修羅場ですか?勇者さま。
フェン達は帰路につく。
昨日は結局、教会からの呼び出しが無いまま終わったのだ。
昨日買い忘れた『ねこみみローブ』も防具屋で二人分購入した。
よくよく考えたら、、、
イーストノエルの町で、ゴスロリファッション…って無いよね、、、。
まだ大きな都市なら注目される位で済むが、田舎の町では『噂』どころか『騒ぎ』
になるのが目に見えるようだ。
ただでさえ『獣人』だけでも珍しいのに『服装』まで珍しい格好をして、
わざわざ目立つ必要も無い。
いずれ『やんわり』と町中の人に獣人だという事を広めて行くのが最善策だ。
せっかくのミオンとシオンのお気に入りのゴスロリ服だけど、
しばらくは外で着るのは我慢してもらうしか無いだろう。
必然的にフェン一人に、ねこみみローブ姿の神官系魔法使いが三人という、
バランス的に『見た目がおかしい冒険者パーティー』が出来上がった。
一行の『見た目』の事をフェンが考えているとミヤが言う。
「フェンさま。別に隠さなくても良いんじゃないかにゃ?」
「フェンさまが町の皆に『僕の奴隷です』と伝えれば済む話しにゃ。」
「そんな、、ミヤ、奴隷だなんて、、、。」
「町の皆がミヤ達を奴隷だと思っても構わないにゃ」
「フェンさまが『奴隷じゃない』と思ってくれているのは解っているのにゃから…」
「でも・・・」
確かに僕は奴隷だなんて思っていない。
、、、けど、それだけでは嫌なんだよ、、。
例え他の人からでもミヤ達の事を『奴隷』として見られるのが嫌だったのだ。
順調に道程を進み、イーストノエルの町に着く。
『さすが田舎だ!』…やっぱり故郷はいいよね!
都会の喧騒とは無縁の、、、この町が好きだ。
人目につかずに行動するのが不可能な都会とは違い、驚く事に誰とも擦れ違わず家まで到着出来た。
ラッキー…と言うか、ミオン達の分のねこみみローブを買う必要も無かった事に
なったので、アンラッキーかな…?
…いや、今後きっと必要になるよね。うん、絶対。
自分の行動を自ら正当化しつつ、家の扉に手を掛ける。
フェン達が出掛けている間に実は爺ちゃん達が帰って来ていて、、、
『どこに行ってたんだ!』と叱ってくれるのではないか?
…なんて淡い期待を持って扉を開ける。
だが、やはり居ない…。
扉に鍵が掛かっている時点で居ないのは解っていたのに、、
、、、やはりガッカリしてしまう。
「フェンさま・・・」
「ご主人様・・・」
残念さが顔に出たのか、ミヤ達から気遣った声が掛かる。
「大丈夫だよ! さあ、中へ入ろう。久しぶりの我が家だよ♪」
留守にしたのは、ほんの半月程なのに、、、
どこから出たのか、全ての物に『うっすら』と埃が被っていた。
「じゃあ、皆でお掃除するよ!」
「三人共、汚れるからチュニックに着替えてね。」
「ミヤとミオンは雑巾を濡らして手の届く所の拭き掃除をしてね。」
「シオンは僕と寝室の布団干しと、着替えた服のお洗濯するよ。」
「じゃ、窓を全部開けてから、作業開始だよ。」
この家に帰ると、やっぱり思う。
・・・この家さえ残っていれば、いずれ元の生活に戻れると。
あえて二手に分かれて教えながら作業を…と思っていたのだが、
ミオンとシオンが予想以上に役に立ってくれた。
あんな店に囚われていたのだから『何も知らない』と思っていたけど…
、、、何でもテキパキこなすのだ。
拭き掃除は塵一つ残さず拭き取るし、洗濯も生地が傷まない様に丁寧かつ大胆に洗う…。
元からやっていたのか、あの店で強制的に覚えさせられたのかは不明だけど、
家事の基本は完璧だ。
ミオンに比べると、かえってミヤの方が手元が危うい感じだった。
かく言う、フェン自身も『シオンに教えてあげる』どころか、
シオンの手元を見て『ふむふむ』と手本にして見習った程だ。
スムーズに掃除は進み、夕方には終わった。
「今日は移動で疲れたよね? お夕飯食べたら、お風呂入って休もうね。」
夕飯を食べて、お風呂も済ませる。
お風呂はフェンとミヤは別々に、ミオンとシオンは一緒に入った。
お風呂を上がったミオンとシオンが『頑張るぞ!』と決意した顔をしている。
『何かしたい事でも有るのかな?』と思っていると、シオンが言い出す。
「、、ご主人様、今日、私と一緒に、、寝て、、寝て下さい。」
「いいけど…お姉ちゃんと一緒でなくていいの?」
『チラッ』っとミオンを見るシオン。
ミオンは黙ってシオンに向かって頷く。
「はい。ご主人様と一緒に寝たいです。」
…お風呂で二人して、一体何の相談をして来たのやら…。
「ミヤも一緒に寝たいにゃ!」
案の定、ミヤも言い出す。
が、即座にミオンが却下する。
「ミヤさんは昨日『一緒に寝ました』よね?」
「今日はシオン、明日は私の番です!」
「にゃにをーっフェンさまは渡さないにゃ!」
「フェン様は私達のご主人様よ!」
ミ、ミオン?…何でそんな喧嘩腰なの?
