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姉妹ですか?勇者さま。







・ ・ ・ 夢を見た。






「お父さん、お母さん、おはよう!」




「おはよう、ルミオン」




優しい父母とまだ小さい弟。




最近のミオンの仕事は主に弟『ルシオン』の面倒をみる事と、母が仕事の時の



家での家事のお手伝い、、、準備や下拵えだ。





今日は父も母も仕事で出掛けているので、家事の準備はミオンの仕事だ。




「よし。片付けちゃうよ。」




・・・・




何の変化もない穏やかな毎日が続く事が 『 当たり前 』 で、


『 何かある 』 と、考える必要も無かった。







・・・はずだった。







あの日、急にそれは訪れた。





『 バタンッ 』 急に家の扉が開かれる。




いきなりだったので驚いたが、見れば母さんだった。



『 今日は早かったね? 』 と母に言おうとしたが遮られた。




「 早く、、早く逃げるのよ!! 」




今まで見た事の無い母の蒼白な顔にミオンも『ただ事ではない』と理解出来た。



どういう事か聞いている時間も勿体ないとばかりに、シオンの手を引き家を出ようとした。




…そこまでだった。




行く手を阻む人影、、、モンスター討伐を掲げ来襲した者達、、、


冒険者、、ハンターだった。





平和な日常は終わる。




相手が獣人と言うだけで問答無用だった。目的は『売買用の獣人』だ。



獣人は大きく強い種族なら、護衛や戦力として利用出来る為、


殺されず捕らえられる事が多い。



が、それ以外の種族…戦力として期待出来ない種族の男は殺される事が多い。



『犬人族』は男でもあまり体が大きくならない為、戦力としては期待出来ない。



利用出来るのは『 女、子供 』 だ…奴隷として。



「 早く逃げて! 」



母は叫ぶと扉の冒険者に飛び付く。




「 早く… 」



…そこまで言って母は崩れ落ちる。冒険者が気絶させたのだろう。




次の獲物…ミオン達に冒険者が近付く。




幼いミオンはシオンを強く抱き締める事しか出来なかった。



母とは引き離されてしまったがシオンの手だけは最後まで離さなかった。





その後、二人が連れて行かれた先は裏通りの店だった。




『売り物』として扱われるだけあり、傷が付く程の暴行はされず、


最低限の食事も貰える。


・・・『売り物でいる』限り『命は守られる』という事だ。




ミオンは考える。



『私は女だから大きくなっても『売り物』として生きていられるだろう…。』



『だけど…シオンは…』



シオンは男の子だ。



今は小さく、見た目だけなら女の子で通るので大丈夫だ。



そういう趣味の人間も居るという。



だけど…いずれ成長し女の子に見えなくなった瞬間、



『売り物』としての価値を失い『廃棄処分』の対象になるだろう。




『何とかしないと。』


ミオンはシオンを守る為に決断する。



食事を減らした。


シオンだけでは可哀想なので自分の分も。


…栄養を摂らず体の成長を抑えようとした。



店の男達は『あまり食べない』と思い込み、二人に一人分の食事しか出さなくなった…。




シオンの見た目を変える。


髪は伸ばし女の子っぽさを強調する。


服装もミオンに与えられた女の子用の服を着せる。




「お姉ちゃん僕、違う服がいい…」



