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姉弟ですか?勇者さま。






ルミオンの治療は『すんなり』とまでは行かないが順調に終了した。



神官様も首を傾げている…『誰か』が治療していた事に気付いたのだろう。




・・・だが、何も言わない。




『お前達、獣王軍の仲間だろう?』…と疑われても仕方のない状況なのに。



まあ、仲間なら何で女の指示で逃げなかったのか?


…という事も考慮しての判断なのかも。



でも、フェンは思う。



『この神官様なら何も言わないだろう』と。



・・・この神官様は『結果』で善し悪しを判断してくれる人だ。



一昨日のシオンを買った件では、『他の個人を売買した』事実より、


結果的に『シオンの命を救った』事を重要視して赦してくれる様な人なのだから。



だが、神官様とて遊びに来た訳ではない。



『国の法』では保護されない獣人を『ファリス教団の法』で守ろうという事で来たのだ。



一昨日のフェンの情報を元に。



だが、、、結果は獣人は一人もおらず、店の者は皆殺しでした。



・・・では神官様も帰れないだろう。



「フェン殿、この子の治療を行った者が居たのですよね?」



「どの様な者でしたか?姿は?」



「獣王軍と名乗る位なのですから複数の者なのですよね?」



「何人位の集団でしたか?」




フェンは迷う。



神官様に助けてもらうのは二度目だ…知っている事を答えるのは当然だと思う。



ただ、獣王軍、、先程の戦士であろう女性にはルミオンの治療をして貰った。



しかも『何でも一つ言う事を聞く』という借りまである。




・・・素直に話すべきだろうか?




迷うフェンを見て神官様も『気付く』。



「フェン殿。この子の傷の手当ては本当に丁寧で思いの籠ったものです。」



「残念ながらクロスシティーの医者や神官では、こうは行かないでしょう。」



「クロスシティーでは獣人が治療に来る事は『稀な事』なのです。」



「この治療…獣人の事を知る者、普段から獣人を診ている者だと思われます。」



「我々は『獣人の虐待をしている者』を取り締まる為に来たのです。



「ですので、獣王軍を捕まえに来た訳ではないのです。」



「獣王軍が問題だと言うなら取り締まるのは国王軍の仕事で教団の仕事ではありませんので…。」




暗に目的…『獣人を助ける』…は獣王軍と一緒だという事なのかな?



神官様の立場も有るだろうし、見たまま伝える事にする。



「獣王軍ですが、十数人程度でした。詳しい人数は不明です。」



「指揮を執っていたのは女の人でした。」



「治療を行ったのは治療隊と呼ばれていました…隊とは言え、一人しか見ませんでしたが…。」



神官様は『ふむふむ』と情報を用紙に書き込む。



「今まで獣王軍に襲われた店は人間は皆殺しで獣人は跡形も無く消え、全く情報が無かったのです。」



「フェン殿の情報は十分有益な情報ですよ。」



…そうなの? 情報流しちゃ悪かったのかな?




どうもフェンには獣王軍が『悪い軍団』だとは思えなかった。



今回の店では完全に『人間』が悪いと言い切れる。



次にもし同じ場面が訪れても自分の気持ちや行動は変わらないだろう。




もしフェンが話した情報で獣王軍に迷惑が掛かるというなら神官様に


『今話した事は忘れて下さい』とお願いしたいくらいだ。






しばらく話をし、ルミオンをどうするのかの話しになる。



教団、神官様としては、店で獣人が虐待されていた証人として連れて帰りたいとの事だった。



だがフェンもシオンとの約束…『お姉ちゃんを連れて帰る』という約束がある。




「神官様、ルミオンを教団へ連れて行き、その後はどうなるのでしょうか?」




「まずは体調の回復を待って、それから聴取、という事になるでしょう。」




「負傷した獣人…中には獣王軍の者なのでは?と勘ぐる者も出ましょう。」






「調べが終わるには時間が掛かるかと…」




・・・・



・・・・・なぜ?