睨み合うミヤとミオン。
・・・・・・
思い余ったシオンが声を上げる。
「私も!!、、私もご主人様と寝たい、、です!」
勇気を出して言ったんだろう。言った本人のシオンが『オロオロ』している。
「…いいよ。今日はシオン、一緒に寝ようね。」
「シオンを困らせた罰に、今日はミヤとミオンは一緒に寝る事、いいね?」
「…はいにゃ。」
「…はい。」
…うーん、二人共、渋々だなぁ、、、。
渋々だけど、みんな言われた通りにちゃんと寝る。
フェンが布団に入ると早々にシオンも潜り込んで擦り寄って来る。
「…ご主人様。」
「シオン、ゆっくりお休み。」
・・・
、、、くぅーっと眠りに入ろうとしたら『ペロッ』と顔を舐められる。
・・・シオン?
「どうしたの、シオン?眠れないの?」
『じーーっ』とフェンの目を見つめ何も言わないシオン。
また『ペロッ』と舐める。
「くすぐったいよ、シオン。」
・・・
・・・あぁ!、と気付く。
ミヤもお風呂で『舐められた』って言ってたし、これが犬人族の習慣なんだね…。
納得して、お返しにシオンの頬にキスしてあげた。
急に恥ずかしそうにするシオン。
…自分で他の人を舐めるのは平気なのに人にされると恥ずかしいのかな?
抱き締めて頭を撫でてあげながら言う。
「もう、お休み。シオン」
「はい。ご主人様…。」
次の朝は、、大変だった。
「フェン君、あの子は誰?・・・って…その子は!?」
朝一番にシズが訪ねて来たのだ。
どうやら『森のお友達』からフェンが帰って来た、と聞いたらしい。
入口で『ミヤ』と出くわした。
「おはよう!フェン君、帰って来たの?嬉しい…って誰?」
扉を開けて顔を出したのはミヤだった。
「あ、シズにゃ。」
…なんで私の名前を知ってるの? この子、誰なの?
「あなたは誰なの? フェン君は?」
「まだ寝てるにゃ。」
フェン君…。
おかしい…感動の再会の筈が最初から躓いてしまった。
フェンの部屋へと向かう。
入口で躓いたとしても、フェンに会って失敗した訳ではない。
もう一度チャンスは有る。
直接フェン君の部屋で『感動の再会』をするんだからっ!
…乙女の決意は固いのよ!
フェンの部屋まで来ると、呼吸を整え、扉をノックする。
いつの間にか、入口で会った娘が付いて来て、『やめた方がいいにゃ』とか言っている。
・・・返事が無い。
いつもならノックもせずに部屋に入っていたのに何で今日は消極的なのだろう。
意を決して返事を待たずに扉を開けた。
「おはよう!フェン君、帰って来た…って誰?」
…入口で体験した事をもう一度体験する事となる。
しかも…場所が場所なだけに先程よりもショックは大きかった…。
シズの目線の先…ベッドの上にフェンは居た。
そのフェンの上…に体を起こして『ちょこん』と座って馬乗りの態勢になっている・・・女の子??