「だめよ。自分の事は『あたし』と呼ぶの。服はお姉ちゃんと同じのを着るのよ!」



「・・・・・・。」



「お姉ちゃんと一緒に居られなくなってもいいの?」



「…お姉ちゃんと一緒がいい。」



・・・シオンの命を守る為だ。



髪を調え、女の子の服を着させ、言葉を直し、女の子として生活させる。




『一緒に居られなくなってもいいの?』 ・・・ シオンへの話しは嘘だ。



そういう趣味…男の娘が趣味の人間が居ればシオンを買うかもしれない。


それでも、この店に居て『処分』されるよりは生きられる可能性は高いだろう。


わずかだが、良い主人に恵まれ、幸せに暮らせる可能性だって有るのだから。




自分だってそうなのだ。


シオンは心配だが、仮に誰かが先にミオンを買いたいと求めれば、シオンを


置いて行く事になる、、、。




自分も食事を減らし、大きくなる事、成長を抑え、店に来た客の前には極力、


顔を出さない様にした。



逆転の発想で常に店頭の部屋に居て 『 すぐ隠れる 』 事で、他の獣人達の様に


店の男に連れられて客の目の前に立たされる事を回避したのだ。



店の男も、元々、既に部屋の中に居るミオンを連れてこようとは思わなかったのだ。



『シオン、大丈夫。お姉ちゃんが守るからね、、、』





少しづつシオンも成長していく。



「お姉ちゃん、もっと食べたい…。」



当然だ。二人で一人分を食べているのだから。



「うん。お姉ちゃんのもう少しあげるね、、。」



・・・・・・



だが、ミオンの望みも虚しく、シオンの成長は止まってはくれなかった。




そしてあの日、店の男が話しているのを聞いた。



『シオンの廃棄処分をしていたら客の男が『死にかけの弟』を買っていって儲かった』



・・・!!!!


怒りのあまり、頭の中が真っ白になったと感じ、一つの行動しか思い浮かばなかった。


・・・この手のナイフで店の男を殺す、、、ただそれだけの話しだ。



もし失敗して逆に殺されてもいい…どうせ、ここにはシオンはもう居ないのだから。



迷いも無く、行動に移す、、、。


・・・店の男に飛び掛かかった。



・・・・・





『フッ』っと、目が覚める。





店の男は?…布団の中?



隣を見ればシオンが居る。



・・・夢・・・??



シオンはまだ寝息を立てている。



シオンを抱き締める…本物だ。シオンはここに居て、生きている。




・・・どうして・・・ここに?・・・ここはどこ?




よほど深く眠ったのだろう…記憶が混濁している。


ここは安全なの? 早く判断しようと周りを見回す。



この人…昨日の…隣のベッドに男を見つける。



『私を買いに来た?』



・・・・?



『私を助けに来た?』



…記憶では私の治療を頼んでくれて、ここまで連れて来てくれた人だ。


シオンから聞いた、名前はフェン…フェンご主人様。



意識もハッキリして来た。


お風呂で汚れを落としサッパリした後、部屋へ戻り、シオンと一緒に眠ったのだ。


ご主人様はミヤと呼ばれる猫人族の女と寝ている。



この人間はシオンを傷付けたりしないようだし、私を助けてくれた。


このご主人となら『幸せに暮らせる』のでは…。



記憶が混濁する程に深く眠ったのもいつ以来の事だろうか…。




ミオンは思う。


このご主人を逃したら次の機会は無いかもしれない。



・・・このチャンスは逃がせない!