せっかく助け出されたのに今度は取り調べで閉じ込めるだなんて…。



「神官様。この子は違います。獣王軍ではありません。」



「獣王軍が来る前に店の男達に暴行されていたのです!」



「僕が来た時にはもう傷付いていたのです。」



「それにシオンと約束したのです。ルミオンを連れて帰ると。」






、、、『ブワッ』、、、急にフェンに何かが覆い被さった。



続けざまに『ガリッ』腕に痛みを感じる。



「痛っ」…って急だったので痛く感じたが、落ち着けば我慢出来ない程の痛みではない。



ルミオンだった。



治療が終わって気を失っていたのが、フェンの話しで自分の名前を呼ばれたので気付いたのだ。



そして『シオン』の名を聞いた。




「返して!弟を返して!…シオンを返せ!!」



更にフェンに噛み付く。




身構える神官様達を手を挙げて抑えた。





「ルミオン…ちゃんだよね?」



自分の名前を知っている…。





「お前が、お前がシオンを…」





「うん。そうだよ。」




・・・買った・・・助けたのだ。






「「 殺したのか!!! 」」




ルミオンの瞳には憎悪が宿っている。






・・・えっ?何で殺したなんて話しに、、、?





「違うよ。シオンと約束して君を救いに来たんだよ。」





「嘘だ!…お前はシオンが『死んだ』って言った!」



「だから代わりに『私を買う』って!!」




・・・!!




聞いていたのだ。



フェンが店に着いてからの店の男との会話を。



傷付き朦朧とした意識の中でもシオンの名前だけは聞き逃さなかったのだ。





「殺したんだ!お前が!シオンを殺したんだ!!」





「本当ですか、フェン殿?」




神官様まで疑い始める。





「違います。シオンは元気です。ルミオンを買いに来たのは事実ですけど…。」




怨みを込めて思い切り噛んでいるのだろう。フェンの腕から血が滴る。




「フェンさま!」…ミヤがルミオンに飛び掛かろうとしている。



フェンは首を振って止める。




「ルミオン、聞いて。シオンは元気だよ。」



「宿屋でルミオンが帰って来るのを待ってるんだよ。」



「約束したからね。ルミオンお姉ちゃんを連れて帰るって。」



「だから僕はルミオンに殺される訳にはいかないんだよ。」



「宿屋へ行ってシオンが居なかったら僕を殺していいから一緒に来てよ。」



「・・・ミオン。」





初めてルミオンの瞳に迷いが生じる。



『ミオン?…聞き間違い?…違う、この人間は今、私をミオンと呼んだ。』



『ミオンと呼ぶのはシオンだけだ。それも二人きりの時にだけ…』





『『 違う!騙されるな!! 』』心が叫ぶ。



今まで人間がどれだけ平気で嘘をつき自分達を苦しめて来たか…。



だが、シオンが生きているのが本当なら自分がどうなっても、、、


どんなに酷い嘘をつかれようが、酷い扱いを受けようが、


どうと言う事は無い。耐えられる。




心が『騙される恐怖』より『淡い期待』に揺り動かされる。




「本、、当に生きているの?、、本当に?」



「うん。元気だよ。お姉ちゃんを待ってるよ。」



「本…当…」



ぽろぽろと泣き出すミオン。



「…シオンに会わせて下さい。」



「一目でいいので…その後は私を好きに…殺されても構いません。」




・・・酷い・・・どんな事でも死に直結する生活を送って来たからなのか?