しかもチュニックがはだけて肩ひもが片方ずり落ちていた…。
上に向って腕を伸ばしながら『んーー』って体の伸びも一つ。
眠たそうな『その娘』が、あくびをする。
「ふ、ふゎーー。」
シズも思わず見とれてしまう程に可愛かった。肌も綺麗で正に『美少女』だった。
『あくび』の仕草一つでシズでさえ思わずキュンとした、、。
「フェン君、その女、女の子は誰なの?」
「フェン君の…か、か、か、彼女、、なの?」
寝惚け眼で『ぼーっ』と見渡すフェンだが、はだけた格好で自分に馬乗りになっているシオンと、
呆然として、こちらを見ているシズを見て、予想以上に不味い状況なのに気付いた。
「シズ、これは違うよ。絶対今…勘違いしてるよね?」
「これのどこが勘違いなのよ!!」
シズも涙目だ。
「違うよ、シズ。紹介していないけど、この子はシオンって言うんだ。」
「…シオンちゃんね…。」
「だから違うよ。シオンは『ちゃん』じゃなくて男の子なんだよ。」
「嘘っ!そんな可愛い男の子なんて居る訳ないじゃない!」
「…だから…『男の娘』なんだよ。」
「男…の娘?」
「そうだよ。見た目は女の子だけど男の子なんだよ。」
「…男の娘…」
「フェン君、女の子じゃなくて『男の娘が好き』になっちゃったの…?」
「違うよ、ちゃんと女の子が好きだからね?どうしてそんな話しに…。」
「…ご主人様…シオンのこと、、嫌いなんだ(泣)」
「そんな事ないよ。シオンの事を嫌いな訳ないじゃない!」
「やっぱり…男の娘が好きなんだ…」
「だから違うって、シズ。」
「…嫌い…(泣)」
「泣かないで、シオン。」
「今シオンの泣き声が、、!!、、ご主人様、、、シオンに何を!?」
「ミオン?違うよ。何もしてないよ!」
「また違う女の子…」
「いや、、、これは、、、シズ?」
、、、何か泥沼な予感しかしないんですけど、、、。
悪い予感は当たる、、、。
「おー!帰って来たんやて?」
「リリス?どうしてここに…?」
「フェンが帰って来たってシズから聞いてな!」
「ただ顔を見に来ただけなんやけど、、帰って早々、、修羅場か?」
「誰が修羅場ですか!!」
「ああ、そう言えばセリスも一緒に来とるで。」
「えっ?セリスさん?」
「フェン君…不潔です…。」
「セ、セリスさん?違いますよ。信じて下さい。」
「…ご主人様…」
「!!…こんな小さな子に『ご主人様』なんて呼ばせるなんて…鬼畜やな、フェン。」
「だからちがうってリリス。」
「…不潔です。」
セリスさんに言われると地味にショックだから止めて欲しい…。
「大丈夫にゃ!!」
「ミヤ…何が大丈夫なの?」
「ミヤは一生、フェンさまのものにゃ!」
「私とシオンもフェン様のものです!!」
「…三人も女を囲うなんて、たいした鬼畜やな!」
「だから囲ってなんかいないってば。リリス、楽しんでない?」
「…不潔です、、。」
「フェン君が鬼畜になっちゃった…(泣)」
「だから違うってばシズ。それにセリスさんも不潔は止めて下さい。」
「嫌い…なんだ(泣)」
「嫌いじゃないからねシオン。」
「シオンを泣かせた…」
「ミオン、違うからね?」
「フェンさまにはミヤが居るから大丈夫にゃ。」
「えっと、、、今、正に、大丈夫じゃないよね?ミヤ。」
・・・・・
『何で…何でこうなったんだよーーーっ!!』
その日の朝は・・・大変だった。
「もぅ、、、いや、、、(泣)」
「帰って早々ハーレム満喫なんて、鬼畜やなーフェン。」
「知りません。」
「更にこれだけの美少女を集めて、、どうする気や?」
「迷惑です。」
「もー選り取り見取りやないか!!」
「帰って下さい。」
「・・・不潔、、です、、。」
「!!、、ご、ごめんなさい、セリスさん、、。」
「リリスは兎も角、セリスさんは冗談になりませんってば(泣)」




