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人間ですか?勇者さま。







「ふ、ふぁーぁ。。。」




誰かがした欠伸が伝染する、、、。





フェンが出掛けて…暇だ。



珍しく意見が合う・・・三人共に、だ。



自宅なら何なりと仕事を探してする所だが、宿屋ではした所で意味が無い。



フェンさまは出掛ける前に『お出掛けしても良い』と言っていた。




「二人とも…出掛けたいかにゃ?」




「「はい!!」」




・・・凄く出掛けたいらしい。



フェンさまからは許可されているし、出掛ける事になる。



「二人共、フェンさまの言ってた注意を忘れない様にするにゃ。」



…目立たない様にする事と、あまり長い時間出歩かない事、だ。





真に確実なのは、このまま宿屋で大人しくして居れば間違いない。



…だが、約束は守れても、フェンの気遣い、、、



『お留守番は退屈だろうから出掛けてもいいよ』



、、という気遣いを無駄にした事になる。



出掛けて、何事も無く帰って来る。



・・・それがフェンの気遣いに応える一番良い方法に思えた。




この街では獣人が居ても騒ぎにはならない様だけど、


念の為に三人共、ローブを羽織る。




「それじゃ、出掛けるにゃ。」



宿屋の受付の男に出掛ける事を告げて出発する。




「出掛けて来ます。昼過ぎには戻る予定です。」



「どちらまでの予定ですか?」



「メイン通りを見物しながら歩く予定です。」



「そうですか。気を付けていってらっしゃいませ。」



「行ってきます。」




・・・・




・・・・・。




「…聞きましたか?」



「ああ、確かに…これは報酬だ。」



「ありがとうございます。」




すぐに宿屋を出る目深にローブを纏った男には、もう興味が無いとばかりに、


受け取った革袋の中身の確認を始める宿屋の受付の男。




外へ出た男は他の男と落ち合うと話しを始める。



「・・・急いで獣人狩りの準備だ。」






出掛けるのがそんなに嬉しいの?



