を付けろ』、、、は事実だったという事だ。
なぜ、もっと真剣に忠告を聞かなかったのだろう?・・・後悔が過ぎる。
内容からは『こちらを心配して忠告してくれた』のは間違いない。
・・・だが、ミヤには許せなかったのだ。
女がフェンに対して発した言葉、、、『クズがっ、、』が。
知らない獣人にとっては、フェンも人間族の男の一人でしかないのだ。
そして、考えるだけで気分が悪いが領主もフェンも同じ人間族の男なのだ。
種族が同じなのは事実だが、『フェンさま』と『あの領主』は違う。
『知れば解かるにゃ!』、、というのはミヤの勝手な押し付けなのだ。
『あの女性』はフェンとは初見で何も知らないのはミヤも理解していた、、。
、、、だが許せなかった、、、あの一言が、、、。
せっかくの『忠告』も『こんな女の言う事なんてっ!!』と信じなかった。
・・・そして、今、この状態なのだ。
先刻、セグラムでは領主からの御触書、、通達が回っていた。
ミヤ達が領主の館を逃げ出してすぐの事である。
「領主ヘリオスの名をもって命令する。」
「当館にて暴れ、私に傷を負わせて逃走した獣人三匹を無傷で捕らえよ。」
「捕縛、もしくは重要な情報には報酬を約束する。」
「特に捕縛した者は今後、十年間全ての税を免除する。」
セグラムの街はこの通達で騒然としていた。
王国での『税』は個々の都市での生産性が違う事を考慮して、
その都市の『領主』が税率を自由に決めて良いのだ。
、、、そしてセグラムの税は他の都市より高かったのだ。
領主の獣人集めによる散財や獣王に対する無駄な派兵等の損失は
全て『税』という形で住民に『皺寄せ』として伸し掛かっていたのだ。
「税が、、十年間も、、免除?」
「さっき、それらしい三人を見たぞ!」
領主の横暴さは住民も知っていて、通常なら協力など御免だ。
・・・だが、実際の『税の免除』という利益が有れば話は別だ。
十年間の税免除、、、それは過剰な程の報酬だった。
獣人狩りの男達に加え、街の男達も次々に名乗りを上げる。
すぐに情報が集まり、捕縛隊が結成された、、、。
驚いた事に、今まで一度として出陣した事の無いヘリオス自身も出陣するという。
・・・今回は意気込みが違う、、、誰もがそう思った。
事実、当のヘリオスも意気込みが違った。
館でミヤ達、三人を初めて見た瞬間から気に入って頭から離れない。
頭の中では既に『三人共、自分の物に』なっているのだ。
可愛い三人を自分に侍らせ、弄び楽しむ事を想像していた。
『必ず我が物に・・・』
領主の欲望はとどまる所を知らなかった。
「進軍!!!」
正式な兵士は少ないが、獣人狩り専門の男達や街の男達。
人数だけなら、今までの派兵時にも勝るか、という数となった。
中でも獣人狩りの男達、既に一度ミヤ達を捕らえた者達は嘯く。
「何度も儲けさせてくれて感謝しなきゃだな!」
「また報酬に、税の免除も、、暫くは遊んで暮らせるぜ。」
「お礼に今回、捕らえたら俺達も可愛がってやるってのはどうだ?」
「お前、、それ『お礼』になってないよな(笑)」
「バレたか!、、でも領主が出陣する程の獣人だぜ?」
「俺達も『味わって』みたくないか?」
「確かに、、、」
男達も前回は報酬の為に諦めたはずの欲望を再燃させていた。
「、、、追っ手?」
風に乗った欲望に塗れた臭いにミオンが気が付く。シオンも同意する。
ミヤも多人数の気配を察知する。
、、人数が多い、、、しかも、なぜこんなにも早く、、?
小高くなった所から追っ手を確認する。
・・・!!、、獣人だ。
鎖に繋がれた獣人が先頭に立たされている。
追っ手の軍勢もミヤ達を匂いで追跡しているのだ。
・・・しかも獣人を使って、、、。
ミヤ達は今、チュニック姿だ。
獣人狩りで捕まった時に、着ていた『ねこみみローブ』を剥ぎ取られたのだ。
そのローブを使って追いかけて来ているのだろう。
ミヤ達は匂いを追っている獣人を『裏切り者』だとは思わない。
その行為が無理矢理させられている事は百も承知だからだ。
逆らえば当人がどんな仕打ちを受ける事になるか?