この身を捧げても…最悪、シオンだけでも傍に置いて貰わなければ。




考えていると声が掛かる。



「お姉ちゃん…。」



「あ、シオン。起こしちゃったね。」




「二人共、起きた?…おはよう。」


第三者、ご主人様から声が掛かる。



「二人共大丈夫かな?具合悪くない?体はどこも痛くないかな?」



ここが違う。このご主人様は朝から自分達を気遣ってくれるのだ。



「はい。問題ありません。」



シオンも、


「はい。大丈夫です。」



「良かった。じゃあミヤも起きたら朝ごはん食べに行こうね。」






・・・朝食はサラッと済ませた。


ミオンもシオンも今まで少量づつしか食べなかったのに昨日の夕飯をお腹一杯食べたのだ。


一晩経ったけど、まだあまりお腹は減っていないそうだ。


ミヤとフェンも朝食はあまり多くの量は食べない方だし、必然的にサラッと終了した。





部屋に戻ると今日の予定を説明する。



「このまま部屋で洋服屋さんが開くまで休んでから、買い物に行くよ。」



「神殿からの呼び出しの人が来るかもだったんじゃないかにゃ?」



「そんなに長い時間部屋を空ける訳じゃないよ。」



「受付の人に伝言を頼んでおけば大丈夫だよ。」




反対意見は出なかった。










しばらく休んだ後、町へ繰り出す。


主な目的はミオンとシオンの洋服の調達だ。


二人共、助けた時のボロボロな服のままなのだ。



最初から本命の宿屋の主人に聞いた、獣人の服を取り扱っている店に行く事にする。


『獣人の服を取り扱っている』、とは言っても獣人が自分で買いに来る訳ではない。


ご主人様達が、自分の奴隷…獣人達に着せる為の服を買いに来る店なのだ。



それも『ごく一部』のご主人様に限られる。


獣人自体を大事にしている人間か、実力を認めて雇い入れている人間かである。


大多数の獣人は服など買って貰えずボロボロな布切れを着ているのが当たり前となっている。




フェン達は店に着き、入店する。



「いらっしゃいませ!」


すぐに声が掛かり、店員の男が近付いて来る。




「いらっしゃいませ、何をお探しでしょうか?」


店員の男はフェン達を見ると言う。



「大変申し訳ありませんが『奴隷』は外で待たせて頂けますでしょうか?」



ミオンとシオンの格好を見て『奴隷だ』と判断したのだろう。


ミオンとシオンの顔が曇る、、、、。



「 この子達は 『 奴隷 』 なんかじゃありません! 」



「 この子達の好きな、気に入る服を買いに来たのです。 」



「 この子達が気に入る服が無ければ 『買いません 』。 」



「 さあミオン、シオン、どれか好きなの有るかな? 」



「 それとも…お店の人が酷い事を言ったから買いたくない、かな? 」


嫌味を込めてフェンが言う。




店員の男も流石に 『 しまった 』 と思ったのだろう。


まさか 『 言いなりになるだけの存在 』 であるはずの奴隷に、


買う、買わないの決定権が有るなんて、、、。




「 …お嬢様方、どんなお洋服がお好みでしょうか? 」


手の平を返したかの様に、下にも置かない扱いだ。



店員の男に問い掛けられるが、二人共、固まってしまっている。



ミオンもシオンも自分で洋服を選んだ事など無いのかもしれない。



「 急がなくて良いからね。全部見てから決めていいんだよ。 」



店員の男を追い払ってもミオンとシオンは動かない。




フェンは言う。


「二人が一番好きなお洋服がどれなのか教えて欲しいな。」



「ミオンとシオンの可愛い姿が見たいんだよ。」



「ね。、、、教えて?」



ご主人様にお願いされて初めてキョロキョロと洋服を見始める。



見始めるとやはり楽しいらしい。



目をキラキラさせながら見る姿は女の子だ。シオンもそうなのは複雑だけど…。



「 ミヤも何か欲しい服を探しておいでよ。 」



「 いいのかにゃ? 」



「 うん。いいよ。 」





洋服を探している間もミオンとシオンはたまに『ビクッ』として周りを見渡して、


僕がちゃんと居るのを確認して『ホッ』としているのには心が痛んだ。




十分な時間を掛けて二人が選んだのは…メイド服?


・・・いや、ゴスロリ衣装に近いかな?という服と靴のセット服だった。



「 二人共、これがいいの? 」



二人共 『 コクッ 』 と頷く。



「シオンもお姉ちゃんに合わせなくても大丈夫なんだよ?…これでいいの?」



シオンは再度、頷く。



、、、ずっと女の子の格好してたから、こっちの方が落ち着くの…かな?



「 うん。じゃあ二人共、それにしようね。 」



「 買ったらここで着替えて帰ろうね♪ 」




二人の選んだゴスロリ服に普段着として汚れても平気なチュニックと靴も一緒に購入する。




「 じゃあ二人共、着替えておいで。 」




ルンルン♪とシッポを振って歩く姿はミヤと一緒だね、と嬉しい気持ちになった。



…そう言えばミヤは…?



「フェンさま…」



「ミヤ、欲しいの決まった?」



「はいにゃ。これ…」



…これ?



…下着?…水着かな?