、、、簡単に『殺されてもいい』なんて言って欲しくないのにな・・・。




「一目なんて言わずに、ずっと一緒に居ていいんだよ。」




「シオンもお姉ちゃんと一緒に暮らしたいって言ってたんだよ?」




「一緒に帰ろうシオンの所へ。」




「お願いします・・・ご主人様・・・」





神官様には聞きたい事が有るならミオンの代わりに自分が教団へ出向いて証言するからと説得した。



神官様も話の流れでミオンが獣王軍の者で無い事は理解している様だった。




「ではフェン殿。ルミオンの治療は終わりましたが、安静が必要です。」



「今日一日は宿屋で休ませて下さい。」



「明日、フェン殿に聞きたい事がある場合は神殿より迎えを送ります。」



「何も無ければ明後日以降は自由にして頂いて結構ですので。」



「良いですな?フェン殿。」



神官様に念を押され、フェンも承諾する。



「分かりました。必ず。」







神官様達と別れ宿屋へ向かう。



ミオンは安静にしなきゃなのだから必然的にフェンが背負う事になる。



最初は戸惑うミオンだが、『シオンもそうしたよ』という話をすると、


フェンの背中に恐る恐る掴まった。



…軽い…シオンから『お姉ちゃんは小さい』と聞かされていたが…本当なのだ。



シオンよりも背も低いが体重が異常に軽いのだ。軽すぎると言える程だった。



…背負った時はミヤが後ろから持ち上げているのかな?と思ったくらいにだ。



だが、幾ら背が小さくても、幾ら体重が軽くても、背中に伝わる鼓動は本物だった。





「じゃあ宿屋へ向かって出発だよ。具合が悪くなったら言うんだよ?」




「・・・・・」



ミオンの返事は無い。シオンと同じで優しくされる事なんて皆無だった為に、


どう答えればいいのか分からないのだろう。




「・・・羨ましいにゃ。」



代わりにミヤが呟いた。






ゆっくり歩いて宿屋まで到着する。



『やっと着いたにゃ』ミヤはそう言いたい気持ちを、背伸びして体を伸ばして表現している。



フェンは二人が再会し、喜ぶ姿を想像して、嬉しい気持ちになる。



『シオン、喜んでくれるよね?』…『それにミオンもだよね。』



部屋の前まで行くと、ミオンを背から降ろす。



喜びを倍増させようとサプライズ的な再会をさせようと思い付いたのだ。



「じゃあミオンは準備が出来て呼ぶまでここで待っててね。」







「ただいまー!」



フェンが元気に扉を開けると、薄暗い部屋の中に『ちょこん』と座って待っている影が一つ。




「シオン?」




「…お帰りなさい…ご主人…様…。」



何か辛そうな感じがする…。




「どうしたの、シオン?具合でも悪いの?」



ふるふる、と首を振るシオン。




「おいで、シオン。」



シオンが駆け寄ってくる。



抱き締めると…熱い!?・・・肌がカサカサだ。




「まさか…シオン、朝から『ずっとあのままの姿勢で』待ってたの?」




「はい、ご主人様」、、『コクッ』と頷く。



・・・!!