自分の身を守る為には仕方の無い事だと理解出来る。
ただ、『同族への裏切り』を強制されている同胞への憐れみしかない。
『それ』を強制する人間、、、最悪だ。
今すぐ領主の軍勢に特攻し仲間を助けたい気持ちも有るが、今は違う。
今、優先すべきはフェンさまから任されたミオンとシオンの安全だ。
それを成す為には逃げるしかない。
逆にミヤ達が逃げている間は追跡している獣人も必要なのだから安全と言える。
そしてミヤは、もう一つ気付いた。、、、領主、ヘリオスが居る。
元凶、、フェンさまの事も、私達三人の事も全てあいつが元凶なのだ。
許さない、、そして当然、、あいつの思い通りになんかさせないっ!
フェンさまは死んだりしない、、きっと無事だ。私達も捕まるもんかっ!
三人は必死に歩を進めるが、段々と距離が詰まってくる。
今はミヤだけでなくミオンとシオンも居るのだ。
片や領主の軍勢は『報酬』に目が眩んだ人間の大人達だ。
『報酬を手にするのは俺だ!!』と競って追い駆けてくる。
ジワリ、ジワリと距離が縮まり、声や装備の上げる音が鮮明になってくる。
・・・逃げ切れない?・・・でも、もう少しのはずだ、、、。
フェンが領主から渡された地図には『全滅地点』までが記されていた。
ミヤ達は途中までシオンにフェンの匂いを追わせて進んだ後、道を逸れたのだ。
全滅地点と地形を考慮し、獣人が拠点として使いそうな場所を予想した。
途中から、ショートカットし直線的に獣王軍の本拠地を目指したのだ。
「ここじゃ、、ないの、、?」、、ミヤは自分の予想が正しい事を祈る。
『 ガサッ 』 後方で音がする。
「お前ら、、ここまでだ!!」
見ると、先にミヤ達を捕らえ領主に引き渡した獣人狩りの男達、
、、冒険者パーティーだった。
「手間を掛けさせやがって! そろそろ鬼ごっこも終わりだ。」
、、、このままでは前回の二の舞だ、、、。
ミヤは決断する。
「ミオン!、、シオンを連れて逃げて!!」
「ミヤ、、さん、、、。」
「ここを真っ直ぐ行けば、到着するはず。」
「だって、ミヤさんが、、、」
「この冒険者はミヤが相手するから、、早く行って、、」
「、、、早く行って『フェンさま』を呼んで来るの!!」
「、、ミヤ、、お姉ちゃん、、、」
「、、行って!!」
ミオンはシオンの手を引き、駆け出す。
ミヤはミオンとシオンを見送る、、。
、、、『ミヤお姉ちゃん』だって、、笑っちゃうわよね?