「ミヤ…はこれが欲しいんだね?」



「はいにゃ、フェンさまの為に…」



極力返事の後のセリフはスルーしておく事にする。




「これ、下さい。」



「ありがとうございます、、、クスッ」


・・・前にも有ったシーンを思い出す様に店員さんに笑われた。



「ありがとにゃ!」


・・・喜んでくれれば良かったよ、、笑われ損は嫌だしね、、、。




しばらくすると着替えていたミオンとシオンが戻って来た。



『 可愛い・・・ 』、、、ついつい見惚れてしまう。


見れば十人中、十人が 『 可愛い 』 と絶対言うだろう。


お人形の様な、、部屋に飾って置きたくなる様な双子の美少女ペアだ。




・・・・・。




何も言われないのが不安になったのかミオンが聞いてくる。



「・・・どうですか?ご主人様。」



我にかえって言う。



「うん。二人共、似合ってるよ。可愛いね。」



『えへへ』と照れた笑いを浮かべるミオンとシオン。



・・・あ!ミオンとシオン、二人共、初めて笑ってくれた、、、。


・・・『 わざと 』 ではない自然な笑顔だ、、、。





店員の男も驚いている。


『 奴隷は外で… 』 なんて言った相手が服装だけでこんなに 『 化ける 』 なんて、、




『 見たか!! 』


店員の男に言ってやりたかった。





「 帰るよ。ミヤ、ミオン、シオン。」



「はいにゃ。」


「「はい、ご主人様。」」





帰り道でもミオンとシオンは目立った。



来る時は誰も『奴隷』だとして見向きもしなかったのに…。



二人共、周囲の視線に驚き、戸惑ってしまっていた。



「いいんだよ。ミオンもシオンも…今の姿が本来のミオン、シオンなんだから。」



「みんな可愛いって思っているよ。」



「もう、みんな二人の事、奴隷だなんて思ってないからね。」



「はい、、、ご主人様…。」





急にミヤが言い出す。



「ミヤも可愛いって思われたいにゃ!」



「ミ、ミヤ…ミヤはそのままでも十分に可愛いよ。」



「せっかくフェンさまが買ってくれたのに…」



…まさか、さっきの下着みたいな水着みたいな格好をこんな街中でするつもりなの?



「ミヤ、街中であんな格好したら承知しないよ!!」



「でも、にゃ…」




納得しないミヤに言って聞かせる。



「ミヤのとっておきの格好は僕だけに見せて欲しいな・・・家の中で。」



「!!…いいにゃ、家の中で見せるにゃ!」



…これでよし、と。こんな街中で下着姿は『違う意味で』目立っちゃうよね、、、。






宿屋へ着くと確認したが、教団からは誰も訪ねて来ていないそうだ。


『神官様が上手く説明してくれたのかな?』


勝手にそう解釈しておく。




部屋に戻るとミオンとシオンには、汚すと悪いからチュニックに着替える様に言う。


二人共、名残惜しそうな顔をしている。



「普段着でもミオン達は可愛いから大丈夫だよ?」



「だって、、、」



「これを脱いだらまた・・・」




この格好だと、ご主人様は勿論、街の皆もミオンやシオンを可愛いと認めてくれたのだ。


、、、『物』や『奴隷』としてではなく。



これを脱いだらまた『奴隷』に逆戻りになるんじゃないかと心配しているのだ。



「大丈夫だよ。二人共。格好が違っても、ミオンはミオン、シオンはシオン、なんだから。」



「もうミオンとシオンは『物』や『奴隷』じゃないんだよ。」



「はい、ご主人様。」



…と思った所で、世間の…王国での獣人の扱いや権利は何ら変わっていないのだ。



そんな現実がフェンにはもどかしかった。








「じゃあシオン、言ってみて。」

 「あたし、、、」

 「、、、何で僕じゃ駄目なの?」

「あたし、よ。 わたし、でも駄目なのよ!」

 「良く解かんない、、、」

  「そうにゃ!『こだわり』が大事にゃ!」

  「人にはそれぞれムフフな趣味が、、、」

 「こら!ミヤ、二人に変な事を教えちゃ駄目だぞ!」

  「変な事って、、酷いにゃ、、こだわりにゃ、、、」

「、、、確かに中には『僕』って言った方が喜ぶ人も、、、」

 「おーい、ミオンも納得しなーい!!」

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