「ごめん、ごめんね。いい子だねシオン。」




「ミヤ、急いでお水持って来て。」





フェンは思い知る。



シオンやミオンへの『命令』は絶対なのだ。



多分、どんな危険な事でも笑顔で従うだろう。



何気ない命令が二人に『苦痛』を与えるかもしれないのだ。



「ごめんね、シオン。ほらお水、、」



美味しそうに飲むシオン。




落ち着いたのか笑顔を見せてくれるシオン。




「シオン、まだお昼食べて無いよね?」




「廊下にお姉ちゃんも待ってるから皆で御飯食べに行こうね。」




言われてシオンが見ると、扉の隙間から心配そうなミオンの顔が見えている。



「ミオン、おいで。」



ミオンが駆け寄って来てシオンを抱き締める。



「シオン…良かった。」



「ミオン…お姉ちゃん。」




・・・サプライズは失敗でグダグダな再会になっちゃったけど、



二人の再会の喜びには関係の無い話しだったようだ。




フェンは二人が二度と他者の思惑で引き離されたりしない様に願う。



、、、そしてそんな世界なら良いのに、と思った。






落ち着いたミオンとシオンを連れてお昼御飯を食べに食堂へ行く。



フェンとミヤはメニューはいつも通りにすぐ決まる。



ミオンとシオンはメニューを見ても首を傾げるばかりだ。



「シオン、昨日食べたのと同じのでいい?」



シオンは頷く。



「ミオンもシオンと同じのでいい?」



ミオンも頷く。






少し待つと料理が出てくる。



昨日の『経験』が役に立つ。



目の前の料理を『じーーっ』と見つめる二人に言う。



「これはミオンの分、これはシオンの分。一人でみんな食べて良いんだよ。」



「じゃあ、いただきます!」



ミオンもシオンも美味しそうに食べている。




・・・それを見ているだけで何だか幸せな気分になった。




・・・一人を除いては。




ミヤがまた相手にして貰えなくて『ぷんぷん』している。



「ミヤ、ごめんね。ご飯食べ終わったら、お風呂に入ろう、上がったら一緒に寝ようね。」



「えっ?フェンさまと一緒にお風呂にゃ?久しぶりにゃ。」



「いや、ミヤはミオンをお願いね。」



「僕がシオンを入れるから。」




「・・・がっかりにゃ。」




二人共まだ子供なんだしフェンが入れても良いのだが、ミオンは一応女の子なんだし、


ご主人様に『入ろう』と言われれば自分の意思に関係無く『はい』と言うのは目に見えている。




『二人には、まず自分の気持ちを伝えても良いという事から始めないとね・・・。」









食事を終え、部屋に戻るとさっそく手分けをする。




「じゃあミヤ、ミオンのお風呂お願いね。」



「分かったにゃ・・・。」まだ残念そうだ。



「シオンは、、、シオンもお姉ちゃん達と一緒がいい?」



、、、一応は確認しておいた方が良いだろう。




「・・・・・。」、、シオンは何も言わない。




「わ、、私がシオン達と一緒に、、、」



ミオンが言い出す。




「な゛っ・・・・」 ミヤが固まる。



、、なんて羨まし、、、違うにゃ、、、




『姉弟そろって油断ならないにゃ!!』




なぜかミヤがライバル心を燃やしている。





「お願いします、ご主人様、、、。」



、、、うっ。そんな『うるうる』した目で見られても、、嬉しいけど、、。




「じゃあ今日はミヤが二人を入れてね。」



・・・まあ一番妥当な答えだよね、、、。




「じゃあ、行くにゃ。」、、渋々、ミヤは二人を連れて行く。



「・・・僕も行こっと。」








浴槽に浸かりながら考える。



『ミオンとシオン、、、どうするかな?』



別に二人を養えない訳ではない。



だが、『養える』事と『幸せか』は別問題である。



・・・『助けたんだから二人で幸せに暮らしてね。』



と、別れても幸せに暮らせる可能性は低いだろう。



最悪、また悪い人間に捕まって、また『あの店』の様な所へ、、、。



、、、しばらくは一緒に居るしかないよね?、、自分で納得する。



一緒に居れば次第に二人の好きな事や、やりたい事など判るかもしれない。



まずはミオンとシオンに『もう大丈夫』な事を実感して貰わなきゃだね、、。




「まずは、、、、」



「食と住は大丈夫だから、、、あとは『衣』、、、だよね、、。」



長湯し過ぎてのぼせそうになりながら上がり部屋へ向う。






部屋の扉を開けてフェンは固まる。



・・・ミオンが二人に??



と、否応無く注目してしまう様な『美少女』が二人、、、。



、、な、訳はなく、片方はシオンなのだから『男の娘』か。



ミオンとシオン、、そっくりなのだ。



ミオンの方が背が少し低いから判るが、どちらも美少女と言える可愛さだ。



、、、それ程に『今までが』汚れていたのだろう。



お風呂に入り汚れを落としただけで『こんなに?』変わるの?と言う程に。



薄茶色に汚れた髪は洗うと白銀を少し暗くした様な綺麗な銀髪だった。



ミオンは、あまり外へ出されなかった為か肌は真っ白だ。



シオンはミオンよりは少し日に焼けている。



こんな美少女と男の娘なのに、、洋服はボロボロなのだ。



『勿体無い、、。』 フェンは素直に思う。



『よし。明日はミオンとシオンの洋服を買いに行くぞ!』





と、心の中で決心していると、、もう一人の存在を思い出す、、。



ベッドの脇でへたり込んでいるミヤ。



、、、どうしたのかな? 構って貰えないから怒ったのかな・・?



「ミヤ、どうしたの?」



ミヤが顔を上げると『うるうる』している。



「ど、どうしたのさ?、ミヤ。」



「フェンさま、、、私、、、穢されちゃった、、にゃ。」



「えっ、、、??」



「あの?、、、良く聞こえなかったんだけど?」



「二人に穢されたにゃ、、、。」




、、、穢されたって、、またまた、、ミヤ、、冗談だよね?



、、、まだ二人は小さいし、、、いや、獣人族なら有りえるの??





混乱しているフェンにミヤは言う。




「お風呂に入って洗い終わったら、急に二人が、、、」



「急に二人が、、、どうしたの?」



「二人でミヤの全身をペロペロ舐めまわしたんだにゃ!!」




・・・あー、そう、、だろうね。二人は犬人族なんだし、、、。




「フェンさましか触った事の無い、あんにゃ所やこんにゃ所まで、、、」



「おーい、ミヤ。人が聞いたら勘違いするから言い方は考えようねー。」



・・・そもそも、それはミヤが猫の姿の時の話しだよねっ!




ちょっとだけ三人のエッチなシーンを想像した自分が恥ずかしくなる。




「えーと、ミオンは今日は安静にしなきゃなんだから休もうね。」




「明日は皆でお買い物に行こう。」





、、、それから当然のように誰と誰が一緒に寝るかで揉めた、、、。












「ご主人様、シオンに会わせてくれてありがとうございます。」

 「いいんだよ。シオンと約束したしね。」

「では約束通り『私を好きに』して下さい、、」

 ・・・こんな美少女に言われると嬉しいな、、、。

 「待つにゃ!この泥棒猫!!フェンさまは渡さないにゃ!」

「猫はミヤさん、あなただけですよね?あたし達は犬、、、」

 「むーっ、事実なだけに、ぐぅの音も出ないにゃ、、」


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