・・・私は犬人族なんて嫌いだし、ミオンは今後、恋のライバルになる予定だ。
シオンは気弱で臆病、いつも周りに心配ばかり掛けている、、フェンさまにも。
、、、嫌いだ。
『じゃあ、何でこんな事をしているの?』 自分でも不思議だった。
わざわざ自分を犠牲にして助けようと言うのだ。
フェンさまに任されたから?・・・違う。
ミヤ自身が『助けたい』と思ったからの行動だった。
「私、、、何やってんだろ、、、?」
獣人狩りの男達が散開しミヤを囲む。
「ここから先は行かせない! 近付いたら、、殺す。」
前回の様に『倒す』のではない。『殺す』のだ。
目の前に居るのは『悪意を持って近付く』モンスターだ。
ミヤのあからさまな『殺意』に反応し冒険者パーティーも真剣になる。
「これは、、、気の抜ける相手ではない、、」
仮に、一対一、、二対一でもミヤが確実に勝てただろう。
だが、相手は『冒険者パーティー』なのだ。
今は獣人狩りなどやってはいても、そこそこの実力が有る者達だったのだ。
直接攻撃、攻撃魔法、回復魔法、、、一通りの万全な体制だった。
ちなみに、領主が『無傷で捕まえろ』なんて無茶な条件を付けなければ
もっと兵士の被害は少なかったかもしれない。
冒険者パーティーが戦闘している所へ、本隊、一般兵が到着したのだ。
一般兵は『 連携 』などなく、ミヤへ、、『 報酬 』へ向けて殺到したのだ。
中には『俺の獲物だ』と同士討ちを始める者まで出たのだ。
ミヤは力の限り戦い、倒した、、、人間を。
自らも傷つき、敵の血か、自分の血か分からない程に真っ赤に染まりながら。
「ご主人様、、、フェン様、、、どこ?、、フェン様、、。」
ミオンとシオンは泣いていた。
多くの人間に追われる恐怖と、ミヤを置いて来てしまった後ろめたさから。
「早く、、フェン様に、、、早く、、、」
ミヤの思惑は通ったのだ。、、、ミオン達を逃す事に成功したのだ。
だが、獣王の町は見つからず、その関係者にすら会えない、、、。
何の為にミヤが囮になってまで逃がしてくれたのか、、、。
その思いがミオンを叫ばせる。
「、、、誰か、、、誰か、、助けて!!!」
、、、答える者がいた。
「ここは獣王様の治める地。部外者は立ち入れない!」
「お願いします。ミヤさんが、ミヤさんが危ないの!!」
、、、チュニック、、奴隷か? 逃げて来たのか?
、、、獣人か?、、、、!!!
『バッッ』、、、樹上に居た獣人が飛び降りて来た。
「、、、ルミオン?、、、それに、、ルシオン?」
凄く懐かしい匂いがした。。。
「、、母さん?、、お母さん?」
「二人とも無事だったのね!!」
抱きしめられてもまだ現実が受け止められない。
「、、母さん、無事だったんだね、、」
「お母さん、、、」 シオンもようやく声に出して言う。
「そうよ。母さんよ、ルミオン、ルシオン、無事で良かった。」
!!、、、喜んでいる場合では無いのだ。
「母さん、大変なの、ミヤさんが危ないの、、。」
「ご主人様、、フェン様は、、ここに居るの?」
ミオンは母親に素早く説明する。
「フェンさんは、ここに居るわ。」
「でも獣王様と戦って、、治療がそろそろ終わる頃のはずだけど、、。」
、、、いた!! フェン様は居た! 早く連れて助けに行かないと。
母に連れられてフェンが治療されているという建物へ行く。
ここだ、と聞いた建物の扉を勢いよく開ける。
『バタンッ』、、室内に突入する、、フェンは、、、居た。
「フェン様、、、。」
「ミオン。それにシオンも? 何でここに?」
「フェン様、時間が無いんです!ミヤさんを助けて下さい!!」
『ミヤを助けて』と言われて断る訳はないが、、、
経緯をミオンから聞いたフェンの表情が変わる、、怒りだった。
領主ヘリオスに対する怒り、ミヤ達を危険に晒した自分への怒りだ。
無言でフェンは装備を整えるとミオンの母に言う。
「獣王様に伝えて下さい。」
「お世話になりました。 そして、ありがとう、と。」
「、、、ミオン、場所は?」
「ここを真っ直ぐ行った所です。」
「ああ、分かった。」
ミオンが指差す方向へ駆け出すフェン。
その表情に『優しさ』は無かった。
『ミヤを傷つける者は誰であろうと許さない。』
大事な家族を護る為の決意しかそこには無かった。
フェンが到着した時、、まだミヤは戦っていた。
領主の引き連れてきた兵士や一般兵の死体の上、、、
堆く積まれた遺体の上で、虚ろな目で兵士を眺めている。
意識が無いよう見えるが、それでも掛かって来る兵士を確実に斬っていた。
手には兵士から奪ったのか剣が握られている。
その姿はチュニックだけにもかかわらず獣王の娘の鎧の様に真っ赤だった。
駆け付けて来たフェンを見つけた領主、ヘリオスが叫ぶ。
「勇者様、その凶暴な獣人を倒して下さい!!」
・・・凶暴な?、、誰が?、、、ミヤが?、、、凶暴?