、、、と、ミヤが不思議に思う程に二人共に大はしゃぎだ。



気持ちがシッポに出てしまい、ローブの下で勢い良くフリフリ振っているのだろう。



…せっかく隠しているのにチラチラ尻尾が見え隠れしてしまっていた。




元々、犬人属は嫌いなミヤだったのだが、この二人は同じ主人を持つ。



その関係上『嫌々ながら』相手をしてやっている。



・・・はずなのだが、本人も自覚しないまま、一緒に暮らす内に、



まんざら『嫌々』ではなくなってしまっていた。



何だか『妹と弟』が出来た様な気持ちになっていたのだ。




…だが、幾ら『妹』でもフェンを巡っての問題に関してはライバルだ。



この件に関しては、譲るつもりは全く無い。




「二人共、余り、はしゃいじゃ駄目にゃ。」



フェンさまに言われた通りに二人の面倒を見ているだけだ。



・・・が、それ以上の満足感をミヤは感じ始めていたのだ。




三人でメイン通りを半分近く見終わった辺りで事件は起こった。




「獣人狩りだ!!」



誰かが叫んだ。




通りを行き交う人々が、波が引く様に路肩の建物脇へと移動する。



ミヤ達も人々に倣って路肩へ移動して嵐が通り過ぎるのを待つ。



やがて冒険者風の男達が、通りを見渡しながらやって来る。




『何事も無く済んで…。』




ミヤは祈るが、、、願いは、、叶わない。



三人の前でピタッっと足を止める。




「おい、お前ら、顔を上げろ!」




聞こえない振りで顔を上げない三人、、、。




ミオンとシオンは恐怖が甦ったのか、顔を伏せたまま震えてしまっている。




「お前らに言ってるんだ」




男の一人が手を伸ばしシオンの肩に手を掛ける。




「やめて!!」



ミオンが男の手を振り払う、、、



「シオンには手を出さないで!!」



「ほう、、これは、これは…」



ミオンとシオンの顔を見た男達の顔に邪悪な笑みが浮かぶ。



『どうにかしなきゃ…』



ミヤは考えた…この程度の男達ならミヤでも簡単に殺せる…違う、倒せる。



だが、フェンさまは『目立つな』と言った。



ミヤ一人で男達を倒したら否応なく問題になってしまうだろう…それは避けたい。



・・・なら、どうするか、、、まずは話し合い、交渉だ。




「お止めください。獣人狩りとの事ですが、今はこれでお許し下さい。」



フェンから預かっていた財布袋を差し出した。




・・・獣人狩りは報酬目的だ。




代価を払えば見逃してくれるかも、、、。




・・・しかし甘かった。




「おっ!報酬プラス、お宝ゲット!」




見逃す気など元々無いのだ。




『みんな…殺す…か?』




ミヤが黒い感情に傾きかけているとミオンが袖を引っ張る。




「駄目・・・」



ミオンは首を『ふるふる』と横に振る…震えていても冷静だ。




シオンは震えて顔も上げられない。




「おい!お前ら、三人共縛り上げろ!」




・・・殺さず、、倒して逃げる。




ミヤは決断し、手を伸ばした男を蹴る。




「うっ」…脆い。軽く蹴っただけで行動不能だ。




・・・後は全員同じように・・・。





「動くな!!」




鋭く警告する男が居る。



男達の一人がシオンを羽交い締めにして、首にナイフを押し当てていた…。




「シオン!!」



ミオンの混乱は手に取る様に分かった。



、、一気に血の気が引いて色白の肌が更に蒼白になっている。




シオン自身もガクガクと震えていて、男が手を下さずとも、



今にも押し当てられているナイフで自ら首を傷付けてしまいそうだった。




二人は狩られる立場になるのは『二度目』なのだ。




狩られた後、どうなるのかを知っているが為に、恐怖が倍増しているのだろう。




『なんで…どうして…?』




今は自分達二人を助けてくれたご主人様は傍に居ない、、、



、、、なぜ、こんな時に襲われるのだろう…。




「助けて…助けて…ご主人様…」





ミヤは何か方法が無いかと考えるが、良い考えは浮かばない。




・・・どうしようもない。




ミオンやシオンを『任せてくれた』フェンさまに顔向け出来ないし、




怪我などしてからでは遅いのだ。





「分かりました…言う通りにするから非道い事はしないで下さい。」




「最初からそうすればよいんだよ…っと。」



男の蹴りがミヤの腹に入る。




「うっっ…」



地面に踞るミヤに満足した男は他の仲間に指示を出す。



「三人共に縛り上げろ。」



「特に栗毛の女は厳重にな!」



「よし!連れていけ!」



三人は男達のアジトへ連れて行かれ、、、なかった。



男達は依頼を受けていたのだ、、領主から。



『新しい獣人を連れて来い』と。



すっかり街では少なくなったので難しい、と伝えると特別に報酬を上乗せすると言う。



しかも、期日は早ければ早い程に報酬を上乗せすると言う。



本来なら、自分達のアジトへ連れ帰り、数日間、自分達で楽しんだ。



その後、領主へ『下げ渡して』報酬を受け取っていたのだ。



・・・が、獣人狩りの男達は楽しむなら人間との方が良いという者達ばかりだった。




それなら当然だが、明日になって報酬が下がるくらいなら、捕らえて即、



今日中に引き渡して報酬を多く貰った方が良い。





ミヤ達は、そのまま大きな館へ連れて行かれる。




『こんな大きな館…』



ミヤもフェンと同じ感想を思い浮かべる。



それは館へ入った時も、部屋に入った時も同じ感想だった。




「領主様、ご希望の獣人です。上玉ですよ。」



言われるまでも無かった、、そういう情報を元にしての策略なのだから。



『領主』と呼ばれる男は、部屋に入って来た三人を見た時点から、



獣人狩りの男達など、既に眼中に入っていない。




ミヤ、ミオン、シオンの三人を舐め回すような視線で見ていたのだから。



…この男が領主なのか?



獣人狩りの男達がそう呼んでいたし、この大きな館…間違いないだろう。



、、この男がフェンさまへ依頼をした人物、領主だ。



…フェンさまの名前を出せば『もしかして助かる』のでは、、?



「良くやった!報酬は上乗せしてやろう。」



領主の男は上機嫌だ。



ミヤ達三人を前に隠す事なく、男逹に報酬を手渡す。





それは、、暗に、



『お前達の値段はこれだけだ』



そして



『お前達三人を買ったのは私だ』



『今日から三人は私の物だ』



、、、という領主からのアピールなのだ。



視覚的に見せつける事で、自分達が『買われた奴隷』である事を認識させようというのだ。



『何様のつもりだ!!』ミヤは思う。



少なくともミヤは何が有ってもフェンさま以外をご主人様だと思ったりはしない。



領主の男は報酬を払うと、『ご苦労』と言ったきりミヤ達しか見ていない。



普通なら不快に思う所だろうが獣人狩りの男達は、貰える物を貰えばそれで良く、



不快どころか早急に帰りたいと思っていた所だったので、渡りに舟と



言わんばかりに即座に、「それでは失礼致します。」と部屋を出て行く。



…領主は出ていく男達も無視したままで、ひたすらにミヤ達三人を舐める様に見ている…。



そのドロッとした欲望の視線にミオンとシオンは耐えられず、身を寄せて震えている。



そんな姿が領主の欲望に更に火をつけるとも知らずに、、、。




「そんなに怖がらなくても…」




二人に手を伸ばす領主をミヤが止める。



「お待ち下さい、領主様。私達は他に主人が居るのです。」



「他の主人?…だからどうだと言うのだ?…今の主人は私だ。」



「私達の主人は今、領主様の依頼を遂行中のフェン様です。」



「フェン?…ああ、ギルドから来た勇者か。あの男はどうせもう帰っては来ん。」



「なぜ、、そんな、、?」



「解らんか? 獣王軍は私の兵…軍勢でも倒せないのだぞ?」



「それを一人でどうにか出来るとでも?」



「今頃・・・死んでおるわ。」



「それに、、、『死んで貰わなくては困る』しな。」



・・・死んで貰わなくては困る?