「勇者様!、、早く、、」
「・・・黙れ!!!」
フェンが怒鳴る。 怒鳴る事など無いと思っていたが、自然と怒鳴っていた。
ヘリオスはフェンの気迫に押し黙る。
ミヤの方を向くとフェンは近付きながら言う。
「、、、ミヤ、、。」
「??、、、フェン、、、さま?」
『 ぼーっ 』とした視線をフェンに向けるミヤ。
「そうだよ。フェンだよ。良く頑張ったね。おいで、、。」
ミヤの瞳に感情が戻ってくる。
「フェン、、フェンさま、、、私、、私、、」
「いいから、おいで。」
手を差し出すフェン。
「フェンさま、、、!!!!」
応える様にフェンに手を伸ばしかけたミヤだが、、、
、、、手を引っ込めた。
「、、、ミヤ??」
「フェンさま、、私は、、私はもう、、フェンさまとは一緒に居られない!」
聞いた瞬間、フェンは言葉に出来ない程の衝撃を受けた。
・・・なんで?? なんでミヤ、一緒に居れないなんて言うの?
ミヤがフェンに手を伸ばそうとして見た物、、、、
それは、、鮮血に染まった自身の手、、、だった。
・・・私はもう数え切れない程の人を殺した。
・・・勇者様の近くに居るには相応しくなくなったのだ。
・・・近くに居れば迷惑になるばかりだ。
・・・それなら、、いっそフェンさまの手で、、、。
「フェンさま、ミヤを、、私を 『 殺して 』 下さい、、」
フェンは意味が解からない。
なぜ、今しがた無事なのを見て喜んだ相手を殺さねばならないのか?
「何で僕がミヤを殺さなきゃなの?」
「それに何で一緒に居られないの、ミヤ? 解からないよ?」
、、、そう、、だよね、、、フェンさまが殺してくれる訳ないよね、、。
「フェンさま。私はもう数多くの人間を殺しました。」
「勇者であるフェンさまのお傍には居れません。」
「もう、、ミヤはフェンさまに相応しくないのです。」
「だから、、フェンさま、、私を、、、。」
「違う!!!」 フェンが怒鳴った。
「誰が『相応しい』か『相応しくない』かなんて決めたんだ!」
「相応しいかどうかは 『 僕 』 が決める。誰にも文句は言わせない!」
言うと、フェンはミヤに近付き、後ろから抱きしめる。
微かに身体が震えていた、、、覚悟して、、いる訳などないのだ。
『ずっと一緒に』と言った相手に『殺して』なんて、、。
『カタカタ』と小さく震えて反応するミヤの剣を握った手に手を添える。
こんな事、、、ミヤも僕も望んでなんかない、、。
、、、フェンさまが私を、、ミヤを殺してくれるんだ、、。
、、、目を閉じ、静かにその時を待つ。
『ドスッ』、、、手に突き刺す手応えが伝わる。
フェンさまの腕の中で死ねる、、、ミヤの人生は幸せだったにゃ。。。
・・・・・・
『ドスッ』、、、また、手に突き刺す手応えが伝わる。
フェンさま、優しいからミヤが痛く無い様に刺してくれてるのかな?
、、最後までフェンさまは優しいにゃ、、、。
・・・・・・・
『ドスッ』、、、再度、手に突き刺す手応えが伝わる。
、、、流石に全然、痛く無いのは、、、おかしい、、?
ミヤが目を開けると、フェンが剣を持ったミヤの手を握ったまま、
足下に有る遺体に剣を突き立てている。
「??・・・フェンさま、何を、、。」
「ああ、ミヤ。兵士が生きてたから、止めを刺していたんだよ。」
「フェンさま、、、何でこんな事を?」
「ほら、ミヤ。僕も人間を殺したんだよ。」
「ミヤと一緒だよ、、、もう大丈夫だからね?」
・・・嘘だ。
・・・絶対、嘘だ。
フェン様は人を殺してなんかいない。
ミヤは『殺す』覚悟で殺したのだ。殺し損ねたりしない。
万が一生きていても、深い傷を負わせたのだ。出血で死ぬ。確実だ。
それをフェンは生きていたから『自分が殺した』と言う。
「フェンさま、、、」
、、ミヤは、、ミヤはまだフェンさまの近くに居て良いのですか?
聞くだけ無駄、か、、、、そういうつもりでフェンは言ったのだ。
「フェンさま。ミヤは幸せ、、」
『トスッ』、、、その時、軽い衝撃をミヤが感じる。
フェンさまが遺体を刺した訳でもない。
急に力の抜ける身体に、、、考えが追いつかない。
ミヤが下を向くと身体から矢が生えている。
「あ、れ、、?」
「ミヤ!!!」
「フェンさま。ミヤは幸せ、、あれっ?、、痛いです、、フェンさま、、」
「誰が!!」、、確認するまでもない。ヘリオスが矢を射させたのだ。
、、、フェンに当たる可能性もある事を承知の上で。
「ミ、ミヤ、しっかり!、、貴様!!、、、」
フェンが動こうとした矢先、黒い物体がヘリオス軍の前に落ちる。
ミヤが半数弱を倒したとは言え、まだ十分な兵力があるヘリオスは叫ぶ。
「何事だ!!軍を整えよ!!」
「わざわざ遠征、、ご苦労、領主。」
「敵味方関係なく矢を射させるとは大した悪人ぶりだな。」
漆黒の鎧、巨大な身体・・・間違いない、獣王だ。
「出向いてくれた礼に、書簡の答えをお前に『くれてやろう』!!」
『ジャキンッ』乾いた金属音が鳴り響く。
フェンと戦った時とは違い、一本しか斧を持っていない。
、、、本気を出すまでもない、という事なのか、、。
、、が、違った。
その一本が、この前装備していた斧とは威力の次元が違ったのだ。
後から聞いたが、『実際に前魔王討伐時』に使われた斧らしい。
名を『零号噛切斧』、、その威力から別名『零号神斬斧』とも呼ばれるそうだ。
「相手は一人だ!獣王を倒した者には褒美は思うがままだぞ!!」
相手の実力が読めない領主と、報酬に目が眩んだ兵士が獣王に殺到する。
フェンの武器、業物の刀でさえ傷も付けられないのに、、、。
獣王が言う。
「情けは掛けぬ、、、痛みと苦痛に悶え、、死ね!」
獣王が零号神斬斧を払う、、、斬ってはいない、、払っただけだ。
だが、威力は絶大だった。
ヘリオスが「軍を整えろ」と命令していたせいで一箇所に集まっていた軍勢。
零号神斬斧の一振りで、、、『裂けた』。
斬ったのではない。『噛切斧』の名前の通り、噛切られたのだ。
切り口が鋭利ではなく猛獣に齧り取られた様に歪に斬られていた。
痛みは想像を絶する。
痛みで気を失えたら幸運だ。悶絶死する者、耐えかねて自害する者。
斧の一払いだけで軍は全滅、阿鼻叫喚の地獄絵図と化したのだ。
元凶である領主ヘリオスは、最初の痛みで卒倒し息絶えていた。
かろうじて生き残ったのは領主の車を後ろで押していた下男達数人だけだった。
獣王は宣言する。
「街へ帰り、伝えよ!領主はこの獣王が討った、とな。、、行け!!」
ばらばらと逃げて行く下男達。
その間もフェンはミヤに付きっ切りだ。
「ミヤ、、、、ミヤ、、、」、、声を掛け続ける。
獣王がやって来る。
フェンが言う事は一つだ。
「ミヤの治療を、、、」
獣王は『そう言うだろうと分かっていた』と言わんとばかりに答える。
「本来は矢の一本くらいどうという事も無いが、一応治療してやろう。」
「街まで運べ。その幻猫族の娘を、、、。」
『矢の一本くらいどうと言う事もない』のは獣王さん位なものだよね?
、、、と、フェンは思ったが口には出さないでおいた。
今は一刻も早くミヤに治療を受けさせる事が重要なのだから、、、。
「べ、別にあんた達を助ける為に残るんじゃないんだっからね!」
「ミヤ?」
「勘違いしないでよね!」
「、、ツンデレ、、のつもりなの?」
「そうにゃ!これでミオンもシオンも攻略にゃ。」
「、、、ミヤお姉ちゃん、、、。」
「!!・・・そうにゃ。お姉ちゃんにゃ。何でも言ってにゃ♡」
「、、、ミヤの方が既に攻略されてるよ。、、ね?」