・・・なぜ?、、、領主は依頼を遂行を望んでいないの?



「勇者には死んで貰わなくては困るのだよ。」



「勇者ですら勝てない相手になら軍勢が全滅しても仕方ない事だからな。」



「わざわざ勇者の居る他所のギルドへ依頼を出したかいが無くなるわ。」



「…そんな事の為にフェンさまを…」



・・・領主の狙いは最初から『獣王討伐』でも『奴隷の救出』でもない、、。



自身の『討伐による兵士の損失を正当化する為の理由作り』だったのだ。



そして兵を出さず、わざとフェン一人で行かせたのだ。



「それに…勇者の連れている獣人は『可愛い』とは聞いていたが、真実だったな。」



!!…この領主はフェンを亡き者にし、連れている獣人も自分の物にしようと計画したのだ。



…醜い…こんな心の醜い男が、フェンさまと同じ種族…人間だというのが信じられなかった。



「さあ、死んだ主人の事など忘れて、私と暮らすのだ…。」



「…触るな!!」



ミヤの声に動きを止める領主。



・・・こんな男と暮らす? 冗談ではない。



『暮らす』のではなく、弄ばれて『捨てられる』のが目に見えている。




「フェンさまは生きている…私に触るな!」



「拒否した所で、事実は変わらんというのに、、仕方ない、、」



「お前が『嫌だ』と言うなら…他の二人に相手をしてもらうまでだ。」





ミオンとシオンは領主、、人間という皮を被ったおぞましいモンスターを、



ただ怯えた目で見つめる事しか出来なかった。



『ぽろぽろ』と瞳から流れる涙は服を濡らしても止まらない。



怯える二人に近付く領主。




「ミオンとシオンに触れるな!!」




「お前なんか…」




「お前なんか、、、何だと言うのだ、獣人の分際、で。」





…お前なんか…




…そうだ。こんな人間が居る訳がない。




フェンさまと同じ人間が、こんな非道い事をする訳がないではないか?




「お前なんか…殺してやる。」




「戯言を…どけ、私はこっちの二人と楽しむ事にする。」




ミオンとシオンに手を伸ばす領主。




・・・二人共、絶望し、震え、涙を流している。





「…やめろ!!」



ミヤが『モンスター』に向かって跳ねた。




一閃したミヤの爪撃により領主の腕が引き裂かれる。



鋭い切り口からは予想以上に血が吹き出る。




「な、何を…誰か来い。獣人が暴れたぞ!」




数少ない兵士達が集まって来る。




「近付くな! 近付いたら…殺す…。」



ミオンとシオンを後ろに庇いつつ、出口へ向かう。




ミヤは本気だ。




、、、二人に手を出した人間から殺す。





、、、人間ではないか…邪悪なモンスターを殺すだけだ。





、、、兵士は違うかもだが、領主に従うならモンスターと同じだ。




その気迫が兵士達を気後れさせる。




・・・度重なる討伐で領主への忠誠心が薄れていたせいもあるのだろう。



身勝手な主人の為に『死のう』と思う者は居なかった。



、、以前は『こんな主人でも忠誠を』と思う兵士も居た。



、、だが、そんな真面目な兵士から先に死んで逝ったのだ。



そんな兵士が居た事すら歯牙にもかけない領主、、、。



どうせ、この獣人は悪くなく、、領主が原因を作ったのだろう、、。



口には出さないが、兵士全員が理解し、そう思っていたのだ。





「こっちよ。早く!!」



ミヤは二人を連れて領主の館から逃げ出す。



ミオンとシオンは、まだショックから声も出ないでいる。


ただ、お互いの手を強く握り締めていた。


「フェンさま、、、」


「ご主人様、、、」



・・・私がしっかりしなきゃ、、、。


宿屋は危険だ・・・追っ手が待ち伏せているかも、、、。



どこへ行けば、、いいの?、、、、フェンさま、、、。




ミヤはフェンが向ったはずの森へと足を進めていた。










「ミヤは犬人族のどこが嫌いなの?」

 「犬族のあの耳が気に入らないにゃ。」

「えーっ、可愛いのに・・・。」

 「あと、尻尾も嫌いにゃ。」

「えーっ、でもミヤにも耳と尻尾あるよね?」

 「全然違うにゃ!見るにゃ、ミヤの可愛い耳に尻尾を!」

「・・・自分で『可愛い』って言っちゃう?」

  「、、私達、、可愛くないんだ、、、シクシク(泣)」

 「はっっ!、、違うにゃ、二人は可愛いから大丈夫にゃ。」

「ミヤが二人を虐めてる、、、。」

 「違うにゃ、フェンさま。誤解にゃ!」

 「だから犬人族は苦手なのにゃーーー。」

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